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2007.5 号 

「人種差別撤廃NGOネットワーク」始動
国連特別報告者の日本報告書をうけ

反差別国際運動日本委員会 小笠原純恵

「日本には人種差別が確かに存在する」と指摘

「日本社会には見えなくされ、存在をきちんと知らされてこなかった人々が確かに存在している。そのことを社会的・歴史的背景を含めて認識し、適切な方策を講じることなしに、多文化共生社会の構築はできない」ー国連人権委員会が任命した「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容に関する特別報告者」であるドゥドゥ・ディエンさんは、06年1月24日、初の日本公式訪問(05年7月)を踏まえた報告書を公表し、日本社会の問題点をこのように指摘しました。

07年2月27日に立ち上げ記念集会を開催した「人種差別撤廃NGOネットワーク」の活動は、この報告書を受けたNGOによる一連の連携・共同行動からつながっています。

ディエン報告書は、「日本には人種差別と外国人嫌悪が確かに存在する」と明言し、その影響を受けている主な集団として、ナショナル・マイノリティ(被差別部落、アイヌ民族、沖縄の人々)、日本の旧植民地出身者とその子孫、世界各地からやってきた外国人・移住労働者を挙げています。

報告書は、日本政府が人種差別の問題を公式に認め、それを撤廃する政治的意志を表明すること、差別を禁止する法律の制定、歴史教科書の見直しなどを勧告し、法的側面にとどまらず社会的・歴史的文脈にまで踏み込んで、日本における人種差別の根本的な構造を捉えた画期的なものと言えます。

日本政府は報告書に敵対姿勢

この報告書は06年9月、国連人権理事会第2会期で取り上げられ、日本政府や反差別国際運動日本委員会(IMADRーJC)やも交えて議論がなされました。その後も、同年11月の国連総会第3委員会(人権)、07年3月の人権理事会第4会期での報告でフォローアップがなされています。

報告書への日本政府の対応は、残念ながら敵対姿勢をあらわにしたものでした。外務省が国連に提出した口上書は、ディエン報告書の最も重要な部分である「日本には人種主義・人種差別が確かに存在する」という指摘への何らの返答も、勧告の履行に向けた積極的な姿勢も見られず反論に終始し、国連での議論においても同様の反論を繰り返しています。

ディエン報告書の公表をうけて、その意義と価値を守り、広めること、勧告の実現を求めること、マイノリティ間の連携を広げ「語り合い」、報告書を「語りなおす」ことをめざしたマイノリティ当事者団体・個人、ならびに人種差別の撤廃に取り組む団体・個人による連携・共同行動が着実に進められてきました。

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人種差別撤廃NGOネットワーク立ち上げ記念集会では、
マイノリティ当事者もアピール(2月)

報告書を支持する「NGO共同声明」およびマイノリティ当事者団体・NGOの「報告書解釈宣言」とも言える「ディエン特別報告者への共同公開書簡」を作成・公開し、また、日本政府に対して、ディエン報告書の勧告履行のための措置をとること、国連・人種差別撤廃委員会への次回政府報告書にその方針を反映させることなどを求める共同申し入れを行ってきました。

人種差別・人種主義・植民地主義の克服を

 人種差別撤廃NGOネットワークは、上記の連携基盤と認識のもとでのIMADRーJCの呼びかけに応えた、マイノリティ当事者団体・個人を中心とした恒常的な広いネットワークで、現在平和フォーラムを含む81団体が参加しています。

これまで、前述の日本政府「口上書」に対する独自のコメントを作成・公表し、ディエン特別報告者および国連人権理事会に提出しており、人権理事会第4会期へのディエン特別報告者の年次報告書でも、市民社会の結集を示す前向きな動きとして、人種差別撤廃ネットワークの結成が特に言及されています。

 人種差別撤廃NGOネットワークでは、日本における人種差別・人種主義・植民地主義の克服という共通課題の実現を目指し、「周縁化」・「不可視化」されてきたマイノリティ当事者の歴史と実情を示していくため、今後も連携・共同行動を進めます。

反差別国際運動日本委員会のウェブサイト