核情報

2009.2.4

先制不使用に反対する日本は核兵器全廃の足かせになるのか

─日豪主導国際委員会の行方:10年目の正直?

2008年6月のオーストラリアの呼びかけで、日豪主導の「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」が設立され、今年10月には最終会合を広島で開き、提言をまとめることになっています。ここで重要なのは、核以外の攻撃にも核で報復するオプションを米国が維持することを求める日本の政策です。米国の軍縮NGO関係者が、昨年12月、「核兵器が存在する限りにおいては、核兵器は他の国の核兵器の使用を抑止する役割だけを果たすとの原則」を採用するよう求める書簡をオバマに送りました。委員会の成功のためにも、米国での動きに呼応するためにも、日本自身の政策を変更させる動きを国会内外で作ることが必要です。

通常兵器、核兵器の両面で圧倒的な優位な立場にある米国が、核兵器の「役割」を、敵の核攻撃を抑止することだけに限定し、分単位で発射できるミサイルの警戒態勢を解除するとともに、核の大幅削減を実施する。そうすれば、核の存在意義が薄まり、それは、さらなる大幅削減を可能にすると同時に、核拡散防止の協力体制の強化にもつながります。




先制不使用政策とは常識的核抑止

核兵器の役割は、他国の核兵器の使用を抑止することにのみ限定する「中核的抑止」の立場を取るというのは、言いかえれば、核による攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないという「先制不使用」の立場を取るということです。核兵器を持っていない国にはもちろん核攻撃をかけないし、核保有国相手でも、先には核攻撃をかけない。核兵器が存在している現状にあっては、核攻撃を受けたら核で報復するから、核攻撃をかけるなと相手の核使用を抑止するためだけに現在の核兵器の存在意義を認める。日本のほとんどの人は、核抑止とはそういうことであり、日本に差し伸べられている核の傘はそういう限定された役割だけを果たしていると信じているのではないでしょうか。

1998年5月31日、印パの核実験の後、野中広務・自民党幹事長代理(当時)が広島市内の講演で次のように述べているのも、そのような「理解」に基づいてのことでしょう。

「被爆国として、核保有国に、『あなた方が核をなくした上で他国が核武装しないようにいいなさい』という勇気がなぜないのか」

核廃絶推進とは程遠い日本の政策

ところが、後で見るように、実際の日本の政策は、通常兵器や生物・化学兵器による日本に対する攻撃に対しても、核兵器で報復するオプションを維持することによってのみ、日本の安全が保障されるというものです。だから、米国が先制不使用策を取ることに日本は反対しています。

外務大臣の経験を持つ日本側共同議長川口順子議員は2008年12月24日、軍縮問題に関心を持つ日本のNGOとの会合が開かれた際、先制不使用問題について次のような趣旨のことを述べています。

核兵器の役割縮小は重要ですが、お互いの信頼醸成が課題です。先制不使用の問題も含めて信頼性という問題があります。条約を結んでいても無視されることが、歴史の中で多く起こっています。

実は、これと似た発言を、この日会合に同席していた外務省軍備管理・軍縮課の森野泰成課長が1998年8月5日に広島で開かれたパネル・ディスカッションでしています。

先制不使用を約束してしまった場合、核の抑止力の効果がかなり薄れてしまう。日本の安全を守れるのだろうかという懸念を強く持っている。……米国と日本が先制不使用を約束したとしても、ほかの国が本当に先制不使用を守ってくれるのだろうかという問題がある。

森野氏は、当時、同課の首席事務官でした。

論理的には、日本が米国による先制不使用宣言を嫌がるということは、たとえ他の国が核兵器を放棄しても、米国にだけは持っていて欲しいということを意味します。さらに、米国がこのような政策を採用すれば不安を感じた日本が核武装する可能性があることを意味します。もっと言うなら、世界中で核兵器がなくなっても、日本は持ちたいということになります。唯一の被爆国として核廃絶を求めているはずの日本の政策はこのようなものだと理解したうえで、委員会に関する議論をする必要があります。

求めるべきは米国の宣言であって条約ではない

二人は、他の国が先制不使用政策を守るかどうかを問題にしていますが、実は、先制不使用、中核的抑止というのは、条約として求めるべきものではそもそもありません。冒頭で述べたように、まずは、圧倒的な核戦力と通常戦力を併せ持つ米国が、核兵器の「役割」を敵の核攻撃を抑止することだけに限定し、核は先には使わないと一方的に宣言することが重要です。分単位で発射できるミサイルの警戒態勢を解除するとともに、核の大幅削減を実施する。こうして、「核の存在意義を薄める」ことによって、核兵器全廃への道筋を示し、核拡散防止の協力体制を強化するのです。

この段階では、相手が核兵器を使えば核で報復する可能性を残していることになり、抑止論の立場に立てば、核の傘はまだ「有効」なはずです。そもそも、核を使えば報復するぞと脅すことで抑止することのできない相手に「核抑止」をどう使おうというのでしょう。先に大量の核攻撃をかけて破壊してしまうという戦略を提唱しているのでしょうか。

核攻撃に対する報復だけに核の使用の可能性を限定すれば、相手の核兵器の数と関係なく、核兵器の数を大幅削減することができるはずです。たとえば少数の核を潜水艦に載せ、敵の攻撃に曝されないようにして、核攻撃を受けたらこれを使う、すぐか、数日後か、1週間後か、1月後か、いずれにしても報復すると告げることによって、相手の攻撃を抑止するという考え方です。

さらに米国が短時間で核による先制攻撃をかける態勢にないことを物理的障壁によってロシアに示せば、ロシアが民生用のロケットの発射やコンピューターの誤作動を核攻撃と勘違いして大量のミサイルで「報復」してしまうような偶発的核戦争防止に役立ちます。

根が深い日本の先制使用オプション維持政策

川口・森野両氏の立場が日本政府関係者の中で特殊というわけではもちろんありません。パンフレット『核兵器全廃への新たな潮流─注目すべき米国政界重鎮四人の提言』でも指摘した通り、日本は、米国が、核攻撃だけに対してだけでなく、通常兵器や化学・生物兵器による攻撃に対しても核で報復する可能性を保つことがそのような攻撃を抑止することになるとの立場を採っており、それは国会答弁などで繰り返し表明されています。たとえば、1982年8月4日の参議院安全保障特別委員会会議で、一般的にハト派と見られている宮沢喜一官房長官(当時)が次のように述べています。(上田耕一郎議員に、1975年の宮澤・キッシンジャー会談、三木・フォード会談の意味についての政府の説明に関して、「通常兵器で攻撃された場合にもアメリカが先に核を使うことがあるのだ、核兵器による日本防衛、これを日本政府は理解している、了解を与えているということがこの一連の国会答弁で明らかになってきた」がと問われて。)

我が国に対して加えられることがあるべき攻撃に対して、かりに通常兵器だけでそれを抑止するような十分な力にならないという状況であれば核兵器も使用されることあるべし、と、絶対に核兵器が使用されることがないというのではこれは抑止力になりませんから、通常兵器と核兵器と総合した立場で抑止力というものを考える、それは私はごくごく当然の立場ではないかというふうに思っておるわけであります。

先制不使用についての日本政府の考え方は、北朝鮮をめぐる交渉にも直接影響を与えます。たとえば、2003年8月22日付の『読売新聞』は、次のように報じています。

北朝鮮の核開発問題に関する北京での六ヶ国協議で焦点となる北朝鮮への安全の保証をめぐって、日本政府が米政府に対し、核兵器の不使用を確約しないよう求めていたことが二十一日、明らかになった。米国が北朝鮮への核不使用を約束すれば、仮に北朝鮮が日本への攻撃を考えた場合に、核兵器による米国の抑止力が機能しなくなり、日本の安全保障にとって重大な支障が出ると判断したためだ。

この意向を米国側に伝えたのは、藪中三十二外務省アジア大洋州局長(現事務次官)とのことです。

1994年の核危機の際にも日本側が同じ態度をとったことを米朝交渉に当たったロバート・ガルーチ元北朝鮮核問題担当大使がその著書で述べています1994年10月21日の米朝合意枠組みでは、結局、日本の要望は無視され、「米国による核兵器の脅威とその使用がないよう米国は北朝鮮に公式の保証を与える」との文言が入りました。大量の通常兵器や生物・化学兵器にも核抑止を使うと説明してきた日本政府の立場と矛盾することになってしまったわけです。

これについて、自民党の河野太郎議員が1999年6月2日衆議院外務委員会で鋭く質問しています。河野議員は、先制不使用宣言を日米ですべきだという立場だが、日本が取り残されるような形で米朝の合意がなされるような事態はおかしいではないかと政府に迫っているのです。(「参考」のところに載せてある議事録参照。)

中核的抑止策(=先制不使用宣言)を求める米国軍縮NGO

米国の大使として軍備管理・軍縮交渉に関わったジョージ・バン、ラルフ・アール両元大使を含む17人が、昨年12月17日、オバマ(次期)大統領に「核兵器と拡散の問題に取り組み、核兵器のない世界に向けて動く」という書簡を提出しました。書簡は、米ロの核兵器総数を1000発以下にする交渉をするよう求め、次のように述べています。

このような削減を支持し、米国の核政策の方向転換を示すために、関連省庁に対し、議会が義務付けている「核態勢の見直し」を、核兵器が存在する限りにおいては、核兵器は他の国の核兵器の使用を抑止する役割だけを果たすとの原則に基づいて行うべく指示するよう我々は要請する。

オバマ政権は、4月1日までに提出される議会「米国の戦略態勢に関する委員会」の報告を受けて、「核態勢の見直し」を実施することになっています。

この書簡をまとめる上で中心的な役割を果たした「軍備管理・軍縮協会(ACA)」のダリル・キンボール事務局長は、同協会の発行する『アームズ・コントロール・トゥデー』で、次のように主張しています。(核兵器の役割の再評価 (ACT2009年1-2月号)

核兵器以外の脅威に対処するために核兵器を使用することを必要とする、あるいは、そのような使用を正当化する状況として、考えられるものはない。米国の通常軍事力の優位と、拡散とテロリズムという双子の脅威とから言って、核兵器は、安全保障にとってプラスというより、むしろマイナスとなっている。

 著名な米国科学アカデミーのパネルが10年以上前に結論付けた通り、「冷戦後の時代において米国の核兵器の役割としてなお弁護できる唯一のものは『中核的抑止』である。すなわち、他の核保有国が米国またはその同盟国に対し、核兵器を使って攻撃をかけたり、強要したりするのを抑止するために、報復するとの威嚇を利用するというものである。」

 オバマ政権になってホワイトハウスの新しい科学アドバイザーに選ばれたジョン・ホルドレンも入っていたこのパネルによれば、このアプローチは、また、「新しい目的のための新しいタイプの核兵器を開発・実験する」いかなる必要をも無くすことにもなる。

2007年1月と08年1月にキッシンジャーら米国民主・共和両党の四人の重鎮が『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた結果生まれた核兵器全廃への新たな潮流と、それを背景に登場したオバマ政権とで、このような政策が採用される可能性が出てきています。たとえば、イーヴォ・ダールダー元安全保障会議ヨーロッパ問題部長が米国「北大西洋条約機構(NATO)」大使に任命されようとしている事実がそれを示していると言えるでしょう。彼は、ニクソン、フォード、クリントンの政権で、国防省、ホワイトハウスの高官を歴任した経験を持つジャン・ロダールと、フォーリン・アフェアーズ誌2008年11-12月号で『ゼロの論理』と言う論文を発表し、4人の投稿に触れつつ、中核的核抑止政策の採用を提唱しました。このような考えを明らかにした人物がNATO大使になるということは、それがNATOの核政策に影響を与える可能性を意味しています。二人の論文は次のように述べています。

[冷戦が終わった今]米国の核兵器にとって残っている本当の用途はただ一つだけだ。すなわち、他国による核兵器の使用を防ぐことだ・・・ワシントンは、米国の核戦力の限定的用途を公式の政策として確立しなければならない。すなわち、他国による核兵器の使用を防ぐことだ。他の用途は、米国にとってもはや現実的でも必要でもない。

今ふたたびの先制不使用問題へ──10年の年月を経て

オーストラリアのラッド首相が訪日し、日豪主導の委員会の設立を呼び掛けた2008年6月から遡ること10年、1998年6月には、先制不使用問題に関連した二つの重要な出来事が起きています。一つは、6月3日、前月の印パの核実験を受けて、橋本龍太郎首相が、参院行財政改革・税制特別委員会で核軍縮・廃絶に向けた「国際フォーラム」の設置案を表明しました。この案に従って設置された核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラムは、翌1999年7月に報告書をまとめています。ラッド首相は、1995年にキャンベラ委員会を設立したオーストラリアと、1998年に東京フォーラムを設立した日本が合同で新しい委員会を設立することを呼びかけたのでした。

もう一つは、6月9日に、ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スロベニア、南アフリカ、スウェーデンの八カ国が『核のない世界に向けて──新しいアジェンダの必要』という宣言を発表したことです。このグループは新アジェンダ連合(NAC)と呼ばれています。

日本がNACの宣言に参加しなかった主な理由は、宣言が先制不使用政策を提唱していたからです。宣言は、核保有国と三つの「核兵器能力を持つ国々」(インド、パキスタン、イスラエル)に対し、それぞれの核兵器と核兵器能力の廃絶に取り組むことを約束し、直ちに具体的措置についての作業を進めると同時に、核廃絶に向けた交渉にとりかかるよう呼びかけています。具体的措置の一つとして第14項で、「核保有国の間での先制不使用の共同の約束、非核兵器国に対する核兵器の使用及び使用の威嚇をしないこと(いわゆる消極的安全保障)に関して、法的拘束力のある文書を作成すべきだ」と述べています。

1998年夏、原水禁大会に参加するために日本を訪れた「英米安全保障情報評議会(BASIC)」(当時)のスティーブン・ヤングは、外務省で阿部信泰軍備管理・科学審議官(当時)に会って、日本が宣言に参加しなかった理由を聞きました。その後、この情報に基づいて、8月5日に広島で開かれたパネル討論において日本が「新アジェンダ連合」の宣言に参加しなかったのは、つぎの3つの理由によると理解しているがどうかと、外務省の軍備管理軍縮課の森野泰成主席事務官(当時)に問いかけました。

1)日本には検討する時間的余裕がなかった。(新アジェンダ連合は、意図的にぎりぎりまで日本に宣言の話を伝えなかった。日本から米国に話が筒抜けになることを恐れたからだ。)

2)印パの実験の直後だから、印パに焦点を当てるべきで、核保有国5カ国の非難をすべきではないと考えた。(宣言では、印パも批判の対象となっていた。)

3)先制不使用を要求する項目が気に入らなかった。

森野氏が、これを確認した上で、述べたのが冒頭に引用した部分です。繰り返しになりますが、もう一度見ておきましょう。

「先制不使用を約束してしまった場合、核の抑止力の効果がかなり薄れてしまう。日本の安全を守れるのだろうかという懸念を強く持っている。・・アメリカと日本が先制不使用を約束したとしても、ほかの国が本当に先制不使用を守ってくれるのだろうかという問題がある。」

この阿部氏と森野氏が昨年12月の川口共同議長とNGOの間の会合で、川口共同議長の左右に座っていたのでした。現在は日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの所長となっている阿部氏は、委員会の日本側諮問委員の一人として、軍備管理・軍縮課の課長となっている森野氏は、委員会の事務局の働きをする外務省の代表としての参加でした。

これは、もちろん二人だけの個人的な考えではありません。社民党の福島瑞穂議員の資料請求に対し、外務省は1999年2月26日付の回答で次のように述べています。(どういうわけか外務省は最初、文書で回答するとしておきながら、最終的には電話でこの文書を読み上げ、福島議員の秘書に書きとらせました。)

◆昨年6月の共同声明については、参加の要請は受けたが、声明文の内容がすでに固まっており、修正不可能であるとのことであり、かつ、検討のためにきわめて短日時の猶予しか与えられなかったため参加しなかったものである。

◆核の先制不使用については、核兵器国内の信頼醸成および、そのことを通じた核兵器削減につながる可能性があることを積極的に評価すべきとの考え方が存在していることは承知しているが、いまだに核などの大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実の国際社会では、何ら検証方途のない先制不使用の考え方に依存して、我が国の安全保障に十全を期すことは困難であると考える。

◆続きまして、我が国としては米国との安全保障条約を堅持し、その抑止力の下で自国の安全を確保するとともに、STARTプロセスの一層の推進などを通じた核軍縮を含む軍備削減、国際的核不拡散体制の堅持や強化などの努力を積み重ねて核兵器の使用を必要としないような平和な環境を作っていくことが重要であると考えている。

◆なお、日米安全保障条約に基づく米国による核抑止力についての我が国の立場に関しては、たとえば1975年8月6日の三木・フォード会談の際の日米共同新聞発表第4項において、「両者は、…米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行なうものであることを認識した。これに関連して、大統領は総理大臣に対し、核兵力であれ、通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力および安全保障条約に基づく誓約を引き続き守る旨を確言した。」と述べられている。

最後の件は、米国の核抑止というのは、日本に対する核以外の攻撃に対する報復にも核を使うオプションを持つことだと日本が理解したのはいつからかとの質問に答えたものです。三木・フォード会談の新聞発表にあるのとほぼ同じ内容が、実は、1965年の佐藤・ジョンソン会談の声明にもあります。ところが、政府は、三木・フォード会談の発表は特殊な意味を持つと説明しています。核を含むいかなる攻撃に対しても日本を守ると米国が述べたのを、いかなる攻撃にも核で報復する可能性を持つとの約束とすり替えているのですが、文書には明記されていない「密約」があったというのでしょうか。ちなみに、日本は翌年の5月24日、NPTの批准書を寄託しています。これが何らかの形で関係しているのでしょうか。

三木・フォード会談の新聞発表の解釈についは、参考資料にある通り、1982年2月19日の衆議院予算委員会における横路孝弘議員の質問で明らかになりました。さらに、6月25日の衆議院予算委員会で、松田・外務審議官(当時)が、この発表について「核の抑止力または核の報復力がわが国に対する核攻撃に局限されるものではないという趣旨と私どもは理解しております。」と述べています。前出の宮沢喜一官房長官(当時)の発言は、これを確認したものです。最近の阿部氏ら外務省関係者の発言を見れば、この解釈・政策が現在まで続いていることは明らかです。

なお、1998年秋に国連で採択されたNACの決議案には、当初、先制不使用の文言が入っていましたが、日本の強い反対もあって、最終的にははずされました。(NAC側から原案についての考えを示すよう要請された日本は、先制不使用の項目の部分を消し去る形で線を引いて反対の意思を表明しました。ある外交官がそれを示してくれました。)それでも日本はNATOの多数の国々とともに棄権票を投じました。1999年に出された同様の決議でも日本は棄権しました。外務省は、この棄権理由について、社民党に次のような趣旨の説明をしています。

▲本文段落(1)「速やかかつ全面的な核廃絶を実現する」との明確な約束をすることを求める

質問

 このどこがまずいのか。

外務省説明

「核抑止を否定するものであり、問題だ。この場合の核抑止とは、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による攻撃を、核の威嚇によって抑止することをも意味する。核抑止は、重要であり、国際情勢を無視して、速やかに核をなくしてしまうことはよくない。」

▲段落(18)「核兵器の使用あるいは核兵器の使用の威嚇に対する効果のある保障をNPTに加盟している非核兵器国に提供するために、国際的な法的拘束力をもつ法的文書を締結する」ことを求める

質問

「生物・化学兵器による攻撃に対しても核兵器を使わないことを法的に明確化することに日本が合意したということか」

外務省:そうではない。このパラグラフには生物・化学兵器のことは何も書いていないから、これらの兵器による攻撃に対して核で応じないことを約束することに日本が合意したということではない。

日本はこの「消極的安全保障」に関するパラグラフについて行われた分割投票において賛成票を投じました。これに先立つ、1995年4月5日、米国は、非核保有国に対して核攻撃は掛けないとする「消極的安全保障」の声明を出しています。米国またはその同盟国に対する攻撃が、「核兵器国と連携しまたは同盟して、当該非核兵器国により実施されまたは支援される場合を除き、それらの非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを再確認する」というものです。この声明は、生物・化学兵器の使用に対して核兵器で報復しないという意味と理解されるのではないかとの問いに対し、以前、外務省は、この声明には法的拘束力はないと答えていました。それで、このときの質問は、この投票行動は、外務省がこのような立場を変え、「生物・化学兵器による攻撃に対しても核兵器を使わないことを法的に明確化することに日本が合意したということか」と言うものでした。

外務省が、「このパラグラフには生物・化学兵器のことは何も書いていないから」という議論を使っている点は、次のような防衛大綱の文言を読む際にも留意しなければなりません。

1995年策定の「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」

核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする。

2004年策定の「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」

核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。

つまり、核以外の脅威に対しても核抑止力に依存すると書いていない一方、核抑止力に依存しないとも書いていないのです。政府の説明は、日本は、核以外の脅威についても米国の核抑止力に依存しているというものです。

キャンベラ委員会と東京フォーラムの違い

東京フォーラムを組織した日本は、先制不使用に関する上のような立場に基づいて、フォーラム運営に臨みました。先制不使用に関する部分が、キャンベラ委員会と東京フォーラムとでどう変わっているか確認しておきましょう。

キャンベラ委員会

核保有国は、互いに先制使用をせず、あるいは核兵器使用の威嚇を行わず、そして非核保有国との如何なる紛争に際しても核兵器を使用せず、使用の威嚇をしないことに同意し、公言すべきである。このような合意は、早急に実行に移すべきである。

東京フォーラム

核兵器先制不使用の誓約は、それが核兵器の突出した役割を低減し、他の大量破壊兵器の使用を促すことにならない限り有益であろう。しかし、米国の同盟関係とロシアの軍事的難局、とりわけNATOとロシアが核ドクトリンにおいて先制使用のオプションを維持している限り、その誓約に関する交渉は複雑なものとなろう。さらに、過去行われた先制不使用の誓約の中には信頼できないものがあった。核ドクトリンが変更され、透明性の一層の向上と警戒態勢の緩和を確認しうる検証可能性が強化されなければ、誓約のみでは信頼性を欠くであろう。NATOは先制不使用のオプションを見直す体制をとりつつあるが、効果的な先制不使用のコミットメントを実現させるためには、詳細な協議と更なる努力が必要となろう。東京フォーラムはそのような努力を賞賛する。

東京フォーラムの方が後退していることは明らかです。ただし、先制不使用政策は圧倒的軍事力を持つ米国が一方的に宣言し、それに従って核政策を見直すことが重要なのであって、合意をするというような問題でないというのは先に指摘した通りです。その点で、キャンベラ委員会の文章より前述の米国のNGOの提言の方がすっきりしています。キャンベラ委員会は、国際的委員会として、各国を平等に扱うことにこだわったことから上のような文言になってしまったのでしょう。それが結果的に、「誓約に関する交渉は複雑なもの」になるからしばらくは実現不可能とする東京フォーラムの大幅後退の口実を与えることになったのは残念です。先制不使用について条約を結ぶ作業を今からして、それまでなにもできないというのでは、時間がかかるだけで意味がないでしょう。日本の軍縮・反核運動は、同じような思考の罠に陥ることなく、米国の同盟関係にある国の運動として、米国の核の傘をどうとらえるかという点に焦点を当てて、米国の、あるいは、日米共同の一方的宣言を要求すべきです。

核軍縮の潮流で日本はリードできるのか、取り残されるのか、抵抗するのか、

1949年に設立されたNATOでは、設立60周年の今年、戦略概念の見直しが始まり、そこで先制不使用の問題が取り上げられる可能性があります(2009年4月3-4日にNATOサミット。新しい概念の発表は2010年?)。1998年には、設立50周年を控え、ドイツが先制不使用をNATOの方針にすべきだと提唱しました。1991年から92年まで米国戦略空軍の、続いて94年まで米国戦略軍全体の核戦力を統括する総司令官を務めたリー・バトラー退役大将は、98年12月4日、ドイツのフィッシャー外相に、核戦略の見直し要求を支持する書簡を送り、連帯の意を表明しました。

最終的に私は、冷戦中の先制使用政策の有用性がどうであったにせよ、新しい世界的安全保障環境の下ではまったく不適当だとの結論に達しました。それどころか、それは不拡散の目標にとって逆効果であり、民主的社会の価値観に真っ向から対立するものです。

また、98年12月10日には、同様の書簡をNATO諸国の国防大臣に送りました。残念ながら、99年の『戦略概念』では、先制不使用の方針は入りませんでした。しかし、今回は、違った状況になるかも知れません。先制不使用の考えを支持するイーヴォ・ダールダーが米国のNATO大使になりそうなのは先に触れた通りです。

日本は、取り残されてしまうのでしょうか。日本にお構いなく米国が政策を変え発表してしまった後で、それが正当であるとの説明を外務省の軍部管理軍縮課がすることになるのでしょうか。これは、米朝合意枠組みについて河野議員が指摘した問題と同じ状況が繰り返されることを意味します。あるいは、頑強にこのような動きに抵抗し、核軍縮の足かせになるのでしょうか。それとも、これまでの方針を変更し、核兵器全廃の新たな潮流の先頭に躍り出ることができるでしょうか。委員会は、このような歴史的にきわめて重要なタイミングで開かれています。

川口共同議長は、共同議長に対するオーストラリア側のNGOアドバイザー、ティルマン・ラフ氏との話し合いで、核を持たない国の安全保障を確保することと、原子力の平和利用の権利を保証することが重要だと強調しています。これが、核以外の攻撃に対する核の傘と、核兵器利用可能物質の生産に関わるウラン濃縮と再処理を進める権利とを確保しようしてきた日本政府の政策と符合するのが気になります。

日本は、共同議長国として、3人の諮問委員を抱えています。外務省の外郭団体日本国際問題研究所の佐藤行雄理事長。原子力委員会の近藤俊介委員長。それに国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの阿部信泰所長です。佐藤理事長は、北米局長を経て、1998年9月から2002年9月まで国連代表部大使を務めています。(上述のNACの決議案棄権の論理を外務省が構築・説明したころと重なります。)

(ちなみに東京フォーラムを主催したのは、国際問題研究所と広島平和研究所でした。阿部軍備管理・科学審議官は裏方として活躍しました。)

このような陣容を見ると、委員会は政府代表で構成されるものではないといっても、元外務大臣を共同議長として出している日本政府の考えがまったく無視されるというのは想像しがたいことです。これらのメンバーも、政府の意向と関係なく物事を進めるわけではないでしょう。政府関係者の場合、立場上本心と違うことを言わなければならない場合もあり、胸中は定かではありませんが、もし、メンバー諸氏が、「一昔前ならいざ知らず、現段階では先制不使用策・中核的核抑止策が望ましい」と考えて政府内で働きかけているが公言はできないというのであれば、反核運動が広範かつ精力的な先制不使用支持の運動を展開することが結果的に諸氏の応援をすることになります。

共同通信のインタビューで川口議長が次のように答えているのは希望を持たせます。

 ―日本が依存する「核の傘」の問題は。

 「核であろうがなかろうが、抑止という考え方は大事。抑止力を持つものであれば、別に核に限定することはない。(通常戦力でも精密誘導技術で)ピンポイントできれば、抑止力になることはある。核抑止を正当化して、核でないと(抑止)できない、と思った途端に核ゼロは実現できない」

 ―抑止の比重を通常戦力にシフトしていく柔軟性が日本にも必要か。

 「考えておかないといけないと思う」

長崎新聞 2月12日記事切り抜き(共同)

いずれにしても、委員会での議論とは別に、オバマ新政権が核兵器全廃に向けて大きく動き出せるようにしなければなりません。上述の米国の軍縮NGOの動きに呼応して、米国が即座に先制不使用策を取れるように日本の運動としてできることをする。その重要な一歩として、日本は少なくとも米国の先制不使用策に反対しないとの立場を日本政府に取らせなければなりません。さらには、河野議員が主張したように、日本として、積極的に先制不使用策を推進し、日米共同での先制不使用策の発表を働きかけ、NATOでの先制不使用策採用にも貢献できるようにする。そうなれば、委員会の成功にもつながるでしょう。日本政府に、国会議員に、マスコミに、そして国民に働きかけることによってこれに成功すれば、日本の運動の10年来の宿題が果たせたことになります。

参考

●「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」

▲設立の経緯

2008年

 6月9日 ラッド首相京都大学での講演で設立を提案

 7月9日 洞爺湖における日豪首脳会談で福田総理、日豪の共同イニシアティブとして同委員会に参加することを表明。川口順子元外相を共同議長にすると発表

 9月25日 ニューヨークにおいて、麻生・ラッド両首相、委員が確定した旨発表

▲委員会会合日程

第1回会合(於:シドニー) 2008年年10月20日及び21日

第2回会合(於:ワシントン)2009年2月

第3回会合(於:モスクワ) 2009年6月  

第4回会合(於:広島)   2009年10月 (報告書の取りまとめ)

●三木・フォード会談 1975年8月5〜6日。(於:ワシントン)

1975年8月7日新聞発表 (cf; 1976年5月24日、NPT国会承認)

段落(4)総理大臣と大統領は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約は、極東の平和と安全の維持に大きく寄与して来ているとともに、アジアにおける国際政治の基本的構造の不可欠の要素であり、同条約を引き続き維持することは、両国の長期的利益に資するものであるとの確信を表明した。両者は、さらに米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。これに関連して、大統領は、総理大臣に対し核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を守る旨確言した。・・・・

●佐藤・ジョンソン共同声明 (三木・フォード会談とほぼ同様の内容)

*1965年1月13日(米時間)発表

段落(8)首相と大統領は、日本の安全の確保について、いささかの不安もなからしめることが、アジアの安全と平和の確保に不可欠であるとの確信を新たにした。このような見地から、首相は日米相互協力及び安全保障条約体制を今後とも堅持することが日本の基本的政策であるむねを述べ、これに対し、大統領は、米国が外部からのいかなる武力攻撃に対しても、日本を防衛するという同条約に基づく義務を順守する決意であることを再確認した。

●米国の消極的安全保障Negative Security Assuranceについての声明

1995年4月5日 (NPT再検討・延長会議を前にして)

「大統領はつぎのように宣言する。

米国は、以下の場合を除き、核兵器の不拡散に関する条約の締約国である非核兵器国に対して、核兵器を使用しないことを再確認する。すなわち、米国、その準州、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、米国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き、それらの非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを再確認する。」

●米朝枠組み合意 1994年10月21日 (核を完全に放棄すれば、核攻撃をかけないと保証)

・・米国と北朝鮮は、核問題の解決のために以下の行動をとることを決定した。

III(1)米国は、北朝鮮に対して、米国が核兵器による威嚇や核兵器の使用を行わないという正式な保障を与える。

 (2)北朝鮮は、朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言を履行するために不断に措置を講ずる。

IV(1)北朝鮮は、引き続き核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の締約国に留まり、条約に基づく保障措置協定の実施を認める。

*国務省の発表:

NPT体制の中でこれを遵守するメンバーとして留まる限り、北朝鮮には核兵器を使わないことを約束するものである。

We will provide a "negative security assurance". It would pledge us not to use nuclear weapons against North Korea as long asit remains a member in good standing of the NPT regime. (we have porovided similar assurances to other signatories of the NPT).

●先制不使用問題に関する政府答弁例

▲1982年2月19日衆議院予算委員会 三木・フォード会談の解釈

○横路委員 私たちもヨーロッパの、ジュネーブの交渉が成功すること、並びにそのいい影響がアジアにおいて出ることを期待をしているわけですが、ただ望むだけじゃなくて、総理の積極的なイニシアチブを心から期待をするものであります。
 次に、やはり核に関連して質問いたしたいと思いますが、私、昨年、社会主義インターナショナルの軍縮委員会というのがございまして、アメリカでロストウ軍縮庁長官といろいろ核軍縮について話をしたのです。そのときに、ロストウ軍縮庁長官はこういう発言をしたのですね。アメリカは、ヨーロッパと同様日本においても、もしソビエトが通常戦力で攻撃した場合には、場合によっては核を使用する、こういう発言をしたわけであります。これは当時ワシントンの日本大使館の方でも、じゃ、そういう発言があったかどうか国務省に確認をしてみようというようなことを言っておられまして、多分外務省でも確認をされていると思うのですが、この通常兵器による攻撃に対してもアメリカは核を使用するという点に関しては、日米間に合意並びに協議というのはあるのでしょうか。

○櫻内国務大臣 アメリカは安保条約によりまして、日本に御指摘のような緊急、火急の場合がありますときにはあらゆる面でその努力をする、こういうことを言っておりますので、核のことも念頭に置いておると思います。また、そのような責任者の発言があったと思いますけれども、いまちょっと手元に資料がありませんので、北米局長から申させます。

○横路委員 日米間に協議と合意があるのかということなんです。

○淺尾政府委員 横路委員よく御承知のとおり、アメリカは第五条によって日本防衛の義務を負っております。その防衛の義務の行使に際しては、通常兵力であれ核兵力であれ日本を防衛するということでございまして、ちょっと私ここにテキストを持っておりませんが、三木・フォード共同声明の中でその点が確認されております。

○横路委員 つまり、アメリカ側は通常兵器であれ核を使うということを私は聞いているのじゃなくて、じゃ質問をもうちょっと進めますが、核には核の傘というのが一般的な認識だったわけですね。防衛の大綱の中でも、核の脅威には米国の核、限定かつ小規模な侵略には自衛隊が独力で、もうちょっと大規模には日米共同でということで、これが共同のガイドラインになっていっているわけですね。
 このガイドラインの中にこういう一項目があります。「米国は、核抑止力を保持するとともに、即応部隊を前方展開し、及び来援し得るその他の兵力を保持する。」この米国の核抑止力というのは一体何を言っているのでしょうか。

○塩田政府委員 ガイドラインの表現はいまお読み上げになったとおりでございますが、具体的に米国の核の抑止力の中身をガイドラインで言っているわけでもございませんし、私どものガイドラインによる協議においてもそういうことを議論しておるわけでもございませんので、むしろそこにある表現は、一般的な、先ほど来御議論になっておるようなアメリカの核抑止力というふうに御理解いただければよろしいのじゃないかと思います。

○横路委員 局長、従来は大体、戦略核だという国会の答弁だったのですが、そういうふうに理解してよろしいのですか。

○塩田政府委員 その表現の場合、私は、必ずしも戦略核に限定してその表現を読むという必要はないのではないかというふうに思います。

○横路委員 どうもそこがはっきりしないのですね。宮澤・キッシンジャー会談というのが、核拡散防止条約、一九七五年のNPTの扱いのときにいろいろ議論になりまして、この宮澤・キッシンジャー会談の中身からやや変わってきたんじゃないかという感じがするわけですが、答弁はどうもちょっとあいまいではっきりしないわけです。
 核には核という考え方は従来からあったわけですね。そんな意味では、アメリカの傘というのはある意味で言うとグローバルにかけられているという一般的、抽象的な議論だったわけです。それが、日本防衛のためのアメリカの核抑止力というのはじゃ一体何かというときに、ソビエト側の核に対してアメリカが核を使うということじゃなくて、ソビエト側の通常兵器の攻撃に対してアメリカ側は核を使い得るんだ、使うんだ、これが昨年のロストウ長官の発言の趣旨なんです。私は、そのことについて日米間で協議があるのか、こう言っているわけです。
 この宮澤・キッシンジャー会談についての宮澤外務大臣の記者会見の内容というのは、米国の核の能力はわが国に対して考えられる攻撃に対して重要な抑止力であることというのがあるわけですね。このわが国に対して考えられる攻撃というのは、別に核だけにとどまらないわけですね、この言葉を見るだけでは。だから、いわば通常兵器による攻撃に対してもアメリカは核使用をするということをこのとき合意されたのかどうなのか。その間についての日米間の協議、合意というのはあるのですか、ないのですか。

○櫻内国務大臣 この日米共同新聞発表が該当すると思うのですが、昭和五十年八月六日の新聞発表の第三項及び第四項に、「米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。」これは総理大臣と大統領ですね。「これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。」こういうことであります。

○横路委員 その場合、相手の通常兵力に対して使い得るアメリカの核というのはどういうことが想定されるのですか。

○塩田政府委員 私どもはアメリカの核の使用あるいは核の所在そのものを全然承知しておりませんので、いまお尋ねのような、通常戦力の攻撃に対してアメリカはどういう核を使うだろうかということについては、私どもは承知する立場にございません。

○横路委員 しかし、従来の答弁はそれは戦略核なんだということなわけですから、核抑止力というのは戦略核で、これは宮澤さんも何遍も答弁していますが、戦術核というのは考えられない、非核三原則もあるしと、こういうことになっているわけですね。
 そうすると、いまの日米の会談を受けて、じゃそこら辺のところは全く具体的な話はない、こういうことなんでしょうか、あるいは、そこはもう従来の答弁をやめて、戦術核から戦略核に至るあらゆる段階を、いわゆるNATOの柔軟反応戦略、NATOの戦略というのは、通常兵器の侵略に対して通常兵器で対抗して、支え切れなくなったら戦術核を使っていく、戦略核に至る幾つかの段階でどのようにでも対応していくというのがNATOの大体の考え方ですね。それと同じような考え方を日本では考えられているんだというふうに理解してよろしいのですか。

○淺尾政府委員 いまの御設問の点について日米間で話し合いがあったかということでございますが、これはございません。

▲衆議院予算委員会 1982年06月25日

○横路委員 もう一つ、これは私、この春にも質問をした点なんですが、先日またロストウ軍縮庁長官が、六月二十日ですか、日本であれヨーロッパであれ、ソビエトの通常兵力による攻撃に対して、場合によっては核を使用することもあり得るんだ、それがアメリカの抑止力だ、こういう発言をされています。この前、一月の議論の中では、その点に関して、日米間ではいわゆる五十年のときのですか、三木・フォード会談の四項目、「大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、アメリカは日本を防衛する」ということの中に、実は通常兵力の攻撃に対してアメリカは核を使うんだということについてもいわば日米間で合意があるという趣旨の御答弁があったように承っているのですが、それは間違いないでしょうか。

○松田政府委員 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、昭和五十年八月六日の三木総理大臣とフォード大統領の首脳会談におきます共同声明において、第四項で、わが国への武力攻撃があった場合、それが核によるものであれ通常兵器によるものであれ、米国としては日本を防衛する、そういうことを大統領が確言しておりますことの中にはあらゆる意味での措置が含まれておるという意味において、核の抑止力または核の報復力がわが国に対する核攻撃に局限されるものではないという趣旨と私どもは理解しております。

○横路委員 いまの答弁というのは、つまり政府間の解釈もそういう解釈で確定しているのですか。たしか当時宮澤さんが外務大臣だったと思うのですが、いまの答弁で、これは政府間でその辺の中身についても合意されているのでしょうか。つまり、その辺についての解釈として、通常兵力の攻撃に対してもアメリカは核を使うということを日本は期待しているのですか。

○宮澤国務大臣 ちょうどアメリカがベトナムから撤退をするというような状況のときでございます。核を使うということをいまおっしゃいましたが、政府委員はいわゆる核の抑止力というふうに表現いたしました。その方が適当な表現だろうと思いますが、両国政府間でそういうふうに了解しております。

○横路委員 そうすると、これは場合によっては、いま問題になっています核の先制使用ですね、これもアメリカの国内で四人の人たちが先制使用というのはやめようじゃないかという提案をしています。この核の先制使用に日本は期待をするんだ、こういうことになるのですね、総理大臣。

○鈴木内閣総理大臣 今度のベルサイユ・サミットで、西側の首脳を交えていろいろ国際的な、特にヨーロッパにおける緊迫した情勢等を中心に議論が大分なされました。その際に、私がいま非常に印象に残っておりますことは、ソ連が圧倒的な通常兵器戦力を保有しておる。これに対して西独初め西側は、通常兵器戦力においては非常な見劣りがしておる。こういうような中で、核の抑止力だけがかろうじてこのヨーロッパの平和と安定を確保しておる、こういう議論がなされておるわけでございます。
 私は、核を先制的に使うとかなんとかいう問題でなしに、やはり通常兵器等のバランスが大きく崩れておる状況の中におきましては、それが一つの抑止力になっておるというようなことは、これはあの責任ある各国の首脳の議論の中に生々しく私は印象づけられてまいっておるところでございます。

○横路委員 ヨーロッパはどうあれ、日本の政策をいま議論しておるわけですが、私はそういうことで、日米間で、三木・フォード会談の中で、通常兵力の攻撃に対しても核の使用、つまり使用するということが抑止力を構成するわけですね、使用するぞということそのものが抑止力なわけですから、そうすると、先制使用ということになるわけで、これはこの前の国会決議とも反してくるわけです。

▲参議員安全保障特別委員会 1982年08月04日

○上田耕一郎君 きょうは余り時間がありませんで今後また追及いたしますけれども、安武議員も言及いたしましたオファット基地発行のSACの発展という文書に横田その他にあるあの通信システムというのはポジティブコントロール、つまりゴー指令出すあれですな、それだということがもう明白に書かれている。わが日本が、唯一の被爆国の日本がこういうSAC戦略空軍のすでに基地になっている。沖縄の嘉手納基地、さらに首都並びに首都圏の横田、大和田、所沢に新たに通信管制の基地の改善工事が始まっている。これ来年の九月から工事が始まって再来年の一月に完了するというのですけれども、これきわめて重大な問題であって、わが国を限定核戦争に一層深く巻き込むことになる。これは当然核戦争になれば最大の報復目標の一つになるので絶対許せない、今後とも追及していきたいと思うのです。
 さて、こういう状況になるのは、宮澤官房長官おいでになりましたけれども、アメリカのアジアにおける先制核使用、これについて日本政府がすでに了解を与えているという大問題の当然の帰結であると思います。宮澤官房長官は六月二十五日の衆議院予算委員会で社会党の横路委員の質問に答えて、この先制使用問題で表現は核の抑止力と言いたいのだが、「両国政府間でそういうふうに了解しております。」と、そう答弁されておられるのです。
 さて、両国政府間の了解というのは、宮澤さんが外務大臣時代、昭和五十年四月にキッシンジャー国務長官と会談をされて、みずから記者発表をされて、この核抑止力問題について三点述べられました。それからその年の八月に三木・フォード会談があって、そのときのジョイントアナウンスメント、新聞の共同発表で核抑止力問題、通常兵器であろうと核攻撃であろうとアメリカは日本を守るのだということが述べられたわけですけれども、この二つを指しておっしゃっているのですか
、お伺いします。

○国務大臣(宮澤喜一君) つまりアメリカ政府として通常兵力だけでは十分な抑止機能が働かないという場合に核使用というものの可能性を排除してしまうということではこれは抑止力にならないわけでございますから、そういう基本的な認識を持っているということと思います。

○上田耕一郎君 いや、日米両国政府間にこの問題について了解があると言われたのは、あなたが外務大臣時代の宮澤・キッシンジャー会談、それからその年の八月の三木・フォード共同発表ですね。ここに書かれていること、この二点を日米間の政府了解だということになっているのかどうか明確にお答え願います。

○国務大臣(宮澤喜一君) その点は正確には外務当局からお聞き取りをいただきたいと思いますけれども、少なくとも昭和五十年四月に私がキッシンジャー国務長官と話をいたしました際、それからその年の八月でございますか、三木総理大臣が訪米されました際の共同宣言、この二つはそれを反映しておりますことは間違いないと思います。そのほかにもあるいはあるかと思いますが、その点につきましてはそのとおりでございます。

○政府委員(淺尾新一郎君) いまの御質問にお答えする前に、先ほど外務大臣に関連して御質問がございましたけれども、外務大臣の答弁は、その昭和五十年八月六日の共同新聞発表の第三項及び第四項に「米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。」、これは総理大臣と大統領との間で「これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく」その義務を引き続き履行することを約束したということでございまして、そこで言っているのは、アメリカは安保条約五条によって日本を防衛する義務を負っている、その義務の中には、アメリカが日本を守るためには核攻撃であれ通常攻撃であれ日本を守るそういう義務である、そういう点について日米間でこの昭和五十年八月六日の共同新聞発表で確認しているわけでございます。
 それから、第二点の外務省筋、それが私かどうかというお尋ねでございますが……

○上田耕一郎君 いやいや、そうじゃないんだ、それは別として。

○政府委員(淺尾新一郎君) まず私ではございません。
 それを明らかにした上でお答えいたしますが、外務省の考え方としてはやはり日本の安全保障というものはアメリカとの安全保障体制の上に成り立っているということでございまして、その中にはアメリカが持っている核であれ通常兵力であれ、その抑止力に依存しているということでございますので、その抑止力としてアメリカがそれを強化していくということについては当然その理解をする、そういう趣旨でございます。

○上田耕一郎君 これは共同発表をそのまま読んだとき、その裏にこの文言だけからはわからないことが新たに今度明らかになったのです。この共同発表並びに宮澤さんの四月の記者会見もそうですが、通常兵力あるいは核兵力による攻撃、どちらであってもアメリカは日本を守るのだということだけなんですね。
 ところが、今度この過程で明らかになったのは、通常兵器で攻撃された場合にもアメリカが先に核を使うことがあるのだ、核兵器による日本防衛、これを日本政府は理解している、了解を与えているということがこの一連の国会答弁で明らかになってきた。
非常に私は重大だと思うのですね。宮澤さん、明確に先ほど述べられた。
 そこで宮澤さんにお伺いしますが、そうなりますと、この新聞発表以外にあのときあなたが四月にキッシンジャーと協議されたときに、その問題についてその文言以外にすでにあのときから通常兵力による攻撃に対しても核の抑止力を使うことがあり得るということがあのときにあったのかどうか、それが第一点です。
 第二点は、もしそういうことが日米両国政府間で了解し合っているということになるならば、もし他の外国が日本を通常兵器で攻めてくる、そのときアメリカが核兵器を使うことを日本は前もって白紙委任でゆだねているのかどうか、あるいはアメリカが核兵器を使うというときは日米政府間で協議するということになるのかどうか、この点、そのときの話し合いを含めて、その後日米両政府間でどういう了解になっているかをお伺いしたいと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) 結局問題は、わが国はこういう姿でございますから、わが国に対して加えられることがあるべき攻撃に対して、仮に通常兵器だけでそれを抑止するような十分な力にならないという状況であれば核兵器も使用されることあるべしと、絶対に核兵器が使用されることがないというのではこれは抑止力になりませんから、通常兵器と核兵器と総合した立場で抑止力というものも考える、それは私はごくごく当然の立場ではないかというふうに思っておるわけであります。
 それからなお、事前協議云々というあたりがございましたが、これはお答えを間違えるといけませんので政府委員から答えてもらいます。

○政府委員(淺尾新一郎君) 上田委員のお尋ねの趣旨がアメリカ側が核を使うことについて日本側は事前に意思を表明できないのかどうか、あるいは事前協議の対象になるのかということであれば、これは日本の施設区域からそういう核を使うということであればこれは事前協議の戦闘作戦行動の一形態としてなるかもしれませんけれども、日本としては三原則を有している以上、日本の区域内にそういうような兵器は置いていない、したがって戦闘作戦行動の一形態としてもアメリカ軍が日本の施設区域から核を使うことについて事前協議の対象になるということはまあ論理的にはないわけでございます。
 それでは、それ以外の日本以外の地域で米軍が核を使うという場合にはどうだということでございますが、私たちがここで言っているのはあくまでも核というものは抑止力ということであって、使われてしまってはこれは人類の惨禍になるということでございますから、戦争を抑止するために持っているということでございます。したがって、いまお尋ねの件についてそういう場合が起きたときに事前協議の対象になるのかどうかということは、まず抑止力ということからあり得ないということを一つ申し上げることと同時に、安保条約上いわゆる六条の交換公文に基づく事前協議の対象では本来もともとこれはないわけでございます。

○上田耕一郎君 私は非常に重大な答弁だと思うのですね。つまりこれまで国会答弁で明らかにされてきた事前協議の言明からいって、日本の国内から核攻撃が行われるという場合にはなるけれども、日本の領土領空以外のところで使われる場合にはアメリカは勝手に日本防衛という名目で先に核兵器を使うということがあり得るということをお認めになったわけですね。
 朝日新聞の六月二十七日の社説は、松田審議官の横路質問に対する答弁、このときは宮澤さんも答弁されたのだが、アメリカの「核第一使用を認める趣旨の答弁」、「これは首相演説にも国会決議にも逆行する。」、「日本防衛に核使用を許すかのような答弁は、軽率というには重大過ぎる。」、この答弁取り消すべきだということを朝日は社説で述べている。私はこれは非常に重大な問題だと思うのです。
 もう時間が参りましたけれども、いまNATO諸国の間でも、七九年十二月のNATO理事会でパーシングIIと巡航ミサイルのヨーロッパ配備が問題になった際、それまでは二重かぎということでNATO諸国も核使用についてある発言権があったのです。ところがあのパーシングII巡航ミサイル配備についてはアメリカだけが使用権、発射権持っているというので、やっぱり大問題になったのですね。
 ところが日本でも同じ巡航ミサイルが、今度トマホークも八四年六月から第七艦隊に配備されますし、先ほど冒頭に取り上げましたようにグアム島のB52も空中発射の巡航ミサイルを積む、それに横田からゴー指令が行くわけですね。横田基地は通信基地だから核分裂物質入ってない、核弾頭入ってないからあれは核基地でないのだというのが政府の態度ですね。
 そうなりますと、アジアで日本政府がアメリカ政府と了解のもとで先に核兵器を使用することを日本防衛という観点で認めている、日本の国内から発射されなければいいのだというそういう答弁、これは私は国会決議にももう断然違反すると思うのです。国会決議は「核兵器が二度と使われることのないよう実効ある国際的措置」、これを求めるということを満場一致で決議しているわけですね。唯一の被爆国日本で最初にアメリカが日本を守るということで核兵器を使う、これは核戦争です。限定核戦争。これは世界的な核戦争にまでエスカレーションする危険があるわけで、そういうことを文字どおり白紙委任をアメリカ政府に対して行っているということはきわめて重大な問題だと思います。
 もう時間が参りましたけれども、最後に防衛庁長官、こういう日本がアメリカの核戦略の拠点にこれほど深く巻き込まれている、アメリカの先制核使用に対して日本政府としてオーケーしているということが核戦争を防ぐという、そういう日本国民の安全の上から危険なものであると思いますけれども、防衛庁長官はどうお考えになっているかを質問して私の質問を終わります。

○国務大臣(伊藤宗一郎君) 日本の防衛は日米安保条約を基軸としてやらしていただいておるわけでございまして、核の攻撃に対してはアメリカの核の抑止力にまつというのがわが国の防衛政策の基本でございます。

▲衆議院外務委員会 1999年08月06日 (先制不使用と日本の安全保障)

○高村国務大臣 まず、核の先制不使用を考える前提でありますが、政府の最大、最重要の責務である国の安全保障が結果的に核が使用されない形で確保されるのであれば、その方が望ましいということは、これは言うまでもないことだ、こう思っております。さらに、将来的には、安全保障を害しない形で核兵器のない世界が実現されることが最善のシナリオである、こういうふうにも考えているわけでございます。
 他方で、現実の国際社会において、いまだ核戦力を含む大規模な軍事力が存在しており、核兵器のみを他の兵器と全く切り離して取り扱おうとすることは、それは必ずしも現実的ではない、かえって抑止のバランスを崩して、安全保障を不安定化させることもあり得ると考えているわけでございます。
 したがって、安全保障を考えるに当たっては、関係国を取り巻く諸情勢に加え、核兵器等の大量破壊兵器や通常兵器の関係等を総合的にとらえて対処しなければならない、こういうふうに考えております。
 こういった基本的な認識に立って、我が国としては、核の先制不使用について、核兵器国間の信頼醸成及びそのことを通じた核兵器削減につながる可能性があることを積極的に評価すべきとの考え方があることは承知をしておりますが、これまでも申し上げたとおり、いまだに核などの大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実の国際社会では、当事国の意図に関して何ら検証の方途のない先制不使用の考え方に依存して、我が国の安全保障に十全を期することは困難であると考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、核先制不使用の問題については、現時点では核兵器国間での見解の一致が見られていないと承知しており、我が国としては米国との安全保障条約を堅持し、その抑止力のもとで自国の安全を確保するとともに、核兵器を含む軍備削減、国際的核不拡散体制の堅持、強化等の努力を重ねて、核兵器を必要としないような平和な国際社会をつくっていくということが重要である、こういうふうに考えています。

▲衆議院外務委員会 1999年06月02日 (議事録 米朝合意枠組みと先制不使用宣言問題)

○河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。
 このKEDOのもとになりましたアグリードフレームワーク、合意された枠組みというのがございますけれども、この合意された枠組みに合意をされたガルーチ大使が、実は私の母校の、私の出身学部の学部長に就任をされまして、たびたび、日本にいらっしゃるときに、KEDOの話、その他いろいろと話を伺ったりしております。
 いろいろな方のお話を伺うと、このKEDOというのは、先ほど大臣の答弁にもありましたように、核の問題であるというところでは大勢の方の認識がほぼ一致するわけでございますけれども、これまでに北朝鮮が、今までの黒鉛減衰炉を初めとして、どれだけの量の核兵器に必要な、核兵器をつくるための核物質を抽出して今持っていると外務省は考えているのか。それによってどの程度の質、あるいはどの程度の量の核兵器を北朝鮮は今持っている、あるいは製造することが可能だというふうに外務省、外務大臣はお考えなのか。あるとすれば、核弾頭は幾つぐらいあるという想定で外務省は動かれているのか。まず、そこの基本的なところをお伺いしたいと思います。

○高村国務大臣 北朝鮮が核物質をこれまでどれだけ抽出したかということは、よくわからないというのが事実であります。過去のIAEAとの保障措置協定に基づく特定査察の結果、北朝鮮が抽出したと申告した以上の分量のプルトニウムが存在する可能性が指摘されたわけであります。これを受けて、北朝鮮がIAEAに対して行った報告の正確性と完全性を検認するためのさらなる特別査察の実施をIAEAが要求したのに対し、北朝鮮が拒否したため検認ができなかったからであります。
 その後、米朝間の合意された枠組みが作成され、それがKEDOによる軽水炉プロジェクトにより実施されているわけでございます。今後、北朝鮮は合意された枠組みに従ってIAEAとの保障措置協定を完全に履行することになっているわけでありますが、その過程において、北朝鮮の核疑惑が、今委員が質問されたようなことを含めて解明されることを強く期待しているわけでございます。

○河野(太)委員 ちまたのいろいろな報告書によりますと、北朝鮮が既に数個の核兵器あるいは核兵器をつくるために必要な材料を持っているというようなレポート等が存在しますが、今の大臣の御答弁を伺いますと、それは当たらずとも遠からず、そう考えてよろしいのでしょうか。

○高村国務大臣 最初お答えしたように、よくわからない。よくわからない上で、核兵器を数個つくるだけのプルトニウムが抽出された可能性がある、そしてそれに基づいてつくった可能性があるというようなことだろうと思いますが、正確にはよくわからない、こういうことでございます。

○河野(太)委員 恐らく、正確なことは今後の検証その他でわかるか、あるいはわからないかということなんだろうと思いますが、大臣のおっしゃるように、そういう可能性があるのであれば、既に北朝鮮はテポドンというミサイルを発射していることでもございますし、北朝鮮が核弾頭をミサイルに積んで発射をする、あるいは威嚇をする、そういう可能性があるのではないかと思います。
 今後、北朝鮮の核ミサイルあるいは北朝鮮が核弾頭を積んだテポドン、これに対する抑止としては、日本はどのような戦略でこれに対処していくお考えでしょうか。

○高村国務大臣 北朝鮮の核兵器開発疑惑やミサイル開発問題は、国際的な懸念であるとともに、我が国自身が直面する安全保障上の重大な懸念であるわけでございます。
 核兵器開発問題につきましては、米朝間の合意された枠組みを踏まえ、KEDOの活動を進めることにより対処するのが最も現実的かつ効果的であると認識をしております。そのような観点から、我が国政府は今般、KEDOへの資金拠出に関する協定を国会に提出しているわけでございます。
 また、地下核施設疑惑問題については、今般の米国による金倉里の施設への訪問に見られるような、この疑惑を解消するための努力を支持しているわけであります。
 ミサイル問題については、我が国政府としては、米韓等と緊密に連携しつつ、北朝鮮に対し、開発、発射、配備、輸出を含むミサイル活動全般を中止するよう、さまざまな機会をとらえて粘り強く働きかけているわけであります。北朝鮮によるミサイル技術の取得を阻止するための輸出管理の厳格な運用を行うとともに、北朝鮮のミサイルの輸出先と考えられる国に対して、外交的な働きかけを強化する等の努力を行っております。
 我が国としては、このような対応をとるとともに、不測の事態に備え、安全保障の備えを確固たるものとする努力を傾注していく考えでございます。節度ある防衛力の整備あるいは日米安全保障条約の信頼性を高める、そういったことでありますが、抑止力の方は基本的には防衛庁の所管かなと思いますが、全体的な形で、いやしくも日本が核ミサイル攻撃をされないように外交努力もしてまいりたい、こう考えております。

○河野(太)委員 そうしますと、北朝鮮が核ミサイルを配備することがないような外交努力を続けていく、これはもちろんのことでございますが、そうはいっても、正確性は恐らくかなり低いとは思われますが、ミサイルを既に持っている、そして核弾頭を持っている可能性がある。
 となりますと、冷戦時代の常識かもわかりませんが、核ミサイルに対しては核ミサイルを、そういう抑止の理論によって核の引き金を防ぐというのが一般的な考えであったのではないかと思いますが、北朝鮮の核に対して、米国の核兵器によってこれを防ぐ、そういう抑止の理論に日本は入っているんだ、そう考えてもよろしいのでしょうか。それとも、北朝鮮の核については、別な理屈で日本政府は動いているのでしょうか。

○高村国務大臣 我が国の安全保障一般について述べますと、冷戦後も国際社会に種々の不安定要因が存在しておりまして、大量破壊兵器の拡散の危険も増大する中、我が国としては、米国との安保条約を堅持し、米国が有する核戦力と通常戦力の総和としての抑止力のもとで、自国の安全を確保する必要があると考えております。
 他方、北朝鮮の核兵器開発問題については、米朝間の合意された枠組みを踏まえ、KEDOの活動を進めることにより対処するのが最も現実的かつ効果的であると認識をしております。そのような観点から、我が国政府は今般、KEDOへの資金拠出に関する協定を国会に提出した次第でございます。
 また、地下核施設疑惑問題については、今般の米国による金倉里の施設への訪問に見られるような、疑惑を解消するための努力を支持してきているわけでございます。
 どれか一つというのじゃなくて、いろいろな角度から日本の平和と安全を確保していかなければいけない、こういうふうに考えております。

○河野(太)委員 その前に、政務次官お見えでございますので、大臣、必要なときにはどうぞ、お立ちいただいて結構でございます。そこのところの割り振りはよろしくお願い申し上げます。
 防衛大綱その他含めましても、我が国は米国の核の傘の中にあるというようなことがございますが、そうしますと、北朝鮮の核ミサイルに対して、核を使わずに通常兵器をもって抑止する、もちろん自衛隊に米軍を加えた通常兵器でもってこの北朝鮮の核を抑止することは可能なのでしょうか。

○阿南政府委員 先生の御質問の前提として、既に核兵器を持っている、そして、これが相当の技術水準にあるミサイルと一体となって、核ミサイル戦力として我が方の脅威になるという御議論でございますが、現在の段階で、我が方の軍事力という観点からの抑止の考え方は、先ほど外務大臣が御答弁になりましたように、安保条約の中で、米国が有する核戦力と通常戦力の総和としての抑止力でこれを守っていく。
 ただ、先ほど大臣も核兵器の開発という事実までははっきりは確認していないという趣旨の御答弁をされましたが、私どもの知っている限りでは、先生御案内のように、北朝鮮は五メガワットの黒鉛減速炉の実験炉を持っていたわけでございますね。そういうものから恐らくプルトニウムを抽出していたのではないか、その可能性は排除できない。もしそうだとすると、五年間ぐらいを考えるとこのくらいの量のプルトニウムになっていたのではないか。そうするとこのくらいの核爆弾が理論的にはできるというようなことから、一説によれば、二つ、三つあるのではないかというようなことでございますが、いずれにいたしましても、北朝鮮が実際に核爆弾を有しているということについての確たる情報、そういう認識はないわけでございます。

○河野(太)委員 済みません。質問に答えていただきたいのですが、これは政府提案の条約でございますから、お答えがなければ私は反対をいたします。
 二つ、三つの核弾頭がある可能性がある。そして、ミサイルが現に発射されて、ミサイルを持っている。その確度は極めて低いかもしれません。そういう状況で、北朝鮮が持っている可能性がある核に対して通常兵器だけで抑止理論が成り立つのかどうか、外務省はどうお考えになっているのかという質問でございますので、正確にお答えいただきたいと思います。

○阿部説明員 お答え申し上げます。
 きのう、ちょうど夜やっていましたNHKの核問題に関する番組で、アメリカの識者だったと思いますが、抑止力の専門家ですが、抑止力というのは結局相手側の心の中にあるということをおっしゃっていました。つまり、核兵器なりを持っている人が、自分はこれを使うことによって勝てる、あるいは有利に立てるというふうに考えれば使うかもしれませんが、使うことによってかえって不利になる、あるいは自分が滅ぼされると思えば使わないということでございまして、その意味におきまして、ただいまの先生の御質問につきましては、核兵器によらず、極めて限られた例でございますけれども、通常兵器によっても抑止力はあり得る。
 例えば、現在の北の場合において仮に理論的に二、三発の核があったとしましても、それを例えば米国に使いましても米国に与えられる被害は限られております。それに対して米国が通常兵器によって決定的な反撃をするということになれば北朝鮮は使わないことはあり得るわけでございます。
 同じような議論は実は湾岸戦争のときにありまして、イラクが化学兵器、生物兵器を持っているということが非常に強く疑われていたわけでございますが、これに対してアメリカは何を使うかということははっきり言わずに決定的な反撃をするであろうという警告をしまして、一般に言われていますのは、その結果もあってイラクは生物化学兵器を使わなかったということがございます。
 したがって、この場合においても、アメリカは核を使うという明示的なことは言わずに抑止を働かせたという分析ができるかと思いますが、そのような非常に限られた場合におきましては、核を使わず抑止力を働かせるということは理論的には考えられるということであろうと思います。

○河野(太)委員 済みません。今の答弁は、米国には決定的なダメージは与えられないかもしれませんが、テポドンをもって、核兵器があれば、東京には決定的なダメージが来るわけでございます。その場合の抑止力をお尋ねしているわけでございまして、その場合には今おっしゃったのと同じことが成り立つのでしょうか。

○阿部説明員 日本に対しましては、この点は、日米安保条約の信頼性を維持するということによって、米国の日本に対する防衛約束、それが、米国はあらゆる手段を使って日本を防衛するということを言っております。何を使うということは特定はしておりませんけれども、それによって日本に対する攻撃に対しても抑止力が維持される、このように解釈しております。

○河野(太)委員 日米安保条約の信頼性の問題になるのかもわかりませんが、アグリードフレームワーク、合意された枠組みの中に、米国は、北朝鮮に対して、米国が核兵器で威嚇したり核兵器の使用をしないことを公式に保証するという一節がございます。そうしますと、このアグリードフレームワークに基づいたKEDOでございますから、米国は北朝鮮に対して核兵器を使用しないことを公式に保証するわけでございますね。そうすると、日米安保条約で、あらゆる核兵器とあらゆる通常兵器と言っていても、米国は北朝鮮に対して核兵器を使用しないということを公式に保証すれば、使用できないのではないでしょうか。

○阿南政府委員 今の御指摘の点でございますが、これは合意された枠組み、アグリードフレームワークをごらんになりますと、いろいろこれから米朝間で関係を進めていく段取りが書いてございます。外交関係、事務所をつくるというようなことまでですね。これは、一つ一つのKEDOのプロジェクトが行われ、そして核疑惑が解消し、そういう前提の中で今後こういう道筋でやっていこうということを言っているわけで、私どもは現段階で、今先生がおっしゃったような保証を与えたというふうには考えておりません。

○河野(太)委員 それでは、北朝鮮は核を持っている疑惑があるということでございますが、生物兵器、化学兵器についてはいかがでございますか。

○阿南政府委員 北朝鮮が生物兵器、化学兵器を保有しているという情報には接しております。詳しい実態については必ずしも明らかにはしておりません。我が国は北朝鮮によるこうした大量破壊兵器の開発活動を懸念しております。北朝鮮がこうした懸念を解消する行動をとるよう、米韓両国とも緊密に連携して、これからのいろいろな包括的な交渉の中でそういう北朝鮮側の自制を求めていくという方針でございます。

○河野(太)委員 それでは、アグリードフレームワークの中に生物兵器、化学兵器について何か書かれておりますでしょうか。

○阿南政府委員 アグリードフレームワークの中には生物化学兵器についての言及はございません。
 御答弁がおくれて申しわけございませんでした。

○河野(太)委員 米国の核戦略の中に、米国が核の先制不使用を行わない理由の一つとして、核兵器のみならず生物兵器、化学兵器の問題が含まれていたと思います。生物兵器あるいは化学兵器で攻撃をされることを抑止するために米国は核の先制不使用を行わないのだという理屈があったと思うのです。そうしますと、北朝鮮の場合には、北朝鮮が生物兵器、化学兵器を持っている可能性がある、恐らく持っているであろうという状況において、米国は北朝鮮に対し核先制不使用を宣言するのと同じ効果をもたらすのがこのアグリードフレームワークということになります。そうしますと、このアグリードフレームワーク自体は米国の核戦略と矛盾しているのではありませんか。

○阿南政府委員 このアグリードフレームワークはまさに北朝鮮の核開発に向けて、その対応としてできたものでございますので、そういうコンテクストの中で、先ほど御説明いたしましたようなこういう手順で事が進んでいけばアメリカとしてはこういう方針で臨むということを書いてございます。先生が指摘されました生物化学兵器の問題ということは確かにあると思いますが、このアグリードフレームワークの中ではその問題について手当てがされていないというふうに考えます。

○河野(太)委員 そうしますと、外務省のお考えをお伺いしたいのですが、アメリカが核先制不使用を行わない理由として、生物兵器、化学兵器に対する抑止と言っているけれども、これは必ずしも一〇〇%そういう必要性はないということですね。北朝鮮は、アグリードフレームワークが実現して進行していっても、BC兵器は手元に持っている可能性がある。その場合においても、アメリカは核の先制不使用ということを宣言するわけでございますから、アメリカの言っている戦略がやや矛盾しているということは、外務省もそう考えている、そういうことでよろしゅうございますか。

○阿南政府委員 私どもが一概にアメリカの戦略が矛盾しているという判断をすることはできませんが、先ほど申し上げましたのは、あの北朝鮮の核疑惑というものに対応したときの、その中から出てきたアグリードフレームワークの中には、そのスコープの中には先生が御指摘の生物化学兵器という問題は取り上げられていなかったということを申し上げたわけでございます。
 アメリカは、核兵器等の大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実の国際社会ではという、そういう認識だと思いますので、アメリカとして、生物化学兵器というものが核兵器等の大量破壊兵器の中に含まれているかどうかという有権的解釈は私どもはできませんが、アメリカが核先制不使用宣言をしないでいるということの中にはそういうことも含まれていると思うのでございます。
 先生の今御質問の、外務省として、アメリカの戦略はその点では矛盾していると考えているのかということについては、今にわかに断定的に申し上げることはできませんので、御理解いただきたいと思います。

○河野(太)委員 片やBC兵器に対する抑止力で核が必要なんだと言っておいて、片やBC兵器を持っている国に対して核兵器は使わないよと言っていることは、これは矛盾以外の何物でもないではないかと思います。それを矛盾かどうか考えるのに時間が必要だとはとても思えないわけでございますが、そこはいかがかということ。
 それと、結局のところ、日米安保条約であらゆる手段をもって日本を防衛するということになっていても、日本に非常に近い国で、今恐らく最も日本に対して脅威であろうという国に対して、ある一定の条件のもとであっても、アメリカは核兵器を使用しないことを公式に保証する、そういうことを二国間協定で、日本の含まれていない、北朝鮮とアメリカの両国間のアグリードフレームワークでアメリカが一方的に宣言をしている、そういう事実があるということは外務省もお認めになるのでしょうか。

○阿南政府委員 第一点の、矛盾しているか矛盾していないか即座に判断できるはずだということでございますが、何遍も申し上げておりますように、北朝鮮の核開発阻止という角度から出てまいりましたアグリードフレームワークというものと、それではアメリカが生物化学兵器というものをどういうふうに考えているか、そういうこととはおのずから違う側面があると思いますので、私どもは、にわかに矛盾しているとかしていないとか申し上げるのは困難だということを申し上げました。
 申しわけありません、次の御質問、何でございましたでしょうか。

○河野(太)委員 繰り返しますと、要するに、日米安保の中では、日本を守るためにあらゆる手段をとってということを言っているにもかかわらず、日本が入っていない、アメリカと北朝鮮の二国間の合意の中で、米国は、日本が最も今脅威に感じている北朝鮮に対して、ある条件が整えば核兵器の使用をしないことを公式に保証している、そういう事態があった。
 要するに、日米安保があらゆる手段をと言って、日本の外務省がそうおっしゃっていても、実はある分野ではそういうことではないということでございますか。

○阿南政府委員 記載の文章はおっしゃるとおりでございますが、先ほど申し上げましたように、私どもの理解では、何もあの時点でアメリカがそういうことを向こうに約束したというわけではなくて、あくまで、今後事態がこういうふうに進展していく場合にはそういうこともあるんだということを書いた。すなわち、大使級レベルに関係を昇格していこうとか、お互いに事務所をつくろうとか、その時点で将来に向かって進むべき方向を述べたわけでございますので、先ほども申し上げましたが、アメリカがその時点で不使用を約束した、したがって日米安保の義務と極めて矛盾することを北朝鮮には約束したのではないか、そういうことではないというふうに理解をしております。

○河野(太)委員 いずれにしても、アメリカは、日本の含まれていない二国間条約でそういう手を縛ることを言っていることには変わりございませんね。

○阿南政府委員 何度も申し上げますが、アメリカといたしましては、この文書の中で、将来の問題としての意図表明をしたということでございまして、日本と関係ないところで二国間の約束、協定とか条約を結んだということとは違うことだと考えております。

○河野(太)委員 私は、米国が核兵器の使用をしないことを公式に保証するというのは大変いいことだと思います。私は、アメリカが核の先制不使用を宣言すべきだと思いますが、日本と大変密接な安全保障上の問題のある北朝鮮に対して、一方的に、日本が加わっていない条約の中でアメリカがこういうことを言うのは、著しく安全保障条約の信頼性を損なっていると思います。今後、もしアメリカがこういう核兵器の使用に関する、あるいは何らかの安全保障上の約束を北朝鮮に対してするときには、日本もその条約の中に加わって、日本政府もきちんと署名の中に入るべきではないのでしょうか。

○阿南政府委員 米朝間についていえば、米朝間でどういう形で今先生がおっしゃったような取り決めなり協定が結ばれるかということにもよりますが、当然、アメリカが、先生先ほど来御指摘のように、そういう重要事項について日本に協議をすべきであるし、我が方もその十分な協議を行うことを要求する立場にあると思います。
 技術的には、米朝間の条約に日本も参加するということが妥当かどうか、あくまでその協定の性格、内容にもよると思いますけれども、米朝間は米朝間の合意があり得るし、ただ、日本の安全に重大な影響を持つような約束をするとすれば、当然日米同盟国間で十分な協議が事前にあるべきである、そういうふうに考えるところでございます。

○河野(太)委員 それでは、外務省あるいは日本政府は、アグリードフレームワークのこの一節について、事前に米国と協議をし、事前にアメリカに合意を与えた、そう考えてよろしゅうございますか。

○阿南政府委員 この米朝間の交渉、アグリードフレームワークをつくる段階で、先生も御案内かと思いますが、日本政府もアメリカと密接に連絡をしておりました。実際上、ニューヨークでガルーチさんが交渉されたときに、我が方のアジア局の当時審議官がずっとニューヨークのホテルに詰めていて、ワンセッションごとにアメリカと協議をしてやったということでございますので、緊密な連絡のもとにこれができたということが過去の経緯でございます。

○河野(太)委員 質問にお答えください。

○阿南政府委員 日本政府が明確に同意したかという御質問であれば、そういう経緯の中で、私は、先ほど申し上げましたような将来の意図表明ということで理解をしたということでございます。

○河野(太)委員 将来の意図表明であっても、米国からこの一節を提示され、日本政府はこれに合意したのでしょうか。

○阿南政府委員 まさに米朝間の合意された枠組みでございますので、文言等は米朝間のものでございますが、先ほど申し上げましたように、日本政府としては十分に協議を受け、また日本政府の立場も表明したというのがこの米朝間の交渉に日本政府がかかわった経緯でございます。

○河野(太)委員 では、現在、日本政府はこのアグリードフレームワークの一節を認めるんでしょうか。これに対してアメリカに抗議をする、あるいは異を唱えることはないんでしょうか。

○阿南政府委員 これは先生、先ほど来申し上げておりますが、将来に向かってのアメリカの意図表明ということでございます。また、あの時点では、アメリカは何とかして北朝鮮の核開発を抑え込もうという努力をしている交渉で、日本政府として、先ほど来申し上げておりますように、あくまでアメリカ側の意図表明ということで理解をしたということでございますので、今異議を申し立てるとか反対するとか、そういう性質のものではないというのが私どもの認識でございます。

○河野(太)委員 それでは、日本政府は、ある条件が整えば米国が核の先制不使用を宣言することを認めているということになると思いますが、どのような条件が整えば、核の先制不使用を米国が公式に発言をしても日本政府は日米安保にかかわり合いがあると異を唱えずに済むんでしょうか、その諸条件を教えてください。

○阿南政府委員 米国の核先制不使用宣言ということに関することでございますが、ある国、地域に対して核先制不使用を宣言することの可否の判断、これは、当然のことながら、一義的に核兵器国が行うものでございます。非核兵器国である日本として、かかる判断を行う立場にはないわけでございますが、一般論で申し上げますと、核先制不使用の問題については、現時点では核兵器国間での見解の一致が見られていないと承知をしております。
 いまだに核兵器等の大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実の国際社会では、我が国としては、米国との安全保障条約を堅持し、その抑止力のもとで自国の安全を確保するとともに、核兵器を含む軍備削減の努力を重ねて、核兵器の使用を必要としないような平和な国際社会をつくっていくことが重要であると考えております。

 我が国の立場を申し上げれば、以上のようなことでございます。

○河野(太)委員 それでは、核保有国であるアメリカが一方的に核の先制不使用をしても、日本はそれでしようがないんだ、そういうことなんですか。それでは日米安全保障条約の信頼性というのはどうなるんでしょうか。アメリカがある地域、ある国に対して核先制不使用を宣言するのであれば、当然日本に対して同意を求めてくるべきであろうと思いますが、今の答弁ですと、それは一義的にはアメリカのことで、日本が口を挟むべき筋合いのものではないと聞こえましたが、外務省はそういう認識でいらっしゃるんでしょうか。

○阿南政府委員 一般的に、米国等核を持っている国が核先制不使用宣言をするかどうかという点では先ほど申し上げたようなとおりでございますが、他方、アメリカがどういう国際情勢のもとでどういう国に対してそういう保証を与えるか、これは、先ほど来先生もおっしゃっておられますように、当然、日本の安全、平和に深くかかわる問題でございますので、同盟国として協議があるのは当然でございますし、日本としても、そういう事態になる、いい意味でなるということもあるかと思いますが、当然米国と協議をして、米国のそういう決定に日本側の考えを反映させるということは当然のことであると考えます。

○河野(太)委員 では、米国から核先制不使用の問題で協議があった場合に、どういう条件が整っていれば日本はそれに合意をするんですか。

○阿南政府委員 これは、今の一般的なお尋ねでございますと、本当に日本側から、こうこうこういう条件ならばアメリカが核不使用宣言をしても日本の平和と安全に差しさわりがない、どうぞと言うかというその判断は、まさに状況を見ないと、今の段階でこういう条件であればオーケーであるということを申し上げるのは困難でございます。

○河野(太)委員 どういうものを判断されるんでしょうか。こういうクライテリアのものがこういう状況だったときにはゴーだ、あるいはノーだということになると思うんですが、一般的に何を調べ、その状況いかんということになるんだと思いますが、一体何を調べて協議に臨むんでしょうか。

○阿部説明員 米国の核不使用のいわゆる消極的安全保障というものにつきます条件としましては、現在アメリカがとっております政策は、まず、その相手国が核兵器を持っていない、かつ核不拡散条約を誠実に遵守していること、これが一つの前提でございますし、もう一つは、その相手国が核兵器を持った国と同盟のもとに攻撃をしかけてきていないという条件を今アメリカは持っております。
 加えて、当然、日本との関係におきましては、米国が先制不使用という場合には、日本に対する攻撃も先制使用というふうに観念する。つまり、そこのところを切り離しますと、日本が攻撃を受けた場合にアメリカが反撃しますと、そこをそういうとらえ方をしますとアメリカの先制使用になりますので、そういうことでありますと同盟関係は成り立たないので、そこは一体として考えているということ。
 それから最後の点は、先生が先ほどおっしゃいました生物化学兵器との関連でございますけれども、これは米国の政府内でも外でも非常に今議論のあるところでございまして、かなり強い意見は、相当程度のところまでは核兵器に訴えなくてもアメリカは生物化学兵器の使用を抑止できるという非常に強い議論がございます。ただ、同時に、米国は非常にそれをまた懸念していることも事実でございまして、特に湾岸戦争後は実戦部隊に対して生物化学兵器に対する防護策を講じておるということもありますので、これから国際情勢あるいは北朝鮮の特定の情勢がどうなるかというところを見きわめた上で、そこはアメリカは慎重に判断するというふうに考えます。また、その過程におきまして、日本政府とも極めて緊密に協議がなされるというふうに考えております。

○河野(太)委員 それでは、最後に、今のお話ですと、生物化学両禁止条約に入っている国が、核兵器を持たず、また核の保有国とも同盟をしていない、そういう状況にある場合に消極的安全保障ということで核の先制不使用を宣言することができる、そう日本政府は考えていると考えてよろしいんでしょうか。

○阿部説明員 そのような方針が現在の米国の政策であると理解しておりますし、私どもも政策としてはそれに理解を示しているということでございます。

○河野(太)委員 時間が参りましたので、きょうの質問はここで打ち切らせていただきますが、核が問題になっている割には、どうも日本の国会でこうした核兵器、核戦略に関する議論が非常に乏しいように思います。ぜひ、外務委員会でそのような場を設け、調査研究をする必要があるのではないかと御提案させていただいて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。


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