核情報

2008. 8. 9

オーストリア、IAEA理事会で、インド・IAEA保障措置協定を鋭く批判

NPTに加盟せずに核兵器開発を続けているインドと「国際原子力機関(IAEA)」の部分的保障措置協定を承認した8月1日のIAEA理事会で、オーストリアは協定の問題点を鋭く指摘しました。同国は、理事会での承認は、包括的保障措置協定を結んでいない国との原子力協力を禁じた「原子力供給グループ(NSG)」の規則において、インドを例外とする可能性についての議論に影響を与えるものではないと述べています。(発言全文訳出)

オーストリアのステートメントは、IAEA理事会における議論や、8月21-22日に予定されているNSGでの議論について理解する上で重要な文章です。日本にはこの程度のことが言えるでしょうか。

オーストリアのステートメント

議長、以下のステートメントは、オブザーバー国のコスタリカ、オランダ、ノルウェーの名においてもなされるものである。

  1. 国際的核不拡散体制の強化は、我々の外交・安全保障政策の優先事項の一つである。我々は、NPTに、そしてNPTの欠かすことのできない検証機関としてのIAEAに、強くコミットしている。効果的で普遍的なIAEAの包括的保障措置システムは、世界の核不拡散体制のかなめであり続けている。従って、この検証システムの普遍化は、きわめて重要である。
  2. このような背景の上に立って、原則として、我々は、これまでIAEAの管理下になかった核施設の監視・査察を可能にするすべての保障措置協定を歓迎する。
  3. 一般的に言って、インドの民生用核部門の相当部分に関するインドとIAEAの保障措置協定の締結は、従って、歓迎されなければならない。これらの施設をIAEAの管理下に置くことは、IAEAの保障措置がNPTの加盟国でない国にとってもスタンダードとなったことを意味する。我々は、インドが民生用核施設のすべてをこのような保障措置下に置くよう希望していることを強調したい。
  4. 手元にある協定案に関しては、いくつもの疑問がある。明らかに、提案された協定は、標準的なテキストではない。我々は、数週間前にテキストを受け取り、丁寧に検討した。我々は、事務局に対し、7月25日のブリーフィングにおいて加盟国の指摘した疑問点のいくつかについて明らかにしてくれたことに関して、感謝したい。しかし、いくつもの懸念が残っている。
  5. 前文の第9項は、「インドは、外国の燃料供給の途絶の際には、その民生用原子炉の継続的運転を保証するために是正措置(corrective measures=矯正措置)を講じても良い。」としている。協定案では、「是正措置」という言葉が定義されたおらず、テキストの様々な解釈の可能性を残している。我々は、事務局によるこれらの「是正措置」は保障措置の終止を含みえないとのその解釈については感謝したい。しかし、協定が、供給の「途絶」とは何か、インドがどのような「是正措置」を取りうるのかについて明確にしていないのは問題である。我々は、どのような具体的なケースにおいてどのような措置が取られうるのかという疑問に対する明確な答えを得ていない。
  6. 第4条は、本協定における保障措置の適用は、インドが当事者となり、また、本協定の達成に不可欠の、関連した2国間あるいは多国間の取り決めの実施を容易にするために意図されたものである」としている。民生用核物質の正しい利用をIAEAに監視させるという明らかな関心以外の意図について保障措置が言及することは普通はない。この条項が他の協定との直接的リンクを作り出すことを意図しているのかという疑問が生じる。我々代表団は、保障措置は永続的に結ばれなければならないと固く信じている。他の協定とのリンクはありえず、どの当事者であれ、この4条を使って保障措置協定を破棄するのを可能にする条項があってはならない。
  7. 第13条は、「本協定の発効後、また、本協定の目的の達成に必要なすべての条件が満たされたとのインドによる判断の後、インドは、その民生用施設を段階的にIAEAの保障措置下に自主的に置くとの主権による決定に基づき、IAEAに対して申告を行う」としている。このパラグラフは、二つの重要な意味合いを持つ。
    -まず、理事国はすべて、今、保障措置協定を承認するよう求められている。しかし、インドは、それが実際に適用されるかどうかを、自律的に、いつか分からない、後の段階で決める。
    -第二に、我々が扱っているのは、「抜け殻」協定である。なぜなら、IAEAの管理下に置かれる施設は、段階的に、後の段階になって初めて、インドによって決められるからである。我々の政府は、「分離計画の中で民生用と規定されている施設が保障措置に提供される」とのINFCIR/731で表明されたインドの政治的コミットメントを積極的にとらえていた。しかし、これらの関連施設が、本協定のアネックスに、法的拘束力のある形でリストアップされていないことを残念に思う。
  8. 保障措置協定のこれらすべての要素は、我々の見地から言うと、NPTシステムの根幹にある包括的検証という概念を損ねるものである。明らかに、これらは、核不拡散の観点から言って問題である。
  9. 我々の政府は、しかし、最終的に、本保障措置協定をインドとの協力の基礎として個人的に支持しているエルバラダイ事務局長の判断を信用するものである。また、協定の運用の文脈でのいかなる疑問も、いつでも、理事会で議論できるということは明白である。
  10. 我々は、インドに対し、無条件で非核兵器国としてNPTに加盟するようインドに要請し続けるとともに、NPTのさらなる普遍化は核のない世界という最終的ゴールに至る上で欠かせないものだとの我々の信念を表明する。
  11. 最後に、我々は、今日の理事会の決定は、IAEAとインドの保障措置協定の承認にのみ関わるものであることを強調する。この決定は、「原子力供給国グループ(NSG)」におけるインド限定の例外措置の可能性に関する決定について前もって判断を下すものでは決してない。この決定は、適切な場で審議されることになる。
  12. 議長。これで、オブザーバー国のコスタリカ、オランダ、ノルウェーの名においてもなされる我々のステートメントの部分を終える。最後に、オーストリアのみのものとして、事務局に対し、オーストリアの法律に鑑みて必要とみなす次の説明を記録に残すよう要請する:保障措置協定の前文において原子力を「効率的で、クリーンで、持続可能なエネルギー源」と形容しているのは、インドの見解を反映したものであって、理事会の評価とは何の関係も持たないというのが我々の理解である。オーストリアは、このような形容に国として反対する。

議長、これで私のステートメントを終える。ありがとうございました。


原水禁ホームへ ホームページへ  |  このページ内容は核情報提供 元記事
核情報ホーム | 連絡先 | ©2008 Kakujoho