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2008.5  

東京電力を告発する長尾原発労災裁判
「原子力発電所の暗闇を照らす判決を願います」

長尾光明さんの裁判を支援する会(全造船機械労組石川島分会) 内山 俊一

福島原発で大量の放射線をあびる

 造船重機械のメーカーの石川島プラント建設社員であった長尾光明さんが、東京電力(東電)を被告として04年10月に提訴した裁判は、5月23日に判決を迎えます。07年12月7日の結審にあたって、原告の鈴木篤弁護団長からは、本人の声を届けてほしいと、次の意見陳述が口頭補足されました。

「私は1977年から82年1月まで東京電力福島第一原発の配管工事に従事して大量の放射線をあび、98年に第3頚椎骨折があり、その後、多発性骨髄腫が確定しました。07年10月からは右鎖骨病変で入院中です。原因は被曝であり、阪南中央病院(大阪)の村田三郎先生にかかり、国も労災として認定しました。しかし東電は私が診察も受けたこともない清水一之医師を出してきて病気は偽りだというのです。この東電を許せません。私が働いた時期にあった大量のアルファ核種という放射性物質の漏れを隠していた問題も明らかになりました。原子力発電所での仕事は本当に苦しいものでしたが、私は精一杯働いてきました。その結果が、多発性骨髄腫です。もし原発で働くことがなかったら、今のような苦しみを背負うこともなかったと思うと、本当にくやしくてなりません。日本の原子力発電所の暗闇を照らす判決をお願いしたします」

結審の6日後、長尾さんは判決を迎えることなく、82歳で亡くなりました。

被曝との因果関係を否定する東電

 長尾裁判は被曝賠償に係ることから「原子力損害の賠償に関する法律」を根拠に損害賠償を請求しています。この法律は、原子力事業者の無過失責任を認め、故意または過失であるかどうかを問わずに損害賠償責任が発生します。そのため、通常の裁判のような東電の過失を示す安全配慮義務違反は争いとならず、長尾さんの被曝と多発性骨髄腫との間に因果関係があるかどうかだけが主な争点となりました。

ところが、東電は被曝と多発性骨髄腫罹患との間に因果関係は認められないという主張だけでなく、診断は誤診であり病名違いであるとまで主張しました。その裏付けとして国立大学の多発性骨髄腫の権威とされる教授が4度にわたり意見書を提出し、長尾さんの病気が多発性骨髄腫であることを否定してきました。

しかし、最新の診断基準では、臓器障害など他の基準を満たせば多発性骨髄腫と診断できることとなっており、長尾さんはこの基準を満たしています。それなのに、意見書は異例と言えるほど、長尾さんの骨髄に形質細胞が10%以上見つからないから診断基準を満たさないなどと固執し続けてきたのです。

このように、長尾裁判は原告の業務と罹患の因果関係が肯定されれば解決する、極めて簡潔な裁判であるのに、診断経過一つをみても東電は豊富な財力に物を言わせ、病と闘い、生活費に汲々とする弱い立場にある原告を突き放してきたのです。

東電の後押しをする国へも判決

国(厚生労働省)が認めた労災認定の結果すら無視する一方で、東電は裁判への文部科学省の補助参加を受入れました。その理由は、長尾さんのように被曝後10年以上経って電力会社が賠償した原子力損害については、国が電力会社に補償することになっているためです。東電は利害関係から、原告を敗訴させるための支援を国から得ているのです。

その東電と国に対する判決が下されます。若い同僚に同じ苦しみを味わせたくないという長尾さんの遺志を実現するため、「原発は安全である」という神話を覆し、原子力政策の転換を目指します。

その第一歩となる5月23日の東京地裁判決を受けて、私たちは当日、東電や文科省への要請行動や報告集会を行います。ぜひ注目をしてください。