出版物原水禁ニュース
2005.12号 

第60回国連総会第1委員会(軍縮・安全保障問題)

日本政府の新決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」と今後の課題

日本政府による「新たな」核廃絶決議案
─問われる2000年決議の行方

日本政府は10月26日、「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」(A/C.1/60/L.28)と題する核廃絶決議案を、第60回国連総会第1委員会<10月3日?11月1日開催>に提出し、166カ国の賛成を得ました(米国とインドが反対)。

国連総会では平和に関する6つの主要委員会があり、第1委員会では「軍縮・安全保障問題」について扱っています。これは毎年国連総会一般討論演説の後の10月に4?5週間開催されます(国連加盟の191ヵ国が参加可能)。ここで核不拡散防止条約(NPT)では論議しきれない問題等についての決議が行われてきました。今回の第60回国連総会第1委員会は、今年5月に行われたNPT再検討会議での議論決裂を受け、現在の世界の核軍縮の行き詰まりを打開する鍵となる場でした。

1994年以来、日本政府は核兵器の廃絶を究極的目標とし核軍縮を求める「核兵器の全面的廃絶への道程」決議を毎年提出してきましたが、今回は題名が「新たに」変更されました。しかし、この新決議案では、広島・長崎への原爆投下60周年への言及は見られるものの、NPT再検討会議の無期限延長などを決定した1995年、および核軍縮への13項目の具体的な措置を合意した2000年決議最終文書の重要性について、「想起する」という文言に留めているのです。過去の日本政府による2004年決議案では2000年決議の13項目に沿った形(うち8項目についてこれまで言及)で各提案がなされてきましたが、今回は構成が変更されたのです。

新決議案は従来どおりCTBTおよび兵器用核分裂物質生産禁止条約(FMCT)への言及などは見られるものの、2000年決議で鍵となった、「2000年NPT運用検討会議で合意されたNPT加盟国が同条約第6条の下で同意する核軍縮につながる、核兵器の全面的廃絶を達成することへの核兵器国による明確な約束」についての言及も、今回削除されました。

特別委員会設置と米国

 また、多国間軍縮交渉の場としてのジュネーブ軍縮会議(CD)での行き詰まりがこれまで指摘されてきています。ひとつにはCDが全会一致採択方式をとっていることが挙げられています。そのため、軍縮交渉の停滞打開を目指すメキシコなど非核保有6ヵ国(ブラジル、カナダ、ケニア、メキシコ、ニュージーランド、スウェーデン)のイニシアティブにより、4つの重要課題(消極的安全保障<NSA>、核軍縮、カットオフ条約<FMCT>、大気圏外での軍備競争の防止(PAROS))について国連総会の下に特別委員会を設置するという提案が準備されました。しかしこれに対し米ブッシュ政権はこの提案の提出を阻止するため、各国に書簡を送付したことが伝えられています。

米国が配布した書簡は、特別委員会の設置がCDの作業プログラムの進展に対し「共通の目的を害する」もので、「多数決によって交渉を行うことはしない」と強硬な反対姿勢を示しています。否定を表す「NOT」も大文字で強調し米政権の危機感が現れています。

 これにより今年の特別委員会設置の提案は見送られました。今後日本政府はCDでの議論の活性化とともに、具体的議論・交渉の場としての特別委員会設置に向けて国際社会に積極的に提言していくべきです。

さらなる課題

 国連第1委員会に向けて、原水禁は9月29日、特に「米国に核軍縮義務を国際交渉の場で宣言する必要性と、さらに核軍縮を促進すべきこと」、「NSAの法制度化を、特に米国政府に促し、国際社会で率先して進めるべきこと」、「日本政府が率先して北朝鮮・韓国・日本を中心とした、東北アジア非核兵器地帯についてイニシアティブをとって提言するべきこと」、について外務省に要請を行いました。

上記の通り日本政府の新決議案では核廃絶に関する核心的部分が削除され、またNSAと非核兵器地帯構想についてはまったく触れられていません。しかしながら外務省との意見交換では、NSAについては政治状況を鑑み場合によっては盛り込む可能性も検討内にあることが示唆されています。日本政府に対し核廃絶に向けた具体的措置の前進をさらに強く訴えていくことが必須です。

さらに東北アジア非核兵器地帯の確立に関しては、北朝鮮の脅威ばかりが取り上げられる現在の社会情勢に対する有効な代替案として、政府レベルでの議論を活性化させるためにも、まずは市民レベルでその重要性について意識を高めていくことが必須です。