核情報

2008. 7. 24〜

インド内閣信任決議可決で米印原子力協力にはずみか
 名ばかりの保障措置協定

7月22日、インド下院において、米印原子力協力の発効を目指すシン内閣信任決議案が、可決されたと各紙が伝えています。シン首相が、協定に反対の態度を取っている左派政党の閣外協力を諦めて、「国際原子力機関(IAEA)」の理事会にIAEAとの保障措置協定案を提出を許可したため投票となりました。同協定案は、インドの核実験再開阻止のための規定がないうえ、保障措置の対象となる民生用施設のリストさえも入っていないものです。

IAEAの理事国になっている日本は、このような保障措置協定を認めるのでしょうか。また、基本的にNPT加盟国以外への核物質・技術の輸出を禁じた「原子力供給国グループ(NSG)」のメンバーでもある日本は、同グループの規則変更を認めるのでしょうか。今後の米印原子力協力協定発効に向けた動きと、8月1日のIAEA理事会で検討される予定の保障措置協定案の問題点をまとめました。

*信任投票関連記事

*米印原子力協力協定解説記事







米印原子力協力協定発効に向けた動き

インド下院の信任決議案の投票結果は、賛成275票、反対256票、棄権10票でした。投票に絡んで賄賂が支払われたとの話があり、インド国内ではまだひと波乱あるかもしれませんが、これで協定発効に向けた手続きの基礎固めができたと米印原子力協力協定推進派が見ていることは確かです。

これからどういう動きがあるか確認しておきましょう。米印原子力協力協定(2007年7月合意)の発効には、次の三つの措置が必要です。

1)インドとIAEAの間の保障措置協定についてのIAEA理事会の承認

インドは、2006年3月、運転・建設中の国産発電用原子炉16基のうち8基だけを2014年までに国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に置くと宣言しているが、この8基についてインドとIAEAの間の保障措置協定が締結されなければならない。(外国製6基については、元々保障措置の下に置かれることになっている。)保障措置協定案が2008年7月9日、IAEA理事会に提出された。

*他の国産原子炉、高速増殖炉、プルトニウム生産炉は保障措置下に置かれない。軍事用核物質生産をまったく規制しない現在の条件では、ウラン不足に悩むインドは、民生用には外国からウランを輸入して使い、そこで浮いた国内産ウランを軍事用に回すことで核兵器の年間生産量をこれまでの数倍に増やせる

2)「原子力供給国グループ(NSG)」によるインド例外扱いの承認

日本も含む45ヶ国からなる「原子力供給国グループ(NSG)」は、自国の原子力活動にかかわる核物質すべてを対象とする包括的保障措置協定をIAEAとを結んでいない国への原子力関連輸出を認めていないため、この規則の改定が必要。

3)米国の議会上下両院による米印協定支持決議

米国の米印原子力協力促進法(2006年12月)が、米印原子力協力協定の発効には、1)と2)の後に、両院の支持決議が必要と定めている。

1.IAEA理事会の承認

IAEA理事会は、8月1日に予定されている。これに先立ち、IAEAは、7月25日に理事国に保障措置協定の技術的問題について説明することになっている。

7月9日にインドがIAEAとの保障措置協定案をIAEA理事国に提示してからわずか3週間ほどの8月1日に協定案について決定しようというのは、異常に早いペースである。パキスタンは、7月15日、IAEA理事会とNSGのメンバー国に送った書簡 (原文)で、理事会の日程について次のように不満を表明している。(パキスタンは末尾のリストにあるように現在IAEAの理事国。)

保障措置協定は、理事会に対し2008年7月9日に伝達された。理事会の規則によれば、協定は早くとも、この45日後に初めて検討されうる。つまり、2008年8月25日である。協定の検討は、2008年8月1日に予定されている理事会のアジェンダに載せることはできない。

理事会のメンバーとなっている日本は、どう動くのだろうか。

2.NSGによるインド例外扱いの承認

NSGについては、協議グループの会合を9月に開いた後、10月に総会を開いてコンセンサスのルールに基づいて決定というのが一般的な見方だが、NSGの承認を8月中に済ませるように米国が働きかけているとの情報がある。

なお、NSGでは、現在の協定案のままでインドを例外扱いするのを認めることを嫌っている国々があって複数の規制免除文案が出回っているとするインドのメノン外相の発言をインドの『エコノミック・タイムズ』紙(2008年7月22日)が報じている。インドの現在の核実験モラトリアムを法的な要件とし、インドを「核不拡散条約(NPT)」または「包括的核実験禁止条約(CTBT)」によって拘束する条項が提示される可能性をインド政府関係者は予測しているという。さらに、少なくとも、核兵器用核分裂性物質の生産停止を条件とすべきだというのも、当然の主張だろう。

日本政府はどう動くのだろうか。

3.米国の議会上下両院による米印協定支持決議

米国議会は9月には次期大統領の就任する来年1月まで閉会される。閉会までに上の2つの段階を終わらせてブッシュ政権中に協定を発効させるのは困難と見られている。しかし、上述のように、NSGの手続きが8月に完了するのなら、9月に議会で支持決議が出される可能性もある。

また、米国民主党の大統領候補オバマ上院議員が、インドの週刊誌『アウトルック』(2008年7月21日号)とのインタビューで、米印原子力協力協定の「変更を求めることには消極的だ」と述べている。マケイン候補は既に協定支持の立場を表明しており、新政権で米印協定成立かとの声が聞かれる。もっとも、オバマ上院議員は、2006年に議会で、インドの核実験を抑止するように協定を運用するべきだと主張しており、今回の発言は、インド系米国人の票を意識した大統領選挙前のリップサービスで、大統領になったらまた違う立場をとるだろうとも言われている。

インドとIAEAの保障措置協定案の問題点

元々、NPT加盟国以外への核関連物質・技術の輸出を禁止した米国の国内法もNSGも、1974年にインドが行った核実験を契機に出来たものです。インドは、「平和利用目的」で入手したカナダ製の原子炉サイラスで米国製の重水を使ってプルトニウムを生産し、これを材料として核実験を行いました。その後1998年にも核実験を行ったうえ、核物質・核兵器の製造を続けているインドを国内法やNSGの例外扱いにしようという米印原子力協力協定は、矛盾に満ちたものですが、ここでは、インドとIAEAの間の保障措置協定自体の問題点を二つ挙げて整理しておきます。

1)保障措置の対象リスト

保障措置の対象となる施設のリストが保障措置協定案には存在しない。協定案は、リストに入れるべき施設をインドが指定するとその施設について協定が発効し、リストは逐次拡大されると規定している。

2)保障措置の永続性と核実験

(1)インドが核実験を行い、その制裁措置として燃料供給が断たれた場合に、インドが「是正措置」として、保障措置を終わらせる可能性が残されている。

(2)しかも、保障措置協定案は、上のような場合に備え、インドが原子炉の寿命期間全体を賄うのに十分な燃料を輸入・備蓄しておくことを認める内容となっている。米国の米印原子力協力推進法は、このような場合には、燃料の返還を要求する権利を米国が持つものとすると定めている。

問題点1 保障措置の対象リスト

どの施設をいつから保障措置の対象とするか全く規定しない保障措置協定案は、検討に値しない代物と言える。

IAEA事務局が理事会諸国に2008年7月9日に送ったインドとの保障措置協定案に添えられた説明文(pdf)は次のように述べている。

4.インドの要請により、文案は、協定を「一括協定(umbrella agreement)」として使う規定を含んでいる。文案のパラグラフ14は、インドによって「機関」[IAEA]に通告された施設がこの協定の下での保障措置の対象となるとしている。このような施設は、協定の「アネックス(付属書)」にリストアップされることになる。アネックスは、インドが追加的な施設について「機関」に通告するごとに公表され、アップデートされる。[後略]

協定文案の主文には次のようにある。

通告
パラグラフ14

(a) インドは、インドのみによる決定を基に、パラグラフ13で言及されている「申告」においてインドが指定した施設、あるいはインドが決定する他の施設を、「機関」の保障措置のために提供するとの決定を「機関」[IAEA]に対し文書で通告する。このようにしてインドにより通告された施設は、このようなインドからの文書による通告の「機関」による受領日付でアネックス(付属書)に含まれ、この協定の対象となる。

アネックスは次のようになっている。

アネックス



インド政府と国際原子力機関の間の民生用原子力施設に対する保障措置の適用に関する協定の下での保障措置対象施設リスト
  インドが保障措置の対象
として提供した施設
通告の受領日
   
   
   

Text of India-IAEA Safeguards Agreement July 9, 2008(pdf) の23ページ(空っぽの表)

IAEA事務局の説明文によると、このようなインドの気分次第で提供される施設の保障措置でも、2009年には1施設当たり、120万ユーロ(2億400万円)もかかるとのことである。殆ど意味のない行為にこんな大金をかけるのはばかげている。

問題点2.保障措置の永続性と核実験

米印原子力協力協定5条6項は「インドは、その民生用原子力施設をインド限定の永続的保障措置下に置き、この目的のためにIAEAと適切な保障措置協定を交渉する」と定めている。ある施設を保障措置の下に置くということは、その施設が永遠に核兵器用に使われないことを誓うことを意味する。それと引き換えに、原子力協力を得るのである。

ところが、協定案は、核実験の制裁措置として、核燃料の供給が途絶えたら、施設を保障措置から外すことを許す内容となっている。核実験という言葉は出てこないが、外国からの燃料の供給が途絶える場合として想定されているのは、核実験再開に対する制裁措置の結果だろう。その場合に、インドは「是正措置」を講じて良い。また、供給の途絶に備えて、燃料の備蓄をして良い。つまり、核実験の際に諸国が制裁措置を講じるなら、その対抗措置として、インドは、施設を保障措置の対象から外し、保障措置を担当するIAEAの査察官を施設から追い出す可能性があるということだ。また、インドは制裁措置に備えて燃料備蓄を貯えておくという。要するに、核実験の制裁措置を講じにくくするとともに、制裁措置が発動された場合にはその影響を最小限にする規定である。保障措置協定案は、核実験に対する抑止効果を持たないのである。

保障措置協定案の前文に次のようにある。

インド限定の保障措置協定(以下「本協定」)の下における「機関」[IAEA]の保障措置についてのインドの同意の不可欠の基礎は、国際的燃料市場へのアクセスを獲得するために必要な状況を作り出す国際協力の取り決めの締結である。この状況には、数ヶ国の企業からの燃料供給への信頼できる、不断の、継続的なアクセス、インドの原子炉の寿命期間における供給の途絶に対処するための核燃料の戦略的備蓄を用意しようというインドの取り組みに対する支持が含まれる。

インドは、外国の燃料供給の途絶の際には、その民生用原子炉の継続的運転を保証するために是正措置を講じても良い。

そして、主文パラグラフ32にには次のようにある。

32.アネックス(付属書)に記載されている施設の保障処置は、その施設が保障措置の観点から言って関連のある核活動に使えないとインドと「機関」が合同で決定したのちに、停止されるものとする。[後略]

この問題について、インドのカコドカール原子力委員会委員長は、ヒンドゥー紙(2008年7月20日付け)インタビューで、次のように説明している。

「インド限定の保障措置協定(ISSA)」というのは、インドが民生用と指定する施設に限られた「一括文書(umbrella-document)」です。我々が、どの施設であれ、それを民生用と指定するのは、その施設が完全な民生用原子力協力から恩恵を被るということを条件としています。これは、我々が、民生用と指定し、ISSAの下の保障措置下に置く原子炉は、完全な、保証された燃料供給を外国から得るということを意味します。我々は、また、原子炉の運転寿命期間全体を通して使える[燃料の]ストックを蓄えることと、我々が是正措置を取りうることについての規定を入れました。だから、永続的保障措置についての同意は、[燃料の]永続的な保障措置に基づいてなされたものなのです。

この是正措置は、私が、特定されていない主権行動と表現しているものです。我々は、適切な時点で[これらの行動について]決めることができます。

☆米印原子力協力法両院協議会合同説明的ステートメントは、インドが核実験を行った場合には、核物質等の返還を要求する権利を大統領が直ちに行使することを求めている。

両院協議階のメンバーらは、インドがいかなる理由であれ、核爆発装置を実験するか爆発させた場合、あるいは、その他のかたちでその実験あるいは爆発をもたらした場合、インドがその行為を「平和利用のため」と説明した場合も含め、大統領が、インドへ輸出または再輸出された全ての核関連アイテム、物質、機微な核技術の返還を要求する米国の権利を完全かつ即座に行使することを求める。この法的条件は、原子力法セクション129を超えて、この法律が与える大統領の特別免除権限はインドの実験と共に終了するとの協議会の合意によってさらに強化される。協議会メンバーらは、終了は現行のあるいは未履行の輸出または再輸出ライセンスの停止及び撤回を含み、また、米国起源のアイテム及び物質の返還は米国がインドに輸出または再輸出した核物質、機器、または機微な核技術の使用によってインドが製造した全ての特殊核物質を含むべきと考える。

パキスタンからIAEA理事会国及び原子力供給国グループ参加国に送られた書簡

(2008年7月15日付、原文

IAEAパキスタン政府代表部

2008年7月15日

1.ご存じかとは思いますが、「国際原子力機関(IAEA)」は、最近、提案されているインドとIAEAの間の保障措置協定の草案を配布しました。

2.同協定は、IAEAの理事会(BOG)によって、そして、そのあと、「原子力供給国グループ(NSG)」によって検討されることになっています。IAEA理事会とNSGにおいて急いで協定を通過させようとの試みがなされているようです。

3.この点において、以下の点を考慮する必要があります。

(i) 保障措置協定は、理事会に対し2008年7月9日に配布された。理事会の規則によれば、協定は早くとも、この45日後に初めて検討されうる。つまり、2008年8月25日である。協定の検討は、2008年8月1日に予定されている理事会のアジェンダに載せることはできない。

(ii)理事会が、この45日ルールの適用免除を認めることを正当化する技術的理由も実際的理由も存在しない。45日ルールは、どの保障措置協定であれ、その内容と意味合いを慎重に検討し、協定が、非転用についての信頼できる検証という協定締結の目的を果たすよう保証するためのものであり、インドあるいは米国の政治的急迫事情は、理事会が同規則の適用を免除する十分な理由とはならない。

(iii)それどころか、インドとIAEAの間の協定のユニークで例外的な内容から言って、理事国に対し、承認検討の前に協定について慎重に精査する時間を与えることが必要である。

(iv)理事会による保障措置協定の承認の要件は、単なる形式的行為とみなしてはならない。理事会は、これまでの協定について修正したり、拒否したりしようとしたことはないが、これは、これまでのものがこのような協定のための既存のモデル(INFCIRC 66/Rev.2、INFCIRC 153、それに、NPTの定める核保有国との間に締結される自発的協定)(注1)にほぼ従っているからである。インドとIAEAの間の協定は、これらのモデルのどれにも従っていない。協定は、様々なモデルの条項を反映したユニークな合成物である。

(v)同協定は、従って、注意深い検討を必要とする。これは、とりわけ、同協定が、NPTに加盟せず、軍事的核計画を持っている他の国々のための前例を作るものとなりそうだという理由による。

(vi)協定案は、インドを「先進的核技術」を有する国と認定するものとなっている。「先進核技術」国について合意された定義がないにも関わらずである。

(vii)協定のもっとも憂慮すべき点は、その前文に、2005年7月18日の印米共同声明についての言及があり、それが反映されていることである。協定(全文第9パラグラフ、第2項)は、インドの「民生用と軍事用の核施設を指定し、分離する」「用意」について具体的に触れている。つまり、IAEA理事会は、インドの核兵器国としての地位を認め、受け入れるよう求められているのである。

(viii)この前文での言及は、それ自体がユニークなものである。なぜなら、他のこの種の協定では、類似の条項が存在しないからである。前文は、協定の目的と矛盾する。目的は、平和的核活動が核兵器の拡散に寄与しないよう保証することにある。つまり、協定をその前文で触れられている「指針文書類guidance documents」に従うものにするためには、協定の前文部分における印米共同声明への言及は削除しなればならない。

(ix)さらに、INFCIRC 66/Rev.2型の協定は、これまで、「個別施設」対象のものとなっている。一方、この協定は、「一括協定」と表現されている。保障措置の対象とすべき施設がリストアップされていない。対象施設は、インドが通告するごとに、保障措置協定に追加されることになっている。これは、当然の疑問を提起する――保障措置の対象とすべき施設が知られてないとすると、協定は何のためのものか。

(x)インドが、その高速増殖炉とトリウムを基礎とする開発計画を保障措置下に置くことを拒否しているにも関わらず、協定案は、インドの3段階の原子力計画(注2)を認めている。これは、潜在的核拡散の不必要な正当化であり、IAEAの目的に反するものである。

(xi)このような懸念は、協定の他の条項のために、さらに増幅する。とりわけ、以下のものがそうである。(a)保障措置協定の終了の条件についてのあいまいな条項、(b)国際的燃料市場へのアクセス、(c)「民生用原子炉の継続的運転を保証する」ためにインドが取ることを許されるという、特定されていない「是正措置」――IAEAの保障措置の永久的な継続に反する。

(xii)その結果、インドは、申告した民生用施設のために核燃料を取得し、これらの原子炉の寿命期間全体の「戦略的備蓄」を構築し、そして、保障措置を終了させて、燃料の一部を核兵器目的に転用することができるようになる。

(xiii)協定は、実際、核実験の再開のインセンティブをインドに提供するかもしれない。なぜなら、十分な燃料を貯め込んだあとで、保障措置協定を終了させるという方法は、民生用と核兵器用の両プログラムの核物質の不足に関連したインドの問題を解決することになるだろうからである。しかし、協定は、核実験再開が平和利用原子力協力と保障装置協定の終了をもたらすということさえ規定していない。

(xiv)終了の基準として、「部外秘文書」GOV/1621(1973年8月)(注3)に言及しているというのは、十分ではない。理事会は、秘密の条項のついた協定を承認することはできない。保障措置協定の終了の条件を明示的に入れることが決定的に重要である。

(xv)協定には、懸念を呼ぶ条項が他にもある。例えば、パラグラフ28は、「保守または修理のために取り外された施設の部分」に関する保障措置の一時停止について規定している。これは、インドに提供された核燃料や先進技術が核兵器のために転用される道を開くことになりうる。

(xvi)協定案は、インドがその民生用核施設についてIAEAの追加議定書に署名する用意があるのかどうかを示していない。

(xvii)協定案の法的・技術的側面は、徹底的検討を必要としており、IAEA理事会及びNSGは、原則を無視してご都合主義に屈服することから生じうる影響について慎重に検討する必要がある。

(xviii)IAEA憲章は、政治的考慮に基づいて加盟国を区別することを認めておらず、また、特定の国を特別扱いすることを許していない。従って、この協定をインド限定の協定と呼ぶことは、前例のないことである。IAEAは、認められたモデルに基づいて保障措置協定を結ぶことから言って、インドに関して理事会が採択する保障措置協定は、他の非NPT国家のモデルとして使えることが重要である。

(xix)提案されている協定が、核不拡散の目的を推進する上で、役に立たないことは明らかである。

そして、核不拡散体制に与える影響とは別に、この協定は、インド亜大陸における核軍拡競争の可能性を高める恐れがある。

4. 上述したことから明らかなように、提案されているIAEA・インド協定、そして、インドだけをNSGの規則の例外にするようにという不当な要請は、差別的であり、危険なものです。IAEA理事会とNSGでこの協定を押し通そうとする攻勢に抵抗することが重要です。協定の短期的及び長期的影響を考えるなら、テキストを慎重に検討すること、そして、その上での決定は、完全な審議の後に行われることが必要です。この点で、考慮すべき最も重要なポイントは、非差別と公正の原則を守ること、そして、地域的及び世界的な平和と安定です。

5. パキスタンは、理事会において協定が検討される際には、理事会の他のメンバーがこの協定の綿密な研究に基づきパキスタンとともに適切な修正を求めるように願っております。

6.閣下に敬意を表します。

署名

シャハバーズ

大使・常駐代表

IAEA理事会メンバー国及び原子力供給国グループ・メンバー国大使/常駐代表へ



核情報注

  1. 3種類のIAEA保障措置協定
    • 1)INFCIRC/153型保障措置協定(INFCIRC/153-type agreement)
       NPT加盟の非核兵器国用。
       平和的な原子力活動に係るすべての核物質を対象とした保障措置協定。
       「フルスコープ保障措置協定」または「包括的保障措置協定」とも呼ばれる。IAEA作成の文書INFCIRC/153がモデル。INFCIRC/153は、1972年に理事会が承認。
    • 2)INFCIRC/66型保障措置協定(INFCIRC/66/Rev.2-type agreement)
       NPT未加盟国用。
       2国間協定等で受け取る核物質・原子力関連機材についてNPT未加盟国がIAEAと結ぶもの。NPT発効前は、各国ともこれに従い協定を締結。現在はNPT加盟非核兵器国は、1)型を締結しなければならない。IAEA作成のINFCIRC/66がモデル。INFCIRC/66は、1966年に理事会が承認。1968年にアネックス2を加えて、INFCIRC/66/Rev.2として承認。
    • 3)「自発的協定(voluntary offer agreement)」
       NPTの規定する核兵器国用
       米・英・ロ・中・仏5ヶ国とも締結。

    参考

  2. インドの3段階の原子力計画
    • 第1段階:天然ウラン燃料利用の加圧重水炉(PHWR)による発電
      使用済み燃料を再処理してプルトニウムを得る。
    • 第2段階:プルトニウム燃料利用高速増殖炉による発電
      ウラン238及びトリウム232を照射。
      使用済み燃料を再処理してプルトニウムとウラン233を得る。
    • 第3段階:ウラン233利用高速増殖炉による発電
      トリウムを照射。
      使用済み燃料を再処理してウラン233を得る。

  3. 「部外秘文書」GOV/1621(1973年8月)
    この文書は、NFCIRC/66型協定の有効期間に関するもので、閲覧が「制限」"restricted"されているものだが機密文書というわけではない。下にあるように、Safeguarding the Atom: A Critical Appraisal Edited by Jozef GoldblatのAppendix 6. Duration and termination of INFCIRC/66 agreements, GOV/1621 of 1973として収録されているいるものが、『ヒンドゥー』紙の編集委員のブログに載っている。
    文書の背景をIAEAの法律部門のローラ・ロックウッドが『保障措置の適用に関する法律文書』の中で次のように解説している。

    INFCIRC/66協定の期間と終結(GOV/1621)

    INFCIRC/66/Rev.2のパラグラフ16は、生産された特殊核分裂性物質及びその代替とされた物質に関する保障措置の継続の「望ましさ」に関して言及している。1973年、理事会は、保障措置協定の期限切れの後、このような物質を保障措置下に置く必要について懸念を表明した。その結果、1974年以来、66型協定の存続期間は、定められた年月にではなく、供給された物質または品目の受領国における実際の使用に結びつけられている。これらの協定の下では、保障措置は、すべての保障措置下の品目−−保障措置下の物質または施設から派生して生じるその後の世代の核物質も含め−−に関して、INFCIRC/66/Rev.2の規定に従って保障措置が終結するまで、継続されなければならない。

    インド・IAEA保障措置協定案のパラグラフ29は次のように述べている。

    29 本協定の対象となる品目の保障措置の終了は、GOV/1621 (20 August 1973)の規定を考慮して実施されるものとする。

    インドには次のような議論がある。

    インドが核実験を実施した結果、国際的制裁措置によって燃料の供給が途絶えた場合、燃料の安定供給と言う保障措置受け入れの前提条件が崩れるから、インド側は保障措置を終了させることができる。インドが新たに保障措置下に提供するとされている8基の発電用重水炉自体は国産だから、保障措置終了に必要なのは、これから輸入燃料を取り出すことだ。そうすれば、原子炉を保障措置から外すことができる。

    燃料が備蓄されていればどうするのか。疑問がいろいろ残る協定であることは間違いない。

    参考:

    GOV/1621原文

    Duration and termination of INFCIRC/66 agreements, GOV/1621 of 1973

    Item 1(b) of the provisional agenda (GOV/1620)

    SAFEGUARDS

    (b) THE FORMULATION OF CERTAIN PROVISIONS IN AGREEMENTS UNDER THE AGENCY’S SAFEGUARDS SYSTEM (1965, AS PREVIOUSLY EXTENDED IN 1966 AND 1968)

    Memoradum by the Director General

    1. A substantial number of Governors have urged that there should be a greater degree of statndarisation than in the past with respect to the duration and termination of such agreements as may henceforth be concluded under the Agency’s Safeguards System (1965, as Provisionally Extended in 1966 and 1968)1 for the application of safeguards in connection with nuclear material, equipment, facilities or non-nuclear material supplied to States by third parties. To achieve this, it is recommended that the following two concepts should be reflected in there agreements:

    (a) That the duration of the agreement should be related to the period of actual use of the items in the recipient State; and

    (b) That the provisions for terminating the agreement should be formulated in such a way that the rights and obligations of the parties continue to apply in connection with supplied nuclear material and with special fissionable material produced, processed or used in or in connection with supplied nuclear material, equipment, facilities or non-nuclear material, until such time as the Agency has terminated the application of safeguards thereto, in accordance with the provisions of paragraph 26 or 27 of the Agency’s Safeguarded System.

    A short exposition with respect to the application of these concepts in annexed hereto.

    2. The proposed standardization would appear likely to facilitate the uniform application of safeguards measures. It is furthermore to be noted that the combined operation of the two concepts would be consistent with the application of the general principle embodied in paragraph 16 of the Agency’s Safeguards System.

    Requested action by the Board

    3. In bringing this matter to the Board’s attention, the Director General seeks the views of the Board as to whether it concurs with the two concepts set out in paragraph 1 above.

    ANNEX

    1. In the case of receipt by a State of source or special fissionable material, equipment facilities or non-nucler material from a supplier outside that State, the duration of the relevant agreement under the Agency’s Safeguards System would be related to the actual use in the recipient State of the material or items supplied. This may be accomplished by requiring, in accordance with present practice, that the material or items supplied be listed in the inventory called for by the agreement.

    2. The primary effect of termination of the agreement, either by act of the parties or effluxion of time, would be that no further supplied nuclear material, equipment, facilities or non-nuclear material could be added to the inventory. On the other hand, the rights and obligations of the parties, as provided for in the agreement, would continue to apply in connection with any supplied material or items and with any special fissionable material produced, processed or used in or in connection with any supplied material or items which had been included in the inventory, until such material or items had been removed from the inventory.

    3. With respect to nuclear material, conditions for removal are those set out in paragraph 26 or 27 of the Agency’s Safeguards System; with respect to equipment, facilities and non-nuclear material, conditions for removal could be based on paragraph 26. A number of agreements already concluded have prescribed such conditions in part, by providing for deletion from the inventory of nuclear material, equipment and facilities which are returned to the supplying State or transferred (under safeguards) to a third State. The additional provisions contemplated would stipulate that items or non-nuclear material could be removed from the purview of the agreement if they had been consumed, were no longer usable for any nuclear activity relevant from from the point of view of safeguards or had become practically irrecoverable.

    4. The effect of reflecting the two concepts in agreements would be that special fissionable material which had been produced, processed or used in or in connection with supplied material or items before they were removed from the scope of the agreement, would remain or be listed in the inventory, and such special fissionable material, together with any supplied nuclear material remaining in the inventory, would be subject to safeguards until the Agency had terminated safeguards on that special fissionable and nuclear material in accordance with the provisions of the Agency’s Safeguards System. Thus, the actual termination of the operation of the provisions of the agreement would take place only when everything had been removed from the inventory.

    Note:

    1. The Agency’s Safeguards System (1965, as Provisionally Extended in 1966 and 1968) set forth in document INFCIRC/66/Rev. 2.

    Source: Appendix VI of Safeguarding the Atom: A Critical Appraisal, edited by Jozef Goldblat (Taylor & Francis, 1985).



Text of Pakistan's July 15, 2008 letter to IAEA BoG Members

PAKISTAN MISSION TO THE IAEA

Vienna

15 July 2008

Excellency,

1. As you may be aware the International Atomic Energy Agency (IAEA) has recently circulated the draft text of a proposed Safeguards Agreement between India and the IAEA.

2. The Agreement is to be considered by the IAEA Board of Governors (BOG) and subsequently by the Nuclear Suppliers Group (NSG). Evidently efforts are being made to rush through the agreement through the IAEA-BOG and the NSG.

3. In this regard the following points need to be kept in view:-

(i) The Safeguards Agreement was circulated to the BOG on 9 July 2008. Under its rules, it can be considered, at the earliest, 45 days later, i.e., 25 August 2008. Consideration of the Agreement cannot be placed on the Agenda for the BOG meeting scheduled on 01 August 2008.

(ii) There are no good technical or substantive reasons for the BOG to waive the 45 days rule. The political exigencies of either India or the U.S. are not sufficient reason for the BOG to waive the 45 days rule which is designed to enable BOG members to carefully examine the content and implications of any Agreement so as to ensure that it serves the purpose of credible verification of non-diversion for which it is being concluded.

(iii) On the contrary, the unique and exceptional contents of the India-IAEA Agreement necessitate that time should be provided to BOG members to carefully study the Agreement before it is considered for approval.

(iv) The requirement for approval of a Safeguards Agreement by the BOG should not be considered a mere proforma exercise. Although the BOG has not sought to amend or reject previous Agreements, this was due to their broad adherence to the existing models for such Agreements (INFCIRC 66/Rev.2; INFCIRC 153 and voluntary offer agreements concluded with the NPT nuclear-weapon States). The India-IAEA Agreement does not conform to any of these models.. The Agreement is a unique hybrid reflecting provisions of various models.

(v) It therefore requires careful consideration, particularly because it is likely to set a precedent for other States which are not members of the NPT and have military nuclear programmes.

(vi) The draft accords recognition to India as a country with "advanced nuclear technology", despite the fact that there is no agreed definition of an "advanced nuclear technology" state.

(vii) A most disturbing feature of the Agreement is the reference and reflection in the Preamble to the India-U.S. Joint Statement of 18 July 2005. The Agreement (in preambular para 9, sub-para 2) specifically notes India's "willingness" to "identify and separate its civilian and military nuclear facilities". Thus, the IAEA-BOG is being asked to recognize and accept India's nuclear weapon status.

(viii) This preambular reference is in itself unique, as similar provisions do not exist in other such Agreements. The Preamble prejudges and contradicts the purpose of the Agreement, i.e., to ensure that peaceful nuclear activities do not contribute to the proliferation of nuclear weapons. Thus, if the Agreement is to conform to the "guidance documents" mentioned, this reference to the Indo-U.S. Joint Statement in the preambular part of the Agreement should be deleted.

(ix) Moreover, INFCIRC 66/Rev.2 type agreements have so far been "facility-specific". This Agreement on the other hand is described as an "umbrella agreement". Facilities to be safeguarded have not been listed. They will be added to the Safeguards Agreement as they are notified by India . This raises valid questions. What is the purpose of the Agreement if the facilities to be safeguarded are not known?

(x) Despite India's refusal to place its Breeder Reactors and its Thorium-based programme under safeguards, the draft recognizes India's three-stage nuclear programme. This is gratuitous legitimization of potential nuclear proliferation and contrary to the IAEA's objectives..

(xi) Such concerns are compounded further by other provisions of the Agreement, especially (a) the ambiguous provisions regarding conditions for the termination of the Safeguards Agreements; (b) access for India to the international fuel markets; and (c) unspecified 'corrective measures' which India would be allowed to take to "ensure uninterrupted operation of its civilian nuclear reactors…", contravening the continuation of IAEA safeguards in perpetuity.

(xii) As a consequence, India would be able to acquire nuclear fuel for the declared civilian facilities, build up a "strategic reserve" for the life-time of the reactors, and then terminate safeguards and divert part of the fuel for weapons purposes.

(xiii) The Agreement may indeed provide an incentive to India to conduct further nuclear weapons testing, since future termination of the Safeguards Agreement, after India has built up an adequate fuel reserve, would resolve India's problems relating to the shortage of nuclear material for both its civilian and its nuclear weapons programme. However, the Agreement does not even provide that further nuclear explosive testing would result in the termination of peaceful nuclear cooperation and the Safeguards Agreement.

(xiv) The reference to a "restricted document", GOV/1621 of August 1973, as the yardstick for termination is unsatisfactory. The BOG cannot approve an Agreement with secret clauses. It is vital to expressly incorporate the conditions for the termination of the Safeguards Agreement.

(xv) There are some other provisions of the Agreement which raise concern. For example, paragraph 28 provides for the suspension of safeguards on "any parts of the facilities ...which are removed for maintenance or repair". This could open the door for nuclear fuel and advanced technology provided to India to be diverted for weapons purposes.

(xvi) The draft does not indicate if India is willing to sign an IAEA Additional Protocol in respect of its civilian nuclear facilities.

(xvii) The legal and technical aspects flowing from the draft require in-depth examination and the IAEA Board of Governors (BoG) and NSG are required to carefully weigh the consequences that may ensue from succumbing to expediency over principles.

(xviii) The IAEA statute does not provide for differentiation between member states on the basis of political consideration nor does it allow for special treatment for a particular state. Calling it an India-specific agreement is therefore unprecedented. Since the IAEA concludes safeguards agreements based on approved models, it will be important that any safeguards agreement adopted by the BoG in respect of India should be available as a model for other non-NPT states.

(xix) It is quite clear that the proposed agreement has no utility in advancing the cause of non-proliferation. On the contrary, it will enable and encourage further proliferation.

And, apart from the consequences for the non-proliferation regime, the agreement threatens to increase the chances of a nuclear arms race in the sub-continent.

4. As is clear from the foregoing, the proposed IAEA-India agreement and the unjustified call for an exemption to India alone from the NSG rules is discriminatory and dangerous. It is important to resist the drive to steamroll this agreement through the IAEA-BOG and the NSG. The short and long term consequences of the agreement necessitate that the text be studied carefully and any decision thereon taken after full deliberation. The overarching consideration in this respect should be to uphold the principles of non-discrimination and equity as well as regional and global peace and stability.

5. Pakistan expresses the hope that, on the basis of a close study of the document, other members of the BOG will join it in seeking appropriate amendments to the Agreement when it is considered in the BOG.

6. Please accept, Excellency, the assurances of my highest consideration.

Signed

(Shahbaz)

Ambassador and Permanent Representative

Ambassadors/Permanent Representatives of
Member States of the IAEA Board of Governors and
Member States of the Nuclear Suppliers Group, Vienna


参考

IAEA 2007-2008年の理事国 (IAEAウェブサイト)

アルバニア、アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、クロアチア、エクアドル、エチオピア、フィンランド、フランス、ドイツ、ガーナ、インド、イラク、アイルランド、イタリア、日本、リトアニア、メキシコ、モロッコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ロシア、サウジ・アラビア、南アフリカ、スイス、タイ、英国、米国

「原子力供給国グループ(NSG)」参加国

 アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国


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