出版物原水禁ニュース
2008.1  

【本の紹介】マグマ MAGMA
小説 国際エネルギー戦争
真山 仁 著

マグマ

(朝日新聞社 2006/02/07)

いまや「ハゲタカ」(ドラマ化がNHK放映)でベストセラー作家となった真山仁が、日本のエネルギーの原子力からの転換可能を示唆した小説を書いています。

 プロローグは「5年以内を目処に、日本の原子力発電所を閉鎖してほしい」とショッキングな欧米諸国の要求から話は始まります。そこには、原子力先進国が抱く、急激に進むアジアの原子力需要や原発の建設ラッシュ(核兵器工場とイコールの問題と捉えられる)への危惧と、原子力依存脱却の世界的流れがあります。これが物語の政治的バックボーンとなります。

話の縦軸には破産した地熱開発企業と、それを買い取った外資系ファンド、いわゆるハゲタカファンドの再生ビジネスの展開があり、横軸に日本を取り巻くエネルギー問題と原子力産業、原子力研究に携わる人間模様があります。

私たちが素朴に疑問に思う「なぜ、地震国日本で主力選択肢が原子力エネルギーなの?なぜ、本腰を入れてエネルギーの選択肢を増やそうとしないの?なぜ?」からはじまって、そのひとつの答えとして「使えるエネルギー源を細大漏らさず使い、化石燃料は一切使わず、原発のような放射能漏れの心配もなし。夢のようなエネルギーと騒がれても当然なのに、なぜこのエネルギーのことを知らなかったのだろう」と地熱発電を登場させます。

一方、「原発は様々な名目で莫大な補助金がつぎ込まれているが、総額も定かでなく、当然、発電単価も計算の確認すらできない。また、頻発する事故隠しと、相次ぐ事故で安全神話は崩壊。そんないい加減な状態で、日本の総電力量の3分の1以上をまかない、さらに、地球温暖化の切り札にしているのか……」などの頻繁な発言。

しかし、そこは小説です。最新のエネルギー情報をちりばめながら、彼の得意なファンドビジネス界をからませ、欧米各国、政治家の思惑や立ちはだかる行政の壁、電力会社の圧力と話を展開しつつ、知らず知らずに「原子力」は地球に優しくないエネルギーだと教えてくれます。

(石出佳子)



【ドラマ評】
松本清張 点と線

点と線

テレビ朝日 (2007/11)

コーナーの趣を変えてテレビドラマ評をします。テレビ朝日が開局50周年記念番組ということで11月24日、25日に二夜連続放送した「松本清張 点と線」について一言。

 松本清張は、「社会派推理小説」という分野を築いた「昭和の巨匠」と呼ばれ、戦後の疑獄事件のノンフィクション「日本の黒い霧」などを著したことでも知られています。映画やテレビドラマにされた作品も数多く、とくにテレビドラマでは「はずれがない」といわれ、頻繁に「松本清張スペシャル」などが放送されています。市原悦子主演で有名な「家政婦は見た!」シリーズ第1作も清張の原作です。

「点と線」は50年前、雑誌「旅」に連載された時刻表や飛行機を使ったアリバイトリックのもので、現在でいうトラベルミステリーみたいなものです。トリックに無理があることや時代のギャップから、これまでテレビ放映はされてこなかったようですが、テレビ朝日は放映前から「初テレビドラマ化」や主役級が並んだ豪華キャストを売物に大々的に宣伝しました。

 主役のベテラン刑事を演じたビートたけしの好演や、現代版へのリメイクではなく、原作の舞台である1957年当時の福岡・東京をはじめ、日本各地の街並みや駅のオープンセット、とくに当時の列車や電車、路面電車を動かしたロケーションをかなり忠実に再現したこともあって、当時を知る世代や鉄道ファンをはじめ、新聞投書でも高い評価を得ています。

 テレビドラマとしては良くできたものでしたが、残念なのは、若干の点で時代考証に粗さがあったことに加えて、清張作品の最大の特徴である「巨悪」についての迫力が欠けたことです。東京五輪に向けた環状道路建設にかかわる汚職について、原作が「××省」としているためか、実在しない「産業建設省」と設定したことも一因です。テレビ局が清張作品に依拠するなら、もっとリアルな描写が必要です。補足で言えば、「日本の黒い霧」などで示された米国による陰謀を描いた放送はできないだろうかと思います。(五十川孝)