出版物原水禁ニュース
2006.8 号 

被爆61周年原水禁世界大会を前に
テポドン発射を理由にしたMD前倒しに反対しよう
6ヵ国協議再開こそ解決の道

テポドン2号発射で6ヵ国協議は?

7月5日未明、朝鮮民主主義人民共和国(以下・北朝鮮)はテポドン2号1発を含む7発の弾道ミサイルを発射しました。ただテポドン2号を含めたすべてのミサイルは、意図的かどうか、日本海に着弾しました。

この状況を受け、日本政府は北朝鮮貨客船「万景峰92」号の半年間の入港禁止の措置をとりました。

日米だけでなく、中国、韓国もミサイル発射の自制を求めていた中での発射で、今後、国連安保理協議を含め、国際社会の対応がどう反応するのか、7月5日時点では明らかではありません。

とくに中国が、7月中に6ヵ国協議・非公式会合を開くよう各国に打診していましたが、肝心の6ヵ国協議はどうなるのか? など、多くの不透明な課題が存在しています。

ただ、テポドン2号発射準備の状況を利用して進められていた日米のミサイル防衛(MD)は、一層加速されるのは明らかで、私たちの運動も厳しくなります。

ミサイル防衛推進の好機とする日米

昨年11月以降の6ヵ国協議中断状態のなかで、北朝鮮外務省は6月1日、6ヵ国協議・米主席代表のヒル国務次官補を招請し、米朝直接対話を求めましたが、米国は拒否しました。

この招待と前後して、北朝鮮は長距離弾道ミサイル・テポドン2号を発射台に設置しました。

テポドン2号は、燃料を噴射するブースターの上に中距離弾道ミサイル・ノドンを乗せた2段ロケット式の長距離弾道ミサイルで、射程は約3,500から6,000kmと推測されていて、米国のアラスカまで到達します。

米国はテポドン2号の発射配備に対応して、ただちにミサイル防衛システムによる迎撃を示唆しました。アラスカとカリフォルニアに配備している地上発射型迎撃ミサイル11基を「試験モード」から「実戦モード」に切り替え、さらにイージス艦2隻も6月下旬から日本海に展開しています。

またミサイル発射探知のため、沖縄に配備されている電子偵察機「RC135S」(コブラボール)による監視飛行も始めました。さらに航空自衛隊車力分屯基地(青森県つがる市)に移動式の「Xバンド・レーダー」を配備しました。この「Xバンド・レーダー」は、5月1日に日米が合意した在日米軍再編のなかで、もっとも配備が急がれていたもので、この配備は、世界で最初となります。「Xバンド・レーダー」の情報は、当然自衛隊と共有されます。

日本も早速、イージス艦や電子戦機・YS11EP3などを展開させるとともに、陸海空3自衛隊の統合運用も始まっています。

米軍はさらに弾道ミサイル迎撃能力が最も高いといわれるイージス巡洋艦「シャイロー」を8月に横須賀基地に配備し、地対空誘導ミサイルPAC3を、年内に嘉手納基地へ配備すると発表しています。

つまり米軍、自衛隊ともすっかり戦闘モードに入っているだけでなく、日米ミサイル防衛体制の構築を前倒しで進めてきたのです。

昨年9月の6ヵ国協議共同声明こそ、今後の方向

米国では6月22日付けのワシントン・ポスト紙にペリー元国防長官、カーター元国防次官補が連名で、「6ヵ国協議は事実上崩壊し、外交努力は失敗した。北朝鮮が発射準備を進めるなら、米国の安全のため、ミサイル発射基地を先制攻撃すべきだ」との意見を寄稿し、全米に大きな波紋を広げました。

チェイニー副大統領やハドリー大統領補佐官らは、空爆論に否定的で、現時点では外交努力による解決を目指すことを確認したそうですが、米国内には、6ヵ国協議が行き詰まっている間に、米国まで届く弾道ミサイルを北朝鮮が開発していることに不満が渦巻いていると伝えられます(エコノミスト、7月11日号、吉田弘之・毎日新聞北米総局長)。

一方米議会では、米朝2国間協議を求める論調も強まっていました(6月25日、共同)。

中国の温家宝首相が6月28日、テポドン2号の発射は「地域の緊張を高め、北朝鮮の核問題を一層難しくする」と自制をうながす一方、中国は、7月中に6ヵ国協議・非公式会合を各国に打診をしていました。テポドン発射は、中国の努力を皆無にしてしまうのでしょうか。しかし、国連安保理でなんらかの制裁を科したとしても、解決にはなりません。

北朝鮮核問題の解決は、昨年9月の6ヵ国協議共同声明(前号ニュース参照)による方向しか、解決の道はないでしょう。共同声明の内容をどう実現していくかが重要なのです。その意味で6ヵ国協議再開だけが事態を解決できるのです。