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フランス核実験被害者補償法:上院における修正カ所と最終的な条文

2009年12月22日、フランス核実験被害者補償法が上院で可決され、フランスで初めて同国の核実験が人体に被害を与えたことを認め、被害者に補償を行う歴史的とも言える法律が成立しました。

09年6月30日の国民議会(下院)決議でもいくつかの修正が行われましたが、上院でも修正が加えられました。おもな修正点は、「因果関係の推定的認定」(被曝の事実と特定の疾病を罹患している事実が証明されれば、その間の因果関係の証明を免除し、両者の因果関係を推定的に認めること)をより明確にする修正と、被害者本人が死亡している場合の遺族の権利の明確化の2点です。

以下は、同法の上院での修正箇所を記した最終的な条文の邦訳です。文中、取り消し線部分は削除された文言、下線部分は新たに挿入された文言であることを示します(いずれも訳者による追加)。また、主要な修正箇所について、その修正案を提出した上院議員による修正提案主旨の要約を、脚注の形で付記しました。

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採択法案第389号

「小法」

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国民議会

1958年10月4日憲法

第13会期

2009−2010年通常国会

2009年12月22日

フランス核実験被害者の認定と補償に関する

法案

国民議会は、憲法第45条第3項に定める条件の下で、次の内容の法案を可決した。

1

フランス核実験のさいのによる*1電離放射線への被曝に直接*2起因し、国務院の政令に定めるリストに登録されている放射線障害に罹患しているすべての者は、本法に定める条件のなかでその損害の全面的な賠償を得ることができる。

その者が死亡している場合、その遺産相続人がその申請を行うことができる。

2

放射線に起因する疾病を罹患しているその者は、次の場所および時期のいずれかに居住または滞在したことがなければならない。

① 1960年2月13日からサハラ軍事実験センターに1967年12月31日までの期間、またはオアシス軍事実験センター、または両センターの周辺区域に1966年11月7日から1967年12月31日までの期間、

② ムルロア・ファンガタウファ環礁に1966年7月2日から1998年12月31日までの期間、または角の内部[1]に位置する仏領ポリネシアの被曝区域に1966年7月2日から1974年12月31日までの期間。

③ ハオ環礁の特定の区域に1966年7月2日から1998年12月31日までの期間。

④ タヒチ島の特定の区域に1974年7月19日から1974年12月31日までの期間。

①に言う周辺区域、ならびに②に言う角の内部に位置する区域、また③および④に言及されている区域は、国務院の政令により定める。

3

申請者は、必要な場合には国防省および関連省庁との協力により、*3第1条に定める者が、第2条に定める場所および期間に居住または滞在したこと、ならびに第1条の適用により定められたリストに記載されている疾病のひとつに罹患していることを証明する。

4

I. – 補償申請は、個別に補償委員会に提出する。補償委員会は、国務院裁判官または破棄院裁判官を委員長とし、主として公衆衛生高等審議会の提言にもとづいて国防および保険担当大臣が共同指名した*4医学専門家により構成する。

第1条に当該し、本法の公布前に死亡した者の遺産相続人は、本法の公布後5年以内に補償委員会に審理を付託することができる。

II. – 同委員会は、補償の条件が満たされているか否か、とくに、当該者の疾病の性質および被曝条件を考慮して、当該者が罹患している疾病と核実験との間の因果関係が存在すると見ることができるか否かを検討する。条件が満たされている場合、当事者は、疾病の性質および当該者の暴露条件に照らして、核実験に帰せられるべきリスクが無視しうると考えられる場合を除いて、推定的因果関係の恩典を受けることができる。*5

同委員会は、あらゆる有用な科学的または医学的調査を、職業上の守秘義務に妨げられることなく、自らまたは委託により行う。

同委員会は、必要に応じて申請の予審に必要なすべての情報をあらゆる国または地方自治体、社会保障管理の機関に要請し、または得ることができる。これらの情報は、申請の予審以外の目的に用いることを禁ずる。

同委員会の委員ならびに委員の補助を目的として出席を指名される者は、刑法第4139[2]の適用条件の下で、上記の緒項に定める情報を知る資格を付与されねばならない。

申請の審理に際して、同委員会は対審原則を尊重する。申請者は、自らが選んだ者の援助を受けることができる。*6

III. – 同委員会は、申請の登録後4カ月以内に、国防大臣に対して、申請をどのように扱うべきかの提言を行う。この期間は、同委員会が医学専門家の援助を受ける場合には、6カ月に延長することができる。同大臣は、その提言に鑑み、2ヶ月以内に当事者に補償の提供、または申請の却下(その理由を伴う)を通知する。同大臣は、この通知に補償委員会の提言を添付する。

本法公布後の1年については、同委員会の審理期間を申請登録後8カ月に延長する。

IV. – 同補償委員会の構成、組織、申請者が提出する書類に添付すべきもの、ならびに申請の予審方法、とくに申請から補償の提供を通知するまでの期限対審および弁護権の尊重を可能ならしめる方法は、国務院の政令によって定める。

5

補償は、資本の形で支払う。

同一の損害項目に対して申請者がすでに補償を受理している場合は、本法に定める補償額からその額を、とくに補償給付金を受給されている場合はその割戻額を差し引いた額を支払う。

6

補償の提供の受理は、民法第2044条に定める取引と同様の効力を持ち、係争中の訴訟行為はすべて取り下げられる。また、同一の損害の補償を目的とする他の訴訟行為はすべて受理不能となる。

7

国防大臣は、核実験被害追跡諮問委員会を年2回以上招集する。同委員会は、その委員の過半数の求めによっても召集することができる。同委員会は、19名の委員を持つ。その内訳は、国防、保険、海外領土、外務の担当大臣の代理人1名ずつ、仏領ポリネシア政府大統領またはその代理人、仏領ポリネシア議会議長またはその代理人、国民議会議員2名、上院議員2名、核実験被害者を代表する団体の代表者5名、この分野の専門知識を有する科学者4名で構成する。

同委員会は、本法の適用状況、ならびに放射線に起因する疾病のリストの必要な変更について諮問を受ける。その資格において、同委員会は国防大臣および国民議会に対して提言を行うことができる。

同委員会の委員のリスト、その指名理由および運営原則は国務院の政令により定める。

第8条

一般所得税法第81条第33項第2段落の後に、次の第33項第3段落を挿入する。

「第33項第3段落 フランス核実験被害者の認定と補償に関する   第    号法の適用により、放射線に起因する疾病を罹患している者またはその権利所有者に対して支払われた補償金。」

2009年12月22日、パリにおける通常会期にて可決。

議長

署名:ベルナール・アコワイエ

訳注 —————————————————

[1] 核実験場を起点とし、一定の角度で一定方向に伸びる一定の半径でつくられる扇形の区域。

[2] 国防機密の対象となる情報の性質、指定手続きなどを規定した条文。

[3] フランス語原文はこちら

*1 核実験と電離放射線との因果関係をより明確に示すため。本法では、核実験がもたらした電離放射線による汚染への補償が対象になるため。

*2「この規定には必要ないことと、汚染物質の吸引や放射性物質を含んだ食物の摂取、地表に降った放射性物質との接触などにより間接的に起きた汚染の多くが捨象される可能性があるため。

*3 従来、国防相や原子力庁は、核実験被害者に対して被曝データの開示を抑制する傾向が強かった。本法では、これを改め、被曝に関するデータを持っている唯一の機関である国防相など関連機関が、被害者の被曝の事実の証明に積極的に協力することを明記するため。

*4 補償申請書の審査で中心的な役割を果たす補償委員会の医学専門家を、国防大臣だけでなく、全仏医学アカデミーの提案にもとづいて国防担当大臣と保健担当大臣との共同指名制にすることにより、同委員会の国防省に対するより大きな独立性を確保するため。こうした保証により、同委員会が偏向しているとの疑いをさけることができる。

*5 被害者が証明すべき要件が、被曝の事実と疾病の罹患の2件のみであるという推定的因果関係のメカニズムを導入している第1条〜第3条と、その要件は申請書の受理条件にすぎず、審査は補償委員会の至上権により行うとしている第4条の間にある曖昧さを除去するため。

国防大臣が「今後は、国が疾病と被曝との間の因果関係が存在しないことを証明する義務を負う」と表明していることを、より明確に条文に反映させた。

つまり、電離放射線への被曝に帰せられるべきリスクが非常に小さく、疾病と被曝の間の関連があり得るとは考えられない場合には、推定的因果関係を採用せず、申請を却下する。逆に、そのリスクが否定できないか、その疑いがある場合には、疾病と被曝との間の推定的因果関係の恩典を享受し、それにもとづいて保証を受ける。この文言修正により、補償委員会は個別の状況に応じた判断を行うことができる。

*6 被害者は、申請書類の予審のあらゆる段階で、自らが選任した者(被害者団体代表、弁護士、労働組合代表、医師など)による支援を受けることができるようにするため。

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