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2007.11  

オーストラリアのウランがインドへ?
米印原子力協力による核拡散

ティルマン・ラフさん

今年8月に発表された米印原子力協力協定(米国からインドへの核燃料や核技術の輸出を認める内容)は、ブッシュ米大統領とシン・インド首相の強引な動きに対し、国内からの反発によって、早期発効の可能性は低くなりました。しかし、今後の動きは不確実で、協力協定が核不拡散条約(NPT)に反するという本質は軽視できないものです。

これを受け、8月16日にオーストラリア政府がウランをインドに輸出する計画を発表するなど、国際的に大きな影響を与えています。

オーストラリアでもウラン輸出に反対の声高まる

協力協定に対して、日本国内では自治体から、核関連輸出の国際的枠組みである原子力供給国グループ(NSG、日本を含む45ヵ国)の場で、被爆国の日本が慎重な議論を主導すべきだとの要請が相次いでいます。なかでも鹿児島県では14市町で意見書が採択されています。

10月1日には、オーストラリアから来日したIPPNW(核戦争防止国際医師会議)理事のティルマン・ラフ博士が、ウランの輸出など国際的原子力協力の問題について外務省に要請、同時にオーストラリア大使館にも反核・平和団体が抗議するなどの行動を行いました。

外務省との話し合いでラフ博士は、オーストラリア国内でインドへのウラン輸出が大きな議論になっていること、経済的にもメリットがなくウラン鉱を持つ大手資源会社も輸出を渋っていること、ハワード豪政権が国民の支持のない中で政治的に押し進めているが、年内の総選挙で政権が交代する可能性の大きいことなどが説明されました。

また、米印原子力協定が、インドに核実験や核分裂性物質生産の禁止も求めず、核施設が査察対象となるかどうかの線引きも自由にできるなど、全くNPTの基本ルールを外れていることや、この例外を認めれば、パキスタンやイスラエル、その他の核開発疑惑国などに「核兵器を持ってしまえば国際的に優遇される」というような間違ったメッセージをおくることになるなどを強調しました。

非核地帯からの核兵器開発協力はゆるされない

オーストラリアからのウラン輸出については、「NPTの締約国以外にはウランを輸出しないとの豪州のこれまでの方針を変える決定であり、国民の反対が大きい」と指摘しました。

オーストラリアは、NPTに入っていない国へのウラン輸出を禁止した南太平洋非核地帯条約の締約国です。「条約に違反して、核兵器の開発につながる協力はとても受け入れられるものではない。核不拡散についてオーストラリア政府が表明している約束と矛盾している。国際原子力機関(IAEA)などの場で、NSGガイドラインの一貫性のある適用と、核拡散防止と核軍縮の促進のための国際的な法的規則と制裁措置の強化すべき」と要請しました。

さらに、原子力計画の増強によって、風力や太陽をはじめとする環境に優しい再生可能エネルギーの開発が縮小されて、長期的なエネルギー安全保障と気候変動などに深刻な影響をもたらすことになることも指摘されました。

外務省からは、ごく基本的な核軍縮へむけた政策以外に具体的な方針などを聞くことはできませんでしたが、今後もNSGでの議論へ向けての情報交換などを約束しました。