出版物原水禁ニュース
2007.5 号 

被爆二世健康影響調査公表される
改めて、国家補償に基づく援護対策を求める

全国被爆二世団体連絡協議会副会長  崎山 昇 

2月28日、放射線影響研究所(放影研、広島市・長崎市)が実施してきた被爆二世健康影響調査(二世調査)の一部について、結果が公表されました。

「発症リスクの増加の証拠は見られない」と発表

 この調査は、成人期に発症する多因子疾患(高血圧、糖尿病、高コルステロール血症、心筋梗塞、狭心症、脳卒中)の有病率と親の放射線被曝との関連性の有無を調べるために、2000年から行われてきました。対象者は、二世調査集団約77,000人から抽出した24,673人で、そのうち48.4%にあたる11,951人が参加しました。統計解析方法は、上記6疾患のうちいずれかの所見がある場合、「多因子疾患を有する」と定義し、親の被曝線量(父親、母親別)との関係を解析しました。

解析結果は、「今回の調査で得られたデータの解析では、親の放射線被曝に関連した子どもの多因子疾患を一括して見た場合に、発症リスクの増加を示す証拠は見られなかった」というものでした。その一方で、「影響はないと言い切ることは出来ない」としており、継続調査の必要性を強調しています。

調査には様々な限界や困難性が

 全国被爆二世団体連絡協議会(全国二世協)では、放影研が調査の実施を発表した1997年8月以来、この調査が国の二世に対する援護対策につながるようにと、国(旧厚生省)や放影研との協議を重ね、当事者として調査に関わってきました。今回の調査には、

  1. 対象疾患が、未解明な様々な遺伝的背景と環境因子の関与する多因子疾患であり、これら諸因子の関与する中で親の原爆放射線被曝による遺伝的影響のみを検出することが困難であること。
  2. 対象者が生存被爆者の子どものうち、遺伝的因子が関与する可能性のあるものも含めて何らかの健康上の問題をも乗りこえて成人に達した者であるという「選択的生存者」である可能性。
  3. 調査の全対象者が24,673人で、そのうち臨床調査に参加したのは約5割の11,951人であり、残りの半数の健康状況は不明であること。
  4. 親の被曝線量の算定が被爆者からの聞き取りによる情報に基づくという限界があること、さらに残留放射線による被曝線量は算入されていないこと。

など、調査に伴ういくつかの限界や困難性が存在しています。

今回の調査結果は、このような調査の限界や困難性がもたらしたものと考えられ、その解釈には、そのことを十分に認識し考慮する必要があります。

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被爆二世全国交流会では米・ノースカロライナ大
のウイング博士が講演(2月3日・長崎)

今後も継続した調査が必要

 今回の調査結果は、「被爆二世に対して原爆放射線の遺伝的影響がない」ということを示すものではありません。調査における対象者の平均年齢は48.6歳であり、今後、多因子疾患の有病率は増加することが考えられます。その点からも、被爆二世の生涯にわたって、継続した調査を行うことが重要であると考えます。

また、「原爆放射線の遺伝的影響」の解明という観点からは、さらに被爆三世への遺伝的健康影響調査の実施も必要です。そして、残留放射線による早期入市被曝や「黒い雨」による被曝の影響も未だに解明されておらず、今後の課題として残されています。

 全国二世協では、二世調査の解析結果報告にあたって、国(厚生労働省)及び放影研に対して、原爆放射線の遺伝的影響や被爆二世の健康実態を科学的に解明するため、被爆二世に対する遺伝的健康影響調査を生涯にわたって実施することや、被爆三世への調査も実施することを求めました。

また、国に対しては、被爆二世には原爆放射線の遺伝的影響はないということが科学的に解明されない限り、国家補償に基づく被爆二世への援護対策を求めていくことをあらためて表明しました。