出版物原水禁ニュース
2006.6 号 

入市ヒバクシャを含め9人全員の原爆症を認定
画期的な判決、原因確率による判断を批判

国はヒバクシャ政策の根本的な転換を

原告9人全員の勝訴

5月12日、原爆症認定申請を却下された京都、大阪、兵庫のヒバクシャ9人が、却下処分取り消しを求めていた訴訟の判決が大阪地裁であり、西川知一郎裁判長は全員に認定却下取り消しの判決を出しました。

勝訴した原告は次の方々です(km数は爆心地からの距離です)。

大阪地裁の判決が画期的なのは、現在の認定制度を根本的に批判していることです。2000年に最高裁が爆心地からの距離でヒバク放射線量を量る推定方式を否定したことにより、国は01年に新しい認定基準を定めました。

その基準を簡単に述べますと、それまでの推定方式に性別や年齢、病気ごとの放射線による影響のパーセンテージ(これを原因確率といいます)を算出します。そして原因確率が50%以上の申請は原爆症としてほぼ認定し、確率10%未満の申請はすべて却下してきたのです。

今回大阪地裁で勝訴した9人は、全員が「原因確率」が10%未満でした。

判決は、「放射線の人体に与える影響については、詳細が科学的に解明されているとはいい難い状況にあり、……放射線被曝による人体への影響に関する統計的、疫学的及び医学的知見を踏まえつつ、申請者の被爆前の生活状況、健康状態、被爆状況、被爆後の行動経過、活動内容、生活環境、被爆直後に発生した症状の有無、内容や程度、被爆後の生活状況、健康状態、疾病の発症経過や病態、それ以外の疾病の有無などを全体的、総合的に考慮して……申請に係る疾病の発生を招来した関係を……経験則に照らして判断すべきであり」「審査の方針の定める原爆放射線の被曝線量並びに原因確率及びシキイ値は、放射線起因性を検討するに際しての考慮要素の一つとして、他の考慮要素との相関関係においてこれを評価し、斟酌すべきであって、審査の方針で定めるとおり、機械的に適用して当該申請者の放射線起因性を判断することは、相当でないというべきである」と述べています。

つまりヒバクシャの原爆症認定申請は、被爆当時の状況やその後の疾病の発症歴などを考慮して判断すべきであると、まさにヒバクシャが切に求めていたことを判決で明らかにしたといえます。

判決直後

厚生労働省はヒバクシャ政策の根本的転換を

これほど詳細に国の認定制度を批判した判決は初めてです。老齢化したヒバクシャのことを考えるなら、国は直ちに認定判断のあり方を根本的に改めるべきでしょう。これまで認定申請を却下されたヒバクシャは、裁判という手段によってしか、原爆症と認定されてきませんでした。私たちはこうした状況を根本的に変えなければなりません。

そしていま、多くの在韓ヒバクシャや在外ヒバクシャが、日本在住ヒバクシャと同じ対応を求めて裁判を闘っていることを忘れてはなりません。

さまざまな障壁を設けて、ヒバクシャ救済を閉ざしてきた国は、とくに在外ヒバクシャに対しては、一層強い差別性をむきだしにしています。この判決を契機に国に政策の根本的な転換を迫りましょう。


(W)