核情報

2007.8.12

インドの主張を全面的に飲んだ米印原子力協力協定

米印両政府は、8月3日、米印原子力協力協定の全文を発表しました。予想通り、インド側の主張に大幅に譲歩したもので、核実験・核爆発という言葉は登場しませんが、協定は、インドが核実験を行うことを認めるととれる内容となっています。これは昨年12月に議会が定めた米印原子力協力法の規定を無視するものです。


協定の驚くべき内容

米国原子力法(AEA)」は、核不拡散条約(NPT)の規定する核保有国以外の国(=非核保有国)が、原子力活動全てを国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に置いていない場合には、その国との原子力協力を許さないと定めています。2006年米印原子力協力法は、この輸出規制において、インドだけを例外扱いにしようというものです。その法律が、インドが次に核実験を行った場合には協力は終了するとしています。5月14日に米国の14人の専門家が米国の上下両院の議員に対し出した書簡は「いかなる誤解も残らないようにするために、米印原子力協力協定は、インドによる核実験の再開は、米国の原子力援助の終焉をもたらすと明確に述べなければならない。」と訴えていました。

ところが、発表された協定文では、核実験・核爆発という言葉を避けながら、協定を終了させるには1年前の通告が必要であり、終了を求める原因となる行為(核実験)が安全保障状況や他国(パキスタン・中国?)の行為(実験)対する反応であるかどうかを考慮すべきであるとし、さらに、協力を終了させる行為は両国の関係に重要な影響を与えることを考慮すべきである強調する内容となっています。

協定文には、その上、核実験を行った結果として米国が核燃料供給を中止する措置をとった際には、米国は他の国に働きかけて燃料を供給するようにすると解釈できる文言も入っています。そして、核実験に対する制裁措置として燃料供給が途絶える場合に備えて、核燃料の戦略的備蓄措置をとることを米国が支持すると解釈できる文言もあります。

燃料供給などの面での米国の協力と引き替えにインドが3月2日に約束したのは、基本的に、22基の運転中及び建設中の原発のうち14基を国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に置くということだけです。しかも、6基は外国製であるため元々保障措置が義務づけられているものです。つまり、国産原子炉16基のうち、半分の8基だけを2014年までに保障措置下に置くというのが、インドの「譲歩」の中身です。軍事用プルトニウム生産炉に加えて、国産の残りの8基は、保障措置の対象とせず、軍事用のプルトニウム生産に使う可能性を残し、新たに建設される原発については、保障措置下に置くかどうかインドが好きなように決める、高速増殖炉は、保障措置下に置かないということになっています。発電用のウランの供給について心配がなくなれば、インドは限界のある自国のウラン資源を核兵器用だけに使うことができるようになり、それが核兵器の増強を促すことになる恐れがあります。

協定は、インド限定の保障措置協定を結ぶとしていますが、その内容は不明です。インドが核実験をした結果、核燃料の供給が途絶えた際には、民生用原子炉を保障措置から外すことを認める内容の保障措置協定をインドは望んでいると伝えられています。そもそも、NPTに加盟せず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名もせず、核兵器用の核分裂性物資の生産を続けている国の一部の原発だけ保障措置下に置くということ自体がほとんど意味が無く、IAEAの労力・資金の無駄遣いとさえいえますが、インドの要求をそのまま認める保障措置となれば、保障措置という言葉にまったく値しないものとなるでしょう。CTBTの批准を拒否している米国としてはあまり大きなことは言えないでしょうが、自らもCTBTを批准すると共にインドにもCTBTの署名・批准、核兵器用核分裂性物質の生産中止を迫ることが先決でしょう。

協定が発効するには、インドと国際原子力機関(IAEA)の間の保障措置協定の締結、日本も含めた「原子力供給国グループ(NSG)」の規則の変更、米国上下両院での支持決議などが必要です。インドの側では、インドの核開発に反対する立場、米国との戦略的パートナーシップに反対し外交の独立性を求める立場から協定反対の声も上がっています。従って、今のままの協定文が短期間のうちにすんなり発効することになるというわけではありませんが、安倍首相が8月21日から予定されている訪印の際に何らかのかたちで協定の支持表明をする可能性もあり、日本国内でこの問題についての議論を早急に行う必要があります。

そのような議論の参考にと、次のような順序で問題点をまとめました。

参考

背景

関連している法律・条約・取り決め

  1. 米国1954年原子力法
  2. 原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン
  3. 1995年核不拡散条約(NPT)再検討・延長会議『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』
  4. 1998年 国連安保理決議1172
  5. 2006年「ヘンリー・ハイド米印平和利用原子力協力法」

上記の解説

1.1974年にインドが核実験を行った後、米国は1978年核不拡散法(NNPA)を定め、1954年原子力法(AEA)を修正して、核不拡散条約の規定する核保有国5ヶ国以外の国(=非核保有国)への原子力関連輸出についての規制を強化した。その一つは、原子力関連活動全てを国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に置いている場合にのみ、その国への原子力協力を認めるというもの。つまり、包括的保障措置(全面的保障措置)を輸出の条件にするもの。

 AEAのセクション123は、外国との原子力協力について定めたもの。このため、原子力協力協定は、123協定とも呼ばれる。

 AEAのセクション129は、原子力協力を停止に至らしめる行為について定めている。

2.米国は、主要原子力技術・物質輸出国に働きかけて、原子力供給国グループ(NSG)を設立。NSGは、1977年に輸出規制の対象となる品目リスト(トリガーリスト)と規制方針を定めたガイドライン(紳士協定)を発表。その第2項目が、受領国から核爆発を起こさないとの確約を得ることを定めている。NSGは、1992年に包括的保障措置を輸出の条件とする方針を採用。NSGは現在45ヶ国。現在の議長国は南アフリカ 協議グループ会合は秋にウイーンで開催予定。2008年春に開かれる全体会議でドイツが議長国になる。日本は事務局的役割を果たしている。

 2

供給国は、核爆発装置に繋がるいかなる使用をも明確に除くとの受領国政府の公式の保証があった場合にのみ、トリガー・リストにある品目の移転を許可すべきである。

 4 (a)供給国は、受領国がその現在及び将来の平和利用活動におけるすべての原料物質及び特殊核分裂性物質に対して保障措置の適用が要求されるIAEAとの協定を発効させた場合にのみ、トリガー・リスト品目及びその関連技術を非核兵器国に移転すべきである

 17 第5項にいう再検討から生じる変更を含めて、このガイドラインのいかなる変更も全参加国の同意を必要とする。

3.1995年核不拡散条約(NPT)再検討・延長会議が採択した三つの文書のうちの一つ、『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』は、包括的保障措置の条件を採用した。

12

原料物質若しくは特殊核分裂性物質または特殊核分裂性物質の処理、使用若しくは生産のために特に設計され若しくは作成された設備若しくは資材を、非核兵器国に委譲するために新たな供給取り決めを行う場合は、必要な前提条件として、機関(IAEA)の包括的保障措置を受諾し、かつ、核兵器その他の核爆発装置を取得しないとという国際的に法的な拘束力のある約束を受諾することを要求すべきである。

4.1998年の印パ両国が核実験を行った後、国連安全保障理事会は、決議1172号 (pdf)(1998年6月6日)を全会一致で採択し、インド及びパキスタンに対し、「ただちにその核兵器開発計画を中止」するよう要求すると同時に「核兵器用の核分裂性物質のすべての生産を中止する」よう求めている。日本が共同提案国となっているこの決議はまた、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」している。

5.米印原子力協力法(2006年ヘンリー・ハイド法)は、原子力法(AEA)において、インドを例外扱いにすることを認めるもの。この法律に基づいて、米印原子力協力協定(123協定)が両国の間で結ばれたはずだが、8月3日に発表された協定文は、法律の規定を無視した内容となっている。

ハイド法は、また、協定は、協定文と共に、インド・IAEA保障措置協定と、NSGによる規則変更などの文書を政府が議会に提出し、上下両院の共同支持決議が採択されて初めて発効すると定めている。

参考

米国関連法規

  • 1954年原子力法(改正版)及び2006年米印原子力協力法(ハイド法)

保障措置

☆米国原子力法

米国が外国と原子力協力協定を結ぶ際には、次の要件が含まれなければならないことを定めている。

セクション123a.(2)

非核兵器国の場合は、協力協定の下での米国の原子力供給の継続の条件として、IAEAの保障装置が、その国の領土、その管轄下、あるいは、どこであれ同国のコントロールの下で実施される全ての平和的原子力活動における全ての核物質に関して、維持されるとの要件。

☆米印原子力協力法

次のように定めて、インドが軍事用と民生用の施設の分離などの条件を満たせば、原子力法の上記の要件について、インドを例外とすることを認めている。

セクション104

(a)一般的に、大統領が、サブセクション(b)の判断を行えば、大統領は、

  • (1)1954年原子力法セクション123に従ってアレンジされたインドとの協力協定案に関して、同セクションのサブセクションa.2の要件を免除してもよい。

核実験の際の措置

1)核実験の際の協力の終了

☆原子力法

核実験を行った国や、IAEAの保障措置が有効なかたちで継続されなくなった国への原子力関連輸出を停止することを定めている。

セクション129

核輸出の終了をもたらす行為

核物質・機器または機微な核技術は以下には輸出されないものとする。

(1)1978年3月10日[このセクションの発効日]以後のいかなる時点であれ、以下に該当すると大統領が判断した非核兵器国

  • (A) 核爆発装置を爆発させた
  • (B)IAEAの保障措置を終了させるか放棄した
  • (C)IAEAの保障措置に重要なかたちで違反した
  • (D)原料物質または特殊核物質が関わるとともに核爆発装置の製造または取得にとって直接的意味を持つ活動を実施し、このような活動の終了に向けた十分な進展を意味する措置をとっていない。

☆米印原子力協力法

インドについては、1)2005年7月18日(新たな原子力協力基本合意に関する米印共同声明発表日)以前の核実験やIAEA保障措置違反などと、2)核兵器関連の2005年7月18日以前の活動と今後の継続について、例外とすることを定めている。言い換えると、米印原子力協力法は2005年7月18日以後に核実験を行った場合には、協力は終了することを定めている。

セクション104a

大統領がサブセクション(b)に説明された決定を行った場合、大統領は、

・・・・

(3)

(A)1954年原子力法129(1)D及び(B)2005年7月18日以前に起きた行為に関する1954年原子力法のセクション129の適用をインドに関して免除してもよい。

☆米印原子力協力法両院協議会合同説明的ステートメント(同法通過時に出された上下両院協議会による主旨説明)

インドが核実験を行った場合には協力は終了すると述べている。

この報告書に含まれているセクションごとの分析でさらに明確にされている通り、両院協議会のメンバーらは、インドによる将来の核爆発装置の実験がもたらす法的及び政策的結果について曖昧さを残してはならないと考える。実験の際は、大統領は、米国起源の核物質、核機器、機微な核技術の全ての輸出及び再輸出を終了させなければならない。

2)核物質等の返還

☆原子力法

核実験やIAEAの保障装置終了などの場合には、核物質の返還を米国が持つとの規定を協定に入れることを定めている。

123a(4)(原子力協力協定に含まれなければならない条項の一つ。)

「サブセクション91cに従ってアレンジされた協力協定及び核兵器国との協力協定の場合を除き、協力当事者が、核爆発装置を爆発させるか、IAEAの保障措置を定めた協定を終了させるか破棄した場合に、米国が、移転された核物質及び機器、また、その利用によって製造された特殊核物質の返還を要求する権利を持つとの明記」

☆米印原子力協力法両院協議会合同説明的ステートメント

インドが核実験を行った場合には、核物質等の返還を要求する権利を大統領が直ちに行使することを求めている。

両院協議階のメンバーらは、インドがいかなる理由であれ、核爆発装置を実験するか爆発させた場合、あるいは、その他のかたちでその実験あるいは爆発をもたらした場合、インドがその行為を「平和利用のため」と説明した場合も含め、大統領が、インドへ輸出または再輸出された全ての核関連アイテム、物質、機微な核技術の返還を要求する米国の権利を完全かつ即座に行使することを求める。この法的条件は、原子力法セクション129を超えて、この法律が与える大統領の特別免除権限はインドの実験と共に終了するとの協議会の合意によってさらに強化される。協議会メンバーらは、終了は現行のあるいは未履行の輸出または再輸出ライセンスの停止及び撤回を含み、また、米国起源のアイテム及び物質の返還は米国がインドに輸出または再輸出した核物質、機器、または機微な核技術の使用によってインドが製造した全ての特殊核物質を含むべきと考える。

米印原子力協力協定条文抜粋

(日米原子力協力協定他との比較)

核実験問題

1)協力停止

☆米印原子力協力協定 14条 協力の終了及び停止

1.どちらの当事国政府も、この協定を、その期限終了の前に、他方の当事国政府に対する文書による1年前の通告により、終了させる権利を有するものとする。終了の通告をする当事国は、終了を求める理由を提供するものとする。協定は、文書による通告の日から1年で終了するものとする。ただし、通告をした当事国政府が終了日以前に文書でその通告を撤回した場合はこの限りではない。

2.この協定が本条1項に従って終了させられる前に、両当事国政府は、関連した状況について考慮し、第13条の規定に従い、終了を求める当事国政府の挙げる理由について検討するために、迅速に協議を行うものとする。終了を求める当事国政府は、問題についての相互に受け入れ可能な解決が不可能である、あるいは、協議によっては得られないと判断した場合には、協力を停止する権利を有する。両当事国政府は、協力の終了または停止に至り得る状況について注意深く検討することに同意する。両当事国政府は、さらに、協力の終了または停止に至り得る状況が、一方の当事国政府の、安全保障環境の変化についての深刻な懸念から、あるいは、国家安全保障に影響を与える他の諸国の同様の行為への対応として、生じたものかどうかを考慮することに同意する。

3.一方の当事国政府が、終了を求める通告の理由として、この協定の違反を挙げる場合には、両当事国政府は、その行為が不注意その他によって生じたのものか、あるいは、違反が重大と見なされうるかどうかについて考慮するものとする。いかなる違反も、条約に関するウイーン条約の重大な違反の定義に該当するものでない限り、重大とはみなされない。終了を求める当事国政府が、終了を求める通告の理由としてIAEA保障措置の違反を挙げる場合は、IAEA理事会が違反の判断をしているかどうかが重要な要因となる。

4.この協定の下における協力の停止に続き、どちらの当事国政府も、この協定の下で移転されたいかなる核物質、機器、非核物質あるいは構成部分についても、また、その使用によって製造されたいかなる特殊核分裂性物質についても、返還を要求する権利を有するものとする。返還の権利を行使しようとする当事国政府による通告は、この協定の終了日またはそれ以前に他の当事国政府に送られるものとする。通告は、この協定の対象となるアイテムのうちのどれについて当事国政府が返還を求めるかについての説明を含むものとする。第16条3の規定で定めてある場合を除き、この協定に関連する他の全ての法的義務は、問題の当事国の領土に残っている核アイテムに関しては、この協定の終了とともに適用されなくなるものとする。

5.両当事国政府は、返還の権利の行使は、両国政府の関係に重大なる影響を与えることを理解する。どちらの当事国政府であれ、本条の第4項に関連した権利の行使を求める場合、第4項で触れられている核アイテムを他の当事国の領土あるいはそのコントロールから撤去するのに先立ち、他の当事国政府と協議を行うものとする。このような協議は、エネルギー安全保障の手段としての平和目的原子力の入手可能性に関連して、問題の当事国政府の原子炉の継続的運転の重要性を特に考慮するものとする。両当事国政府は、この協定の下で始められ、継続中の契約及びプロジェクトで、それぞれの当事国政府の原子力プログラムにとって重要性を持つものに対してこのような終了が与えるマイナスの影響の可能性について考慮するものとする。

2)供給保証問題

☆米印原子力協力協定 5条6

  • (a) 米国は、インドに対し、信頼性のある燃料供給へのそのコミットメントを伝えた。2005年7月18日の共同声明に従い、米国は、インドがその原子炉の燃料に対する保証された完全なアクセスを持つために必要な条件を作り出すとのその保証を再確認した。2005年7月18日の共同声明の実施の一環として、米国は、国内法の修正について米国議会の同意を求めること、また、数カ国の企業からの燃料供給への信頼性のある、絶え間ない、そして、継続的なアクセスを含め、インドが国際的な燃料市場への完全なアクセスを得るための必要な条件を作るために核供給国グループの慣行を調整するために友好国及び同盟国と協力することにコミットしている。
  • (b) 燃料供給のいかなる中断も起こらないようにするため、米国は、以下の追加的措置をとる用意がある。
    • i) 米国は、米国原子力法セクション123の下での平和的原子力の使用に関する米印2国間協定−−米国議会に提出されることになる−−において燃料供給に関する保証を組み入れる用意がある。
    • ii) 米国は、インドと共に、インド限定(India-specific)の燃料供給協定についてIAEAと交渉することを求める。
    • iii) 米国は、インドの原子炉の寿命を通して中断が起こらないようにするため、戦略的核燃料備蓄を設けるというインドの努力を支持する。
    • iv) これらの取り決めにもかかわらず、インドへの燃料供給に中断が生じた場合、米国とインドは、共同で、インドへの燃料供給を回復するための手段を追求するため、ロシア、フランス、英国などを含む友好的供給国グループを招集する。
  • (c) 上の米国の理解に照らし、いかなるときにも民生用使用から保障措置下の核物質の撤去が起きないような保障措置を定めるともに、外国の燃料供給の中断が生じた際にその民生用原子炉の継続的な運転を保証するためにインドが是正措置を講じることを定めたインド限定有(India-specific)の保障措置協定についての交渉がインドとIAEAの間でなされる。これを考慮し、インドは、その民生用原子力施設をインド限定の永続的保障措置に置き、この目的のためにIAEAと適切な保障措置協定を交渉する。

核情報注

上の文言は、分離計画に関するシン首相のインド議会でのステートメント(2006年3月6日)にあったものでる。このステートメントでは、

「分離計画に関して検討された主要な問題の一つは、タラプールの燃料の供給の中断に関する我々の不幸な過去の経験からいって、燃料供給の信頼性を保証する必要だった。我々は、米国から、保障措置下に置かれる原子炉についてインドへの信頼性のある供給のコミットメントを得た。」

に続いて、上記5条6(a)−(c)がほぼそのまま述べられている。タラプールの燃料の供給の中断とは、タラプールにある米国製の原子炉への燃料供給が1974年の核実験の後途絶えたことを指している。つまり、米印原子力協力協定5条6(a)−(c)は、インドが核実験を行っても、米国が燃料供給を保証することを誓っていると読める。

☆米印原子力協力法

米国がインドとの協力を中止した場合には、外国にも中止を働きかけることを定めている。

セクション103 政策の言明

(a)全般的に、以下を米国の政策とする。

・・・・

(6)この法律、1954年原子力法((42 U.S.C. 2011 et seq.)、あるいは米国の他の法律に関連してある国への核移転が停止または終了されられた場合には、NSGの他の参加国政府あるいは他のいかなるソースからの核機器、物質あるいはテクノロジーのその国への移転についてもこれを防ぐよう務める。

*日米原子力協力協定

核実験・協力停止及び返還関連条項

この協定に基づいて移転された資材、核物質、設備及び構成部分並びにこれらの資材、核物質、設備若しくは構成部分において使用され又はその使用を通じて生産された核物質は、いかなる核爆発装置のためにも、いかなる核爆発装置の研究又は開発のためにも、また、いかなる軍事的目的のためにも使用してはならない。

第12条

1 いずれか一方の当事国政府が、この協定の効力発生後のいずれかの時点において、

(a) 第3条から第9条まで若しくは第11条の規定若しくは第14条に規定する仲裁裁判所の決定に従わない場合又は(b) 機関との保障措置協定を終了させ若しくはこれに対する重大な違反をする場合には、他方の当事国政府は、この協定の下でのその後の協力を停止し、この協定を終了させて、この協定に基づいて移転された資材、核物質、設備若しくは構成部分又はこれらの資材、核物質、設備若しくは構成部分の使用を通じて生産された特殊核分裂性物質のいずれの返還をも要求する権利を有する。

2 アメリカ合衆国がこの協定に基づいて移転された資材、核物質、設備若しくは構成部分又はこれらの資材,核物質、設備若しくは構成部分において使用され若しくはその使用を通じて生産された核物質を使用して核爆発装置を爆発させる場合には、日本国政府は、1に定める権利と同じ権利を有する。

3 日本国政府が核爆発装置を爆発させる場合には、アメリカ合衆国政府は、1に定める権利と同じ権利を有する。

16条3

3 いかなる理由によるこの協定又はその下での協力の停止又は終了の後においても、第1条、第2条4、第3条から第9条まで、第11条、第12条及び第14条の規定は、適用可能な限り引き続き効力を有する。

核拡散防止の義務に違反した国家との原子力協力の一時停止または終止を定めている。

14 (c)

1以上の供給国が、このガイドラインに基づく供給国・受領国の了解事項に違反があったと信じる場合、特に核装置の爆発または受領国によるIAEAの保障措置の違法な終了または違反があったと信じる場合には、供給国は、違反の真偽と程度を決定し、評価するため、外交上の経路を通じて迅速に協議を行うべきである。供給国は、また、IAEAに申告されていない核物質または核燃料サイクル活動、あるいは、核爆発活動が明らかになった場合には、協議することが望まれる。
・・・

このような協議による事実認定をふまえて、供給国は、IAEA憲章第12条に留意しつつ、当該受領国への核物質の移転終了を含みうる適切な対処及び可能な行動について合意すべきである。

再処理の権利、了承問題

☆米印原子力協力協定 6条 核燃料サイクル活動

iii) 2005年7月18日の両当時国政府の間の共同声明で構想された完全な民生用原子力協力を実施するため、両当事国政府は、互いに、この協定に従って移転された核物質及び移転された核物質、非核物質、あるいは機器で使用された、あるいは、製造された核物質及び副産物を再処理すること、あるいは、その他のかたちでその形状または内容を変更することについて、了承を与える。これらの権利を実行に移すため、インドは、IAEAの保障措置の下で保障措置の施された核物質を再処理するためだけの新しい国家再処理施設を設立し、両当事国は、この新しい施設においてこのような再処理、あるいは、他の形状または内容の変更が行われるアレンジメント及び手続きについて合意する。

アレンジメント及び手続きに関する協議は、いずれかの当事国政府による要請から6ヶ月以内に始められ、1年以内に締結するものとする。両当事国政府は、上記の活動に関連した全ての施設に対し、IAEAの保障措置が適用されることに合意する。これらのアレンジメント及び手続きは、この協定の第8条に規定された物理的防護基準、第7条に規定された貯蔵基準、それに、第11条に規定された環境保護に関連した規定及び両当事国政府によって合意された他の規定を含むものとする。分離される特殊核分裂性物質は、IAEAの保障措置下の国家施設でのみ利用されるものとする。

核情報注 分離されたプルトニウムは、IAEAの保障措置下の国家施設でのみ利用されるとあるが、利用されるのは高速増殖炉のはず。米印が合意した分離計画では、高速増殖炉は保障措置下に置かないことになっている。

参考

*日米原子力協力協定

第5条

1 この協定に基づいて移転された核物質及びこの協定に基づいて移転された資材、核物質若しくは設備において使用され又はその使用を通じて生産された特殊核分裂性物質は、両当事国政府が合意する場合には、再処理することができる。

第11条

第3条、第4条又は第5条の規定の適用を受ける活動を容易にするため、両当事国政府は、これらの条に定める合意の要件を、長期性、予見可能性及び信頼性のある基礎の上に、かつ、それぞれの国における原子力の平和的利用を一層容易にする態様で満たす別個の取極を、核拡散の防止の目的及びそれぞれの国家安全保障の利益に合致するよう締結し、かつ、誠実に履行する。

*原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定第11条に基づく両国政府の間の実施取極

第1条

1(a) 両当事国政府は、協力協定第3条から第5条までの規定に基づき、次の活動について、ここに合意する。

(i) 附属書1に掲げるいずれか一方の当事国政府の領域的管轄内にある施設における再処理及び形状又は内容の変更

核情報注

1968年日米原子力協力協定では、再処理・プルトニウム輸送については、毎回米国の事前承認を得る必要があった。1988年協定では、あらかじめ指定した再処理工場での再処理については、一括して再処理を認める内容(包括同意方式)となった。これは、日本や「欧州原子力共同体(ユーラトム)」の国々など一部の米国の友好国のみに認められたものであり、これらの国々は、NPTに加盟して核兵器を持たないと約束し、全ての原子力施設をIAEA保障措置下に置いている。

参考

機微な技術の移転問題

☆米印原子力協力協定

 5条2
機微な原子力技術、重水製造技術、機微な原子力施設、重水製造施設及びこのような施設の主要重要構成部分は、この協定の下で、この協定の修正に従い移転してもよい。濃縮、再処理または重水製造施設に使われうる二重用途アイテムの移転は、両当事国のそれぞれの適用可能法規及びライセンス政策に従うものとする。

☆米印原子力協力法 

以下のような特別の例外的な場合にのみ、機微な技術の移転が許されるとしている。

104d(4)(B)
  • (i)最終利用者が以下の場合:
  • (I)一国の核燃料サイクル能力に代わるものを提供するためにIAEAが承認したプログラムに参加している多国籍施設、または、
  • (II)拡散抵抗性の燃料サイクルを開発するための二国間または多国間プログラムに参加している施設で、輸出、再輸出、移転、または、再移転が、同プログラムと関連している。
  • (ii) (i)で言及されたいかなる施設においても、1978年核不拡散法((22 U.S.C. 3203(5))のセクション4(5)に規定された機微な核技術が、IAEA保障措置下にない人、サイト、施設、場所、または、プログラムに転用されないよう保証するための適切な措置が講じられている。そして、
  • (iii) 輸出、再輸出、移転、または再移転が核爆発装置の製造または取得、あるいは、軍目的の核分裂性物質の製造を助けない。

*日米原子力協力協定

2条1(b)

(a)の規定にかかわらず、秘密資料及び機微な原子力技術は、この協定の下では移転してはならない。

・・

 機微な原子力技術の定義

1条(j)

(j) 「機微な原子力技術」とは、公衆が入手することのできない資料であつて濃縮施設、再処理施設又は重水生産施設の設計、建設、製作、運転又は保守に係る重要なもの及び両当事国政府の合意により指定されるその他の資料をいう。

核情報注

東海村の「リサイクル機器試験施設(RETF:Recycle Equipment Test Facility )」(高速増殖炉燃料用再処理試験施設:建設中断)に米国から「機微な技術」が移転されたとグリーンピースが1994年に指摘した問題については次を参照:

1963年米印原子力協力協定問題

1963年協定に基づいて米国からインドに輸出されたタラプールの原子炉の使用済燃料について、新協定は何も述べていない。1963年の協定は、1993年に期限切れとなっている。ACAのダリル・キンボール事務局長らは、

「インドは、この使用済燃料からプルトニウムを抽出し民生用原子炉の燃料として使うと述べている。しかし、この原子炉級プルトニウムは、分離されてしまえば、核爆発装置に使うことができ、タラプールの使用済燃料から数百発分のプルトニウムが取り出せる1963年の協定の下でインドは使用済燃料の再処理について米国の承認を得なければならない。しかし、インドは、協定の期限が切れているからインドは同協定の下での核不拡散のいかなるコミットメントも維持する法的義務を負っていないとの立場をとっている。」

と警告している。

☆米国原子力法

過去に輸出されたものについても次のように規定している

セクション127 米国の各輸出に関する基準

(2)輸出の提案されている、あるいは、過去に輸出されたこのような物質、施設、または機微な核技術、あるいは、このような物質、施設、または、機微な核技術で適用の協力協定の対象となっているものは、いかなる核爆発装置のために、あるいは、いかなる核爆発装置の研究または開発にも使ってはならない。

*日米原子力協力協定

第13条

1 旧協定は、この協定が効力を生ずる日に終了する。

2 旧協定の下で開始された協力は、この協力の下で継続する。旧協定の適用を受けていた核物質及び設備に関し、この協定の規定を適用する。第11条に定める別個の取極による合意がこれらの核物質又は設備について停止された場合には、当該核物質又は設備は、その停止期間中、旧協定によつて規律されていた限度においてのみこの協定の規定の適用を受ける。

保障措置

☆米印原子力協力協定

 10条 保障措置
2 この協定の第5条6を考慮し、この協定に基づいて米国からインドに移転された核物質及び設備並びに同様に移転された核物質、非核物質、設備若しくは構成部分で使用され又は生産された核物質は、インドとIAEAの間のインド限定の保障措置協定[データを示す]及び追加的議定書が発効したとき、それらに従い、永続的に保障措置を受けるものとすることにインドは同意する。

3 この協定に基づいて米国に移転された核物質及び設備並びに同様に移転された核物質、非核物質、設備若しくは構成部分で使用され又は生産された核物質は、1977年11月18日にウイーンで締結され、1980年12月9日に発効した米国における保障措置に関する米国とIAEAの間の協定の適用を受け、また、追加的議定書が発効した場合には、その適用を受けるものとする。

核情報注

協定文はインドと米国の義務を基本的に同様にして、両国が対等であることを示している。米国は核保有国として、自発的に平和利用原子力施設に関する保障措置協定を締結している。つまり、協定文は、NPT上の核保有国と同等の地位を得ようとするインド側の意図に従ったものとなっている。インド限定の保障措置というのがどのようなものを意味するかは言明されていない。

*日米原子力協力協定

第10条

1 第8条2の規定の遵守を確保するため、

  • (a) この協定に基づいて日本国政府の領域的管轄に移転された核物質及びこの協定に基づいて日本国政府の領域的管轄に移転された資材、核物質、設備若しくは構成部分において使用され又はその使用を通じて生産された核物質は、第2条2(a)に規定する日本国政府と機関との間の協定の適用を受ける。
  • (b) この協定に基づいてアメリカ合衆国政府の領域的管轄に移転された核物質及びこの協定に基づいてアメリカ合衆国政府の領域的管轄に移転された資材、核物質、設備若しくは構成部分において使用され又はその使用を通じて生産された核物質は、(i)第2条2(b)に規定するアメリカ合衆国と機関との間の協定並びに(ii)当該核物質の実施可能な範囲内での代替のため又は当該核物質の追跡及び計量のための補助的措置の適用を受ける。

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