出版物原水禁ニュース
2006.9 号 

原水禁世界大会国際会議(福岡)海外ゲストの発言から
東北アジアの平和・非核化と安全保障をどう創り出すか

被爆61周年世界大会の初日8月3日、福岡市・アクロス福岡で「東北アジアの安全保障と非核地帯化」をテーマに原水禁世界大会・国際会議が開催されました。ここに紹介するのは、海外ゲスト3人の発言要旨です。会議のキーノート・スピーチ、パネラーの川崎哲さん(ピースボート)の発言など、詳細は「大会報告集」をお読みください。

アメリカの核兵器政策と非核アジア

ポール・マーティン

ポール・マーティン(米・ピース・アクション)

ピース・アクションは、米国内に100の支部をもつ米国内最大の平和組織です。

世界はヒロシマやナガサキの教訓から学ぶことができていません。未だに米国には12,000の核兵器があり、ロシアは21,000もの核弾頭を保有しています。多くの核兵器は、日本に落としたものより20倍以上の核爆発力をもち、数分以内に打ち上げ可能な一触即発の警戒態勢にあり、結果として不慮の発射のリスクもあるのです。他の国でも核軍備に固執し続けています。英国とイスラエルはそれぞれ200発、フランスと中国はそれぞれ500発、インドは50発を越える核弾頭を保有しています。パキスタンは約25発、北朝鮮はおそらく2発〜10発分の核兵器物質を持っています。

米国とロシアは2002年に戦略攻撃能力削減に関する条約(モスクワ条約)に調印していますが、具体的な核兵器削減の証拠が見えません。ブッシュ政権の「核態勢見直し」では、新しく「使える核兵器」の開発、核兵器を保持していない国への核兵器先制使用や、核実験の準備期間の削減などを要求していますが、設定より、爆発力が10%でも弱いか強ければ「信頼性がない」と決め付けて、核兵器を刷新・再設計しようとしています。米国は新しい核兵器の実験を行うかも知れません。

アジアでは、中国とインドとパキスタンが核抑止力に強く固執しています。そして北朝鮮は核兵器保有国としては一番若い国のようです。私たちはこのような動きに執拗に反対しなくてはいけません。こうした努力は、北朝鮮の核問題という妖怪を、出てきたもとの壷に戻すことができるかもしれません。私は韓国の北朝鮮との取り組みを支持します。米国は北朝鮮と直接に交渉し、北朝鮮を孤立させる政策をやめさせないといけません。共和党議長外交委員長のリチャード・ルガーも同じことを要求しています。最後に、北朝鮮が6ヵ国協議に戻ることを支持しなくてはいけません。

また、私たちは原子力発電についても話すべきです。インド、北朝鮮、その他の国々も原発から核兵器プログラムを発展させています。18の原子炉(世界の建設中原子炉の中で70%にあたる)はアジアで作られています、その他の77の原子炉が計画中か、提案されています。 原子力は環境、経済問題以外にも、核拡散のリスクを伴うのです。ですからピース・アクションも反原発の立場です。世界はエネルギーに対する貪欲な欲望を見直し、効率性を上げて需要を減らし、再生可能エネルギーを探す必要があります。私たちはみなさんの反原発運動に感謝すると共に、それを続けられることを切望します。

平和と東北アジアの非核化

チン・ヨンジョン

チン・ヨンジョン(韓国・参与連帯)

1992年に、韓国と北朝鮮は朝鮮半島の非核化に関する共同声明を出しました。目的は、「核戦争の危機を除去する」ことと、平和と平和的統一に有利な環境を作りあげ、アジアと世界の平和と安全に貢献することです。東北アジア諸国の人々はこの地域の非核化を通じて、平和を願宣言を歓迎しています。

 しかし朝鮮半島での政治的、軍事的緊張は緩和されず、むしろ緊張が増しているのは明らかです。1994年の北朝鮮での核危機、最近のミサイル発射、韓国の米軍基地の拡大、東北アジアでの米軍の役割の変化、そして日本の六ヶ所での再処理工場建設などの例があげられます。

 日本や韓国と同じように、米国もこの東北アジアでの軍事的緊張の増大に責任があります。まず在韓米軍の戦略的柔軟性と、アジア太平洋地域の米軍の機動的作戦が、この地域の平和と安全を脅かしていることを、知っておくべきです。あの9月11日以来、米国政府は必要があれば、核兵器の使用を含む、先制攻撃の可能性があると公式に発表しました。

これは北朝鮮にとって直接的な脅威となります。これまで在韓米軍の役割は、朝鮮半島内に制限されていました。しかし米軍の機動的作戦は、在韓米軍が中国を攻撃する可能性も意味するのです。これは中国を軍事的に脅かし、中国と台湾の緊張の増大へとつながります。すでに在韓米軍はイラクへ派遣されており、イラクへ派兵された韓国軍は、イラクの米軍の指揮下にあるのです。

韓国の参与連帯は、韓国での米軍の戦略的柔軟性に対して、反対の立場を取っています。それは東北アジア諸国に、核爆弾を含む制限のない軍事競争を強い、この地域が戦争の危機に瀕するからです。

中国と日本、北朝鮮と日本、ロシアと日本、中国と台湾、北朝鮮と韓国の間の緊張関係が、急激に増すことになります。もっと言えば、韓国と日本の軍事力がこの地域の米軍に組み込まれざるを得ない。そして、米─韓─日本の軍事同盟が、この地域の最大の脅威になります。

 私たちは、国境をこえる地域の協力的安全保障の枠組みが、軍備競争よりも、平和や軍縮を強化するために作られるべきと考えます。多国間の安全保障体制が、米韓軍事同盟や日米軍事同盟にかわって提言されるべきです。この多国間の安全保障システムの中で、北朝鮮の核問題のような、地域の平和に関わる大切な問題は話し合われ、解決されるべきです。

 韓国政府と米国政府は、秘密裏に在韓米軍の再編成を合意していました。ソウルからピョンテクへと米軍基地を移動し、拡大しようとしています。ピョンテクの住民と多くの市民団体が米軍基地の拡大に強く抗議しています。いま韓国の平和運動は全て、ピョンテクの米軍基地を止めさせることに焦点をあてています。もっとピョンテクに国際的な関心が集まるべきです。

 東北アジアの平和の状況は悪くなっています。私たちはアジアの軍事的脅威を低下させ、アジアの非核化を前進させるために、市民レベルの協力を行う必要があると考えます(参与連帯は1994年に韓国内の行政、立法、経済界の監視を主目的として設立され、2004年には平和軍縮センターが設立されました)。

東北アジアにおける多国間安全協力と中国の役割

王 長勇

王 長勇(中国・人民平和と軍縮協会)

東北アジアは旧ソ連が崩壊し、冷戦の枠組みが大きく変化した以後も、依然として冷戦構造が続いている地域です。

米国はアジア太平洋地域の軍事力を強化し続け、日本とミサイル防衛を進め、米日の同盟関係を強化しています。日本は米国との軍事同盟の保護下で、軍事力を増強して国を治めるという路線を推し進め、軍事大国の地位を求めています。これは東北アジア地域の安定にマイナスの影響をもたらしてきました。

2005年9月、朝鮮半島の核問題に関する「6ヵ国協議」の第4回会議では、「共同声明」を採択し、朝鮮半島の核問題を解決する原則と方向を確定しました。北朝鮮と米国は相互に譲歩し、核問題と直接関係のある国々は、別の形の交渉を通じて、朝鮮半島の恒久的な平和システムを確立しようとしました。

しかし、「共同声明」は、ただちに朝鮮半島と東北アジア地域の平和をもたらしませんでした。米国は北朝鮮に金融制裁を行い、そのため北朝鮮は「6ヵ国協議」に復帰することを拒否しました。

とくに最近では、北朝鮮はミサイルを試射し、朝鮮半島の緊張を改めて引き起こしました。朝鮮半島の核問題を一日も早く解決するため、引き続き「6ヵ国協議」を維持して、「相互尊重・平等・協調」という精神に基づき、相違点を小さくし、コンセンサスを拡大し、信頼関係を構築し、「6ヵ国協議」の早期再開のための条件を作る必要があります。

朝鮮半島の核問題において、中国は重要な役割を果たしています。積極的に「6ヵ国協議」を促進したことは、国際社会に認められました。これからの中国は、東北アジアにおける責任を負う国家として、より一層、この地域の諸国の相互信頼を増進し、様々な問題を解決し、地域の平和と安定を促進するため引き続いて努力するでしょう。

中国は核兵器の開発問題に関して、依然として理性的な抑制的態度を保っており、核軍拡競争には参加せず、核兵器によって他国を脅迫せず、核兵器を国外に配備せず、核兵器の保有規模は一貫して限定的なレベルを保っています。

中国の核兵器は、あくまでも自衛が目的です。中国は、核兵器の先制使用による抑止政策を放棄し、核兵器の国家安全政策における役割を低下させることを呼びかけています。