核情報

2008.3.11〜

北朝鮮の使用済燃料取り出し2割程度
 IAEA事務局長と元米国国立核兵器研究所長の報告

国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、3月3日の理事会において、ヨンビョンの実験用原子炉からの燃料の抜き取り作業の進捗状況は5分の1程度と報告しました。昨年末完了予定のこの作業の遅れの理由について、2月に訪朝したヘッカー元ロスアラモス国立核兵器研究所長は、「他の5ヶ国が対応措置(例えば燃料用重油の輸送のペース)で追いつくのを[北朝鮮]が待っているため」との説明を受けたと報告しています。

以下、エルバラダイIAEA事務局長の理事会への冒頭演説の北朝鮮関連部分の抜粋訳と、スタンフォード大学「安全保障・協力センター(CISAC)のサイトにあるヘッカー教授の報告の全文訳とを載せました。また、ヘッカー博士ら撮影の写真現状を説明するキャプション (pdf)抜粋要約六者協議での各国の約束をまとめた表も追加掲載しました。


  1. エルバラダイIAEA事務局長の理事会演説の北朝鮮関連部分の抜粋訳
  2. 「安全保障・協力センター(CISAC)のサイトのヘッカー教授の報告の全文訳
  3. ヘッカー博士ら撮影の写真説明キャプション抜粋要約
  4. 六者協議における各国の約束一覧表
  5. 参考



エルバラダイIAEA事務局長理事会冒頭演説 (英文)

(北朝鮮関連部分抜粋訳)

2008年3月3日 於 オーストラリア・ウイーン

IAEAは、民主主義人民共和国(DPRK)の要請により、2007年7月からヨンビョン核施設における閉鎖及び密封の検証及びモニタリングを実施している。

しかし、IAEAは、これらの施設の解体を実施するようにとの要請を受けていない。従って、我々は、進展に関して最新情報を提供することはできない。IAEAは、施設のモニタリング活動を実施する中で無能力化作業を観察・記録することができたに過ぎない。5MW(e)[電気出力5メガワット=5000キロワット]の実験原子力発電所からの使用済燃料の5分の1強が取り出された際に測定がされている。これらの燃料棒、そして、原子炉の炉心に残っている5分の4は、IAEAによる封じ込め・監視下にある。核燃料製造工場における無能力化活動の際に発生した核物質も、IAEAによる封じ込め・監視下にある。

2007年7月9日のステートメントで述べたとおり、DPRKとの特別モニタリング・検証取り決めを実施するのに必要な資金は、IAEAの予算では予測されていなかった。

従って、理事会で承認されたこの取り決めは、二つの加盟国からの自主的な献金を使って実施されている。私は、理事会の指令の実施を続けると言うことならば、資金が提供されるものと考える。これは、このような重要な想定外の状況に効果的に対応できるようにするためにIAEAの非常事態資金が必要だと言うことを示す明確な例である。



2008年2月12−16日のDPRK(北朝鮮)訪問に関するシーグフリード・S・ヘッカー博士の要約ステートメント全文訳

(北朝鮮訪問報告:スタンフォード大学「安全保障・協力センター(CISAC)」2008年2月20日)

代表団の構成

  • シーグフリード・S・ヘッカー教授(スタンフォード大学国際安全保障・協力センター
  • ジョエル・ウィット (元国務省係官)
  • W・キース・ルーズ リチャード・ルーガー上院議員スタッフ

シーグフリード・S・ヘッカーのステートメント

1)我々は、ヨンビョン核センターを2月14日に訪問した。10月3日の六者合意にある無能力化行動を評価するためである。ヨンビョン核施設は、運転停止となっており、国際原子力機関(IAEA)のモニタリング下にある。三つの主要核施設における無能力化行動は、ほとんど完了している。私は、これらは重要な行動であり、これらの施設の運転再開には相当の時間と努力が必要となると判断する。我々は、燃料製造施設、5メガワット(電気出力)原子炉、それに、再処理施設を見た。そして、無能力化された施設及び貯蔵状態の機器の写真撮影を許可された。DPRK側の説明によると、DPRKは12の無能力化行動のうちの10を完了させたということだ。残りの二つは、原子炉からの使用済燃料の取り出しと、原子炉の燃料が完全に取り出された際に行われる制御棒駆動装置の取り外しである。DPRKは、使用済燃料の取り出しのペースをスローダウンさせている。理由は、他の5ヶ国が対応措置(例えば燃料用重油の輸送のペース)で追いつくのをDPRKが待っているためである。

DPRKの核専門家と無能力化を監督している米国チームの間の協力のレベルは素晴らしいと我々には見えた。米国は、DPRKによる施設の無能力化が可能になるように機器を提供してきた。ペースのスローダウンまでは、両者は、作業を迅速に行うことと、安全に行うこととの間の適切なバランスをとっていた。

2)ピョンヤンでは、我々は、DPRKの外務省の担当者らと六者協議の状態について話し合った。DPRKがその核プログラムについて完全な申告を提供するには、まだ相当のハードルが残っていると我々は感じた。DPRKは、非公式に暫定的リストを米国に示したと我々は告げられた。彼らは、米国と協議しているが、DPRKは、六者協議の他の国々が10月3日の合意の義務を果たすまで完全なリストを提示するつもりはない。解体段階まで進めるようにこれらの義務が迅速に果たされることをDPRKは望んでいると我々は告げられた。

3)我々は、ヨンビョン核センターの核労働者の将来について、外務省の担当者ら及び同センターの技術的指導部と話し合った。DPRKは、六者協議の他の国々がその義務を果たし、無能力化段階が完了するまでこのような議論を本格的に行う用意はない。ヨンビョンでは、我々は、施設が解体された場合の労働者の将来のさまざまな可能性について話し合った。これらの話し合いは、良い第一歩である。DPRKの受け入れ側は、主として我々のアイデアに耳を傾け、応えた。

4)私はまた、医療、科学、教育の分野における人事交流に関わる広範な問題についての議論を続けた。

ヘッカー教授の仕事は、ジョン・D−キャサリン・T・マッカサー財団及び「核脅威イニシアチブ(NTI)」によって支援されている。

2008年2月ヘッカー教授訪朝時撮影写真が示すヨンビョン核施設無能力化状況

キャプション (pdf)抜粋要約

1)5メガワット(電気出力5000kw)原子炉

(*残っている無能力化作業は、燃料棒の取り出しと、その後の制御棒駆動装置の取り外しのみ)

2)再処理工場

3)燃料製造施設

非核化合意一覧表

六者協議における各国の約束
 北朝鮮米国5者日朝関係
05年9月19共同声明 朝鮮半島の平和的・検証可能な非核化(1992年朝鮮半島非核化共同宣言の遵守)
すべての核兵器及び既存の核計画を放棄朝鮮半島に核兵器を置かない。核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略をしない。国交を正常化するための措置を講じる。エネルギー支援 
「約束対約束、行動対行動」の原則。
07年2月13初期段階措置寧辺の核施設(活動の停止及び封印。すべての核計画(使用済燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議。テロ支援国家指定解除、対敵通商法の適用終了の作業を進める5万トンの重油に相当する緊急エネルギー支援の最初の輸送、60日以内に開始。初期段階の措置の段階及び次の段階の間、100万トンの重油に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援(5万トンの重油に相当する最初の輸送を含む。)提供。日朝は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二者間の協議を開始する。
初期段階の措置が実施された後、速やかに閣僚会議。
◎2007年7月15日原子炉停止
0710月3日第二段階措置2007年12月31日までに寧辺核施設の無能力化完了。2007年12月31日までに、すべての核計画の完全かつ正確な申告。核物質、技術及びノウハウを移転しない。テロ支援国家指定解除、対敵通商法の適用終了の作業実施の再確認100万トンの重油(既に供給された10万トンを含む)に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援の提供。日朝は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化
◎2007年11月5日 寧辺で「無能力化」作業開始
◎2007年12月13日電気出力5000キロワットの実験炉で燃料棒抜き取り開始。

参考

◎六ヶ国協議での「無能力化」合意経緯

  1. 第4回六者会合に関する共同声明(核放棄の合意)2005年9月19日 外務省
  2. 共同声明の実施のための初期段階の措置 2007年2月13日 外務省
  3. 共同声明の実施のための第二段階の措置 2007年10月3日 外務省

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