出版物原水禁ニュース
2005.10号 

美浜原発と国民保護法

原発がテロ攻撃?

 国民保護法に基づく全国初の「国民保護実動訓練」が、11月27日に美浜町で実施されることになりました。この実動訓練は、「関西電力(株)美浜原子力発電所がテログループによる攻撃を受け、同施設の一部が損傷を受けたことにより、放射性物質が放出されるおそれが生じる」という想定のもと、防衛庁や経済産業省、原子力安全・保安院のほか、関西電力や核燃料サイクル開発機構、日本原子力研究所、放射線医学研究所なども参加する訓練となっています。国民保護の名のもとに原発が攻撃されるというショッキングな想定で行われる実動訓練は、多くの問題を含んでいます。

これまでの安全審査の対象外

 これまでの原発の安全審査では、原発が攻撃され、放射性物質が放出されるおそれが生じる事は想定されておらず審査対象にもなっていませんでした。しかし今回、国側がそのような事態が発生することを「想定」したことは、現実に起こる可能性を「国が認めた」ものです。このような「テロ攻撃」や「武力攻撃」の可能性を国が肯定するならば、当然、それに対応した「安全確保及びその妥当性」が求められます。原水禁と原子力資料情報室は、原子力安全委員会に対して、「安全審査において、武力攻撃災害の審査は行われているのか」、「行わなくてよいのか」など、と公開質問状を出しました。

 安全委員会からは「外部からの武力攻撃については、一般的に想定され得る事象の範囲からは外れると考えられるため、設計段階での「想定される外部人為事象」の審査対象には含めていません」との回答でした。

 それはもともとこの法案が出来る以前にテロやミサイル攻撃といったものを最初から想定していなかっただけで、今回、テロ攻撃を国が「想定」して行うのであるから、もはや想定外とする訳にはいきません。まして指針にないからから「関係ない」、というような無責任なままでいいわけではありません。国の回答は、なぜ想定外なのかを説明せず、いまの指針にただないから「いいんだ」としていることに問題があり、その点を明らかにするために再質問をしています。

進む原発有事体制

 原子力施設については、特に03年の9.11以降、警備強化がなされ、警察及び海上保安庁が、陸上及び海上からの警備を実施し、事業者が出入管理の強化などが行われ、施設や情報などが非公開の流れが強くなりつつあります。

 さらに原子力発電施設内の核物質を防護するために、各種の防護措置の強化を盛り込んだ原子炉等規制法の一部を改正する法案が成立するなど、ますます管理強化が図られています。核物質防護の強化として、「設計基礎脅威」として、例えば不満を持つ労働者等を仮想敵と電力会社・関係会社の社員の借金状況やアルコール・薬物依存性の調査、犯歴情報チェックなどの個人情報を管理して監視することが検討されています。さらに守秘義務を課することによって内部告発の動きを圧殺しようとすることも懸念されています。

また、今回の実動訓練に先立ち、03年2月10日に「原発15基が集中する福井に、機関銃・ロケット砲で武装した武装工作員が上陸した」との想定のもと、福井県では陸上自衛隊第10師団(名古屋)と警察の治安出動の共同図上演習はすでに先行して進められています。

武力で原発は守れない

 今回の実動訓練は、あくまで実施者が都合のいいように想定したもので、シナリオ通り進むと限りません。むしろ想定外のことが次々起こることだって十分考えられます。訓練を真剣にやればやるほど原発と国民保護は両立しないことが明らかにされるはずです。だからこそ、無理のある法案であり、訓練です。武力で原発を守ろうとすればするほど、厳重な管理体制を敷くしかなく、原子力施設の密室化につながり、住民や市民そして労働者の管理統制へと結びついていきます。核がもたらす管理社会を具体化させる一連の規制強化が、有事法制とともに進み、民主主義社会の根幹を掘り崩すものとなっています。

 私たちは、有事体制を作って原子力施設を守り日本の安全保障を確保するのではなく、周辺諸国に対して、信頼醸成や予防外交などの非軍事化のアプローチや地域協力によって確保することが、本来的に求められるべきものです。また、原子力施設そのもののもっている潜在的危険性は、有事の際にますますその本質を表します。だからこそ私たちの命を守るためにも、脱原発に移行していかなければならないことまた明らかなことです。