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2008.4  

進む巡航ミサイルの合同訓練
「あたご」事故で見える日米の繋がり

SM−3を搭載していないイージス艦「あたご」

2月19日に千葉県野島崎沖で、新勝浦市漁協所属のマグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突したイージス艦「あたご」は、海上自衛隊保有艦船のなかで最大であり、またイージス艦としても世界最大級(基準排水量7,700トン、全長165メートル、全幅21メートル、最大速力30ノット)です。

防衛省はミサイル防衛(MD)のためにSM−3(スタンダード・ミサイル・3)を搭載したイージス艦6隻の配備を予定していて、すでにSM−2を搭載し、それぞれの軍港に配備されている「こんごう」(佐世保)、「ちょうかい」(佐世保)、「みょうこう」(舞鶴)、「きりしま」(横須賀)を、順次SM−3搭載用に改修を進めています。そして「こんごう」がSM−3の搭載を終え、昨年の12月17日にハワイ近くで迎撃実験に成功したことは、日本で大きく報道されました。

このイージス艦導入計画は、1988年度防衛計画で決定され、米国のミサイル駆逐艦をモデルに4隻が建造されましたが、イージスシステムは米国からの有償軍事援助として搭載されました。開発にはレイセオン社やロッキード・マーチン社が関わり、01年末頃から三菱電機や三菱重工が一部のライセンス生産をしていますが、大部分は「ブラックボックス」のまま米国から購入しています。

「あたご」は5隻目のイージス艦ですが、最初からミサイル防衛を目的として建造された艦で、昨年3月15日に三菱重工長崎造船所から防衛省に引き渡されました(6隻目の「あしがら」も08年春には三菱重工長崎造船所から防衛省に引き渡される予定)。しかし「あたご」はミサイル防衛を目的に建造されたにもかかわらず、SM−3は搭載していません。野島崎沖で衝突事故後、防衛省は「あたご」が、1月21〜25日にハワイ沖でSM−2の発射試験を行い、日本に寄港中だったと発表しました。

ミサイル防衛艦として建造されたにもかかわらず、ミサイル迎撃が不可能なSM−2を搭載していたのです。これは第一にはSM−3を搭載するのに1千数百億円という費用が必要なため、予算の関係があったこと。第二に、現在搭載されている「SM−3」は、後に述べるように新しいタイプとの交換が予定されているため、とりあえずSM−2搭載艦として対応しようとしていると推測されます。

しかし「あたご」は、単独でハワイに行っていたのではなく「こんごう」などとともに約3ヶ月間、ハワイ沖で日米合同訓練に参加し、イージスシステムを駆使し、中国や北朝鮮が配備している巡航ミサイルに対応するため、SM−2の発射実験を行っていたと考えられます。

「あたご」が清徳丸に衝突した後、海上保安庁の調査が入る前に独自の聞き取りを行ったことが明らかになっていますが、実際は合同訓練の情報などが漏れないように打ち合わせをしたのではとも考えられます。

米国のミサイル防衛にさらに組み込まれる

イージスとは、ギリシャ神話に出てくる盾(アイギス)が語源といわれ、艦隊防空を目的に、レーダーやソナーなどによる優れた探知能力、情報処理能力、高い対空戦闘能力、つまりミサイル発射能力を備え、さらに水上艦船や潜水艦に対しても識別、攻撃などを行うことのできる艦船のことです。とくに防空システムは100個以上を識別し、10個以上の目標に、同時に対応することができるといわれています。

SM(スタンダード・ミサイル)とは、米海軍が開発した艦対空ミサイルのことで、これまでSM−1、同2、同3と発展してきています。ただし、SM−1と同2は攻撃してくるミサイルを迎撃することはできず、戦闘爆撃機や巡航ミサイルなどにしか対応できません。

一方、SM−3はミサイル防衛を目的に開発されたミサイルで、現在は「SM−3ブロック1A」が実戦配備されていますが、三段ロケット式になっていて、先端に運動エネルギー弾頭(直接、敵ミサイルに衝突し破壊する=KW)を装備しています。発射後、三段目ロケットから切り離されたKWは、約30秒後に大気圏外で相手ミサイルに衝突し、破壊します。射程は約1,200q、迎撃可能な高度は200q以上といわれています。

このように「SM−3ブロック1A」は、射程距離が短い上、弾頭「KW」の速度も秒速3qほどで、長距離弾道弾など、速度の速いミサイルには対応できないという弱点をもっています。このためより高く上昇し、よりスピードの出る「SM−3ブロックII」を開発中で、このブロックIIには、日本の防衛研究所などがノーズコーン(弾頭先端部分のカバー)や二段目ロケットなどの開発に協力しています。現在の「ブロック1A」は、何年か後に日米共同開発の「ブロックII」にすべて取り替えられ、日本はさらに米国のミサイル防衛に組み込まれていくことになります。