出版物原水禁ニュース
2006.7 号 

放射線の食品照射拡大の動き
消費者から強い反対運動

2005年10月に内閣府の原子力委員会が決定した「原子力政策大綱」で焦点となったのは、核燃料サイクルやプルトニウム利用の問題でしたが、もうひとつ、私たちの食卓にとって大きな問題についても取り上げられました。それが、「食品照射」というものです。食品に放射線をあてて、殺菌や殺虫処理に利用したり、出芽を止める作用を働かせる加工技術です。

 一見、新しい技術のように見えますが、日本でもすでに1970年代から一部(唯一、北海道・士幌農協におけるジャガイモの芽止めに利用)で実施されているものです。このたび、原子力委員会はこれを大幅に認めようという方向を打ち出しました。これに対して、消費者団体などは、長年にわたって反対運動を続けてきました。いま、新たに浮上している「食品照射」問題についてまとめました。

原子力委員会が急ピッチで推進

 原子力委員会は昨年12月、内部に「食品照射専門部会」を設置し、急ピッチで審議を進めています。推進側からは、「放射線利用は工業用、医療用などに幅広く使われてきた。食品照射は国際的に認知されている方法だが、日本では認知が進んでいないのは、消費者などの理解不足からだ」としています。そして、「コバルト60などのガンマ線を食品に照射すると、殺菌、殺虫、発芽防止、病原菌の殺菌によって、食品の品質保持を可能にする。熱処理をせずに殺菌でき風味が変わらない。薬剤によるくん蒸の代わりに使えるので環境にも良い」とメリットを強調しています。

 また、安全性についても、1980年にFAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、IAEA(国際原子力機関)の合同会議で「10キログレイ(kGy)以下で照射された食品に毒性的な危険は認められない」とした結論を用いて、安全性を強調しています。

動物実験で異常が発見される

 しかし、この問題に詳しい里見宏さん(食品照射ネットワーク代表、公衆衛生学博士)は、「IAEAなどの安全性の結論は、実験による根拠が示されていないものだ。日本の国立衛生研究所が行った10キログレイ以下で照射された餌を食べたマウスの実験でも、奇形や卵巣異常、死亡率の増加が報告されている」として、安全とするのは誤りだと指摘しています。

 また、原子力委員会食品照射専門部会に参考人として出席した日本消費者連盟の富山洋子代表運営委員は、「消費者にとって受け入れがたいものである」として、以下のような理由を挙げています。

 第1には、照射食品は安全ではないということです。たとえば、照射された食品が異臭をもつ場合がありますが、なぜ臭いが変わっていくのか解明できていません。照射することで新しい物質ができるといわれながら、その研究は進んでいません。ドイツの研究機関で生成物質のひとつである2−ドデシルシクロブタンをラットに与えたところ、細胞内の遺伝子を傷つけると報告されています。

 第2に、食品が照射されているかどうかを検知する技術が確立していないことです。現在、日本では照射食品の輸入は認められていませんが、違法照射された食品が輸入されても取り締まることができないのが現状です。これ以上、その危険性を拡大することは問題です。

放射能汚染や使用済み廃棄物も問題に

 第3には、消費者に何らメリットがないことです。食料の腐敗を防ぐと言われていますが、照射されたジャガイモは放射線被曝のため、菌に対する抵抗力が落ちて逆に腐りが増えています。また、食品業界ではコストのかかる照射よりも進んだ食品保持技術がすでに確立されています。

 第4には、原子力の技術を食品に用いる問題です。照射施設がもたらす放射能汚染、そこで働く人々の被曝、また、使用済みの放射性廃棄物の処理など新たな問題が派生します。

 こうしたことから、食品照射を推進しようとするのは、原子力産業界と海外からの輸入などを扱う一部の流通業者、さらにはアメリカなどの食料輸出国の圧力などによるものです。平和フォーラムは、消費者団体や原発問題に取り組む団体などとともに、「照射食品反対連絡会(仮称)」を立ち上げて、取り組みを進めることにしています。