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2007.9 号 

沖縄戦の歴史歪曲を許してはならない
 「集団自決」の高校教科書への検定意見撤回を

「ひめゆりの塔」(糸満市)

沖縄戦で犠牲になった女学生の「ひめゆりの塔」(糸満市)

沖縄戦は捨て石!

 1945年3月23日より、沖縄中部の読谷・北谷海岸沖に集結したアメリカ艦隊は、陸上に向け「鉄の暴風」と呼ばれる一斉の艦砲射撃などを行い、10万発を超える砲弾を落とし、上陸を開始しました。そうして3ヵ月にも及ぶ、日本で唯一の地上戦である「沖縄戦」が開始されました。この闘いで亡くなった戦闘員・非戦闘員は24万人を超えると言われています。

 日本軍司令部は、敗戦色の濃い戦線の中で、最後に本土決戦を計画しました。そのために沖縄を時間稼ぎの「捨て石」とする作戦を実行し、沖縄の住民を巻き添えにした持久戦を展開しました。前年に徴兵年齢を改定した日本軍は、13歳から60歳までの男子住民を徴兵し、陣地の構築などの作業に使役しました。また、男子学生を戦闘員として「鉄血勤王隊」を組織し、女子学生はひめゆり隊などの看護業務にと、多くの住民・学生が戦争に動員されていったのです。

 一方で、日本軍は1945年2月14日に、沖縄全島に対して「全県民特攻精神を発揮せよ」との訓話を発し、沖縄戦は、軍隊も住民も生死をともにして戦うという「軍官民共生共死の方針」が示されました。沖縄戦は戦闘の最初から住民の犠牲が計算されていました。

文科省、集団死への日本軍関与を否定 立ち上がる沖縄県民

沖縄戦の歴史歪曲を許さない県民大会(6月9日 那覇市)

沖縄戦の歴史歪曲を許さない県民大会(6月9日 那覇市)

文部科学省は、08年度に使用する高校歴史教科書の検定に際して、これまで記載されていた集団死・「集団自決」に関する日本軍の関与を否定し、教科書会社5社に対し、日本軍による命令・強制・誘導などの表現を「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」として、削除・修正させたことが明らかになりました。

 これに対して、県知事をはじめとして沖縄県民は「沖縄戦の実相をゆがめるもので、許し難い」と反発、県議会を含む沖縄県内のすべての地方自治体から検定意見撤回の意見書が採択されました。また、「沖縄戦の歴史歪曲を許さない! 県民大会」が開催されるなど、県民一丸となった検定意見撤回の運動が起こっています。

「鉄の暴風」の中をくぐり、九死に一生を得た沖縄県民が、いま声を上げています。沖縄戦の実相を後世に伝えていかねばならないと立ち上がっています。ガマの中で、泣き声を上げる赤子を殺し、沖縄住民が方言で話したことをもってスパイとして殺害し、陣地にすると亀甲墓から砲弾の雨の中に住民を追い出した日本兵。沖縄県民は、決して忘れていません。集団死・「集団自決」に使用されたのが日本軍の手榴弾であり、それが日本軍によって配られたことを。

歴史歪曲を、そして過ちを再び許してはならない

 日本は、再び戦争をする国へ向かって走り始めているのでしょうか。「日本軍」を聖戦遂行の皇軍として美化してはなりません。史実を後世にきちんと伝え、決して戦争を起こすことのない日本にしなくてはなりません。日本国憲法は、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力を挙げてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と、その前文の最後に記しています。

 安倍首相は、8月6日の広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式の挨拶で以下のように述べました。「今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していくことを改めてお誓い申し上げます」。それが本当に首相の偽らざる思いならば、沖縄県民を前にして、歴史教科書を前にして、言うべきことがあるに違いありません。そのことをきちんと表明し、沖縄県民の声に答える責務があります。

 戦争の実相をゆがめることなくきちんと後世に伝えていくことが、日本国憲法の求める国民の義務です。