出版物原水禁ニュース
2008.6  

【本の紹介】
夏の残像─ナガサキの8月9日

西岡 由香 著
2008年 凱風社刊 

1945年8月、ヒロシマとナガサキ。原子爆弾の種類や被害の状況等に違いはあっても、そのおぞましさと悲惨さに差異はありません。しかし私自身、広島県のとなり山口県で生まれ育ったせいもあるのか、原爆の話といえば広島が中心で、書籍の類も広島に関するものを目にすることのほうが多かったように思います。本書はそんな私にとっては珍しい、長崎の原爆を扱ったもので、事実に基づいたフィクションのマンガ短編集です。

主人公の東京の高校生カナが、長崎に住む被爆者の祖母を訪ね、一緒にアメリカや韓国を回り、被爆者たちと出会い、原爆の恐ろしさを学んでいくという5つの短編で構成されています。著者の西岡由香さんは長崎市で生まれ育ち、ご自身は体験のない世代であっても、自然に幼い頃から原爆や平和に関することを耳にして育ったといいます。

やさしい絵のタッチに反し、それぞれのテーマは大変重いものです。中でも「アジアンリバー」は長崎で被爆した韓国人のことを扱った作品で、原爆投下という非常時でさえも露見する民族差別の感情や、なぜ当時、多くの韓国人を始めとする外国人が長崎に(日本に)住んでいたのかなど、被害者としての立場だけに留まらない日本人の問題に触れる作品となっています。

カナが韓国人被爆者の孫である青年に「韓国の人も原爆に遭ったんですね…」と話しかけて、「そんなことも知らないの?」と言われて気まずい空気が流れる場面は、両国の温度差を物語るやり取りのようです。現在は祖国に住みながら、長崎弁で被爆体験を語る韓国人被爆者の姿は胸に迫ります。

マンガということで手に取りやすく、短い解説も付いているので、特に若い人たちが原爆について考えるには格好の入門書といえるでしょう。 (阿部浩一)

※長崎平和運動センターで1冊1,000円(送料別)で取り扱っています(Tel. 095-823-7281)。