出版物原水禁ニュース
2005.8号 

6ヵ国協議再開への期待

核兵器のない東北アジアをめさして
求められる日本の積極的な関与

6者協議再開は新たなスタートか?

 1年以上中断状態だった「6ヵ国協議」がいよいよ再開されることになりました。すでに今年5月以降、米国務省・デラトニ担当大使が北朝鮮国連代表部を極秘に訪問し、ブッシュ政権の北朝鮮を「主権国家」として認める方針を伝達するなど、米・朝の接触が続いていました。一方、韓国と北朝鮮の間でも積極的な交流が行われていて、朝鮮半島の非核化を最終目標とすることなどが合意されていましたから、6者協議再開の条件は整いつつありました。

しかし、6ヵ国協議の再開は、あくまで再開であって、今後、米、朝両国を中心に要求を出し合っていくなかで、再び会議がもつれる可能性も存在します。

ただ、これまではブッシュ政権内に、北朝鮮の核政策放棄を優先させようとする現実派と、政府そのものの転覆を考える強硬派との対立が存在していて、それが硬直した米国の対応となっていましたが、ここにきて現実派の国務省が主導権を握ってきたようで(少なくとも北朝鮮問題に関して)、それがブッシュ政権の北朝鮮政府を「主権国家」として認めることになったと考えられ、その意味では、米国がその立場を堅持する限り、6ヵ国協議が大きく前進することが期待できます。

ウラン濃縮をめぐる攻防?

しかし、米国の北朝鮮に対する核政策放棄は、どこまで含まれるのか?米国がこれまで主張してきたウラン濃縮問題の完全放棄まで求めるならば、6ヵ国協議は再び、袋小路へ入り込む危険があります。

米国が北朝鮮と積極的に接触し始めたのに合わせたように、今年5月、北朝鮮がロシアからウレンコ型の遠心分離器に使用するアルミ管2600本を輸入したという情報が、米政府筋からリークされました(注)。

これまで米国内でも、「北朝鮮がウラン濃縮を行っている」「いやその意図を持っているのは事実だが、現実には不可能だ」などの議論がはげしく行われてきましたが、このように具体的な数字が出たのは初めてです。それだけに信憑性も疑わしいのですが、この時期に出てきたことに、ある意図的なものを感じます。

ウレンコ型遠心分離器は、ドイツ、英国、オランダ三国によって共同開発された、濃縮効率のよいウランの分離・濃縮機器で、パキスタンのカーン博士が、その設計図をウレンコに勤務していたときに盗み出し、その設計図によって、パキスタンがウラン濃縮を進め、核爆弾を製造したことは、広く知られています。その後カーン博士を中心に、秘密裏に遠心分離器の設計図や、機器がリビア、イラン、北朝鮮などに輸出されていたといわれています。

急転直下の解決の可能性

イランでもウレンコ型の遠心分離器による低濃縮ウランの製造を、権利として主張するイランと、いっさいの運転停止を求める米・欧との間で、緊張した交渉が続いていることを考えると、6ヵ国協議においても、ウラン濃縮問題はこじれる可能性があります。

ただ、現在の米国は、イラク侵攻で、抜き差しならない泥沼に入り込んでおり、ブッシュ大統領が北朝鮮を悪の枢軸と表現し、武力攻撃の可能性をちらつかせ、脅迫的な言辞を使っていた頃とは、状況が大きく変わっています。場合によれば北朝鮮核問題は、一気に解決へ向かう可能性も存在します。

この場合、日本政府はどのような対応をとるのでしょうか? 拉致問題だけでなく、米国の「核の傘」の下に入ることによって、日本の安全が守られるとしてきた立場からは、米国が北朝鮮に対して武力攻撃をしないと約束することは、大変困ったことになります。場合によれば、日本が孤立することになりかねません。いまこそ自主的で、平和を基調としたなアジア外交の展開が必要なのです。このニュースが皆さんの手に届く頃には、再開6ヵ国協議の状況が明らかになっているでしょう。私たちは6ヵ国協議の進展に期待しましょう。

(注)ウレンコ型遠心分離器によるウラン濃縮について、米・トマス・J・ワトソン研究所のリチャード・ガーウィン氏は、年間3SWUの生産能力をもつウレンコ社の高速遠心分離器を用いた場合、初歩的な核兵器1個をつくるのに必要な高濃縮ウランを60キロとして、1300の遠心分離器を、年間3SWUのペースで、3年間稼働させなければならない。もし20キロで小型核兵器をつくるとすれば、1300の遠心分離器を年間3SWUのペースで稼働すれば、約14カ月でつくれると述べています(朝日新聞社「論座」2005年4月号)。ただ一つ一つの遠心分離器は内蔵したモーターで動くことになっていて、それを管理する数多くのコンピューター、安定的な電力の供給が必要とも述べています。

(W)