出版物原水禁ニュース
2006.9 号 

トンデモ法「共謀罪」をめぐる攻防
臨時国会での廃案に向けて

盗聴法に反対する市民連絡会 佐藤 憲一

 第164通常国会において、「共謀罪」の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」は継続審議となりました、というより、継続審議に追い込むことができました、といったほうが正確かもしれません。2005年9月11日の総選挙で圧倒的多数を得た与党が、やろうと思えばいつでもやれた「共謀罪」の強行採決を、市民の力でさせなかったという画期的なことが起こったのです。

共謀罪はトンデモ法

 ご存じのように、「共謀罪」とは実行行為がなくても法律違反について行おうと話し合い「合意」しただけで処罰されるという現行の刑法体系を根底からくつがえすトンデモ法です。その対象も、法案第6条2の2項にある「長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪」まで含めれば、窃盗罪、消費税法から道交法、水道法、公職選挙法までの約620種類にものぼるという矛盾に満ちたものです。

 政府・法務省は、共謀罪は組織的な犯罪集団を対象とするものとしていますが、法案では対象団体を限定しておらず、市民団体、労働団体など全ての団体が対象となっています。判例では2人以上集まれば団体とされます。共謀罪は結社の自由を侵害する憲法が保障する内心、言論・表現の自由を侵す違憲の法律です。

 また、共謀罪は、その条文に「ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する」とあります。つまりスパイ・密告を奨励する内容となっているのです。さらに重要なことは、「共謀」を立証するために、悪名高き「盗聴法」(通信傍受法)を拡大しようという意図が秘められているということです。 現在実施されている令状請求による電話・FAX・メールの盗聴を日常的に行おう(行政傍受...国家公安委員会の表現)ということがもくろまれているのです。これは、警察の権限を拡大し、市民を管理・監視しようという監視社会化の招来を、そして、自由に考え議論したり政策批判をすることもできなくなってしまうという自由や人権と民主主義にとっての死を意味しています。

何が強行採決を阻止したのか

 1月20日に開会した今年の通常国会。私たち市民団体は、表現者や共謀罪に反対する超党派の国会議員と連携して国会内外で幾度となく「共謀罪の廃案を求める」集会をもちました。早くから共謀罪反対の意思表示をしていた日弁連や全国の弁護士会も声明を発し集会を開くなど活動を活発化させました。大きな転回点になったと思われるのが国際的に活動しているNGO・NPO団体が結束して声明を出すとともに「共謀罪」反対運動に取り組むようになったことです。「アムネスティ、グリーンピース、子どもと教科書全国ネット21、日本国際ボランティアセンター、ピースボート、VAWW-NET Japan、反差別国際運動日本委員会」が連名で賛同を求めた共同アピールはこう記しています。「市民の言論が守られることは、民主主義の根幹であり原則です。自由にものが言えない、活動ができない社会は民主主義を崩落させるばかりか、人権尊重を追及する国際社会の流れに逆行するものです」と。

 4月から5月にかけての時期、東京新聞をはじめとするマスコミも連日のように「共謀罪」を掲載するようになり、テレビでもニュースはもとより報道番組でも特集を組むようになりました。インターネットの世界では、「共謀罪ってなんだ?」サイトなどが、共謀罪の危険性広く伝える上で大きな役割を果たすようになりました。関連するブログも日毎に増えていきました。

 共謀罪とその危険性が少しずつ知られるようになる中、政府・与党は民主党に修正協議を呼びかけるなど、何としても法案を通そうと躍起になりました。強行採決の危機もゴールデンウィークを前にした時期、5月の中旬、6月初旬と三度訪れましたが、その都度、市民の抗議の声は法務委員をはじめとする国会議員、与党・法務省などに集中しました。野党の議員秘書は「あふれるほどFAXが来た」と語っています。その結果、通常国会中に成立をもくろんだ「共謀罪」新設法案は法務委員会での強行採決すらできず継続審議となりました。市民と議員の活動とマスコミ報道が相乗作用をもたらしたのです。圧倒的与党多数の国会で与党が重要法案と認定したものが委員会採決すらできなかったというのは希有な例かもしれません。

秋の臨時国会に向けて

 共謀罪は継続審議にはなりましたが、決して廃案になったわけではありません。秋の臨時国会で法務省・与党はまたも成立を狙ってくることと思います。通常国会の終盤、最初は歯牙にもかけなかった民主党の修正案を丸のみするとまで言い出した与党のことです。あらゆる詭弁を弄して数をかさに露骨な攻勢に出てくることは目に見えています。しかし、継続審議が確定した時期、共謀罪新設の根拠となっている「国連越境組織犯罪防止条約」には、「条約の実施は各国の国内法の原則に沿って行えばよい」という条項があり、条約の批准のために共謀罪は必要ないのではないかという疑問が出てきました。すでに批准した国々でも国内刑法の根本を変更したような国は見当りません。野党や日弁連は、批准した世界各国の国内法の制定状況を調査するなど、臨時国会を前に与党をさらに追い込む準備を進めています。私たちも、秋の臨時国会に向け、「今度こそ廃案」という意志のもと活動を活発化させていきたいと思います。

参考:共謀罪を廃案に! 盗聴法に反対する市民連絡会