核情報

2006.1.23

六ヶ所ウラン濃縮工場が核拡散防止に役立つ?

2005年10月25日、経済産業省資源エネルギー庁は、国際的核燃料供給保証構想に参加する意向を表明した。エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長が、核拡散防止のために提唱してきた再処理・ウラン濃縮施設の新規建設モラトリアムと国際核管理構想に協力するという。核拡散防止のために自前のウラン濃縮を放棄した国に対して六ヶ所ウラン濃縮工場の供給力を提供しようというのだ。六ヶ所ウラン濃縮工場はとてもそのような役割を果たす能力を持っていない。必要もないのに六ヶ所再処理工場のプルトニウム生産開始を強行することに対する国際的批判をかわすためのジェスチャー以上の意味がこの協力姿勢の表明にあるのだろうか。

六ヶ所ウラン濃縮工場の実体について簡単にまとめた。

  1. ウラン濃縮とは?
  2. 遠心分離法とは?
  3. 六ヶ所ウラン濃縮工場の能力は?
  4. 現在の計画は? 
  5. 現在の運転状況は?
  6. 「高度化機」とは?
  7. 新型機についての日本原燃の説明は?
  8. 資源エネルギー庁の考えは?
  9. 原子力長期計画はウラン濃縮工場についてなんと言っているか?
  10. 海外向けウラン濃縮プラント構想とは?
  11. エルバラダイIAEA事務局長やアナン国連事務総長は昨年のNPT再検討会議でなんといったのか。
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ウラン濃縮とは?

天然ウランの中に少量(0.7%)しか含まれない核分裂性の(燃えやすい)ウラン235の割合を遠心分離法、ガス拡散法などの工程によって高めること。天然ウランの残りのほとんどは、燃えにくいウラン238。

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遠心分離法とは?

6フッ化ウランというガス状にしたウラン化合物を洗濯機のような回転体(遠心分離器)に入れ、遠心力を利用して、ウラン235とウラン238をわける仕組み。外側に重いウラン238、真ん中に軽いウラン235が集まる。ウラン235の含有率が少し高まったガスを次の遠心分離器に送るという形で、同じ過程を繰り返してウラン235の含有率を3−4%にすると世界で一般的に使われている軽水炉の燃料に使える。核兵器用には、さらに濃縮を繰り返してウラン235の含有率を90%以上に高める。(ただし、広島に投下された原爆の場合は、平均含有率が80%程度だった。)

参考 

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六ヶ所ウラン濃縮工場の能力は?

日本国内の需要の10%未満

生産能力   450tSWU

国内需要 約5000tSWU

*SWU=分離作業単位 だいたい120tSWUが100万KW発電所の年間燃料取扱量に相当。

  原子力百科事典アトミカの説明

1992年3月に150tSWU/年で操業を開始し、2000年過ぎ頃の1500tSWU/年の能力達成を目指して、1998年10月までに1050tSWUまで増強したが、下に見るように故障が続出し、現在の運転状況は、450tSWU/年となっている。国内需要は、約5000tSWUだから、供給は、その10%にも満たない。そして、この450tSWU/年の能力も2009年前後に消滅すると見られている。

参考

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現在の計画は? 

 新型機の導入で2020年度に1500tSWUを達成

  現在は単機の試験中

 2006年度−2009年度 新型機のカスケード試験に着手

 2010年度 新型機導入

 2010年度−2020年度 1500tSWU/年まで引き上げ(原発12基分)

*カスケード:一連の遠心分離器をつないだひとまとまりのセット。遠心分離法においては、遠心分離器を何基も並べて、濃縮作業を繰り返す。このひとまとまりを指すカスケードという用語は、階段状に水の落ちる滝を意味する言葉からきている。(イラン濃縮施設の衛星写真の項を参照。)

計画通り、2020年に1500tSWUが達成されたとしても、2010年に6000tSWUと見込まれている国内需要の4分の1程度だ。こんな実体にもかかわらず、背伸びをして、大規模なウラン濃縮能力を持つ核保有国の仲間に入れてくれというのだろうか。(単独で商業用濃縮工場を持っているのは、日本の他は核保有国の米・ロ・中だけ。その他は核保有国の英・仏が絡んだ多国間経営。非核保有国として日本だけが独自の濃縮工場を持っていることは、他国に同様の道をたどる口実を与える。)

参考:

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現在の運転状況は?

*これらRE−2のカスケードは、ともに2009年前後運転停止見通し

参考

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「高度化機」とは?

実は「新型機」の前に「高度化機」というのを導入する計画があったが、2000年10月に断念された。長期運転が困難な上、コストが海外の2倍になると判断されたためだ。電力会社と核燃料サイクル機構が共同開発していたが、電力会社側が、計画中止を決めた。上の表で、第2期が前半分で終わっているのはこのためである。

高度化機では、現在の型の2.5−3倍の濃縮効率を目指していたが、新型機では約5倍の効率を目指すという。だが、これがうまく行くかどうか保証の限りではない。新型機も高度化機と同じ運命をたどるかもしれない。六ヶ所再処理工場の運転開始強行のもたらす核拡散の危険性と引き替えにこんなものを提供されて国際社会は喜ぶだろうか。

参考 

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新型機についての日本原燃の説明は?

新型遠心機の開発状況について

 世界の遠心機技術をリードする“世界最高水準の遠心分離機”として、平成12年度(2000年度)から開発を開始した新型遠心機は、平成13年度末に遠心分離機の骨格となる「概念仕様」を決定し、実用化に向けたプラント用遠心機開発段階に移行しています。その後、遠心分離機の基本性能の評価を行い、解決困難な技術的課題はなく、平成15年度末に遠心機単体としての基本的な構造、寸法、材質等を固める「基本仕様」を計画通り決定し、現在は次のステップである性能確認、量産性評価に関する課題に取り組んでいます。

 これまでの開発成果を踏まえた具体的な進捗状況については以下の通りです。

 事業化スケジュールとしては、新型遠心機による役務生産を2010年度(平成22年度)頃を目途に開始し、10年程度をかけて1500tSWU/y規模を達成するものであり、この事業化目標に沿い着実に開発を進めています。

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資源エネルギー庁の考えは?

第4回原子力部会資料2 「核不拡散と原子力平和利用(国際核管理構想への対応)」2005年10月25日(pdf) 資源エネルギー庁

11−12ページ

[1]「原子力平和利用の模範生」として、引き続き、厳格な輸出管理、保障措置、核物質防護措置等を講じていくことにより、核不拡散と原子力平和利用の両立を実現している模範国としてのモデルを世界に示していく。・・・

b)一方、提案された構想への問題点の指摘のみの受け身の対応では孤立するおそれがあることから、我が国が何が貢献できるかを検討するなど、積極的な対応を行うことも視野に入れるべきではないか。その際、米国との連携や、我が国の周辺国等の様々なニーズや制約を踏まえた対応に留意が必要ではないか。

・・・

4.4.今後の論点[3]

例えば、国際核管理に対する我が国の協力・貢献の可能性も含め、今後特に議論が加速化するであろう「国際的な燃料供給保証体制の整備」も念頭に置きつつ、以下のとおり考えられるのではないか(参考[3])。

・公的機関によるファイナンス支援を用いて、国際協力による鉱山開発の可能性はあるか。

・濃縮は、六ヶ所ウラン濃縮工場の生産能力が国内需要の約10%程度であり、国際的な役務提供は物理的に困難。2010年度頃の導入を目途に開発中の新型遠心分離機を活用した濃縮ウラン製造能力の拡充により、海外向け濃縮ウランの提供は可能か。

参考

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原子力長期計画はウラン濃縮工場についてなんと言っているか?

1994年には、2000年過ぎに1500tSWU/年達成と言っていたものが、2000年には、1500tSWUを目指すというだけになり、2005年には、目標も消えて、安定運転と経済性向上の期待を表明するだけになっている。

1994年原子力長期計画

ウラン濃縮の年間役務所要量は,2000年,2010年,2030年において,それぞれ5000トンSWU/年程度,7000トンSWU/年程度,10000トンSWU/年程度と予想されます。2000年においては,OECD諸国の濃縮役務需要の約2割となり,その後もこの割合は増大するものと予想されます。ウラン濃縮役務については供給能力が世界的に過剰な現在の状況が2010年過ぎにおいてもある程度の期間続くものと推定されますが,濃縮ウランの安定供給や核燃料サイクル全体の自主性を確保するという観点から,経済性を考慮しつつ,国内におけるウラン濃縮の事業化を進めていくこととします。

・・・・

 国内民間濃縮事業については,我が国における濃縮事業の確立を目標として当面は2000年過ぎ頃の1500トンSWU/年規模による安定した操業の実現と経済性の向上に取り組むこととし,それ以降の国産化の展開に関しては,国際動向,経済性,技術の継承等を考慮しつつ具体的な事業規模と時期を検討することとします。

2000年原子力長期計画

現在稼働中の六ヶ所ウラン濃縮工場については、これまでの経験を踏まえ、より経済性の高い遠心分離機を開発、導入し、同工場の生産能力を1,500トンSWU/年規模まで着実に増強しつつ、安定したプラント運転の維持及び経済性の向上に全力を傾注することが期待される。

2005年原子力政策大綱

我が国として、濃縮ウランの供給安定性や核燃料サイクルの自主性を向上させていくことは重要との観点等から、事業者には、これまでの経験を踏まえ、より経済性の高い遠心分離機の開発、導入を進め、六ヶ所ウラン濃縮工場の安定した操業及び経済性の向上を図ることを期待する。

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海外向けウラン濃縮プラント構想とは?

六ヶ所ウラン濃縮工場では、とても外国に濃縮ウランを提供できないから、新たに海外供給用工場を作ろうというもの。

2006年1月23日、電気新聞が「国際核管理構想に対応、国内に海外向けウラン濃縮プラント−経産省、総合エネ調に諮問へ」と報じた。エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長や米国政府の提唱する供給保証構想で、核保有国からなる供給国側に入れてもらうためには、2020年に国内需要の4分の1程度の供給能力を目指す現在の六ヶ所工場の計画ではとても無理。それで海外輸出専用工場を作ってはどうかということだ。

経産省は、4月以降その諮問機関の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会にこの構想を諮る方針という。しかし、2000年過ぎに1500tSWUを達成するはずだった六ヶ所工場が現在450tSWUの能力しか持っていないのは、技術的に失敗しているためである。技術的に国内需給能力さえ達成できていないのに安定供給の提供国側に入れてくれというのは、無謀な駆け込み申請の試みといえる。

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エルバラダイIAEA事務局長やアナン国連事務総長は昨年のNPT再検討会議でなんといったのか。

再処理やウラン濃縮技術を多数の国が持ってしまうと危険だから、新たな規制方法について考えるべきであり、その検討期間中、これらの施設の新設のモラトリアムを実施するべきだというのが二人の主張。

日本が考えるのは、供給国側のバスに乗り遅れないようにということだけのようだ。余剰プルトニウムを抱えながら、六ヶ所でのプルトニウム生産開始を強行しようとする一方、経験もないのに、大規模なウラン濃縮工場の建設計画を出そうとしている。それが本気であれ、再処理への批判をかわすための煙幕であれ、核拡散防止には役立たない。

アナン事務総長

[ウラン濃縮と再処理という]燃料サイクルのもっとも機微な部分を何十もの国が開発し、短期間で核兵器を作るテクノロジーを持ってしまえば、核不拡散体制は維持することができなくなる。そして、もちろん、一つの国がそのような道を進めば、他の国も、自分たちも同じことをしなければと考えてしまう。そうなればあらゆるリスク──核事故、核の違法取り引き、テロリストによる使用、そして、国家自体による使用のリスク──が高まることになる。

エルバラダイIAEA事務局長

核燃料サイクルにおける核拡散面でセンシティブな部分──ウラン濃縮とプルトニウム分離をともなう活動──についてもっと良いコントロールが必要である。
・・・・

[国連改革に関する]『脅威・挑戦・変革に関するハイレベル・パネル』は
・・・
[ウラン濃縮と再処理についての]取り決めについて交渉が行われている間、新規の燃料サイクル施設に関する自発的な期間限定のモラトリアムを実施するようにとの要請──以前に私も行った提案──を行っている。このようなモラトリアムは、国際社会が体制の脆弱性に対処する意志があることを示すものとなる。それはまた、すべての関係者の分析・対話のための機会を提供することになる。

参考

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