出版物原水禁ニュース
2005.12号 

美浜原発と国民保護法(2)

明らかになった実動訓練

 11月27日に関西電力美浜原発がテロ攻撃されるという想定のもとに行われる、国民保護実動訓練の概要が明らかにされました。テロ攻撃で、原発が攻撃され、外部電源喪失、炉心冷却機能喪失、炉心損傷の可能性、被曝者の発生など、これまでの安全審査にも想定されていなかった事態が想定された訓練となります。原子力防災訓練と異なり、自衛隊と警察が共同してテロリストの追跡・だ捕を行い、原発に通じる道路では検問が敷かれ、訓練であっても私たち市民がその地域に立ち入ることが出来ないという、密室化した中で行われるものです。今回、テロリストだ捕ための自衛隊と警察との共同演習は行わないと表明されていますが、10月20日に北海道で陸上自衛隊と道警察との対テロ共同演習が行われたように、今回は実施しないとはどうしても考えにくく、むしろ市民の監視の目が届かない山中(テロリストの一部は山間部へ逃げると想定)で行われるのではないかと言われており、これも国民の目から離れたものであるといえます。

 国民保護法では、戦災と自然災害を同じように扱っており、その実動訓練は、従来の防災訓練を基本に考えられています。しかし、武力攻撃や戦争の中で行われる救援は、自然災害の救援とは根本的に状況が違い、支援も態勢もまったく違うものです。そのような前提抜きで、ただ単に防災訓練の延長線にしかとらえていないことは、実動訓練の内容を本気で考えていないことが明らかで、別の所に真の意味があることがわかります。

実動訓練は何をねらうか

 国民保護法は、テロや武力攻撃が日本にあることが当然のように前提にされたものですが、そもそもその前提は正しいのか? 防衛白書では、本格的な侵略事態への配意として「見通し得る将来において、わが国に対する本格的な侵略事態が発生する可能性は低下していると判断される」との認識を示し、日本への武力攻撃・テロは極めて少ないことを示しています。

 むしろ、アメリカが東アジアなどで引き起こす海外侵攻戦争によって、日本や周辺諸国に緊張が高まることの方が非常に現実的なものです。特にイラク戦争でも示されたアメリカの「先制攻撃戦略」によって、アメリカの先制攻撃の意向に添って「予測事態」や「切迫事態」が出現し、それに対応して有事法制が発動されることが考えられます。まさに有事法制は、アメリカの戦争遂行を支援する法律であり、その中で国民保護法は、「銃後」を固める「後方構築法」といえます。

 さらに武力攻撃や大規模テロが仕掛けられるとの想定は、周辺諸国に対して摩擦を強め、日本の軍事拡大に対する警戒感を高めます。「有事法制こそが平和の脅威」(韓国)とまで言われています。

監視社会と戦争協力体制を創り出す国民保護法

 政府は、国民保護法の制定によって、地域社会や地方自治体を平時から国民保護計画や実動訓練、有事教育、自警団の組織などによって有事体制に組み込むことを進めています。そのことは、周辺諸国に対する危機感を絶えずつくり出すだけでなく、民族差別意識を助長し、相互監視社会や非協力者のあぶり出しや疎外・排除といった治安強化にすすむものです。また、自治体や国民保護協議会などへの自衛隊員やOBの参加や天下りを通じて、日常の中に自衛隊が入りこむことになります。

 実動訓練は、内容よりも、自衛隊の日常への定着(住民意識の中に定着も含め)とその存在意義を高めることにあり、そのことは当然憲法改悪、戦争国家化へとつながる延長線上にあるものです。

自治体の平和力で反撃を

 この計画作成・組織整備から実動訓練までのプログラムを04年?08年にかけて整備しようとしています。しかし、有事法制・国民保護法に対して唯々諾々と無抵抗なまま従う必要があるのでしょうか。自治体の持っている平和力を引き出すことによって、抵抗し、平和や非戦につなげる努力が必要です。自治体に求められているのは、作戦(戦争)支援ではなく、住民保護であり、それを徹底させることが必要で、防災面の充実をはかるなどはその一つです。国の強制力に対してもその適用範囲は限られていることを考えれば、十分に対抗することが可能です。現在各地で進められている国民保護計画に対して、非戦・平和の立場から発言していくことが求められています。