出版物原水禁ニュース
2008.8  

米、テロ支援国家指定解除へ
東北アジアの新時代始まる

加速する朝鮮半島非核化への動き

 6月26日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核計画の申告書を、6ヵ国協議の議長国・中国に提出したことを受け、ブッシュ米大統領はテロ支援国家指定解除を決定し、議会に通告しました。

 この北朝鮮の核計画の申告書提出は、05年9月19日に合意された朝鮮半島の非核化を目標とする「6ヵ国協議共同声明」(9.19共同声明)に基づくものです。

 これまで北朝鮮の非核化への動きは、進展するかに見えると、米国・ネオコン派から妨害が入って動きが停滞・中断という事態が繰り返されてきました。ブッシュ大統領自身、北朝鮮の核廃棄実現に重きをおく現実派と、北朝鮮の政権の弱体化から崩壊をめざすとするネオコン派との間で揺れ動き、北朝鮮との直接交渉を拒否してきました。

 こうしたなか、北朝鮮は06年10月9日に地下核実験を行ったのです。ブッシュ大統領の拙劣な外交がもたらした結果といえます。

 しかし、任期が少なくなったブッシュ大統領は、07年に入って方針を転換します。07年2月に6ヵ国協議が再開され、2月13日に「共同文書」(2.13共同文書)が採択されます。

 その後も妨害は続きますが、中国、ロシアの仲介などがあり、北朝鮮による核放棄の初期段階として、寧辺の黒煙減速炉、放射化学研究所(再処理施設)、核燃料製造施設の稼働停止、封印などが行われ、国際原子力機関(IAEA)の査察も実施されました。

 さらに07年9月30日、10月3日と開催された6ヵ国協議首席代表者会合で、北朝鮮の核3施設を無能力化することで合意。核燃料棒の抜き取り、冷却水槽への貯蔵など、無能力化は順調に進展し、08年6月の核計画の申告書提出となったのです。

日本は合意に基づく支援が求められる

 ここで私たちが確認しておきたいことは、9.19共同声明、2.13共同文書では、北朝鮮の核廃棄(非核化)ではなくて、(1) 「朝鮮半島の非核化を目的とする」ことを明確にしたこと。(2) 北朝鮮が一切の核兵器と核計画を放棄し、核拡散防止条約(NPT)に復帰し、IAEAの査察を受けることに合意したのです。

 これに対応して、米国は(3) 北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する作業を開始することに合意し、日本と北朝鮮は(4) 日朝共同宣言に従い、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎に国交正常化のための協議の開始を合意したのです。

さらにこれらの合意が、同時行動の原則に基づいて実行されるということです。

 2.13共同文書では、初期段階と核施設の無能力化を含む次の段階の期間中、北朝鮮に上限100万トンの重油に相当する経済、エネルギー、人道支援が提供されると明記されており、共同文書に署名した日本は、拉致問題に関係なく経済、エネルギー、人道支援を行う義務を負うことになります。

 北朝鮮は日本との直接交渉で、拉致被害者の再調査を約束しましたが、北朝鮮が米国との交渉で、同時行動の原則を貫いたことを考えると、拉致問題の解決なくして支援なしの姿勢では、なかなか事態は動かないでしょう。被害者家族にとっては辛く納得できないとしても、日本は9.19共同声明、2.13合同文書に署名しているのです。

東北アジアの安全保障へ市民の運動を

 2.13共同文書では5つの部会の設置が合意され、その一つに「北東アジアの平和と安全保障メカニズム」の設置があります。また「初期段階の措置が実施された後、共同声明の実施を確認し、速やかに閣僚会議を開催し、地域の永続的平和と安定のため共同の努力を行う。当事者は適当な話し合いの場で朝鮮半島の恒久的平和体制を協議する」と述べています。

 ライス米国務長官もまた「6者協議の枠組みを、北東アジアの平和と安全保障に関するメカニズムとして制度化することで、この地域における最初の安全保障フォーラムに向けた第一歩としたいと考えている」(フォーリン・アフェアーズ・日本語版、2008.6)と述べています。この構想は09年に誕生する米・新大統領にも引き継がれるべきでしょう。

 米国は冷戦のさなか、アジアに対しては2国間協議だけを求め、多国間協議は一貫して拒否してきました。しかしいま6ヵ国協議の進展のなかで米の2国間協議体制が崩壊し、新しい時代がアジアで出現しようとしているのです。

 日本はこの新しい状況のなかで積極的な関与を果たさなければなりません。しかし 自公政権はこの状況に対応できず、孤立しようとしています。

 私たちの運動や市民が、この状況を理解し、運動にしていくことが求められています。