緊迫する印・パ
2002.6.18

インドとパキスタンの間の核脅威削減措置

 (2002年6月18日発表)
MIND(インド核軍縮運動)

要約

  1. 南アジアで核戦争が発生する特別な危険が存在する。これは、単なる西側のプロパガンダではなく、単純な常識の問題である。核兵器がもっとも使われそうなのは、相互の不信感・緊張がもっとも高まる戦争状態または戦争寸前の状態においてである。インドとパキスタンの間で過去55年間続いており、鎮火の兆しの全くない連続的な熱戦・冷戦が、この核武装したライバルの間の対立を深刻なものにしている。
  2. したがって、両国の間で、計画的な、あるいは誤算、偶発的事故による核戦争が起きるのを防止することが焦眉の課題となっている。両国の間で核脅威削減措置(NRRM)を設定する必要がある。しかし、NRRMの限界については、はっきりさせておかなければならない。南アジアの危険性を、核の面で減らすことはできるが、核の面において本当に安全にするには、核を無くすしかない。この地域から、そして、世界から核を無くしてしまうしかない。NRRMは、核軍備撤廃を常に追求する一方で、講ずべき移行期的措置とみなさなければならない。NRRMは、核軍備撤廃の代わりにはなり得ない。
  3. NRRMは、信頼情勢措置(CBM)の一つの形態だが、そのために、CBMの持つ基本的問題を抱えている。すなわち、NRRMがどれほど効果的であり得るかは、それがどのような政治的文脈で講じられるかにかかっているというものである。CBMの効果的検証態勢が信頼を生み出すというわけでなく、信頼しようという態度こそが、CBMが効果的に機能することを保証し、さらに大きな信頼を生み出すことにもつながるのである。このため、冷戦時代を通じて、米ソ間のNRRMは、ほとんどなく脆弱だった。効果的なNRRMが講じられるようになったのは、冷戦後のことである。同様に、印パ間のCBMの歴史は、お粗末なものである。しかし、NRRMが少しでも核の安全性の敷居を高くすることができるなら、それは貴重で必要なものである。
  4. どちらかの側が意図的に核兵器を使用するということの他に、NRRMが対処しなければならない潜在的リスクが4つある。すなわち、a)情報処理あるいは技術の欠陥からくる判断の誤りによって生じる核の使用、b)許可のない核の使用、c)核兵器の近辺における事故・火事・爆発、d)核兵器の使用が間近だとする噂、その結果として生じる混雑した都市中心部におけるパニック行動。
  5. NRRMの最善でもっとも強固な形態は、核弾頭をその運搬手段(ミサイル、飛行機、船)からはずし、別のところに貯蔵して監視するというものである。これは、実質的に、核兵器を配備しないということを意味するから、必要な安全性を確保する上で最良の措置である。
  6. しかし、偶発的な使用や事故を防ぐという意味で安全性を高めるということは、核兵器システムの準備態勢を弱めることを必要とするから、安全性の要求と、機能的な核の抑止システムを持つという要求の間には、常にトレードオフが存在する。実用的な核抑止システムを持とうと欲する限り、完全な、保証された安全性を持ち得ないのは、このためである。しかし、核抑止のドクトリンを信奉するとしても、やはり、安全性の度合いを高めるために、準備態勢を相当程度犠牲にした方がいい。
  7. 印パは、このような安全性措置を取り合うことについての協定を結び、両国がそれぞれ講ずべき措置を講じていることを確認するための手続きを定めるために努力すべきである。インドがまずイニシアチブをとるべきである。なぜなら、パキスタンの側は、すでに、公の形での核兵器の配備、あるいは、さらなる核実験を先にはしないと宣言しているからである。
  8. インドは、最小限の核抑止を望んでいるだけで、この最小限を達成するためにこれ以上核実験をする必要はないといっているのであるから、ポカラン核実験場を直ちに、永久的に閉鎖すべきである。そうすれば、パキスタンが同じことをする可能性がずっと高まる。両政府は、これを実現するために交渉を行うのもよいだろう。
  9. インドの国民に対する説明責任、透明性という意味で、インドは次の二つのことをしなければならない。a)あまりにも秘密主義的な1962年原子力法を新しいものに変え、軍事的側面と民生的側面を分離し、民生部門については、米国や英国などにおける民生用原子力体制を規定している手続きや法規のラインに沿った形で、議会や国民に説明責任を負うようにする。b)もしインドが、核保有国に対する先制不使用と非核保有国に対する非使用というその宣言について本気であるとするなら、インド政府は、ドラフト核ドクトリンを拒絶すべきである。このドクトリンは、戦術核兵器、戦場用核兵器など、ありとあらゆる核兵器を開発することをめざしているからである。このドクトリンにしたがうのではなく、インドはパキスタンとともに、国連総会で2001年11月29日に採択された『核の危険の削減』に関する決議(A/56/24C)の前文に述べられている目的を達成するための措置を講じるべきである。