出版物原水禁ニュース
2005.11号 

東アジア共同体への出発点となるか
六カ国協議共同声明のもたらすもの

いまこそ必要な日本の非核政策

北朝鮮を国家として認めたことの意味

 05年7月26日に第4回6ヵ国協議が開会し、8月6日に休会。9月13日に再開し、19日に発表された「共同声明」は、新しい歴史を刻む日となるのではないでしょうか。

 共同宣言の中身は大きく二つに分かれます。1つは、北朝鮮がすべての核兵器と核計画を放棄し、NPTとIAEAの保障措置へ復帰する。一方北朝鮮の求める原子力平和利用の要求を尊重し、適当な時期に軽水炉提供で議論する、述べられていること。

 2つ目は、米国が朝鮮半島で核兵器を持たず、北朝鮮を核兵器や通常兵器で攻撃、侵略の意図のないこと。米朝は相互の主権を尊重し、平和的共存、関係正常化の措置をとる、とうたったことです。

 とくに米国が北朝鮮を国家として認め、侵略する意図のないことを確認した意味は大きいといえます。この声明は、第二次世界大戦後の分断された朝鮮半島を中心に東北アジアで今日まで続いてきた、冷戦構造の終わりだけでなく、東アジア共同体への発展を予感させます。

 今後も北朝鮮の核兵器、核計画放棄が先か、軽水炉の提供と並行して行うか、検証をどうするか、さらにNPT復帰後のIAEA査察など、11月に開催される協議を含めて、多くの困難が予想されますが、この流れは変わらないと思います。

 そしてこの流れを作ったのは中国です。日本政府は声明になんとか「拉致問題」を入れたいと考えましたが、「日朝は、平壌宣言に従って過去を清算し懸案事項を解決し、国交正常化の措置をとる」という内容になり、拉致問題については今後の交渉次第ということになりました。第4回6ヵ国会議で、日本は積極的な役割を果たすことができず、ただ参加しただけという印象だけが残りました。

米朝を解決に向かわせる要因

 6ヵ国協議がこのように展開することは、会議前から予測されていました。米朝は04年6月に第3回協議が中断されて以降、積極的に接触を重ねてきました。第4回協議が開会された7月26日、米国代表のクリストファー・ヒル国務次官補は、協議中断中6回の米朝会談を行った、北朝鮮を侵攻したり攻撃したりする意図はないと語りました。

 翌27日に発言した北朝鮮の金桂寛代表は、第3回協議での米提案(※)を拒否することを明確にしましたが、米国による核の脅威の除去や、米朝関係の正常化がなしとげられれば、核兵器、核兵器開発計画を検証可能な方法で放棄する。しかし平和利用は含まれないと述べました。

04年6月23〜26日に開催された第3回6ヵ国協議で米国は北朝鮮に3ヶ月の準備期間を与え、高濃縮ウランを含む宅開発放棄に着手すればエネルギー支援や暫定的な安全の保障を認めるなど7項目を提案。

 第3回協議はウラン濃縮問題の対立が解けず、休会となりましたが、米朝両国にはつっぱりあうだけではすまない切迫した事情が存在していました。

 第3回協議以降、米国はウラン濃縮問題を持ち出していますが、確証は存在しません。米国が強硬姿勢を続けたとしても、なにも打開策はないのです。国連安保理に持ち込んだとしても、中国、ソ連の拒否権で否決されることは明らかですし、さりとて武力攻撃に踏み切ることなど、とうてい不可能です。なによりも韓国が強く反対するでしょう。

 さらに米国のイラク侵攻は泥沼化し、解決の道筋は見えていません。反戦世論は次第に大きくなってきていて、米国民の半数以上がが、独裁国体制を打倒するために軍事力を使うことに反対しています。米財政の双子の赤字は増え続け、いまや中国は米の大きな債務国となっています。今後の米国外交を考える上でも、中国との関係はきわめて重要になってきており、6ヵ国協議を成功させることは、米国が東アジアにプレゼンスを持ち続けるためにも、重要になってきています。

 一方、北朝鮮も核兵器を増やし続けるとの強硬路線を続けていても、経済的な困難を解消する道は存在していません。自国の経済立て直しを考えるなら、核兵器路線を放棄する以外に道はないのです、

 また中国も多くの経済支援を北朝鮮に与えていますが、核開発に強く反対しているだけでなく、米国との協力関係も持続させたいと考えていますから、北朝鮮に強い働きかけを行ってきました。

米の核攻撃は韓国にも大きな放射能被害 

 雑誌・世界10月号にオーストラリア国立大学教授、ガバン・マコーミック氏が「核の傘ときのこ雲」と題する文章で、米国が朝鮮半島で核兵器使用計画などについて、次のように書いています。

『1970年代末、カーター政権は...北朝鮮軍のあらゆる動きに対応する計画を立案した。それによれば核の傘で防衛するためにソウル郵便局から約12.5キロの距離に原爆を投下する必要があった。韓国政府は核の傘が開いた場合、想定される影響についての詳しい研究結果を最近公表した。米国が核施設へ...精密爆撃を実行した場合、最悪のシナリオとしては半島全域が10年間は人が住めないところとなり、それよりましな場合でも爆心地から10?15キロ以内の人口の80%は2ヵ月以内に死亡、放射能汚染がソウルはもちろん、1400キロ離れた地域まで広がるという』。

 このような報告がなぜ日本の多くのマスコミで報道されないのか分かりませんが、韓国政府は自国の安全のためにも、米国の武力攻撃に反対する必要があるのです。

 韓国の金大統領が太陽政策をとり、後を継いだ廬大統領はさらにその政策を発展させています。韓国はいまやゆるやかな統一に向かっているとまでいわれています。国家体制が大きく異なる国同士の統一は、きわめて困難と思われますが、韓国にとっては平和的な融和政策をとることが最良の道なのです。

日本は冷戦外交からの脱却を

 6ヵ国協議で日本は、ほとんど存在感を示すことができませんでした。これまで東北アジアでは冷戦構造がずっと続いてきました。米ソの冷戦が終結した後も、日本は米国の核の傘に依存し続け、米ソ冷戦が終わった後も北朝鮮に敵対視し、北朝鮮からの化学兵器などの攻撃に日本を守などの理由で、核の傘を求め続けてきました。米国が北朝鮮を核攻撃しないという約束に、強く反対し、東北アジアでの冷戦構造の一翼を担い続けてきた、その構造がいま崩れようとしているのです。

 これまで日本が、東北アジアの冷戦構造を変えようと動いたときがありました。それが2002年の「平壌宣言」でした。しかし日朝の和解を望まない勢力が、北朝鮮の核兵器問題がことさら大きく取り上げられたこと、さらに拉致問題がからみ、日本は日朝和解の機会を失ってしまいます。

 6ヵ国協議での日朝個別会談によって、日朝交渉再開が合意されましたが、まだ日程は決まっていません。拉致問題がネックになることは明らかで、交渉が長引くことによる偏狭なナショナリズムの台頭を恐れます。

 拉致被害者やその家族のことを考えると心がいたみます。拉致問題の早期の解明と解決が求められますが、そのためには北朝鮮はもちろん、日本も情報を公開しなければなりません。横田さんの遺骨問題をめぐっては、国際的にも情報公開が求められているのです。

 今後、米朝間で紆余曲折が予測されるとしても、最終的には北朝鮮はNPT復帰とIAEAの査察受け入れに進むでしょう。問題の鍵はIAEAの抜き打ち査察を認めるIAEAの追加議定書の締結を受け入れるかどうかにあります。仮に北朝鮮が追加議定書の締結を受け入れたとしても、IAEAの査察には数年かかります。

 しかしこの間に、東北アジアの情勢は大きく変化していくでしょう。中国は一層経済発展をとげ、米中の経済的結びつきもさらに強まるでしょう。

 これまで米国と共に東北アジアで冷戦構造の一翼を担ってきた日本はどうするのか? いまこそ中国、韓国を含めた東アジア共同体への構想を考えるときではないでしょうか。日本がアジアでの孤立を強めるならば、残された道は、一層米国との軍事的関係の強化しかなくなります。それは日本だけでなく、アジアにとっても不幸です。

共同声明骨子(朝日新聞を参照)

(注・この文章作成では、雑誌・世界「ドキュメント・南北朝鮮」などを参考にしました)

(W)