出版物原水禁ニュース
2006.1 号 

核軍縮・廃絶への道筋は?
 2005年を振り返って(2)

国民保護法はどこまで放射能被害から住民を守るのか

ヒバク問題を封印したノーベル平和賞委員会

 前号で今年のノーベル平和賞にIAEA(国際原子力機構)とエルバラダイ事務局長が選ばれ、有力候補とされていた日本被団協は選ばれなかったことに触れて、IAEAがヒバク問題を過小評価している。一つの例として05年9月にウィーンで開催された「チェルノブィリ・フォーラム」(IAEA主催)で、最終的な死者は約4,000人と、被害をきわめて低く評価し、幕引きをはかろうとしたと書きました。

 チェルノブイリ原発事故の最大の問題は、影響が旧ソ連国内だけでなくヨーロッパにまで広がったことです。事故直後(1986年)から89年までに放射能「高汚染地域」(1平方キロ当たり15キュリー)として強制移住させられた約40万人の住民、事故処理に従事した約80万人の軍人を含む作業員だけでなく、ヨーロッパでも高濃度汚染地域があります。さらに1平方キロ当たり1キュリー以上の「汚染地域」で生活している旧ソ連国内の住民は約600万人もいます。この「汚染地域」は当然ヨーロッパにも存在します。死者はIAEA推定の4,000人よりも10倍以上、数10倍が見込まれます。

ちなみにこれらの地域を日本に当てはめると、「高汚染地域」は福井県、京都府、大阪府を合わせた面積(約1万平方キロ)に匹敵し、「汚染地域」は本州の約60%(約14.5平方キロ)にもなります。問題は死者が何人かということに収斂させるのではなくて、事故による社会的影響の理解が必要だということです。IAEAはチェルノブイリ原発事故の全体像を覆い隠そうとしているのです。

事故状況の公表こそがまず求められる

原子炉事故による社会的影響を理解しないと、国民保護法によって、テロなどによる原子炉攻撃を理由に、住民避難訓練に参加させられることになります。

11月27日、国民保護法制定後初めて福井県美浜町で実施された「実動訓練」は、関電・美浜原発が国籍不明の10数名によるテロ集団から迫撃砲攻撃を受け、原子炉が一部損傷し放射能漏れの恐れがある、という想定の下で行われました。敦賀半島一帯が警戒区域に設定され、自衛隊の出動要請と原発から3キロ以内の住民が避難させられました。しかし損傷の状況は秘密にされたまま、したがって放射能漏がどれほど漏れるかも不明ななかで、住民に恐怖心を広げ、国民統制の流れを作っていこうとするものです。

事故であれテロ攻撃であれ、原子炉が損傷した場合、まず住民は被害の状況を知る権利があります。住民は被害の状況によってどこまで逃げたらいいのか、自主的に判断する権利があります。事故状況の公表こそ、これまで多くの原発事故と電力会社の事故隠しを体験してきた、住民の要求なのです。事故であれテロ攻撃であれ、原子炉の損傷という事態は絶対に避けなければなりません。今回想定のような迫撃砲攻撃は、国の関与なしには起こりえない事態で、したがって日本政府の外交政策がまず問題にされるべきです。

ミサイル防衛は原発を守らない

一方、配備が計画されているミサイル防衛には原発を守る計画は存在していません。もちろん配備されたとしても、うまく機能する保障は存在しませんが。

防衛庁は地対空誘導ミサイル・パトリオット(PAC-3)を2010年までに、第1高射群(本部・埼玉県入間)、教育訓練部隊(静岡県浜松)、第4高射群(本部・岐阜県岐阜)、第2高射群(本部・福岡県春日)に、順次4基ずつ配備。予備2基を含めて18基を配備する予定で、さらに2011年以降、第3高射群(本部・北海道千歳)、第6高射群(本部・三沢)、第5高射群(本部・那覇)などに配備を検討するとしています(05.10.10共同通信)。

このパトリオットは、同じく防衛庁が進めているイージス艦4隻に配備のスタンダードミサイル・3(SM3)で、まず攻撃してきたミサイルを迎撃し、撃ち漏らしたミサイルをパトリオットで迎撃するのです(詳細は被爆60周年原水禁世界大会パンフなど参照)。

しかし、この2段構えでも、迎撃率はきわめて悪く、石破茂元防衛庁長官でさえ迎撃率60%と述べていますが、怪しいものです)。さらにパトリオットの最大の問題点は射程がきわめて短く(防衛庁は明らかにしていませんが、大体15〜30q)、いったいどこを守るのか、首都圏さえ防衛できないのではと、疑問をもちます。当然、地方の原発防衛など不可能です。

2006年、私たちの課題はあまりにも多いのです。

(W)