出版物原水禁ニュース
2007.6 号 

被爆62周年原水禁世界大会を前に
軍拡が進む世界 希望は6ヵ国協議の進展

原水禁専門委員 和田長久 

軍拡の世界をつくりだす日米

今年の原水禁世界大会は、世界的な軍拡が進行しつつあるという、憂慮すべき状況のなかで開催されます。

第1は米軍再編と日米軍事同盟の強化です。とりわけ日本国内で、日米両軍によって急速に進行しているミサイル防衛(MD)は、アジアでの緊張を高めています。

米軍は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射実験を前に、早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を航空自衛隊・車力分屯基地(青森県つがる市)に配備する一方、沖縄・嘉手納基地でも、パトリオットミサイル(PAC3)発射機三基、PAC2発射機15基を配備しており、今後、嘉手納弾薬庫など、合計24基のパトリオットの配備を予定しています。また2基目のXバンドレーダーも、日本海側への配備を求めています。

自衛隊では、3月30日に第1高射群本部のある入間基地(埼玉県)に日本初となるPAC3を配備し、さらに07年中に3基地(茨城・霞ヶ浦、千葉・習志野、神奈川・武山)、08年度から10年度にかけて、7基地(浜松、岐阜、三重・白山、福岡・芦屋など)に配備する予定で、11年以降も各高射群基地に配備が予定されています。1基地につき5基の発射台、1基16発のPAC3を搭載するといいます。

またスタンダードミサイルSM3が、10年度までに海自イージス艦4隻に搭載される予定です。しかし、いずれも費用が膨大な一方で、迎撃能力には大きな不安が存在しています(詳しくは6月発行予定の今年の原水禁大会パンフを参照ください)。

NPTを骨抜きにする「米印原子力協定」

第2は「米インド(印)原子力協定」の締結で、この協定が実効に移されると、NPT(核不拡散)条約は骨抜きになるといってよいでしょう。

「米印原子力協定」は06年3月に米印両国によって合意されたのですが、この合意はインドの原子炉22基のうち、14基だけを民生用とし、IAEA(国際子力機関)の保障措置(査察など)を受け入れる一方、高速増殖炉2基を含む8基は保障措置から除外した上で、米国から原子力発電などの技術提供を受けるというものです。

これは98年の印パ核実験に際して、NPT未加盟国への核技術協力を禁じた米国原子力法に違反する行為で、インドを核保有国として認め、NPT体制を空洞化させることを意味します。

しかし、合意を実効あるものにするには、IAEAと、原子力関連資・機材、技術供給国グループ(NSG=45ヵ国加盟)の全加盟国が賛成する必要があります。

このため米国は、日本に合意賛成を強く求めています。被爆国の日本が賛成すれば、全体の合意を得られやすいと考えているからでしょう。そして日本政府は賛成の方向だと伝えらますが、それは日本自らが被爆国という立場を放棄することを意味します。

高まる印パ核戦争の危険、パキスタンでプルトニウム製造

今年5月、パキスタンがプルトニウム分離のための再処理施設とプルトニウム生産用の重水炉を建設していることが明らかとなりました(5月7日、共同)。パキスタンはこれまで濃縮ウランによる核兵器だけを保有してきましたが、核兵器の小型化には、プルトニウムが必要で、そのための施設建設と考えられます。

現在でも印パ両国は、新たな核ミサイルの開発競争を行っており、パキスタンの核兵器小型化は、印パ間での核兵器使用の危険を一挙に高めます。インド、パキスタンはともにNPTには未加盟です。

6ヵ国協議の進展と北朝鮮の非核化

軍拡が進む世界で、一つの希望は、北朝鮮の核問題がようやく進展する可能性が出てきたことです。

ブッシュ政権が、今年に入って方針を転換した結果、今年2月に6ヵ国協議が再開され、「共同文書」採択という新しい展望が開かれました。現時点では、北朝鮮の凍結された資金の海外銀行への送金が実現せず、共同文書による作業は進んでいませんが、ブッシュ・米大統領の北朝鮮の核問題だけは、交渉による解決という方針によって、今後、米国の「テロ支援国家」の指定解除、「米朝国交正常化」へと、状況は大きく動く可能性が高くなってきました。

安倍政権は、拉致と核問題は切り離せないとの立場をとり続け、6ヵ国のなかで孤立する心配が出ています。私たち市民の立場から、日朝国交正常化の実現と、日本の非核3原則の法制化をもとめ、東北アジアの非核地帯化の運動を広げていくことが強く求められます。