出版物原水禁ニュース
2005.8号 

法律審としての立場を大きく逸脱した最高裁

「もんじゅ」裁判の原告ら再審請求

「もんじゅ」の危険性から逃げた最高裁

高速増殖炉・原型炉「もんじゅ」に対する国の設置許可の無効確認を求めていた原告らは、6月28日、最高裁に対して再審請求を行いました。

 高速増殖炉はプルトニウムを燃料とする一方、天然ウランをプルトニウムに転換する原子炉で、日本でも建設が計画され、83年5月に、当時の中曽根首相が原型炉として「もんじゅ」の設置許可を出しました。

しかし、高速増殖炉は、(1) 冷却材にナトリウムを使う。(2) 蒸気発生器の伝熱管が次々と破断する事故の危険。(3) 「もんじゅ」の近くを地震活断層が連続して走っており、地震による大事故の可能性。(4) こうした事故による炉心崩壊の危険──などの問題点があるとして、85年9月26日に、福井県在住の住民39人を:原告として、「設置許可の無効確認と運転差し止めを求める」裁判を起こしました。  

この間「もんじゅ」の建設は完了し、試運転が始まります。94年4月に臨界に達し、95年8月29日に初送電が始まりますが、出力40%の性能試験中の95年12月8日、ナトリウム漏れ・火災事故が発生しました。

このナトリウム漏れ事故では、当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現・核燃料サイクル機構)による虚偽報告や撮影した事故ビデオ隠しなどが発覚し、これが動燃解体、現在の核燃料サイクル開発機構への組織替えとなっていきました。

このナトリウム漏れは、世界の高速増殖炉が共通に抱える悩みで、この問題が解決できないため、世界は高速増殖炉から撤退を余儀なくされてきたのです。「もんじゅ」も結局、同じ問題に直面したわけです。

しかし、最高裁の5月末の判決は、高速増殖炉がプルトニウムを燃料とすることの危険について、なにひとつ理解していないだけでなく、米国や、ドイツ、フランスが高速増殖炉の開発から撤退していったという事実からも目をそらしています。

名古屋高裁・金沢支部の判決

 03年1月27日、名古屋高裁・金沢支部は、(1) ナトリウム漏洩事故、(2) 蒸気発生器の伝熱管破損事故、(3) 炉心崩壊事故の3点において、安全審査の審議調査、判断の過程に、見過ごせない過ちがある。放射能大事故の可能性を否定できないとして、「設置許可の無効を確認する」判決を出しました。

最高裁判決の問題点

高裁判決に対して、国は「上告受理申立書」を提出し、最高裁は05年5月30日、「原子力安全委員会の審査・評価・判断に不合理な点はなく、安全審査の過程に違法性はないとして、国の安全審査は適法との判決を出しました。

しかし、最高裁は、この判決のなかで、法律審としての立場を踏み越えてしまうという過ちを犯しました。それは、民事訴訟法第312条によって、最高裁への上告は、憲法違反に限定されているため、(国の)「上告受理申立理由」は、判例違反や法令解釈に重要な事項を含む場合に限られるのです。また民事訴訟法第321条は、原判決(高裁判決)が適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する」とあります。

最高裁は、高裁で確定した事実関係に拘束されるため、高裁判決が違法であるかどうかを審査するだけで、新たな証拠調べや事実関係の変更はできません。

しかし最高裁は、高裁で確定した事実関係を、勝手に変更し、欠落させて、判決文を作成しました。

事実認定を変えた部分は、(1) 95年のナトリウム漏れ事故によって、コンクリート床の上に敷かれている鋼鉄製ライナーが溶けてしまったことに関する部分。(2) 蒸気発生器の伝熱管破損事故に関する部分。(3) 冷却材がなくなって炉心が崩壊した場合──住民が「もんじゅ」の安全性で問題とし、高裁判がこの部分について、国の安全審査は見過ごせない過ちがあるとした部分の事実認定をすべて変えてしまったのです。最高裁として、あってはならないことをやってしまったのです。

核燃サイクル機構は、最高裁判決を受けて、「もんじゅ」運転再開を目指しています。しかし、ナトリウム漏れ・火災事故によって、煙となって隅々にまで広がったナトリウムによる腐食は、「もんじゅ」の運転再開をきわめて困難にしています。今後の高速増殖炉の見通しもまったくありません。私たちは「もんじゅ」運転再開を許してはなりません。