出版物原水禁ニュース
2005.5号 

2005年5月NPT再検討会議に向けて
〜核軍縮をめぐる課題〜

核不拡散条約(NPT)再検討会議について

 発足35年の核不拡散条約(NPT)再検討会議は5年ごとに開かれ、条約では米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5ヵ国に核保有の特権を認めほかの国々には禁じる一方で、核保有国には核軍縮への取り組みを義務付けています。2000年に行われた再検討会議では非核兵器国による強い働きかけの末、「核兵器の全面廃絶に対する核保有国の明確な約束」など核軍縮に関する13項目(包括的核実験禁止条約<CTBT>の早期発効、ジュネーブ軍縮会議に核軍縮を扱う下部機関を設置する作業プログラム、等)の実際的措置と、非核兵器国の安全保障に関するプラス2項目(消極的安全保証、非核地帯の設立)の合意が結実しました。

消極的安全保障に対する米政権の消極姿勢

2000年合意のひとつである「消極的安全保障(NSA)」は、核保有国による非核兵器国への核不使用を約束することです。2000年合意の最終文書のなかで、準備委員会では「法的拘束力のある消極的安全保障を達成する方途」について2005年に向けた実質的な勧告を作成することが求められており、2004年準備委員会の最重要問題のひとつでもありました。2004年準備委員会でブラジル、メキシコなど核軍縮を推進する新アジェンダ連合(NAC)は「2005年再検討会議において安全の保証を検討する下部機関の設置を検討する」ことを提案し、非同盟運動(NAM)も消極的安全保障について十分な議論が行われるよう特別時間の割り当てを要求していました。

しかし最終的に2004年準備委員会では、議論の対立のため最低限の手続きを除き全体としての合意はなされませんでした。米国は2005年会議の議題が2000年会議に言及することを拒否しこれを想定することを嫌ったと伝えられています。

ブッシュ米政権は2005年会議を前に今年の年明け以降、「消極的安全保障」の国際条約化を拒否するとの方針が伝えられています。「ならず者国家」やテロ組織を念頭に、非核兵器国に向けて核兵器を使うこともあり得る、との姿勢を維持しているのです。(この他にも米国は新型核兵器「強力地中貫通型核」開発を計画しています。)

核兵器は世界中にいまだ約3万発も存在しています。イランなど核兵器の闇市場への流出、近年の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器製造の公式宣言など核兵器の強化、拡散の動きは顕著であり、緊張と恐怖を拡大させています。こうした中核軍縮・核不拡散を実現するNPTのあり方自体が大きく問われていると言えます。

日本政府の取り組み姿勢

包括的核実験禁止条約(CTBT)発効に向けて日本政府の努力は見られますが、共催を行った「CTBTフレンズ外相会議」(2004年9月)においてはCTBT発効上最大の障害である米国、中国の批准の重要性については個別に触れておらず、対照的にNAC声明はCTBT発効に向けて両国を名指ししています。また第59回国連総会日本決議(2004年12月)もNAC提案と比べると、現実の打開策としての働きには弱いことも指摘されています。

さらに2004年・新「防衛計画の大綱」は、「核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。」と規定しています。米国は核先制不使用の公式採用の際に北朝鮮の「核」の脅威にさらされている日本への「核の傘」が弱まることを懸念して採用を見送っていたとも伝えられています(共同通信、2005年3月4日)。核廃絶を求めながら「核の傘」に依存する唯一の被爆国の矛盾を浮き彫りにしています。 

さらに国内的には青森県六ヶ所村でプルトニウム再処理施設が2007年に稼動開始という核拡散への問題を抱えています。日本政府の非核政策の真価を問うていかない限り、米政権ならびに国際社会での核軍縮・不拡散も達成できないでしょう。

2005年NPT再検討会議(5月2日〜27日)に向けて

核軍縮に向けた国際的な動きは強まっています。NGOの中堅国家構想(MPI)による11項目の提言「アトランタ・コンサルテーションU:NPTの将来について」(2005年1月)や、カーネギー平和財団による報告書「普遍的順守─核安全保障戦略」(2005年3月)において、核廃絶に向けた提言がなされています。また世界の非核地帯条約に加盟している100ヵ国以上の政府代表による非核地帯会議が、2005年NPT再検討会議直前の4月26日ー28日までメキシコ市で開かれ、会議の宣言案で核兵器廃絶の重要性を改めて強調し、米国など核兵器保有国に核兵器廃絶の「明確な約束」の履行を迫るものとなっています。さらに広島市・長崎両市長が呼びかけを行ってきた平和市長会議では、2020年に核兵器の全廃をめざすとする「2020年ビジョン」を掲げて取り組みを開始しています─参照

2005年会議では、2000年会議での合意内容を堅持しさらに前進させるべきです。また2000年合意のひとつである非核地帯構想についての東北アジアでの進展なども含め、多くの課題に対し悲観的にならずいかに前進させていくことができるかは私たちの活動にかかっています。


(W)