出版物原水禁ニュース
2007.5 号 

「循環可能な緑の公共財」の活用による
国土の保全、林業・木材産業の再生を!

全林野  犬飼 米男

新緑がさわやかな季節になりました。地球温暖化などが騒がれる中、世界各地では、木材の過剰な伐採などにより森林の減少や荒廃が進んでいます。しかし、日本では、戦後植えられた人工林を中心に資源が充実しつつあるものの、採算性の悪化により生産活動が停滞し、手入れ不足による森林の荒廃が起こっています。

木材価格低迷で放置される森林

日本の森林は約4割が人工林であり、そのうち間伐が必要な4〜9齢級(16〜45年生)が約6割を占めるなど、着実な保育作業を行うことが重要となっています。しかし、長い間続いた木材価格の低迷などにより、森林所有者の施業意欲は減退し、木材生産や森林整備作業が実施されず放置される森林が増えています。不在村森林所有者(森林の所在する市町村の区域に移住していない者)の保有する森林も、約320万haと総面積の1割以上に及んでいます。

 手入れが遅れた森林では、木が混みすぎて太陽の光が地面に届かず、下草がなくなり土壌が露出し、雨水により土が流され、保水力が低下する弊害が起きてきます。木自体も、自然淘汰を待つひょろひょろの状態になり枯れ、風雪により大きな被害を受けることになります。一方、近年の気象変化による多くの台風上陸や集中豪雨で、山地災害も、03〜04年度で約3,700億円と甚大な被害額となっています。

木材活用は資源循環型社会のモデル

こうした中、昨年秋、利用可能な資源の充実、国民のニーズの多様化、需要構造の変化などを背景に「森林・林業基本計画」が見直され、木材の利用拡大による、国土の保全、林業・木材産業の再生が掲げられました。 間伐などの森林保全作業が行われれば、(1) 水源かん養、二酸化炭素吸収などの多面的機能の充実、(2) 木材供給による住宅産業などの振興、(3) 山村地域の雇用の充実、活性化、(4) 温暖化対策の目標達成への寄与、など多くの波及効果が見込まれるとともに、木材の活用は資源循環型社会のモデルとなりうるものです。

こうした政策を推し進めるためには、林業労働力の確保が不可欠ですが、林業特有の季節性、屋外労働、危険作業、賃金などの作業環境、待遇の改善などの課題が克服されていません。「緑の雇用担い手対策事業」などにより新規就労者もあるものの、05年度の国勢調査では52,000人と、5年前より15,000人減少し、60歳以上が4割を占めています。

また、木材需要が9,000万立方メートル程度で推移する中で、合板や集成材への国産材利用の増加により、2割に満たなかった用材の自給率が、05年は7年ぶりに2割に達するなど利用拡大の兆しも見えつつあります。しかし、木材が広く使用されるには、小規模な森林所有者を中心とする生産地と、消費地を結ぶ流通段階の整備も必要であり、森林状況のデータと消費地のニーズの把握による生産体制の確立が求められます。

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国産木材の利用も拡大している
(宮崎の伐採現場)

市民に恩恵をもたらす共通の財産

 日本の文化は「森と木の文化」と言われるように、温暖で雨の豊富な気候に恵まれたことにより、古くから木の資源を広く利用・活用し、木を伐り植林をする作業を繰り返すとともに、治山・治水事業により国土を守ってきた歴史を持っています。自然志向や、癒しなど、安らぎや憩いの場を求める市民の要請も高まっており、森林に目が向けられていますが、理解と参加、産業としての確立を併行して行うことが必要です。

日本の森林はこのような要請に十分応える体力を持ちつつ、行政と市民の連携による有効な活用を待っています。森林は、広く市民に恩恵をもたらす共通の貴重な財産=「循環可能な公共財」です。国土保全や地域振興からも国・自治体の政策を充実させるとともに、社会全体からの支援も必要となっています。