出版物原水禁ニュース
2007.11  

大きな局面を迎える水俣病問題
私たちに問われているのは民主主義を守るか否かだ

◇◆投稿◆◇新潟県平和運動センター事務局長 高野 秀男

nigt07i29.jpg

旧昭和電工鹿瀬工場
を現地調査(新潟)

再び関心が高まる新潟水俣病を現地調査

 新潟水俣病の現地調査を9月29日に行いました。新潟水俣病の発生源である旧昭和電工鹿瀬工場(現・新潟昭和)や被害地である阿賀野川流域を視察し、患者と膝を交えて交流する催しです。毎年この時期に実施しており、今年も70人がマイクロバス3台に分乗して、事件公表から42年たった現場を見て回りました。

今年の現地調査の特徴は、行政、教育の関係者が多数参加したことです。これは新潟でも、今年4月に国や昭和電工を相手に損害賠償を求める訴訟が提起され、それとは別に今年6月に補償・救済を求める患者団体が結成されるなど、新潟水俣病が依然終わっていないことが社会化したことによります。

参加者からは「当時の状況を聞き、言葉で言い表せない心情になった。関心を持ち続けていきたい」「身体被害だけでなく偏見や差別に苦しみ、今なおその苦しみが解消されていないことに驚きと憤りを禁じえない。被害者の生の声は決して忘れない」などの感想が寄せられました。

最高裁判決を機に新たに1万7千人が認定請求

水俣病はいま、大きな局面を迎えています。きっかけは2004年10月の水俣病関西訴訟の最高裁判決です。最高裁は、行政が水俣病と認めなかった被害者を水俣病と認めました。

つまり、症状の組み合わせを必要とする現行の認定基準ではなく、一定の条件があれば被害者に共通してみられる感覚障害だけで水俣病と認めたのです。

2004年10月15日の水俣病関西訴訟の最高裁判所の判決内容(要旨)

  1. 国が1960年(昭和35年)1月以降に、「水質二法」に基づく規制権限を行使して被害の拡大防止をしなかったのは違法で、国は賠償責任を負う。
  2. 熊本県が漁業調整規則による規制権限を行使して被害の拡大防止をしなかったのは違法で、熊本県は賠償責任を負う。
  3. 国の定めた認定基準で水俣病と認められなかった原告を、水俣病と認めた高裁判決は妥当である。

これを機に、熊本・鹿児島・新潟の三県で水俣病の認定を求める被害者が続出しました。その数は9月末現在5500人で、新保健手帳交付者とあわせると1万7千人にのぼります。最高裁判決前に補償・救済された1万5千人を超えており、水俣病の奥深さと底知れぬ広がりにあらためて気付かされています。

ところが環境省は「最高裁は行政認定基準を直接否定していない」と詭弁を弄し、「司法判断と行政判断は別」と居直り続けています。その一方で、認定申請や提訴をしないことを条件に医療費を補助する「新保健手帳」の交付を行い、他方で、与党水俣病問題プロジェクトチームに「新たな救済策」をはかるよう問題を丸投げしました。

与党PTは今年4月に認定申請者らを対象にアンケート調査を行い、それをもとに7月に新たな救済策の中間案を発表しました。しかし、新たな救済策は最高裁判決をまったく考慮せず無視しています。内容も1995年の政治決着を上回るものではないとしており、それでも年内の政治決着をめざすと伝えられています。

司法判断を無視する政府、与党

このことは法治国家としてあるまじき行為であり、三権分立を自ら崩壊するものとして許されません。そもそも最高裁判決に従わない行政に第一の責めがありますが、そうした行政を正すべき役割の立法府が逆に行政とつるんで司法をないがしろにしているのです。水俣病問題は被害者の枠を超えて、この国の民主主義の瓦解を看過するのかどうか、市民に投げかけられた問題にもなっています。

こうした中、熊本・鹿児島・新潟三県の平和センターは、水俣病解決に向けて互いに連携をとることを確認し、平和フォーラムにも協力を求めています。

7月の参議院選挙の結果をうけ、まっとうな政治に対する期待とそれを実現させる我々の運動、そして世論の高まりがここでも求められています。