出版物原水禁ニュース
2007.2 号 

【インタビュー・シリーズ】
ヒロシマの平和の心、ヒバクシャの心をつなげていきたい
─原水禁副議長・向井高志さんに聞く─

向井高志さん

【プロフィール】

原水爆禁止日本国民会議副議長・原水爆禁止広島県協議会代表委員・広島県平和運動センター議長・自治労広島県本部委員長。1948年広島県で被爆二世として生まれる。大学卒業後、三次市役所に勤務。同市職労の一員として自治労、三次地区労の運動に参加。広島の自治体労働者運動、平和運動を牽引し、2005年に現職。

──向井さんが平和運動や労働運動をはじめる原点は。

 農家の生まれで親の苦労を見ていましたし、おふくろは看護師で自治労の役員もやりましたから、自然に労働運動に入りました。平和運動も被爆者だったおふくろの影響が大きいですね。東広島にある国立療養所の看護学校の学生のときに、援助の看護隊が組まれて原爆投下後に入市被爆したんです。そのときに看た被爆した兄弟愛の話を、僕ら子どもたちに聞かせてくれて、自然に原水禁運動をするようになりました。

──お母さんは当時の広島をよく話されたんですか。

 子どものころ、被爆した兄弟や白血球が減るとできるアザのことは聞きましたが、それ以上深い印象はありません。よく話すようになったのは定年後です。いまでは学校に行って原爆や戦争はいけんという語り部を先頭になってやっています。僕にくれた「第二次世界大戦ッ戦争と平和」という原稿には、戦争に対する思いや考え、8月6日に広島の街に得体の知れない大型爆弾が投下された体験などが書かれています。

──広島はドーム前などで座り込みを続けていますが。

 僕は三次地区労の運動も長く、座り込みもずっと三次でやりました。広島では核実験抗議や戦争反対の座り込みを、広島市の他、三次、東広島、福山、尾道などで続けています。広島市では、核実験反対の座り込みは原爆で犠牲になった人たちの慰霊碑前で、イラク戦争や核保有に対する行動は戦争反対の象徴である原爆ドームの前でと意味づけて行っています。

──峠三吉さんや栗原貞子さんのヒロシマの詩は。

 栗原貞子さんの「ヒロシマというとき」は、侵略の歴史を踏まえて日本の犯罪性を訴えています。アジアに対する罪の反省なしに、ヒロシマの原爆の加害・被害の責任を問えないと追究しました。峠三吉さんの「にんげんをかえせ」はすさまじい原爆の姿から世界は核をもつべきではないとした、どちらも凄いものです。

──安倍政権の評価と私たちの運動のあり方について。

 小泉政権より右だと思います。2002年に「小型核爆弾は憲法違反ではない」と物議を醸した安倍さんが総理大臣になって、みんな核保有論を言い出しました。最近、東広島市の教員研修会で東北福祉大学の先生が「佐渡島を原爆で削れば新潟市の雪が増える」と発言したり、日本原燃の社長が「体内被曝」を「体内取り込み」に表現変更したりとの言動が増えています。2006年は原爆ドーム前で20回以上座り込み、他に3回の大きな集会、慰霊碑前の座り込みも行いました。教育基本法改悪反対では、平和センターの中国ブロックも一所懸命やり、各地で大規模な集会を行っています。

──今後の運動で連合との連携はどうなりますか。

 平和センターの方針を連合に持ち込めないときは、センター独自で取り組みます。しかし連合と連携する方向を追求しています。例えば、岩国基地機能強化反対であれば自治体も連合も協力できます。基地撤去・縮小ではありませんが、これ以上強化させない視点ですすめたことで全体が集まり、いまもスクラムが組めています。岩国集会には、はじめて旗を見る産別も参加しています。取り組めることをお互いに階段を上る作業をしなければと思います。原発問題もエネルギーを変えていく議論にすれば新たに展開できるのではないでしょうか。

──米軍再編成は、通常国会に関連法案も出ますし、政府による地方自治体説得も具体化します。岩国への訓練移転に対する取り組みの方向と決意を。

 岩国基地機能強化反対の取り組みも、予算編成という最後のつめの段階になるので、連合とともに防衛施設庁に対する要請や抗議行動を相談しています。大衆行動、集会も3月ごろにと考えています。また、自治体はおカネがないから攻められると容認論が出るので、市長頑張れという行動が必要です。とくに井原岩国市長を孤立させないようにします。どこも自治体選挙で難しいけれども平和センターはやりきりたい。あわせて民主党・社民党含めた議員団にもっと予算編成で国会論戦で追及してもらいたい。そのためにも地方からの国会要請行動を改めて行います。いま取り組むことは非常に大事です。安倍が改憲戦略を出し軍靴の足音が聞こえる状況が強まるだけに、地域で基地機能強化反対とか、ヒロシマのヒバクシャの心、平和の心を日常的に積み上げ、対政府への抗議や要請とか、野党を中心に国会の論戦をつないでいけば、国民世論が変わると思います。憲法9条は6割の人が守る気持ちがあるのですから。そういう運動を地域からぜひやりたいと思います。

閣僚等の「核保有」発言に抗議して原爆ドーム前で座り込み

閣僚等の「核保有」発言に抗議して
原爆ドーム前で座り込み(06年11月7日)

──原水禁運動の課題とめざすべき方向については。

 一つは、高齢化している被爆者の生の声を次世代に引き継ぐ語り部の取り組み。二つ目に、被爆二世運動の強化です。3月、放影研健康調査の結果を受けてもう一度課題を整理したい。三つ目は、核と人類が共存できないことをヒロシマ・ナガサキから世界に発信することです。アメリカはインドやパキスタンの核を容認し、北朝鮮も核実験を強行しました。中東にも動きがあり、日本でも核保有論が出ています。行脚してでも被爆の実相を世界に伝えなければなりません。四つ目に、非核三原則の法制化です。法制化に向けた署名を国民運動として取り組みましょう。

──北朝鮮の核実験で原水禁訪朝団を中止したことは。

 原水禁運動は、あらゆる国のあらゆる核の実験・保有・使用に絶対反対ですから、中止は当然だったと思います。問題はアメリカなど核保有国を許していることです。核実験のとき以外は抗議していませんが、抗議の意思を送る運動が必要です。8月6日のヒロシマアピールを米国政府に送ることを今年からはじめたいと思います。

──向井さんにとっての8月6日とは。

 広島では自治体を含めて黙とうする日、平和を祈る日です。8月6日、8月9日は国内にも世界にも平和のアピールを発信できる日ですね。

──公的サービスの解体・民営化に、自治労や公務労協は公の役割の再確立する運動を進めていますが。

 保育所なら保護者、地域住民の皆さんとともに仕事を通して、考えて労働組合ができることをやれば住民との共同作業がはじまる、そんな公共サービスをつくろうと訴えています。また、攻撃のなかでたとえ民間委託されても、そこに組合を作る努力をすることが問われています。

──最後に、若い人たちへのメッセージを。

 自らの思うところについて、学習と実践をもっと胸を張ってやってほしい。そうすれば展望が開けます。ぶつかって物事を考えることが大事です。

〈インタビュ─を終えて〉

 広島原水禁の代表であり、自治労の広島県本部の委員長でもある。それぞれの組織の先頭に立って、運動を引っ張っている。平和を揺るがす事件が起こるたびに、広島原爆ドーム前、慰霊碑前で座り込みをする先人達のとりくみを継承して、もう何百回座り込んだことか。現在原水禁運動も、自治労運動も転換点に立っている。とりわけ自治労運動は、自公政権との全面的対決の中で、自己改革と課題前進のための苦闘を展開している。向井さんの運動の原点は、広島である。61年前、米軍の原子爆弾によって、破壊されたまち、広島である。お母さんが被爆したという。核兵器拡散への動き、米軍再編成の強行、憲法9条改悪への動き。いま「頑張らねば」向井さんの決意がまた固まる。

〈福山真劫〉