出版物原水禁ニュース
2007.3 号 

核不拡散体制を揺るがす米印原子力協力

米印平和原子力協力法の成立

昨年12月18日にブッシュ大統領が署名して成立した米印平和原子力協力法は、NPTの禁止する、加盟していない国への核関連輸出に対して、インドを例外として認めました。NPT(核兵器の不拡散に関する条約)を骨抜きにしかねないこの米国の国内法で、米印原子力協定実現へのステップを一つ進めたことになります。

これから両国政府は米印原子力協定の内容を交渉、締結に向かうと予想されますが、米印原子力協力の実施にいたるまでには、インドが民生用としてIAEAの保障措置下に置くと宣言している原子炉(2014年までに8基)のIAEAとの保障措置協定の締結、さらに原子力供給国グループ(NSG)の規則の改定が必要です。

NSGは、日本を含む45カ国から成り、全会の一致で決定を下すので、規則の改定は1国でも反対すればできません。NSGはもともと74年にインドが核実験を行った衝撃を受け、「平和利用」原子炉からのプルトニウムを使った核兵器生産を防ぐための国際的な枠組みとして作られたもので、NPT未加盟国への原子力関連輸出を禁止しています。日本はウィーンの国際機関日本政府代表部がNSGの事務局機能(ポイント・オブ・コンタクト)としての役割を担うなど、重要な位置を占めており、核不拡散体制の強化という日本の基本的立場を主張できる立場です。

原水禁では他の団体と協力して、この核不拡散体制を揺るがす事態に対し、米国プリンストン大学から核拡散問題の専門家、ジヤー・ミヤーン教授を1月末に招待、東京、長崎、広島で集会などを行いました。

米国の戦略

ブッシュ政権が、核不拡散体制をないがしろにしてまで米印原子力協力を進める背景には、米国の対中国世界戦略があります。インドをアジアにおけるパートナーとする米国の戦略には半世紀もの歴史があり、64年の中国の核実験後には、インドに核兵器を提供する構想までありました。インド、パキスタンの核実験のあったわずか2年後の2000年にも安全保障上のパートナーであるとの共同宣言を出しています。2004年1月には宇宙計画や高度技術、ミサイル防衛、民生用原子炉の協力に合意、05年6月には米印防衛間関係協定に合意しています。

核兵器物質生産の拡大

米印原子力協力法は核兵器物質生産を規制していません。現在ウランの不足状態にあるインドでは原子炉の出力を低くするなどしていますが、ウラン燃料の輸入が実現すれば、自国のウラン資源を核兵器用だけに使うことができるようになり、核兵器物質生産の拡大につながります。

IAEAの保障措置も、インドで運転または建設中の22基の原発のうち14基だけが対象で、そのうち6基は外国製でもともと保障措置が義務づけられいるものです。つまり、国産原子炉の8基だけを2014年までに保障措置下に置くことになっています。とくにプルトニウム生産に適した高速増殖炉は、保障措対象外です。現在、核兵器用物質の生産量は核弾頭にして年間7発分程度ですが、これを年間40−50発分程度に拡大する可能性があると見られています。

南アジアでの核軍拡競争を防ぐために

インドの現在既に保有する核兵器に加えて、さらに核兵器物質生産の拡大する可能性には、当然パキスタンの対応が予想されます。すでにムシャラフ大統領が議長を務める国家司令部(NCA)は、「最小抑止力要件を満足させるとの堅い決意を表明」しています。

書簡を外務省軍備管理軍縮課に提出
2月1日外務省で書簡を
手渡すミヤーンさん

ミヤーンさんの今回の来日に際して、印パ両国の平和運動の著名人多数が署名した、南アジアの核軍拡競争をもたらすことになる米印原子力協定をそのままの形で認めないようにと要請する書簡を持参し、総理大臣・外務大臣に提出しました。

重要なポイントは、核兵器用物質の製造停止です。核兵器用核物質生産禁止条約(カットオフ条約=FMCT)は、日本など各国が成立に努力しています。NSGでの規則変更の交渉では、最低でも、FMCTが発効するまでの、核兵器用物質の製造停止を条件にするべきです。国連安全保障理事会決議1172号も交渉で参照されるべきです。

両国が核実験を実施した1998年の6月に全会一致で承認された同決議は、インド・パキスタンに対し、「ただちにその核兵器開発計画を中止し...核兵器用の核分裂性物質のすべての生産を中止する」よう求め、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」しています。

日本政府は米印原子力協定への態度を明確にしていません。先日のインド首相来日の際に、安倍首相が今年中にインドを訪問する合意がなされています。訪印の際に米印原子力協力を容認することなどがないように市民の声を政府に届けることが必要です。地方議会で印パ核軍拡競争阻止の声を挙げるための意見書の案文などをのせてあります。ぜひ参考にしてください。