出版物原水禁ニュース
2005.6号 

原水禁NPT再検討会議派遣団報告

 5月2日から開始された核拡散防止条約(NPT)再検討会議において、政府代表団への働きかけを行い、また全世界から結集する市民団体の行動に参加するため、原水禁・平和フォーラム派遣団(団長=福山真劫原水禁・平和フォーラム事務局長)25名が、4月28日から5月4日にかけてワシントン市とニューヨーク市を訪問しました。

 核拡散防止条約(NPT)は1968年に締結され、70年に発効し現在188ヵ国が加盟しています。安全保障関連ではもっとも多くの加盟国を持つ条約です。この条約の目的は核兵器の拡散防止、核軍縮、核技術の平和利用の推進です。当初は25年間の期限付きの条約でしたが、1995年の延長再検討会議で無期限延長が決められました。

今回の再検討会議は核兵器国と非核兵器国の意見の大きな違いから、今後の取り組みについて具体的に何も決まらない危険性があります。インド、パキスタン、イスラエルなど非加盟国の核保有がすすむ一方で、北朝鮮がNPTを脱退して核保有を宣言し、イランがウラン濃縮計画をすすめ、また核の闇市場の存在など核兵器、核物質、核技術の拡散が進行しています。

核保有国は、自分たちの核軍縮義務を果たさず、特にブッシュ政府はNPT体制強化に不可欠な「包括的核実験禁止条約」(CTBT)を批准せずその発効を妨げ、小型核の開発なども進めようとしています。NPTに基づく核不拡散体制は危機的状況にあります。

核兵器国が核軍縮について具体的に取り組みをすすめ、加盟国全体の合意をもとにしての拡散防止策、NPT脱退防止策を強化し、NPT体制自体の検証能力を向上させ、対抗措置を取れるシステムを作る方向性が打ち出されることが、今回の再検討会議で求められています。

エノラゲイ

4月28日、成田で結団式を行い出発した団は、まずワシントン市に立ち寄り、翌29日午前中に原爆投下機・エラノゲイが展示されているスミソンニアン博物館への申し入れを行いました。

エラノゲイは2003年12月開館した別館(STEVEN F.UDVAR-HAZY CENTER)に展示されていましたが、その説明では原爆投下による被害には一切触れられていませんでした。派遣団が、広島での原爆被害の実相についてきちんと伝えるようにという要望書を博物館側に渡そうとしましたが、警備は「見学以外の行為は一切認めない。手紙を渡す、あるいは抗議の意思を表明するような行動を行ったら拘束、排除する」という強硬な態度に終始しました。

そのため別館では要望書を渡せず、その後本館の方で交渉し、副館長級の職員が受け取り、館長にも伝えるということを約束してくれました。

その日の午後は9.11への報復戦争にただひとり反対したバーバラ・リー下院議員(カルフォルニア州選出)の議会事務所を訪問し、政策スタッフと交流しました。ブッシュ政府の単独行動主義が核政策にも及んでおり、核軍縮を妨げ、核拡散を促進していることにバーバラ・リー議員は懸念を持ち、ヒロシマ、ナガサキの悲劇が繰り返されないために共に協力をしていきたいという彼女の意向が伝えられました。

また、原水禁大会に何回も招待しているアメリカの平和団体「ピースアクション」(Peace Action)と交流会を持ちました。「ピースアクション」は全米に基盤を持つ全国的な平和団体であり、イラク反戦運動でも大きな役割を果たしています。ワシントンでは平和教育や議会へのロビー活動などに力を入れており、ブッシュ政権が進めようとする新型核兵器開発のための予算を議会で削減させるなどの成果を上げています。ただブッシュは再び予算獲得を画策しており、今後も攻防が続くということでした。

5月1日のデモ

 ニューヨークに移動した団は5月1日反核団体“Abolition Now!”(「ただちに核廃絶を!」)とイラク反戦に取り組む“United for Peace and Justice”(「平和と正義のために統一」)が共催するデモと集会に参加しました。ニューヨーク市民の反応は極めて好意的でした。

約4万人が集まり、日本のメディアでも取り上げられたこの行動には、日本からも被爆者、広島・長崎両市長をはじめ多くの参加者がありました。現地での参加者の多くは若者で占められ、ブッシュ再選という厳しい政治情勢にもかかわらず、世代交代をすすめ確実に力をつけているアメリカの平和運動の姿を見ることができました。

国連での会議

 5月2日のNPT再検討会議初日、会議を傍聴しようと多くの市民が国連本部に朝から列を作りました。私たちも会議登録を行い、本会議や「平和市長会議」の傍聴を行い、また「劣化ウラン弾」、「六ヶ所再処理工場」に関するNGOの主催する集会などに参加しました。

 今回派遣団は、「核兵器廃絶1000万署名」で850万以上の署名を共に集めた連合・核禁会議と「核兵器廃絶ニューヨーク行動」を結成し、5月1日のデモ、集会などに参加しました。

また2日には9.11テロ事件の被害者家族が「報復戦争に反対」して結成した「ピースフル・トゥモロウズ」との交流を行い、3日には国際自由労連(ICFTU)と連合が主催する「平和のための労働組合・国際会議」に参加しました。町村外相、美根軍縮大使への申し入れも共同で行いました。また、850万名のアナン事務総長宛の署名を、5月4日に三団体でNPT再検討会議のドゥアルテ議長に提出しました。

ピース・アクションとの交流

 そして、今回の派遣団の中で特筆すべきこととして、長崎から高校生が参加し「高校生一万人署名」を行く先々で集め、またニューヨークの高校やフランス・ドイツの若者たちの団体と交流を行い、積極的に核廃絶を訴えて回りました。若い力が伸びていくことが、今後の核廃絶運動の希望でしょう。

 NPT再検討会議は、核廃絶を訴え集まった市民の熱気、それを受けて核軍縮を進めようとする「新アジェンダ連合」や「非同盟諸国」、核軍縮に背を向けて特定の国に焦点をむけようとするアメリカなどの核兵器国が対峙している状態でした。

CTBT発効への外交努力に加え、核兵器に頼らない安全保障政策への転換や六ヶ所村再処理工場計画の凍結、北東アジア非核地帯の設置など、日本がNPT体制強化に貢献できることは数多くあると思われます。こうした中、日本での行動の重要性を確認しながら、帰国の途につきました。