出版物原水禁ニュース
2006.6 号 

緊迫するイラン情勢
米国のイラン軍事攻撃の危険

世界は大乱の時代を迎えるのか

イランのウラン濃縮と安保理

イランのウラン濃縮をめぐって世界で緊張が高まっています。イランは今年2月11日に中部のナタンツでウラン試験を開始し、4月11日にはアハマディネジャド大統領が164基の遠心分離器を連結した「カスケード」で3.5%の低濃縮ウランの製造に成功したと発表しました。

イランはNPT(核不拡散条約)に加盟し、IAEA(国際原子力機構)にも加盟していて、このためNPT条約第4条によって、ウラン濃縮や原子力発電などは認められています。現にペルシャ湾岸・プシェールでロシアの協力で軽水炉建設が進んでいます。しかし秘密裏にウラン濃縮を進めようとしていたこと、遠心分離器をパキスタン・カーン博士の「核の闇市場」から調達していたことなどが明らかとなり、イランは核武装を意図しているのではとの疑いが高まりました。

このためIAEAはウラン濃縮停止を強く求め、イランは、核武装を意図していない、NPTによる権利としてウラン濃縮をしようとしているだけだと主張し、結局、国連安保理に判断が求められたのです。

国連安保理は3月29日に、イランに30日以内にウラン濃縮の停止を求める決議を採択しましたが、イランは反発し、4月11日の発表になったのです。

こうした事態のなか、米、英、仏を中心に制裁を含む新たな安保理決議の話が進んでいますが、中・ロが反対していて、どのように展開になるかは不透明です。

地中貫通核爆弾でイランを空爆か?

そしてにわかに現実味をもって語られているのが、米国によるイラン空爆です。とくに4月8日の米誌ニューヨーカー電子版に、セイモア・ハーシュ記者が「ブッシュ政権はすでに特殊部隊をイランに潜入させ、軍事標的の選定に入っている。攻撃には地中貫通核爆弾の使用が検討されている」という衝撃的な内容の記事が掲載され、世界に緊張が走りました。

イラン中部・ナタンツのウラン濃縮施設は、地下約23メートルで厚いコンクリートに覆われていて、これを破壊するとしたら、米軍が持っている唯一の地中貫通核爆弾・B―61―11しかありません。

しかしB―61―11の貫通力は6メートル以内で、この核爆弾を投下した場合、地下6メートル以内で核爆発を起こすため、外部に漏れ出る放射能汚染はものすごい量になり、ウラン施設の破壊による複合的な放射能汚染もはかり知れません。また限定空爆(攻撃箇所約400)するとしても、全面戦争へと発展する可能性があり、さらに核兵器開発を阻止するために、核兵器を使うという、これほど矛盾した行動は常識的には考えられません。

ちなみに、イランが高濃縮ウランを製造するには、さらに大量の遠心分離器を連結する必要があります。

ネオコンとブッシュ・ドクトリン改訂版

それでも米国によるイラン攻撃説が一定の信憑性をもつのは、米政府はイランの核武装を固く信じているだけでなく、イランの核武装は許せないと考える人たちが、米国内に多数いること。さらに圧倒的な軍事力が世界を制すると考えるネオコンが、なおブッシュ政権で大きな力をもっているからです。

今年3月16日、米国は「米国の国家安全保障戦略」(ブッシュ・ドクトリン)の改定版を発表しました。02年9月発表のブッシュ・ドクトリンで明らかにした「大量破壊兵器で米国を攻撃する恐れのある国などに、自衛権行使のため先制攻撃する権利がある、先制攻撃には核兵器も使用しうる」とした考えはそのままに、改訂版ブッシュ・ドクトリンは、「イランは20年にわたって核計画を秘匿してきた。テロを支援し、イスラエルの脅威となり、中東和平を妨害し、イラクの民主主義を損ねている」「イランは米国にとって最大の脅威」と激しく非難しています。

NPT体制は崩壊寸前

米国は今年3月2日、インドに原子力発電の技術提供をすることで合意しました。インドはNPTに未加盟なまま核武装路線を歩んでおり、平和利用に限定するとはいえ、インドに技術提供することは、今後インドの核兵器増強を公然と認めることを意味します。

米国はこれまでイスラエルの核武装に対して沈黙を通してきました。そして今回の米印合意です。米国のこのような核兵器に対する二重基準こそが、イランを反発させる大きな一因になっているのです。

米国は核拡散防止をNPTによらず、有志連合によって、しかも力で阻止しようとしています。それはNPT体制を崩壊させるだけです。広島・長崎の体験をもつ日本は、米国の危険な動きを強く批判しなければなりません。いま日本の行動が求められているのです。


(W)