出版物原水禁ニュース
2005.12号 

核軍縮・廃絶への道筋は?
 2005年を振り返って(1)

IAEA・ノーベル平和賞受賞の驚き

ブッシュ政権、イラク泥沼化のなかでの6ヵ国協議

 今年の核問題に関するさまざまな事象(現在進行中も含め)について、2回にわたって検証します。

 1月20日にブッシュ政権の2期目が発足し、ブッシュ政権の米軍再編は一層加速されていきます。日米両政府は2月19日の日米安保協議委員会で「共通の戦略目標」を設定しますが、10月29日に「米軍再編中間報告」が発表されました。ブッシュ大統領は1月20日の就任演説で、「圧政国家を終わらせる」ことを4年間の最優先課題とすると述べたのですが、さっそく北朝鮮外務省は2月10日に、「核兵器保有」の言明と6ヵ国協議参加の無期限に中断する声明を発表します。

 この声明を機に中国は共産党代表を訪朝させるなど、6ヵ国協議再開へ向けて積極的な動きを加速させます。その後、北朝鮮は政権転覆を狙う敵視政策の放棄と放棄政策の実行など3条件を提示し、これらに米国が応じれば、いつでも6ヵ国協議に応じるとの立場を示しました。米国(そして日本)は、北朝鮮の前提条件なしでの復帰を要求しますが、2月26日にソウルで開催された日韓米3ヵ国協議で、韓国は「無条件復帰」に同意せず、この段階で日米と韓国の立場の違いが鮮明になりました。さらに韓国は独自の北朝鮮支援を積極的に進めていきます。

 一方、米国はイラク侵攻の泥沼化のなかで、ネオコンの影響力が低下し、それとともに米朝の接触がひんぱんに行われるようになります。こうして7月26日、6ヵ国協議が再開されますが、米朝の対立が解けず、8月6日に休会となります。しかし9月に再開された協議では、朝鮮半島非核化へむけた「共同声明」が発表され、朝鮮半島のみならず、東南アジアに対しても平和的共生の大きな一歩が踏み出されました。

さらに具体的な北朝鮮の核兵器計画の廃棄へ向けて協議が11月9日から始まり、各国が共同声明にもとづく計画案を出しましたが、軽水炉計画との同時討議(進行)を求める北朝鮮と、まず核放棄が先とする米国との溝の大きさが鮮明となりました。協議は当初の予定通り11日に休会となりました。米国のネオコンも巻き返しをはかっていて、北朝鮮の核兵器計画完全放棄へ道はまだまだ曲折があると思いますが、本誌前号でふれたように平和的解決への道は変わらないと考えます。

この夏からの6カ国協議では中国と韓国の密接な関係が明らかとなってきていますが、その共通項は、北朝鮮非核化に時間をかけるというものです。そしてこの間に日本はますます孤立を深めると心配されます。

ノーベル賞受賞のIAEAに惑わされてはいけない

 この間、5月2日にNPT(核不拡散条約)再検討会期が開催されましたが、議長声明ひとつ出せないまま終わりました。ただこのNPT再検討会議に向けて原水禁・連合・核禁会議の3者が共同して「核兵器廃絶署名」に取り組み、850万人をこえる署名を集め、さらに再検討会議に三者合同代表団を送ることができました。

 9月11日に衆議院総選挙があり自民党が大勝。そして10月28日に自衛軍の保持とその軍隊の海外活動を容認する、自民党の新憲法草案が発表されました。この間10月7日にはノーベル平和賞にIAEA(国際原子力機構)とエルバラダイ事務局長が選ばれました。平和賞有力候補の日本被団協は結局外されました。

IAEAとエルバラダイ事務局長のノーベル平和賞受賞は、核拡散防止への努力が評価されたと考えます。たしかにIAEAは直前の通告によって、未申告の核施設に「抜き打ち査察」を可能とする「追加議定書」を1997年の総会で可決し、加盟国に署名を求めています。とくにイランに対して強く署名を求めています。

またエルバラダイ事務局長もNPT再検討会議を前に、核軍縮へ向けたロードマップ作成の提案、ブッシュ政権の新型核兵器開発批判、印・パ・イスラエルの参加する核軍縮交渉テーブルの設定などを提案。さらに核燃料サイクル管理の有効性や妥当性を再考し、多国間管理の検討などを提案しました。

ただ問題なのは、IAEAが原子力の平和利用を進めつつ、核兵器拡散防止、核軍縮を進めようとするところにあります。このため核物質を扱う過程でのヒバクや原子炉事故などに、きわめて低い配慮しかしないことです。最近の顕著な例は、今年9月6?7日にウィーンでIAEA主催によって開催された「チェルノブィリ・フォーラム」で、最終的な死者は約4,000人と、被害をきわめて低く評価し、幕引きをはかろうとしたことです(次号に続く)。

(W)