出版物原水禁ニュース
2006.2 号 

東北アジアの平和に向けた日本政府の政策と課題

〜六カ国協議の進展と非核兵器地帯の実現〜

米政府の対応と北朝鮮の要求

05年9月19日に発表された6ヵ国協議「共同声明」では、地域の平和に向けた重要な合意がなされました。ここでは、(1) 北朝鮮がすべての核兵器と核計画を放棄しNPTとIAEAの保障措置へ復帰する一方で、北朝鮮の求める原子力の平和利用の要求を尊重し適当な時期に軽水炉提供で議論すること、(2) 米国が朝鮮半島で核兵器を持たず、北朝鮮を核兵器や通常兵器で攻撃、侵略の意図のないこと、米朝は相互の主権を尊重し、平和的共存、関係正常化の措置をとることが謳われました。しかしこの声明実施の具体的プロセスを巡り、以降の協議は暗礁に乗り上げ再び緊張が高まっています(下記参照)。

〈9月以降の6ヵ国協議の流れ〉2005年9月・共同声明採択⇒それまでの失望から歓迎ムードへ、10月・米国:正常化プロセスを話し合うための訪朝、寧辺の原子炉稼動凍結を条件に挙げる。北朝鮮:米国が軽水炉提供を約束すればNPTとIAEAへの復帰に動くと表明⇒米国が拒否、11月・北朝鮮:米国による「新たな経済制裁」を問題視、12月・韓国:済州島で非公式会合の開催を打診⇒北朝鮮の拒絶

米国の東アジア軍事戦略と緊張

さらに2006年1月11日には米国防総省の諮問機関・国防科学委員会のウィリアム・シュナイダー委員長が、「米国は6ヵ国協議による問題解決の道を提供したが、北朝鮮の過去の非協調的な姿勢を考えると米国には別の外交的な手段も必要だ。追加的な制裁の可能性は選択肢として残っている」と語ったことが伝えられました(毎日新聞1月13日)。

ご存知の通り、米国は北東アジアから中東の地域を安全保障環境上の「不安定の弧」と称し05年10月29日、米軍再編計画(中間報告)を、また10月28日には横須賀への原子力空母配備計画を発表しました。これらの狙いは中国や北朝鮮をにらんだ武装強化であり、地域の緊張をますます増大させるものです。6ヵ国協議という平和的対話の一方で、東アジアにおける米国の軍事的威嚇・攻撃体制ならびにこれに対する日本の協働体制が強化されつつある現状なのです。

東北アジアの平和確立に向けた日本の課題

東北アジアの平和の確保・発展は、現在の日本の軍事体制拡大や特に憲法9条の改憲などの動きの重要な鍵と言えるでしょう。特に地域の緊張の根底にもっとも大きな要因としてあるのが、核兵器に起因する相互の脅威感と言えます。北朝鮮のこうした脅威に対し、どのようにして東北アジアの平和が軍縮という観点から守られるかというイメージを抱くことが重要ではないでしょうか。

 地域での将来的な軍事衝突を生まないために、6ヵ国協議での地域的緊張の平和的解決に向けて、地域の平和・非核化への日本政府によるイニシアティブが必須です。にもかかわらず、6ヵ国協議などの場でこれに向けた日本政府による積極的な発言や役割が見られないのは一体どういうことなのでしょうか。日本政府は一部の報道によると米国が日本へ核抑止力を維持するよう米国に要請していたという話も聞きます(共同通信2003年10月30日)。

東北アジア地域の平和・非核化に向けて、政策レベルとしては、日本政府が核兵器の脅威に対する政治的な平和・軍縮的観点からのオルタナティブ(代替案)として、非核兵器地帯の設立などを6ヵ国協議の場で提案していくべきです。非核兵器地帯はすでに世界の4地域(ラテンアメリカおよびカリブ、南太平洋、東南アジア、アフリカ)で国際条約によって設立しています。非核兵器地帯では主に、(1) 核兵器の不存在・禁止、(2) 消極的な安全の保障(地域に対して核保有国による核攻撃の威嚇の禁止)、(3) 条約遵守機構の設置が約束されます。これまで核不拡散防止条約(NPT)でも繰り返しその拡大・強化が呼びかけられてきました。日本政府は「消極的な安全の保障」や東北アジアでの非核兵器地帯構想の設立について6ヵ国協議や国連の場を通じて積極的に提案していくべきです。

さらに政策レベルでの実現に向けて、市民および平和運動レベルにおいて、非核兵器地帯の実現に向けた意識拡大を図り、日韓を中心とした東北アジアでの軍縮・平和協力をますます推進することが喫緊の課題です。

(W)