核情報

2008. 2.17

ライス国務長官証言に基づき対インド原子力協力の条件強化をと米平和団体
 核実験禁止、濃縮・再処理技術移転禁止など国際ガイドラインに明記するよう要求

核拡散を防止するために「原子力供給国グループ(NSG)」が定めているガイドラインでインドを例外扱いすることを米国が求めている件に関し、ライス米国国務長官は、2月13日の下院外交委員会公聴会において、2006年に議会が定めた法律の条件と制限に「完全に合致した」かたちでのガイドライン変更を支持すると証言しました。同法は、インドが核実験を再開した場合には協力を停止することなどを定めています。

米国の軍縮NGO「軍備管理協会(ACA)」のダリル・キンボール事務局長は、2月14日発表のプレスリリース『インドとの原子力貿易に関する世界的規則を米国の法律に「合致」したものにするとのライスの約束は、米国の政策の変更を必要とする』で、

米国とインドの間の原子力関連貿易に関して設定された最低限の――しかし極めて重要な――条件に合致したNSGガイドラインを支持するとのライスの約束は、ブッシュ政権の政策の変更を必要とする。このような変更は、遅ればせながら、正しい方向への一歩を意味するだろう。

と述べています。以下、ライス発言の意味に関する情報を整理して載せました。

  1. NSGの背景
  2. ライス国務長官が守ると約束した法律
  3. ライス国務長官の発言 米国下院外交委員会(2008年2月13日)
  4. ハイド法に違反する米印原子力協力協定文
  5. 米国のNSGガイドライン変更声明案
  6. 「軍備管理協会(ACA)」のダリル・キンボール事務局長の主張
  7. NSGで要求すべき条件
  8. 日本は?
  9. インドとの民生用原子力協力に関するステートメント案(米国)
  10. 参考

NSGの背景

元々、米国がその核関連輸出の規制を強化し、NSGの設立を働きかけたのは、1974年にインドが米国とカナダの提供した平和目的技術を利用して核実験を行ったためだ。NSGは、米国の方針に従い、1992年に、核不拡散条約(NPT)の規定する核保有国5ヶ国以外の国(=非核保有国)への輸出に関して、相手国が原子力関連活動全てに対する「国際原子力機関(IAEA)」の保障措置(包括的保障措置)を受け入れている場合に限るとのガイドラインを採択した。

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ライス国務長官が守ると約束した法律

これらの規制においてインドを例外扱いすることを認めた米印原子力協力法(2006年ヘンリー・ハイド法)(英文 pdf)は、最低限の条件として、インドが民生用と指定した施設・物質に対する保障措置が恒久的に実施されること、インドが核実験を行った場合には、米国政府が協力を中止し、外国にも中止を働きかけることなどを定めている。また、濃縮・再処理・重水製造技術など核兵器に直接繋がる「機微な」技術については、基本的にその移転を禁止している。

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ライス国務長官の発言 米国下院外交委員会(2008年2月13日)

我々は、インドとの関係に関し、ハイド法に矛盾するのものは何もNSGで支持しない。それは、ハイド法が定めた規定obliagationsと完全に合致したものでなければならない。

出典:

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ハイド法に違反する米印原子力協力協定文

ところが、2007年8月3日に発表された米印原子力協力協定文は、協定を終了させるには1年前の通告が必要であり、協力を終了させる行為は両国の関係に重要な影響を与えることを考慮すべきであると強調する内容となっており、その上、インドが核実験を行った結果として米国が核燃料供給を中止する措置をとった際には、米国が他の国に働きかけて燃料を供給するようにすると解釈できる文言も入っている。

また、協定は、インドが平和利用目的と定めた施設だけを対象にインド限定の保障措置協定をIAEAとの間に結ぶとしているが、インドは、インドが核実験をしたためであっても、核燃料の供給が途絶えた際には、民生用原子炉を保障措置から外すことを認める内容の保障措置協定を求めている。そもそも、NPTに加盟せず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名もせず、核兵器用の核分裂性物資の生産を続けている国の一部の原発・施設だけ保障措置下に置くということ自体がほとんど意味が無く、IAEAの労力・資金の無駄遣いとさえいえるが、インドの要求をそのまま認める保障措置となれば、保障措置という言葉にまったく値しない。

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米国のNSGガイドライン変更声明案

ヘンリー・ハイド法の制定に先立つ2006年、3月22−23日にウイーンで開かれたNSG協議グループの会合の前に米国がNSG参加国に配布した「インドとの民生用原子力協力に関するステートメント案」では、インドが「指定された民生用核施設を対象とする追加議定書を受け入れることにコミットしたこと」がガイドライン変更の理由として挙げられている。この理由を含むステートメント「第2項」は、ガイドライン変更の条件を定めたかたちとなっている。NPT加盟の非核兵器国の場合、追加議定書の受け入れは、申告していない施設の査察、抜き打ち査察などを受け入れることを意味する。インド用の追加議定書がどのようなものになるのかはまったく規定されていない。上述のような無意味な保障措置への追加措置の約束(コミットメント)など、どれほどの価値があるだろうか。

米国のステートメント案は、さらに、米国自身がヘンリー・ハイド法に従ったとしても、米国以外の国々が規制を骨抜きにすることを可能にするものとなっている。インドが「第2項」に定めた「コミットメントすべて及びNSGガイドラインの他のすべての要件を完全に満たし続けている」とそれぞれの輸出国が判断すれば、インドへの核関連輸出ができることになっているからだ。輸出したい国が都合の良いようにガイドラインを解釈することはロシアの例を見ればわかる。明確な規定が必要である。

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「軍備管理協会(ACA)」のダリル・キンボール事務局長の主張

キンボールACA事務局長は、次のように主張する。

「現在、インドは、NSGの例外扱いを無条件にすることを求めている。NSGにおける米国の現在の提案は、インドの要求を支持するもので、採択されれば、インドとの原子力貿易に関して米国に適用されるのと同じ規制及び条件を他のNSG参加国が守らなくて良いことを意味する。」

「ライス長官が議会への約束を守り、他国のインドとの貿易条件が米国の法律と政策で定められたのと同じ基準に従わなければならないようにするため、NSGにおける米国のアプローチを変更するよう私たちは期待する」

「ライスのコメントに対応し、NSGの他の参加国が、インドとの原子力貿易に関するルールの修正に関するいかなる決定も、機微なウラン濃縮、プルトニウム再処理、重水施設または技術の移転を明確に禁止すべきだと主張することを私たちは期待する。NSG諸国は、また、NSG貿易ガイドラインの免除がインドに与えられる場合、それはインドが核実験を再開した場合には、撤回されると定めるよう要求すべきである。」

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NSGで要求すべき条件

ACAのプレスリリースはさらに、ハイド法は幾つかの常識的規制・条件を定めている述べ、以下の例を挙げている。

  • インドが核実験再開したり、保障措置のコミットメントに違反した場合、直ちに、NSGの原子力貿易を中止する。
  • IAEA・インド間の保障措置協定は、民生用の原子力施設、物質、技術などに恒久的に適用されなければならない。
  • 濃縮・再処理、重水製造技術のインドへの移転は明確に禁止する。
  • NSG参加国が提供した核燃料の再処理は、恒久的かつ無条件の保障措置下に置かれた施設以外では認めない。
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日本は?

日本を含む45ヶ国からなるNSGの決定は、コンセンサスでなされる。NSGのガイドラインの変更の最低限の条件として、これらの項目をガイドラインに明記するよう主張することは、ライス長官の米国議会での約束を支持することになる。

CTBTの署名・批准核兵器用核分裂性物質の生産即時停止の約束などは、日本として主張すべき最低条件だろう。

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インドとの民生用原子力協力に関するステートメント案(米国)*

  1. [記入]に開催の[記入]全体会議において、原子力供給国グループの参加国政府は、次のように同意した。参加国政府は:
    • 効果的核不拡散体制及び核拡散防止条約の目的の可能な限りの実施に寄与することを欲し、
    • 核兵器のさらなる拡散を制限することを求め、
    • 条約の外にいる国の行動に建設的な影響を及ぼすメカニズムを追求したいと望み、
    • 平和目的の原子力の研究、開発及び安全な利用を促進することを求め、
    • インドにおける持続的な経済成長及び繁栄のためのクリーンなエネルギー源としての原子力の有望性を認識し、
  2. この点で、参加国政府は、拡散防止体制に寄与するパートナーとしてインドがとった措置に留意し、次のようなコミットメントと行動に関し、インドの努力を歓迎する:
    • IAEAの保障措置下に恒久的に置かれるべき民生用核施設を公に指定したこと
    • 核実験のモラトリアムを続けること、そして、他の国々と核物質生産禁止条約の達成に向けて協力することにコミットしたこと
    • 指定された民生用核施設を対象とする追加議定書を受け入れることにコミットしたこと
    • 機微な核技術の拡散を抑制する国際的努力を支持することにコミットしたこと
    • 多国間で規制された核及び核関連物質、機器、及び技術の移転を効果的に規制することのできる国家輸出規制システムを採用したこと**
    • 原子力供給国グループ・ガイドラインを正式に遵守することに同意したこと
  3. これらの理由のため、参加国政府は、平和目的の保障措置下に置かれたインドの民生用原子力計画との参加国政府による民生用原子力協力に関し、次の方針を採択した。
  4. INFCIRC/254/Part1(改訂)のパラグラフ4(a), 4(b),4(c)に関わらず、参加国政府は、トリガーリストスト品目及び/または関連技術をインドにおける保障措置下の民生用核施設に移転しても良い。ただし、移転を意図する参加国政府が、インドが前述の拡散防止及び保障装置のコミットメントすべて及びNSGガイドラインの他のすべての要件を完全に満たし続けていると満足しているものとする。
  5. 参加国政府は、パラグラフ4(d)に従い、パラグラフ4(a)で言及されている政策の可能な限り早期の実施のために努力し続ける。
  6. NSGポイント・オブ・コンタクト[事務局的国=日本]は、このステートメントを、IAEA事務局長に対し、加盟国すべてに送付するようにとの要請を添えて、提出するよう要請される。
  • *2006年3月22−23日にウイーンで開かれたNSG協議グループの会合に先立って米国がNSG参加国に配布した声明ドラフト(同会合では公式には議論されなかった)。ACAのサイトより。
  • **ヘンリー・ハイド法セクション3に次のようにある。
  • セクション3 政策の表明
    ・・・
  • (b)南アジアに関して──南アジアに関しては以下が米国の政策とする。
    ・・・
  • (4)イランの大量破壊兵器──核兵器能力(核物質の濃縮及び処理能力を含む)及び大量破壊兵器運搬能力を含む──取得のための努力について、イランに放棄するよう働きかけ、孤立させ、そして、必要ならば、制裁措置を講じ、封じ込めるという米国の努力に関し、インドの完全かつ積極的参加を確保する。
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参考


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