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2006.9 号 

幌延町への深地層研究所はいらない!
研究施設は処分場建設の一里塚

原子力資料情報室共同代表 西尾 漠

 日本原子力研究開発機構が北海道幌延町ですすめている「幌延深地層研究計画」は、いよいよ地下施設の建設が始められてしまいました。日本原子力研究開発機構というのは、2005年10月1日、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が合体してつくられた独立行政法人です。幌延深地層研究計画はもともと核燃料サイクル開発機構が行なっていたもので、7月22日に「幌延深地層研究センター」を見学した際に尋ねたところ、職員はすべて旧核燃料サイクル開発機構当時のまま変わっていないとのことでした。

7月22日の全道集会
7月22日の全道集会
中央は筆者

 さらにもともとは、核燃料サイクル開発機構の前身である動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の計画です。1984年に明らかにされた「貯蔵工学センター」計画では、(1) 高レベル放射性廃棄物ガラス固化体(原発の使用済み燃料を再処理した後に残る廃液をガラスといっしょにステンレスの容器に固め込んだもの)の貯蔵施設 (2) TRU廃棄物(再処理工場の操業に伴って発生する廃棄物で、ウランより重い超ウラン元素=TRUをふくむ)の貯蔵施設 (3) 高レベル放射性廃棄物ガラス固化体を深い地層に処分するための研究を行なう地下研究施設(深地層試験場)(4) 同じく地上試験施設 (5) ガラス固化体が出す熱や放射線を利用する研究などの施設といったさまざまな施設の建設が企図されていました。

 しかし、反対が強く、北海道議会や周辺の町の議会でも反対決議がつづいたため、1998年2月、「貯蔵工学センター」計画を撤回し、(3) の地下研究施設のみを「幌延深地層研究所」として新たに提案したのです。

それが、現在の「幌延深地層研究センター」です。センターでの研究計画は、地上からの調査研究、坑道掘削・地下施設建設時の調査研究、地下施設での調査研究と3段階に分けて実施するとされ、2005年11月9日、地下施設の建設を始めて第2段階に入りました。といっても、掘削が始まったのは換気立坑で、主要立坑2本の掘削はこれからです。

 同じような地下研究施設は、岐阜県瑞浪市にやはり日本原子力研究開発機構が「瑞浪超深地層研究所」を建設しています。こちらは幌延と同じ2005年11月18日に主立坑の掘削がはじまりました。幌延が結晶質岩、瑞浪が花崗岩です。幌延の結晶質岩はメタンガスを含むため、事故時の避難を考えて瑞浪より1本多く立坑を掘ります。幌延も瑞浪も深地層の科学研究を目的としていますが、幌延ではさらにガラス固化体処分の研究開発も目的とされています。科学研究も処分のための基礎研究ですが、もっと直截に処分技術の信頼性向上こそが最大の目的なのだそうです。

 地下研究施設は、処分場建設の一里塚と言われます。海外諸国を見ても、地下研究施設のある地域が、多くの場合、処分場の候補地とされています。その意味では幌延は、瑞浪以上に候補地に近いと言うべきかもしれません。

 現在、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の処分候補地は、原子力環境整備機構(NUMO)によって公募が行なわれています。とはいえ、首長が手を挙げかければすぐに強い反対運動が起こり、場所によっては拒否条例までつくられて、正式な申し込みは皆無です。そこで経済産業省では、文献調査をさせてくれるだけで2億円を交付するとしていたのをさらに十数億円にかさ上げしたりして、何とか複数の申し込みをとやっきになっています。それでもだめならNUMO側から強引に申し入れをしてくるかもしれません。

 地下施設の掘削に伴って、幌延では土壌からカドミウムや砒素などを検出したのに住民に説明をしてこなかった事実が暴き出されました。そうした監視を強めることが、処分場への道も阻止する力になります。