出版物原水禁ニュース
2006.4 号 

カン・ジョンミンさんに聞く
─青森県は六ヶ所村の再処理稼働を中止すべき─

六ヶ所村再処理工場のアクティブ試験を目前にした3月9日から14日まで来日、青森県や経産省への要請、各地での講演をされた核問題の専門家、韓国のカン・ジョンミン博士にお話をうかがいました。

核拡散の国際懸念に対する日本政府の論理破綻

米国のマーキー下院議員をはじめとする6人の国会議員による、六ヶ所村再処理工場の核拡散に与える影響への懸念を表明する書簡に対して、政府が根拠のない返答をしています。また、青森県へも同様の無責任な説明をしていることから、今回の来日に先立ち、カン博士と、エドウィン・ライマン博士、フランク・フォン・ヒッペル博士の3人の専門家が連名で青森県知事に、プルトニウムをMOX混合物にすることで核拡散に対する抵抗性ができるという政府主張の合理的説明があるまで、六ヶ所村再処理工場の運転を開始するべきでないという書簡を送りました。

日本政府のマーキー議員や青森県への説明では、六ヶ所村で再処理をしても核不拡散性を保てるとする理由に、再処理で出てくるプルトニウムをウランとまぜてMOX混合物とすることをあげています。もう一つの理由は、平和目的のプルトニウム利用計画を持っているというものです。

核燃料再処理で生産されるプルトニウムは、単独でも、ウランとまぜてMOXにしても、IAEAの保障措置上の定義では同様に1−3週間で核兵器用部品として使うことができます。また、金属に転換しなくともそのままで核爆発装置用に使える「直接利用核物質」とも定義されています。日本政府はIAEAの保障措置を受け入れていることを日本の核物質透明性として大きく謳っていますが、そのIAEAによる定義を否定するのでしょうか?

1月に事業者が発表した、再処理で取り出されるプルトニウムの利用計画は、どの原発で使用するのかも特定できていないことや、既に保有する43トンのプルトニウムを計算に入れていないことも全く論議せずに原子力委員会が承認しました。余剰プルトニウムを持たないという国際公約を反古にする、計画とは言えない代物ですが、将来使うことにしているからよいのだと主張しているのでしょうか。いずれにしても、核拡散という国際的大問題に対して、日本政府の主張は、論理的に破綻しています。

どんどん増える日本のプルトニウム在庫量

プルトニウムを使用するのは、軽水炉16〜18機で2010年から、2012年から大間のフルMOX炉で、2009年からもんじゅの再稼働で、という無謀な計画ですが、このMOX使用がたとえ計画通りに行ったとしても、プルトニウム需給バランスを計算すると、日本は大変な量の余剰プルトニウムを抱えることになります。8kgで1発の核兵器を作れるとされるプルトニウムを、何十トンものレベルで保有することの意味を考えるべきです。今回の来日前に発表したカン・鈴木・勝田共同研究(*1)で、2020年には最低でも70トンのプルトニウム在庫量があることを明らかにしました。

青森県へは、プルトニウム使用量、在庫量についても、政府から再処理を動かす前に、具体的なグラフで説明を受けるべきだと要請しています。政府による無責任で根拠のない説明で、大量の核兵器物質を抱えて、テロリストの格好の標的となるのは、六ヶ所村なのです。

NPTの問題

NPTのかかえる最大の問題は、脱退が自由だということです。NPT加盟国は、平和利用の名目で核開発を行ない、脱退をした後その技術と保有した核物質で、核兵器が持ててしまえるのです。そのNPT体制のもと、日本が率先して再処理を行ない、核拡散への新たな扉をあけようとしていることは大変残念です。

ぜひ、青森県が今回の申し入れを検討され、日本政府の危険で根拠のない核政策の実施を延期されるように期待しています。

姜政敏(カン・ジョンミン)博士プロフィール

核問題アナリスト 1965年生まれ

ソウル大学原子力工学学士・修士号、東京大学原子力工学博士号

1998-2000年 プリンストン大学研究員

ピーター・ヘイズの主宰する国際的研究集団ノーチラス研究所の研究員

韓国「大統領持続的発展委員会」原子力問題諮問委員 論文多数。

最近では、プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授との共同論文で、米国で提唱されている「核拡 散抵抗性」再処理技術が実は「抵抗性」が高くないことを分析している。(「科学と世界的安全保障」誌。)


*1: Draft, Feb. 18, 2006 INTERNATIONAL PANEL ON FISSILE MATERIAL (IPFM)
Civilian Fuel Cycle and Spent Fuel Management Issue
Japan and South Korea
Tadahiro Katsuta , Jungming Kang , Tatsujiro Suzuki