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2007.12  

フランスの先例に学ぶ
高速増殖炉からの撤退と再処理工場周辺の放射能汚染

マーメルさん

講演するマーメルさん
(右・10月9日,東京)

廃炉となった仏の「スーパーフェニックス」

 福井県敦賀市にある高速増殖炉(注)「もんじゅ」がナトリウム漏れ事故を起こしてから12年。もはや過去の遺物と言える存在ですが、さらに税金をつぎ込み、2008年10月に運転再開する計画になっています。

 高速増殖炉開発で世界の先頭を走っていたフランスでは、「もんじゅ」と同レベルの「フェニックス」、さらに1段階進んだ実証炉の「スーパーフェニックス」とも廃止が決定されています。この10月にフランスの下院議員(緑の党)でベルグ市長であるノエル・マーメルさんが来日し、高速増殖炉からの撤退を決めたフランスの経験を聴く会が各地で行なわれました。

「スーパーフェニックス」は、1985年に臨界(核分裂による連鎖反応が継続している状態)に達してから、97年に廃止が決まるまで様々な事故、トラブルが発生し、稼働できたのは通算してわずか4ヶ月だけです。73年に臨界に達した「フェニックス」の方も、高速増殖炉としては使えず、研究炉として延命していましたが、その運転も2008年までとなっています。

 フランスの高速増殖炉は、ラアーグにある再処理工場を動かすための言い訳として作られたものです。しかし、その合理性が無い事が実証されました。それを手本にして、同じ図式の核燃料サイクルに固執する日本の政策変更の決断能力の無さが思い知らされます。

 高速増殖炉の炉型式に関する国民議会(下院)の調査委員会のメンバーを務めたマーメルさんからは、緑の党と社会党の政策協定で、97年に成立したジョスパン政権のもとに「スーパーフェニックス」の廃炉が決まる経緯、高速増殖炉は止まっても、ラアーグでたまるプルトニウムの危険性などが報告されました。

 プルトニウムはたとえMOX(混合酸化物燃料)に加工しても、核兵器の材料ともなりうるものです。世界に広がる核拡散のリスクを増大させるとの指摘は、「余剰プルトニウムを持たない」政策を、言葉を変えるだけでごまかす日本政府に突きつけられる問題です。

市民による放射能汚染調査が必要

再処理集会で訴えるべルノランさん

再処理集会で訴える
ベルノランさん
(右・10月13日,青森)

 フランスでもう一つ、日本の核施設の手本となった再処理工場のあるラアーグの近くからは、「市民の放射能測定団体:ACRO(アクロ)」のアントワーヌ・ベルノランさんが来日。青森での「再処理とめよう!10.13全国集会」をはじめ各地で講演されました。

 ACROは独自のラボ(測定室)を持ち、放射能の測定を行って信頼できる情報を提供する市民団体です。1986年のチェルノブイリ原発事故の際に、政府からの情報が無かったため、市民の側からの信頼できる情報の必要性から設立に至った団体です。

 放射能の測定は産業廃棄物、医療廃液、ラドン調査などに及び、その測定の正確さからICRP(国際放射線防護委員会)などの国際・政府機関の作業にも参加しています。ラボにはベータ線源、ガンマ線源の測定装置や乾燥機などの設備を持ち、専門の科学者4人を含む5人の有給スタッフに25人ほどのボランティアという規模です。それでも最近力を入れている炭素14の測定には費用もかかり、採取したサンプルの測定が間に合わない状況だということです。

 アクティブ試験で放射能の放出が始まってしまった青森・六ヶ所再処理工場周辺でも、独自の信頼できる放射能汚染調査の態勢が急がれます。それにはACROのような機関と、サンプル採集など各地の協力者が必要となっています。