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2008.1  

08年 世界に広がる紛争の火種
米ロ対立、コソボ、パレスチナ
平和を求める声を大きく

米、イランを軍事攻撃か?の不安のなかで

 12月3日、米中央情報局(CIA)等の資料をもとに米国政府が「イランは03年秋から核兵器計画を停止している」との秘密報告書を公表しました。12月1日に国連安保理5常任理事国とドイツが、パリでイラン核問題に関する高官会合を開き、ウラン濃縮活動を続けるイランに対し、安保理の追加制裁決議を早期にまとめることで基本合意していましたから、この発表は国連の安保理にも大きな影響を与えるでしょう。

米ブッシュ政権は07年10月に入って、それまでライス国務長官らがとってきた「対話によるイラン核問題の解決」を変更。10月17日にはブッシュ大統領が「イランが核兵器を保有すれば、第3次世界大戦になりかねない」と発言しました。さらに10月25日にライス国務長官、ポールソン財務長官が合同記者会見し、イランの軍事組織「イラン革命防衛隊」を大量破壊兵器の拡散に関わる組織とし、また革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」をテロ支援組織に指定すると発表しました。ライス長官自らが強硬路線に大きく舵を切ったのです。

この米国の制裁追加は1979年の対イラン断交以来、最も厳しいもので、「米政界では対イラン開戦を懸念する声も起こり、米・イラン間の緊迫は新たな局面に入った」(10月26日時事通信)と伝えられました。

11月7日にサルコジ仏大統領とブッシュ米大統領が会談し、イランの制裁強化で一致したと発表。次いで11月15日、IAEA(国際原子力機構)理事会でエルバラダイ事務局長が、イランは情報開示でIAEAに一定の協力をしているとする一方で、国連安保理の制裁決議に反して、核弾頭製造につながるウラン濃縮の遠心分離器を約3,000基増設していると報告しました。

こうした動きのなかでイランでは、11月24日にアガザデ原子力庁長官が西部アラクで建設中の実験用重水炉で使用するためのウラン燃料ペレットの製造に初めて成功したと発表。11月27日には、イランのナッジャル国防相が射程2000キロの新型ミサイル「アシュラ」の開発に成功と発表しました。

9月には射程1,800キロの新型ミサイル「ガドゥル I」を公開したばかりですから、イランが核兵器計画を持っているとしたら、米国はもちろん、欧州や中東全域に大きな危惧の念を抱かせるのに十分です。

こうした流れのなかでの安保理5常任理事国とドイツの基本合意だったのです。

一般的に考えれば、米国はイラク問題で一杯で、イランを攻撃する余力はなく、またイスラエルもレバノンの急進的シーア派組織ヒズボラとの戦闘に勝利できなかったことが示すように、単独ではイランを攻撃できません。しかもイランの核施設は、地中深くに建設されていて、通常爆弾では破壊は不可能で、もし攻撃するとすれば核攻撃する以外にないのです。米国ではネオコンが復権を狙い、イラン攻撃論も根強く存在する一方、イスラエルにもイラン攻撃を主張する右派が大きな力をもっていますから、10月以降のブッシュ政権の強硬政策は、世界に緊張を与えるものでした。

多くの紛争の火種に抗して、平和への行動を

イランに関して当面の危機は回避されましたが、米国やイスラエルは、徹底した経済制裁をイランに加え、疲弊させようとしています。08年末の米大統領選が終わるまで予断を許しません。

さらに08年初頭から、いくつかの紛争の兆しが見えています。1つはセルビア・コソボ自治州の独立問題です。11月26日〜28日までオーストリアで開かれたセルビアとコソボ自治州の協議は、独立以外の選択肢はないとするコソボと、独立絶対反対のセルビアとで議論は対立したまま終わりました。

国連事務総長は交渉期限を12月10日と定めていて、住民の90%がアルバニア系住民で占めるコソボの独立宣言は時間の問題となっています。もしアルバニア系住民がセルビア系住民を迫害することが起これば、セルビアが軍事介入し、再び、凄惨な紛争となる恐れがあります。しかもコソボを米国が支援し、セルビアをロシアが支援するという状況では、事態を一層複雑にするでしょう。

12月3日のロシア下院選挙で、プーチン与党が大勝しました。東欧でのミサイル防衛(MD)施設設置で米国と対立するロシアは、プーチン大統領が11月30日に、通常兵器の上限を定めた欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止の法案に署名し、12月12日から条約の履行が停止されました。

イラクの未来に展望が見いだせない中、米ロの対立、さらに08年末の解決をめざして始まった「パレスチナ国家」樹立に向けたイスラエルとパレスチナ自治政府の交渉の行方など、世界は多くの火種を抱えています。

一方、07年12月に米国とロシアで同時実施された世論調査で、核兵器全廃に米で73%、ロシアで63%が賛成と答えるなど、平和を求める人々は多数です。私たちも平和のために08年をがんばりましょう。