核情報
2010. 1.27〜岡田外相、昨年末、核付きトマホークの延命を求めないと米国に書簡
核兵器の役割を核使用の抑止に限定する案についての話し合いを呼びかけ
1月22日、岡田外相は、昨年12月24日に米国務・国防両長官に書簡を送り、「我が国外交当局者が、貴国に核兵器を削減しないよう働きかけた、あるいは、より具体的に、貴国の核卜マホーク(TLAM/N)の退役に反対したり、貴国による地中貫通型小型核(RNEP)の保有を求めたりしたと報じられて」いるが、「特定の装備体系を貴国が保有すべきか否かについて述べたことはないと理解して」おり、「仮に述べたことがあったとすれば、それは核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なる」と伝えたと発表しました。
また、外相は、書簡の中で、「核兵器の目的を核兵器使用の抑止のみに限定すべき」とのICNND報告書の勧告に関心を持っており、「直ちに実現し得るものではないかもしれませんが、現在あるいは将来の政策への適用の可能性について、今後日米両国政府間で議論を深めたい」と呼びかけました。
これは、「大統領、TLAM/Nってなんですか?」でもお伝えした、
- 2013年に退役予定の核付きトマホーク陸地攻撃ミサイル(TLAM/N)の延命を日本が求めているとされる問題。
- 現在進行中の米国の「核態勢の見直し」の中で、核兵器の唯一の役割は、他国による核兵器の使用を抑止し、必要な場合には、これに応じることにあるとする方針をとることが検討されているが、日本の反対が理由となって、その採用が見送られようとしているとされる問題。
に関するものです。
米「核態勢の見直し」議会提出2月1日に延期 (12月3日)では、次のように指摘していました。
2013年に退役予定の核付きトマホークを日本用に延命しなくても、また、核兵器の唯一の役割は核攻撃の抑止にあると宣言しても、日本は核武装などしないと現政権が明言する必要があります。同時に、日本の各種の団体の他、現政権、旧政権の関係者などが、オバマ大統領の大胆な動きを支持するとの声を様々な形で米政府・議会に届けることが重要です。
1.については、少なくとも、岡田外相が、「仮に述べたことがあったとすれば、それは核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なる」と明確に伝えたと言う点で重要です。ただし、実際にどのような情報・意想伝達が前政権で行われていたかは未だに不明です。
2.については、「直ちに実現し得るものではないかもしれませんが」としながらも、積極的な姿勢を示したことは、日本を口実に米国の核政策の現状維持を目論んでいる勢力に対する反論としては大きな意味を持つものでしょう。「直ちに実現することを支持・要請する」とあればもっと良かったのは言うまでもありません。
トマホーク・日本問題を米国からいち早く伝えてきた米国科学者連合(FAS)のハンス・クリステンセンは、早速そのブログで書簡について報告しています。
Japanese Government Rejects TLAM/N Claim
以下、関連文書を抜粋して貼り付けます。
- 岡田=クリントン/ゲーツ書簡
- 外務大臣記者会見記録
- 核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書 社民党近藤正道議員
- 米国の核態勢見直しに対する我が国の対応に関する質問主意書 公明党浜田昌良議員
- 岡田外相所信表明 2010年1月29日
参考
- 外相、核先制不使用へ議論提案 米長官に書簡 共同(西日本新聞)2010年1月22日
- 小型核の保有促す 日本の対米工作判明 共同(中国新聞)2009年11月23日
- 墓場行きを免れるか核トマホーク、日本の協力で? 核情報
ハンス・クリステンセン記事(翻訳) - 『世界』09 年9月号 被爆国日本は核軍縮の足かせとなるのか(トマホーク問題1)
- 『世界』09 年12月号 日本の核の秘密 (トマホーク問題2) 過去の密約の検証、継続する秘密主義の解明・解消に向けて
岡田=クリントン/ゲーツ書簡 (pdf)(英訳は1月27日段階では未掲載)
現在貴国において進められている核態勢の見直し(NPR)に関し、私の基本的な考え方を申し上げます。
言うまでもなく、我が国の安全保障にとって、日米安全保障条約はその根幹をなすものであり、我が国政府は、核抑止力を含む貴国の拡大抑止に依存している現実を十分に認識しています。そして、この抑止の信頼性は十分な能力によって裏付けられる必要があります。
他方、我が国政府は、オバマ大統領が「核兵器のない世界」を掲げ、貴国が世界の核軍縮・核不拡散、そして、核廃絶の先頭に立っていることを高く評価しています。我が国としても、貴国ともに、その崇高な目標の実現に向けて努力したいと考えています。
したがって、我が国政府としては、貴国の拡大抑止を信頼し、重視していますが、これは、我が国政府が「核兵器のない世界」という目標と相反する政策を貴国に求めるものではありません。
我が国の一部メディアにおいて、本年五月に公表された「米議会戦略態勢委員会」報告書の作成過程の中で、我が国外交当局者が、貴国に核兵器を削減しないよう働きかけた、あるいは、より具体的に、貴国の核卜マホーク(TLAM/N)の退役に反対したり、貴国による地中貫通型小型核(RNEP)の保有を求めたりしたと報じられています。
しかしながら、我が国政府は、貴国の特定の装備体系について、それを持つことが必要であるか、持つことが望ましいかについて判断する立場にありません。したがって、前内閣の下で行われた協議ではありますが、私は、我が国政府として、上記委員会を含む貴国とのこれまでのやり取りの中で、TLAM/NやRNEPといった特定の装備体系を貴国が保有すべきか否かについて述べたことはないと理解しています。もし、仮に述べたことがあったとすれば、それは核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なるものです。
ただし、TLAM/Nの退役が行われることになる場合には、我が国への拡大抑止にいかなる影響を及ぼすのか、それをどのように補うのかといった点を含む貴国の拡大抑止に係る政策については、引き続き貴国による説明を希望するものです。
なお、すでにご承知のことと存じますが、十二月十五日、日豪共同イニシアチブで設置された「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」が報告書を公表しました。その中には、すべての核武装国による措置として核兵器の目的を核兵器使用の抑止のみに限定すべきこと、NPT非核兵器国に対する核兵器の使用を禁止すべきことなどの提案が含まれています。これらに関し、「核兵器のない世界」への第一歩として、私は強い関心を有しています。直ちに実現し得るものではないかもしれませんが、現在あるいは将来の政策への適用の可能性について、今後日米両国政府間で議論を深めたいと考えています。
二○○九年十二月二十四日
日本国外務大臣
アメリカ合衆国国務長官ヒラリー・ロダム・クリントン 閣下
外務大臣記者会見記録
○1月22日 冒頭発言
(2)核政策に関する岡田大臣発クリントン国務長官及びゲイツ国務長官宛書簡について
【大臣】それから、もう一点は、先ほどお配りした核政策に関する私(大臣)からクリントン米国務長官及びゲイツ米国防長官に対するレター(PDF)でありますが、昨年の暮れの12月24日に発出したものであります。内容はお読みいただければ、お分かりいただけるかと思いますが、一方で「核の傘」による抑止力を評価する一方、「核のない世界」に賛同し、そのために協力していこうということを述べたものです。さまざまな意見がありますが、一部メディアにおいて米議会戦略体制委員会の報告書作成の過程で、我が国外交当局が核トマホークとか地中貫通型小型核について、その保有を求めたり、退役に反対したりしたという報道がなされましたが、そういうことはなかったと理解しています。少なくとも、核軍縮を求める私(大臣)の考え方は、明らかに異なるという旨を述べたものです。もちろん、トマホークの退役が行われる場合に、それが拡大抑止にいかなる影響を及ぼすのか、どのように補うのかといった点についての説明を希望するということは述べてあります。その上で「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」、日豪共同イニシアチブで行われたものでありますが、その公表に触れて、その中にすべての核武装国による措置として、核兵器の目的を核兵器使用の抑止のみに限定すべきこと、NPT非核兵器国に対する核兵器の使用を禁止すべきことなどの提案が含まれていて、それらについて、私(大臣)は強い関心を持つと、直ちに実現し得るものではないかも知れませんが、現在あるいは将来の政策への適用の可能性について、今後両国政府で議論を深めたいということを述べたものです。
なお、これに対するクリントン国務長官、ゲイツ国防長官からの返事はすでに受け取っておりますが、その内容につきましては、相手方との信頼関係がございますので、特に述べるものではございません。ただ、これについて問題があるとかという趣旨の返事は全く受け取っておりません。そのことだけは誤解のないように申し上げておきたいと思います。
質疑応答
核政策に関する岡田大臣発クリントン国務長官及びゲーツ国務長官宛書簡(外務省サイト)
○1月26日
質疑応答
核政策に関する岡田大臣発クリントン国務長官及びゲイツ国務長官宛書簡
【NHK 梶原記者】本日の閣議で決定された答弁書について、核兵器に関する答弁書が出たと思うのですが、この中で「当時の外務大臣の了承を得て我が国政府の考え方を説明した」とのくだりがあるのですが、年末に大臣がクリントン国務長官にお出しになった書簡と内容によっては矛盾するのではないかと思うのですが、具体的にどのような説明をされたのでしょうか。日本政府としては、トマホークの退役等について、場合によっては懸念するという立場を取っていらっしゃるのでしょうか。
【大臣】中身は申し上げるべきではないと思いますが、質問主意書に書いたことと、私(大臣)の手紙は矛盾をいたしません。私(大臣)の手紙にトマホークについて議論したことを私(大臣)が否定しているものではないということは、手紙を注意深く読んでいただければ分かると思います。むしろ、私(大臣)は、もしトマホークがなくなるということであれば、説明を求めるということを言っている訳です。あの手紙で言っていることは、「日本がそういったことでは困る」というように言っている訳ではありません。トマホークが退役することが困るとか、あるいは地中貫通型小型核が必要だとか、そのようなことを日本が言った訳ではないということを申し上げている訳です。
【NHK 梶原記者】確認ですが、そうしますと、この答弁書に書かれていますが、一般的な核態勢の見直しについての政府の考え方を伝えたという理解でよろしいのでしょうか。
【大臣】私(大臣)が先ほど言ったことに尽きていると思います。本日の閣議で決まった質問主意書の答弁に尽きておりますので、それ以上のことを申し上げるつもりはありません。
核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書 社民党近藤正道議員
○質問 2009年7月13日
第171回国会(常会)
質問主意書
質問第二三六号
核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十一年七月十三日
近 藤 正 道
参議院議長 江 田 五 月 殿
核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書
日本政府が主導して作成された「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」報告書(一九九九年七月)は、「戦術核に伴うテロや核拡散の危険は高い」と指摘し、「戦術核の削減・廃棄は戦略核と並行して進められることが可能だし、それを確保すべく緊急の措置がとられるべきである」(第四部一八)と述べている。また、同報告書は、「米ロにより九一年一〇月に発表され、九二年一月に確認された一方的かつ相互的な戦術核の削減政策は、透明性を保ちつつ、逆戻りしないよう実施されなければならない」(同一七)とも述べている。
一九九一年にジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領が発表した一方的戦術核削減措置の一つに、「水上艦艇及び潜水艦の核弾頭型トマホーク巡航ミサイル」の撤去があった。この結果、艦船用の核弾頭型トマホーク巡航ミサイルは、一九九二年以来、陸上に保管されている。水上艦船用の配備は完全に放棄することが決定されたが、攻撃原子力潜水艦への再配備のオプションは維持されてきた。
約三〇〇発あると見られているこの戦術核兵器について、米国の「米国戦略態勢議会委員会」最終報告書(二〇〇九年五月)は、「アジアでは、拡大抑止は幾つかのロサンジェルス級攻撃潜水艦の巡航核ミサイルの配備によるところが大きい。トマホーク対地攻撃ミサイル/核(TLAM/N)である」とアジアにおける重要性を強調した後、「この能力は、これを維持する措置が講じられなければ二〇一三年に退役となる」と説明している。その上で、「我々の作業の中で、アジアの幾つかの米国の同盟国の一部は巡航核ミサイルの退役について非常に憂慮するだろうということが明らかになった」として、「米国は、非戦略核兵器の発射(delivery)のための能力を維持すべきであり、ヨーロッパ及びアジアの同盟国と密接な協議をしながらそれを進めるべきである」と勧告している。さらに、「核問題について日本ともっとずっと広範な対話を構築すべき時期である──その制限は、日本政府の要望のみによるべきである」と述べており、この問題についての日本政府の見解は、「核態勢の見直し」にとって重要な意味を持つものである。
同最終報告書は、本年中に米国政府が行う「核態勢の見直し」の参考にするべく提出されたものであり、協議した外国政府関係者のリストには四人の日本大使館員の名前も挙げられている。
以上の点を踏まえるとするならば、日本政府は、東京フォーラムの報告書が主張している「戦術核の削減・廃棄」の重要性の観点から、予定されている核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役を歓迎するのか。あるいは、この退役はアジアにおける米国の核抑止力の弱体化をもたらすとして、同ミサイルを維持するよう要請する立場であるのか。
右質問する。
○答弁 2009年7月21日
第171回国会(常会)
答弁書
答弁書第二三六号
内閣参質一七一第二三六号
平成二十一年七月二十一日
内閣総理大臣 麻 生 太 郎
参議院議長 江 田 五 月 殿
参議院議員近藤正道君提出核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員近藤正道君提出核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問に対する答弁書
我が国としては、米国を始めとするすべての核兵器国による核兵器削減に向けた努力は、歓迎されるものと考えるところ、米国における特定の種類の核兵器の削減については、我が国を含む米国の同盟国に対する安全保障上のコミットメントに整合する形で行われるものと考えているが、かかる核兵器の削減に係るお尋ねについては、米国が有する核戦力と通常戦力の総和としての軍事力が日米安全保障体制の下での抑止力として機能していると考えており、一概にお答えすることは困難である。
米国の核態勢見直しに対する我が国の対応に関する質問主意書 公明党浜田昌良議員
○質問 2010年1月18日 (pdf)
○答弁 2010年1月26日 (pdf)
岡田外相所信表明 2010年1月29日
○第174回国会における岡田外務大臣の外交演説
(核軍縮・不拡散)
オバマ米国大統領のプラハ演説は、核軍縮に向けた世界の流れを大きく変えました。日本は、この流れをより確実なものとするため、意味ある役割を果たさねばなりません。
本年は、核セキュリティ・サミットや核不拡散条約(NPT)運用検討会議が予定され、「核兵器のない世界」に向けて重要な1年となります。米露両国による新たな核軍縮条約の早期締結を強く期待します。NPT運用検討会議では、核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用それぞれの分野において、前向きな合意を達成できるよう、リーダーシップを発揮します。
私は、「核兵器のない世界」を実現するための第一歩となる具体的な手段として、核兵器を持たない国に対する核兵器の使用を禁止すること、そして、核兵器保有の目的を核兵器使用の抑止のみに限定することといった考え方に注目しています。これらの点を含め、オーストラリアや米国など関係国とも議論を深めてまいります。

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