出版物原水禁ニュース
2007.12  

またも在外被爆者裁判で国を断罪
三菱徴用工裁判で国家賠償を初めて認める最高裁判決

在外被爆者支援連絡会 共同代表 平野 伸人

 太平洋戦争中、朝鮮半島から広島市の旧三菱重工業の工場に強制連行され、被爆した韓国人の元徴用工のうち40人が、国や三菱重工業などに計約4億4000万円の損害賠償を求めた三菱徴用工裁判の上告審判決が10月31日、最高裁でありました。最高裁は、在外被爆者への手当支給を認めなかった旧厚生省の行政通達を違法とし、国に4800万円の支払いを命じた広島高裁判決を支持し、国の敗訴が確定しました。

金順吉裁判から15年の成果

 今回の判決は、原爆被爆についてとはいえ、「国家賠償」を初めて最高裁が認めたという点では大きな意義がありました。判決の中で、「厚生省の402号通達は、在外被爆者からの被爆者健康手帳の交付や各種手当の支給申請が増大することから、その対策として、被爆者健康手帳の交付を受けても出国すれば各種手当も受けられないとの解釈を示し、在外被爆者に対して被爆者健康手帳の交付等を受けることの意義が極めて限定されたものだと認識させる意図のもとに出されたものである」としています。

最高裁判決を報じる新聞

最高裁判決を報じる新聞


 そして、在外被爆者への差別を意図したものであったことを断罪し、不法行為の損害賠償として、原告一人あたりに120万円の支払いを命じました。

 1992年7月に、今は亡き金順吉(キム・スンギル)さんが、国と三菱重工業に対して「戦争責任と戦後補償を問う裁判」を提起して15年が経過しました。金順吉裁判の問題提起は、その後、李康寧(イ・カンニョン)裁判、郭貴勲(カク・キフン)裁判、崔季撤(チェ・ゲチョル)裁判、鄭南壽(チョン・ナンスー)裁判などへと引き継がれ、在外被爆者問題について大きな進展をもたらしました。

 日本による韓国・朝鮮の植民地支配、侵略がなければ、韓国・朝鮮人被爆者は存在しなかったのです。なぜ、韓国・朝鮮人被爆者問題が存在するのかという基本的な問題提起がなされた在外被爆者裁判という意味では、金順吉裁判と広島の徴用工被爆者裁判は、大切な裁判だったといえるでしょう。

 今回の最高裁判決は、長らく在外被爆者を苦しめてきた厚生省402号通達を「違法である」とした上で、法律に基づく国家賠償を命令しました。これまでの長い在外被爆者裁判の集大成ともいえる判決でした。

強制連行・強制労働の責任は問わず

 しかし判決は、「強制連行・強制労働」については多くの戦後補償裁判と同様、原告の主張は認められず不十分なものでした。強制連行・強制労働による賠償については、時効・除斥(注1)や日韓請求権協定(注2)に基づく財産権措置法によって、その責任を問わないという判決でした。

 一方、原告たちの訴えてきた事実を認定し、国家無答責(注3)による責任の回避を否定し、強制連行時の不法行為や被爆後の放置による安全配慮義務違反、供託の無効性については認定されています。

 裁判は46人の原告により始められましたが、今や高齢や病気の為に生存者が15名となってしまいました。裁判に勝っても喜ぶべき原告はいないということが今回も起こってしまいました。原爆症認定訴訟やC型肝炎訴訟などにも共通するように、厚生労働省はいつも被害者の側に立った判断をすることはありません。今後も国の姿勢が弱者の側に立つことをわたしたちは求め続けていきます。