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2005.6号 

米軍・自衛隊の再編・再配備とミサイル防衛(3)

レーガンのSDI計画

 レーガン大統領のSDI計画(1983年)について少し詳しく紹介します。SDI計画の特徴を一言でいうと、相手の弾道ミサイルの迎撃を宇宙で行おうとするシステムで、そのために宇宙から発射する、電磁レールガン(電磁力で鉄の弾丸を発射)、X線レーザー、ガンマ線レーザー、化学レーザー、粒子ビーム兵器、さらに相手ミサイルの電子機器を破壊する電子パルス兵器など、さまざまな新兵器研究が行われました。また宇宙に打ち上げ、化学レーザーを反射させるレーザー反射鏡の研究も進めました。

しかしX線レーザーや電子パルス兵器は核爆発を必要とし、化学レーザーの反射鏡は、口径10メートルの完全な鏡を打ち上げ、そこに25メガワットの電力を使って、高速で移動する目標に7秒間もレーザーを反射して、当て続けるというものでした。粒子ビーム兵器も巨大な加速器が必要であり、電磁レールガンも核爆発などによる巨大な電磁場が必要など、それぞれ実用化にほど遠いものでした。

ブッシュからクリントン、そしてブッシュ

このためレーガンの後を引き継いだブッシュ大統領は、実用化が望めないレールガンやレーザー兵器などの配備を取りやめ、弾道ミサイルに直接体当たりする地上発射の迎撃兵器に重点を移した「限定攻撃に対するグローバル防衛」(GPALS)構想に縮小しました。防衛対象もまた旧ソ連を含む全世界に広げました。

さらに民主党のクリントン大統領が登場し、GPALSを発展的に解消、海外に展開する米軍と同盟国を防衛する戦域ミサイル防衛(TMD)と国家ミサイル防衛(NMD)から構成される弾道ミサイル防衛(BMD)構想を発表しますが、政策としてはTMDに重点をおくものでした。議会で多数をしめる共和党からはNMDの推進を強く求められ、クリントン大統領は妥協を重ねますが、結局、ABM条約に違反するミサイル防衛は承認しませんでした。

ブッシュ大統領が登場し、TMDとNMDを統一するミサイル防衛(MD)推進を打ち出し、ABM条約から脱退したことは、以前紹介したとおりです。 

1985年にブッシュ大統領が打ち出したGPALS構想のなかで、現在のミサイル防衛で中心的な役割を果たすPAC3=パトリオットミサイル3、戦域高々度防衛ミサイル(THAAD)、海上配備スタンダードミサイル・ブロック4A研究開発が始まったのです。

PAC3は、航空自衛隊が配備しているPAC2の改良型ではなく、まったく新しい設計による迎撃ミサイルですが、射程が20キロ(50キロ説も一部にある)以下と短いため、敵の弾道ミサイルが大気圏に再突入するときに備えるミサイルです。THAADは、相手弾道ミサイルが大気圏に再突入する前の高度50ー100 キロで直接命中させる迎撃ミサイルです。海上配備スタンダードミサイルは、海上自衛隊のイージス艦に07年から配備予定のSM3のことで、大気圏内を飛行する弾道ミサイルに近接して爆発するシステムです。

このほかNTWD=海上配備・高々度広域防衛ミサイルの日米共同研究が1998年から始まっていて、体当たりする弾頭部分の研究は日本が進めています。

ミサイル防衛と軍事産業

SDI計画を発表したレーガン大統領は、ベトナム戦争終了後、落ち込んだ軍需の拡大を求める軍事産業の強い支持によって当選しました。従ってSDI計画は米国軍事産業界の要求でもあったわけで、米政府以外に軍事産業界も莫大な先行投資を行いました。

しかしブッシュ大統領により、SDI計画が大きく縮小された上、冷戦が終結、ソ連崩壊という事態のなかで軍事費の削減が一気に進みました。冷戦終結後の1990年代、米軍事産業にとって厳しい時代が続きます。

多くの軍事産業で航空・宇宙部門からの撤退が相次ぎ、産業界全体の縮小・再編が進みます。軍事・航空機部門ではボーイング社とロッキード・マーチン社の2社寡占体制に、軍事電子関係部門はレイセオン社の1社に集中していきます。(注)。

SDI計画に参入した多くの米軍事産業は、議会に働きかけレーザー兵器を含むミサイル防衛の復活・拡大を求めました。これが90年代終わり頃の共和党によるNMD推進要求となったのです。こうして多くの米軍事産業が息を吹き返しました。米議会はまた、これら軍事産業とも深く結びついているのです。 

しかし、結局、ボーイングとロッキード・マーチン、レイセオンの寡占体制は現在も変わっていません。ストックホルム国際平和研究所のSPRI・04年版で、世界の軍事企業・ビッグ3は上位5位に名を出しています。

(注=松村昌弘「日米軍事同盟と軍事技術」勁草書房)


(W)