核情報

2009.2.18〜

核の役割限定に焦点を合わせる米国の運動──核以外の攻撃にも核の傘を望む日本

ひとまず核の役割を核攻撃の抑止のみに限定して、大幅核削減と偶発的核戦争防止へ

キッシンジャーら米国政界4人の重鎮の「核兵器のない世界」の提言で生まれた核兵器全廃への新たな潮流を背景に、米国の運動は、ひとまず、米国の核兵器の役割を抑止のみに限定するよう政府に要求することに焦点を合わせています。核の役割を、米国や同盟国に対する他国からの核攻撃の抑止に限定することによって、配備数や方式などを大幅に変更せよとの要求です。日本政府は、日本に対する核以外の攻撃に対しても核報復のオプションを米国が維持することを望む政策を採り続けています。

米国の団体の主張が理解できやすいように、関連文書を訳出しました。これらの文書について説明の後に、その訳文(全訳・抜粋訳)と「核情報」にある他の先制不使用関連の記事類とのリンクをまとめて載せました。




核の役割の限定を唱える米国団体の要求

憂慮する科学者同盟(UCS)、自然資源防護協議会(NRDC)、米国科学者連合(FAS)の3団体が昨年2月に発表した『真の安全保障に向けて──米国の核兵器政策を変えるために、次期大統領が講じるべき10の措置』(2001発行:2008年2月改訂)は、最初に講じるべき10の措置のうちの第1として次のように述べています。

1.米国の核兵器の唯一の目的は、他国による核兵器の使用を抑止し、必要な場合には、それに応酬することにあると宣言する。

また、軍備管理協会(ACA)事務局長、NPTの締結交渉に当たったジョージ・バン元大使、草の根平和団体のピースアクションの事務局長らが昨年12月にオバマ「次期」大統領に宛てた書簡「核兵器・核拡散の課題に対処し、核兵器のない世界に向けて動く」も、同様の主張をしています。書簡は、オバマが迅速に行動すべき分野として、1)ロシアとの大幅核削減交渉と 2)包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准の二つを上げ、1)について次のように述べています。

このような削減を支持し、米国の核政策の方向の変更を表明するために、関連省庁に対し、議会が義務付けている「核態勢の見直し」*を、核兵器が存在する限りにおいては、核兵器は他の国の核兵器の使用を抑止する役割だけを果たすとの原則に基づいて行うよう指示することを私たちは要請します。

さらに、軍備管理協会(ACA)のダリル・キンボール事務局長は、同協会発行の『アームズ・コントロール・トゥデー』2009年1−2月号の巻頭言で次のように述べています。

著名な米国科学アカデミーのパネルが10年以上前に結論付けた通り、「冷戦後の時代において米国の核兵器の役割としてなお弁護できる唯一のものは『中核的抑止』である。すなわち、他の核保有国が米国またはその同盟国に対し、核兵器を使って攻撃をかけたり、強要したりするのを抑止するために、報復するとの威嚇を利用するというものである。」

・・・

もしオバマが、議会の定めた「核態勢の見直し」を、この「中核的抑止」の役割に基づいて行うようペンタゴンに指示すれば、ワシントンとモスクワは、それぞれの核戦力を、核弾頭の総数にして1000発あるいはそれ以下にまで削減することができる。そうすれば、オバマにとって、「意味のある削減、そして、最終的な核兵器の全廃に向けて如何にして動くかについて、宣言済み核兵器国すべての間でのハイレベルの対話」を開始するとの彼の選挙公約を果たす道が開かれる。

議会は、2008年度国防歳出権限法の一部として、国防省に2009年中の「核態勢の見直し」を義務付けると同時に、「米国戦略態勢議会委員会」を設置しました。同委員会は2008年12月15日に中間報告を議会に提出しましたが、残念ながらその内容は政策の大幅変更を唱ったものとはなっていません。最終報告は2009年4月1日の予定で、オバマ政権はそれを受けて「核態勢の見直し」を行うことになっています。

1994年にクリントン政権が行った「核態勢の見直し」は、冷戦の終了後ということで核態勢の大幅な変更が期待されましたが、中身はそれまでの政策を踏襲するものでした。2002年のブッシュ政権の「核態勢の見直し」ではさらに核の役割が強調されましたが、それは、クリントン政権が脱核兵器依存の明確な方向を打ち出し得なかったことの付けが回ってきたものともいえます。今回、オバマが核政策の大幅変更を打ち出せるかどうか、その鍵を握るのが、「中核的核抑止」、先制不使用の考え方です。

まずは勝ち取ろう、日本の核先制不使用政策

核の役割を核攻撃の抑止のみに限定するというのは、核保有国に対しても、非保有国に対しても先には核を使わないという「先制不使用」政策です。「先制不使用に反対する日本は核兵器全廃の足かせになるのか」でも述べたとおり、先制不使用政策をとるというのは、ただ紙の上での説明を変えるいうことではありません。先制不使用政策に基づいて、分単位で発射できるミサイルの警戒態勢を解除するとともに、核の大幅削減を実施する。こうして、「核の存在意義を薄める」ことによって、核兵器全廃への道筋を示し、核拡散防止の協力体制を強化するのです。

ところが、上述の「先制不使用に反対する日本は核兵器全廃の足かせになるのか」で詳しく説明したとおり、日本は、米国が先制不使用政策をとれば日本の安全保障が不安になるとして、先制不使用政策に反対し続けています。日本の運動は、米国の運動に呼応して、日本の核政策を変えさせることができるでしょうか。日本の私たちの核兵器全廃に向けた最大の課題の一つは、まず日本の核先制不使用政策を勝ち取ることでしょう。

先制不使用の提案訳文

参考

  1. NPT第6条の軍縮の目標を達成するためのいくつかの短期的措置
    1998年5月5日、ジュネーブでのNPT再検討会議準備委員会に際して発表 、NPTの締結交渉に当たったジョージ・バン元大使他約、各国のNGO関係者約30名が署名
  2. 『ゼロの論理』 イーヴォ・ダールダー元安全保障会議ヨーロッパ問題部長 フォーリン・アフェアーズ誌2008年11-12月号 日本語要約
    フォーリン・アフェアーズ誌日本語版目次はこちら

先制不使用問題解説

先制不使用に関する各党の見解

  • 社民党
    すべての核兵器国による先制不使用宣言をよびかけ、条約化を目指します。早期のCTBT(包括的核実験禁止条約)発効やカットオフ条約の具体化を目標に、関係国への働きかけを強め、NPT体制の強化を目指します。核兵器を大幅に削減しながら、核兵器禁止条約の実現を目指します。
  • 民主党
    • 民主党核政策〜核の恐怖のない世界を目指して 2000/04/18

      (4)核の傘

      日米同盟のもとで日本は米国の核の傘の下にあるとされている。言葉をかえれば、日本が国家存亡の危機にあるときに、米国が日本を守るために核兵器を使用するという選択肢がある、ということである。このことが、自らは米国の核で守られている日本に核不拡散を言う資格はないとの議論を生んでいる。

      我々は現実に核を持つことと核保有国との間に同盟関係を持つことは質的にまったく異なることであると考える。ただし、どのような状況において米軍が核を使用する可能性があるのか、そしてその際に日本はあらかじめ協議を受けることが可能なのかといった点についての議論が、今までなされてこなかったことは問題である。日本を守るために核が使用されることは、その核使用の結果として日本が核の攻撃を受ける可能性がある以上、日本の意向を無視して決定されるべきことではないと考える。

      核兵器による威嚇や核兵器の使用のない世界を目指す以上、我々は米国が日本を守るために、米軍の保有する核を他国の日本に対する核攻撃に先立って使用することはないこと(核の先制不使用)を日米間で合意すべきと考える。この合意は核の先制不使用を唱える中国を含めた三国間の合意とすることも考えられ、また将来の北東アジア非核地帯構想への発展の第一歩となることが期待される

      (5)北東アジア非核地帯構想

      我々は北東アジア非核地帯構想を提案する。即ち日本、韓国、北朝鮮が核兵器を開発、製造、保有、配置、使用しないことを約束するとともに、核エネルギーの平和利用を検証するための相互査察を行なうこととする条約の締結である。また米国、中国、ロシア等の核保有国にも、この地域における核の使用や核の威嚇を行わないことを認める旨議定書の締結を求めることとすべきである。

      これらの考え方の基礎となるものとして、既に1991年に「朝鮮半島の非核化に関する南北朝鮮の共同宣言」が確認された。また1994年の米朝合意においても、米国は北朝鮮に対して核兵器で威嚇したり核兵器の使用を行わず、北朝鮮は朝鮮半島の非核化を推進する、との方向での確認がなされている。

      これらの合意を基礎としつつ、日本も含めた北東アジア非核地帯構想を実現することは、この地域の安定に極めて大きな貢献をなす。具体的な手順としては、正式の条約とするためには日朝間の国交正常化が前提となるので、先ず日韓両国が中心となって、北朝鮮、米国、中国、ロシアを加えた六カ国で、北東アジア非核地帯に関する共同宣言を行なうことを目指すべきである。この共同宣言がなされることは、日朝両国間の国交正常化交渉を推進する役割を果すことも期待される。

    • 2009年民主党の政権政策マニフェスト

      55.核兵器廃絶の先頭に立ち、テロの脅威を除去する

      ○北東アジア地域の非核化をめざす。・・・

  • 共産党
    核先制使用禁止の保証は核兵器廃絶です。核兵器廃絶の世論と運動を世界に大きく広げましょう。

核態勢の見直し




資料

米国の核兵器政策を変えるために、次期大統領が講じるべき10の措置 UCS、NRDC、FAS (抜粋訳)

真の安全保障に向けて
──米国の核兵器政策を変えるために、次期大統領が講じるべき10の措置(ステップ)

第1章 提案の要約

・・・

最初に講じるべき10の措置

最善の状況の下でも、核兵器の世界的禁止のための国際的コンセンサスと制度的枠組みを発展させるには数十年かかるだろう。検証技術の限界や、それに関連した政治的確信の欠如のため、核兵器の量の上限を非常に低く設定するというのではなく、すべての核兵器を禁止するというのは、少なくとも最初は、難しいかもしれない。

しかし、それにも関わらず、核兵器禁止をゴールにし、それを真剣に追求することは、現在以上の国々が、そして、いずれはテロリストが、核兵器を取得するのを防ぐために極めて重要である。米国は、このゴールに向けて進むために必要な状況を作り出す努力をすることによって、国家及び国際的安全保障にとって極めて重要な貢献をすることができる。

そのために欠かすことのできない最初のステップの一つが、米国の核兵器の唯一の目的は他国による核兵器の使用を抑止し、そして、最後の手段として、これに応酬することにあると宣言するというものである。このような新しい核政策は、直接的に、米国の国家安全保障を高め、核不拡散を促進するのに役立つ──核兵器の禁止が獲得できるか否か、できるとして、いつそうなるかに関わりなく。

米国は、その核兵器を一方的に合計で核弾頭1000発以下に削減すべきである。向こう10年間、あるいはその後を考えても、「生き残り可能な」核兵器を数百発以上保有することを正当化するような信じられる脅威は存在しない。また、米国の核戦力の規模を他国のそれにリンクさせる軍事的理由はない。

また、数分以内に核兵器を発射する能力を米国が維持することを必要とするような信じられる脅威は存在しない。いや数時間以内の発射についても同様である。これらの兵器を発射するのに必要な時間を長くすることによって、米国は、自国の核抑止力が脆弱になり得ると考えるロシアの懸念を低減することができる。そうすると、ロシアも自国の核兵器について、もっと安全な核態勢を採用するインセンティブを有することになる。これは、偶発的な、あるいは、許可のない、または、誤解によるロシアの攻撃の可能性を大幅に減らすことになる。

具体的には、次期大統領は、今日の政治的及び戦略的現実に合った形に米国の核兵器政策を変えるために、以下の10の一方的措置を講じるべきである。

  1. 米国の核兵器の唯一の目的は、他国による核兵器の使用を抑止し、必要な場合には、それに応酬することにあると宣言する。
  2. 分単位で測れる時間内ではなく、日単位で測れる時間での核戦力の発射の態勢となるように配備方式を変えることによって、短時間での発射のオプションを無効にする。
  3. 現在の攻撃目標計画を破棄し、その代わりに、米国あるいはその軍隊や同盟国に対して核兵器が使われた場合の状況に合わせた対応を迅速に計画する能力を策定する。
  4. 迅速かつ一方的に、米国の核戦力を、配備及び予備の核弾頭合わせて1000発以下に削減する。
    米国は、このレベル以上の核弾頭すべてを、その軍事的必要を超えるものと宣言し、貯蔵状態に置き、国際社会に透明な形でのその解体を開始し、国際的な保障措置の下で、これらの1000発の核弾頭を維持するのに必要な量以上のすべてのプルトニウム及び高濃縮ウランの処分を開始する。
    この解体過程の最終ポイントをロシアの反応に依存させることによって、米国は、ロシアに対し、返礼的措置を講じるよう促すことができる。
  5. 提案されている「信頼できる代替核弾頭(RRW)」を含め、新たな核兵器の開発・配備の計画をすべて中止する。
  6. 米国のすべての非戦略核を迅速かつ一方的に退役させ、透明な形で解体し、ロシアに同じことをするよう促す措置を講じる。
  7. 交渉により、検証可能な二国間あるいは多国間の枠組みで、米国の核兵器の数をさらに減らす所存であることを公表する。
  8. 核実験を再開しないと約束し、包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准するよう上院に働きかける。
  9. 地上配備ミサイル防衛システムのこれ以上の配備を中止し、宇宙配備のミサイル防衛計画をすべて放棄する。ロシアあるいは中国が、自国の生き残り可能な長距離ミサイル戦力の相当部分を撃墜し得ると見なすミサイル防衛システムを米国が配備することは、大幅核削減の障害となり得る。
    米国のミサイル防衛システムの結果これらの国々が講じる対応措置は、また、米国の安全保障の正味の低減をもたらすことになり得る。
  10. 核兵器の普遍的な検証可能な禁止が国家及び国際的安全保障を高めるという事実についての認識の下、核兵器全廃を追求するとの米国のコミットメントを再表明し、そのゴール向かう具体的な計画を示す。

将来

次期大統領がこれらの措置を講じれば、米国は、国家及び国際安全保障を大いに高めると同時に、他の国々の核兵器を削減する交渉のための舞台を準備することになる。これらの国々とともに、米国は、1000発よりずっと低いレベルへの検証可能な多国間削減の交渉及び実施に伴うチャレンジに立ち向かうことができる。そして、それにより、最終的な核兵器の世界的禁止のための基礎固めをすることができる。

・・・

第3章 解決策

・・・

抑止及び応酬

米国が、考え得るあらゆる核攻撃を抑止し、必要な場合には、これに応酬する生き残り可能で「運搬可能」な核弾頭を十分に有している限り、米国の核戦力の規模を他の国々のそれとリンクさせる軍事的理由はない*。たとえば、1万発の核弾頭も、海洋に出ている潜水艦配備の100発の核弾頭からなる核戦力を無効にすることはできない。

[原注:生き残り可能な核弾頭は、次の運搬手段に搭載された弾頭を除く。サイロに置かれたミサイル、埠頭に停泊中の潜水艦のミサイル、警戒態勢にない爆撃機]

核兵器の使用を抑止、あるいはこれに応酬するために、米国は何発の核兵器を必要とするのか。

米国が「対価値(カウンターバリュー)」攻撃計画[訳注:都市部や産業を狙うもの]を放棄したとしても、攻撃を仕掛けてくる側の政府と社会を破壊する能力が、抑止の中核となる。敵が正気であれば、攻撃によって政治的あるいは軍事的にいかなる有利な立場が得られるにしろ、それが自国の社会の破壊のリスクを冒すに値するとは考えないだろう。

100発の核弾頭を見舞えば、いかなる国であれ、その社会や経済は破壊されてしまうだろう。数10発の爆発でこれまでのどの戦争で殺されたよりも多くのひとが殺されることになるだろう。したがって、100発の運搬可能な核弾頭は、いかなる国家指導者であれ、米国あるいはその同盟国の都市に対する核攻撃の命令をするのを抑止するのに十分すぎると言えよう。

米国にとってロシアの都市に対して報復攻撃をかけるのは、自殺行為である。米国が全面核攻撃にはいたらぬ攻撃を受け、核による報復が必要とみなした場合には、米国の大統領は、敵の都市以外の攻撃目標に対して核兵器を使うオプションを持つ必要がある。エスカレーションの可能性を最小限にとどめるためである。この点においても、100発の生き残り可能な核弾頭は、このような事態に対応するのに十分な量であろう。

たとえば、ロシアに対しては、100発の核爆発は、通常攻撃の支援に使われ得るすべての空軍、海軍施設、部隊集結地、指揮センター、兵站センターを破壊するのに十分だろう。あるいは、100発の爆発で、都市の外にあるすべてのエネルギー・産業攻撃目標を破壊できるだろう*。

しかし、100発の核兵器を敵に使った場合、それが、たとえ都市を避けるものであったとしても、全面的応酬を引き起こさないというのは想像しがたい。敵側が限定的応酬と見なす上限としては、おそらく10発程度の方が近いと言えるだろう。

したがって、数百発の生き残り可能で運搬可能な核弾頭があれば、米国にとって、核攻撃を抑止、あるいはこれに応酬する一方、他の国々が攻撃してくるのを抑止し続けるための核兵器を維持できる量として、十分と言えるだろう。

あり得る米国の戦力態勢について詳細に特定するのは、この報告書の範囲を超える。しかし、たとえば、米国が2隻の潜水艦を保有し、それぞれに、3発ずつ核弾頭を搭載したミサイルが24基配備されていれば、[核攻撃能力の]「生き残り」を保証するのには十分だろう。

このアプローチだと、4隻の潜水艦が必要となるかもしれない。どの時点を取っても、そのうちの2隻は、港で改修作業中となる。米国が攻撃の状況に合わせて応酬方法を決めるとすると、攻撃計画の策定と、それについての潜水艦との通信とのためのシステムもやはり「生き残り可能」でなければならない。

米国が特別なミッション(最後の瞬間まで大統領の管理を維持するとか、爆撃機が意図された目標に核兵器を投下するように保証するとか、攻撃の結果を表するとか)のために1ダース程度の核搭載可能の爆撃機を維持するというのはあり得るが、完全な3本柱の戦力を維持する必要はない。[訳注:3本柱戦力=三元戦略核戦力とは、地上発射ミサイル、潜水艦発射ミサイル、長距離爆撃機に搭載の核兵器を指す。]現在の戦力の高度の過剰性は、抑止のためには必要ではない。

今日世界に存在する核兵器の量から言って核攻撃を抑止するのに必要な「生き残り可能な」核弾頭が数百発とした場合、1000発の核弾頭と言うのはこれを大幅に上回るものであることを考えれば、米国は、この1000発の半分を配備して、残りを予備とする選択肢もあるだろう。

・・・

*訳注:

Roger D. Speed, “Potential CIS/Russian Targets,” UCRL-ID-111040 (Livermore, Calif.: Lawrence Livermore National Laboratory, June 1992).によると、ロシアの産業の50%以上、ロシアの人口の35%以上が50の都市に集中している。これらは、約100発の戦略弾頭で完全に破壊することができる。以下に引用

Harold Feiveson, ed., The Nuclear Turning Point: A Blueprint for Deep Cuts and De-alerting of Nuclear Weapons (pdf)(Washington, DC: The Brookings Institution, 1999).

執筆者リスト

  • Bruce G. Blair
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  • David Wright
  • Stephen Young

米国NGOのオバマ宛書簡

核兵器・核拡散の課題に対処し、核兵器のない世界に向けて動く

2008年12月17日

次期大統領様

あなたが大統領に選ばれたことは、さまざまな分野における変化が明確に支持されていることを示しています。それには、米国の核兵器及び核不拡散政策も含まれます。

私たちは、選挙戦の中で、あなたが「米国の核兵器政策に新しい方向を与え、米国がすべての核兵器を最終的に無くすという核不拡散条約の下における約束を重要だと考えていることを世界に示す」と約束されたことを歓迎します。

これらや他の極めて重要な目的に向けてはっきりとした進展が得られるようにするため、私たちは、以下の主要分野における迅速な行動をお勧めします。

第一に、ロシアとの間の新しい核削減協定に関する同国との新しい交渉においてその先頭に立つ特別代表を任命することです。私たちは、交渉の目標は、米ロの配備及び予備の核弾頭数の相当に大幅な、検証可能で逆転不能の──総数にして1000発あるいはそれ以下への──削減を達成し、戦略的運搬手段の上限を下げることとすべきだと考えます。米ロは、戦略兵器削減条約(START)の主要な検証・監視条項の延長について、あるいは、これらに代わるものについて、合意すべきです。

このような削減を支持し、米国の核政策の方向の変更を表明するために、関連省庁に対し、議会が義務付けている「核態勢の見直し」を、核兵器が存在する限りにおいては、核兵器は他の国の核兵器の使用を抑止する役割だけを果たすとの原則に基づいて行うよう指示することを私たちは要請します*

第二に、できるだけ早く包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准のための助言及び承認を得るために上院との話し合いをするとのあなたのコミットメントを再度表明し、条約の発効に必要な他の8ヶ国を引き入れるために積極的に働きかけるよう要請します。

成功を保証するために、CTBT関連活動を指揮する高官あるいは閣僚を指名するよう要請いたします。新しい議会の約60人上院議員が条約を支持しそうであることから言って、CTBTに関して助言と承認を与えるように上院の3分の2を説得するのは可能でしょう**

貴政権がこの問題に重点を置いていることを示すために、就任演説の中で、以下のものを含む措置を直ちに講じることにより核のない世界を追求するという一文を入れて、あなたのコミットメントを再確認するようお勧めします。すなわち、ロシアとの新しい核軍縮条約交渉、そして、上院による速やかなCTBT承認の獲得です。

このようなステートメントや行動は、2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の成功の可能性高めるために極めて重要です。

ケネディー大統領が、1963年に部分核実験禁止条約の批准を得るための取り組みの一環として行い、成功を収めたように、貴政権は、あなたのイニシアチブの支持を得るために、米国民、専門家、外交問題指導者、そして議会の両党のメンバーを巻き込む戦略を立てるべきです。

私たちが属するそれぞれの組織は、広範囲にわたる様々な集団を代表していますが、私たちは、米国および国際的安全保障の推進への献身という点では一致しています。私たちは、これらのイニシアチブのために、あなたの移行チームと協力し、政治的・技術的専門知識を提供し、また、議会、米国民の間、そして、国際的な舞台での支持を勝ち取る取り組みを行う用意があります。

敬具

  • ジョージ・バン(元大使)
    元米国ジュネーブ軍縮会議大使
    元米国軍備管理・軍縮庁法務責任者
  • ラルフ・アール二世(元大使)
    元SALT2首席代表
    元米国軍備管理・軍縮庁長官
  • リチャード・ガーウィン
    トーマス・J・ワトソン研究センターIBM名誉フェロー
    核兵器・科学・安全保障に関し長年、政府のアドバイザーとして活躍
  • スーザン・ゴードン
    核の説明責任同盟ディレクター
  • ロバート・グレー(元大使)
    超党派安全保障ワーキング・グループ議長
    元米国軍縮会議代表
  • モートン・ハルペリン
    ニュー・アメリカ財団核戦略・不拡散イニシアチブ共同議長
    1998-2001年米国国務省政策企画局長
  • ジョン・アイザックス
    「生きられる世界評議会」事務局長
  • ダリル・キンボール
    軍備管理協会(ACA)
  • ハンス・クリステンセン
    米国科学者連合(FAS)核情報プロジェクト部長
  • ジェフリー・ルイス
    ニュー・アメリカ財団核戦略・不拡散イニシアチブ部長
  • テリー・ロッジ
    プラウシェアーズ財団政府問題部長
  • ケビン・マーティン
    ピース・アクション事務局長
  • スーザン・シェア─
    新しい方向のための女性事務局長
  • ジョン・スタインブラナー
    メリーランド大学国際・安全保障問題センター(CISS)所長
    軍備管理協会(ACA)理事会議長
  • ジョー・ボルク
    フレンズ国家法制委員会(クエーカー)事務局長
  • ジェイムズ・ウォルシュ
    マサチューセッツ工科大学研究員
  • ピーター・ウィルク
    社会的責任を考える医師(PSR)事務局長

訳注:

  • *議会は、2008年度国防歳出権限法の一部として、国防省に2009年中の「核態勢の見直し」を義務付けると同時に、「米国戦略態勢議会委員会」を設置。同委員会は2008年12月15日に中間報告を議会に提出。最終報告は2009年4月1日の予定。それを受けてオバマ政権は「核態勢の見直し」を行う。ACT誌の解説記事(英文)2008年1ー2月号
  • **憲法第2条2ー2が次のように定めている。
    大統領は、上院の助言と同意を得て、条約を締結する権限を有する。ただしこの場合には、上院の出席議員の三分の二の賛同が必要である。米国憲法 (米国大使館訳)

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