出版物原水禁ニュース
2006.3 号 

イラン・ナタンツのウラン濃縮施設と核拡散

イランのウラン濃縮

IAEAの封印をはずし、ウラン濃縮のうごきで国際社会の注目が集まっているイランのウラン濃縮施設ですが、基本的な問題点は何かをまとめてみます。

イランは1958年にIAEAに加盟、1970年にはNPTを批准しています。その間、67年には米国が研究用小型原子炉(熱出力5MW、燃料濃縮度93%)を提供。また、74年から独クラフトヴェルク・ユニオン社(現ジーメンス発電事業部)がブシェールで原発2基の建設開始、79年のイラン革命(ホメイニ師は、原子力を「反イスラム的」とした)、80〜88年イラン・イラク戦争でイラク戦闘機による爆撃を受けるなどして中断。95年、代わりにロシア製の原子炉1基を完成させる契約(約8億ドル)を締結し、今年運転開始予定という紆余曲折した過程をたどっています。

2002年8月、イランの反体制組織(イラン抵抗全国会議)が、少なくとも2ヵ所(アラク、ナタンツ)で核兵器開発計画を進めていると発表して核開発問題が浮上。2003年2月IAEA事務局長がイラン入りし、イラン側は、ナタンツの二つの濃縮プラントとアラクの重水プラントとについてIAEAに説明、1991年にウランを輸入したことも認めました。それ以来3年間、危機を防ごうという外交努力やIAEAの査察などが行われてきました。エルバラダイ事務局長は今年1月12日ニューズウィーク誌のインタビューで「過去3年の間、私たちはイランで集中的な検証作業を行っていますが、3年たってもまだ、核計画が平和利用としての性質のものか、判断を下すことができる立場にありません」と語っています。

1月10日にウラン濃縮の準備に着手したことを受けて、外交交渉の中心だったEU3ヵ国(英仏独)はIAEA緊急理事会にイラン核問題を国連安全保障理事会に付託するよう求める決議案を出し、2月4日採択されました。慎重姿勢のロシア、中国も米英仏独と合意。イラン核問題は初めて安保理で議論されることになります(北朝鮮核問題は1993年と94年、2003年に安保理に付託、制裁発動はなし)。

経済制裁の論議も左右するとみられる、3月6日のIAEA定例理事会に提出される予定のエルバラダイ事務局長の報告書は、イランとの約束を理由に、緊急理事会で提出を見合わせたものです。1ヵ月の間、ロシアに濃縮工程を移管するなどの外交決着の可能性を残した形です。

イランはIAEAの追加議定書の暫定適用を打ち切り、抜き打ち査察を受け入れないことも決め、IAEAに通告しました。しかし、NPT加盟国の義務である保障措置協定はIAEA監視下で順守していると主張できる立場です。

問題の根本には、NPT第4条で認められている「原子力の平和利用」があります。米・露・独などの各国もそれに従って技術・設備などを提供したわけです。

米国と旧ソ連以外、核兵器の開発をした国はすべて原子力エネルギー計画の一環という名目で核開発を行ってきています。

62年頃明らかになった中国の核兵器開発では、米国は、中国を先制攻撃して核施設を破壊するという計画をたてました。その当時の米国政府内の議論が公開されていますが、中国の核施設に、通常兵器で攻撃するか、核で攻撃するか、破壊工作、経済制裁などあらゆるオプションがあり、インドに核兵器を持たせて牽制しようというものまでありました。実際にはそんな無謀な計画の代わりに、核拡散防止条約(NPT)の締結が実現されたのが歴史の教訓です。しかし、ブッシュ政権下では、40年前の中国の核開発時と同じように、イランに対する破壊工作、空爆、核先制攻撃が議論されています。

一方、イランでは2005年6月の選挙で、現実派のハタミ大統領から、強硬派のアハマディネジャド新大統領に交代。8月に「EUとの半年間の交渉の期限は終わりました。凍結していたウラン濃縮作業を再開する」と宣言、濃縮前の工程であるウラン転換を再開しました。さらに、「地図から消し去るべきだ」などとイスラエルを非難する発言を繰り返すなど強硬姿勢を示しています。

ウラン濃縮の能力については、米国のNGO「科学・国際安全保障研究所(ISIS)」は、最悪の場合、2009年にイランは核兵器を一つ持つことになると分析しています。

核拡散と六ヶ所再処理

日本政府・外務省は第3回アジア不拡散協議を2月13日開催し、「イランの核問題など、国際社会の重大関心事項について認識の共有を図る……これまでの不拡散体制を一層強化するための取り組みのうち、過去2回の協議で議題となった国際原子力機関(IAEA)追加議定書…」などを議論した模様ですが、イランの原子力開発に口実を与えるような核政策をとる日本にこの問題で外交面の存在感はありません。

43トンという桁違いのプルトニウムを保有しながら、経済性のない再処理をすすめようとしている日本の原子力政策は「再処理は、実証されていない危険な計画だ。核拡散の扉を開くからだ。」と国際的批判を受けています。「日本は、核兵器に使われうる物質をさらに作るだけになってしまう再処理計画への道を進むべきではない」とアメリカのマーキー議員ら6人の下院議員から書簡を受けたばかりです。

日本は再処理稼働で核拡散新時代の扉を真っ先にあけるような核政策ではなく、世界全体の核兵器利用可能核分裂性物質──高濃縮ウランとプルトニウム──の保有量を減らすと言う世界的イニシアチブを率先してとるよう求められているのです。