核情報

2006.1.5

バックエンド・再処理コストの基礎知識

2005年10月、「原子力政策大綱」が閣議決定され、原子力発電所からでてきた使用済燃料を再処理してプルトニウムおよびウランと放射性廃棄物を分離するという方針の続行が確認されました。再処理の費用は、11兆円? 19兆円? 42兆円以上? でてくるゴミは? 使用済み燃料をそのまま捨てた方が安い? 費用を払うのは誰? これらの問題について考えるための基礎知識です。

  1. バックエンド総事業費約19兆円とは?
  2. 再処理の費用は最初はどのくらいと考えられていたか。
  3. 六ヶ所再処理工場の建設費は?
  4. バックエンドが問題になってきたのは?
  5. バックエンド措置についての電力会社の言い分は?
  6. 電力自由化との関係とは?
  7. なぜ未手当のものがあったのか。
  8. この19兆円に関する「上質な怪文書」とは?
  9. 19兆円の中身を示した詳しい表は?
  10. 2005年に定められたバックエンド事業制度・措置は?
  11. 制定されたバックエンド事業制度措置と19兆円の関係を表にすると?
  12. 新外部積立制度と既存引当金の関係、既発電分の回収などを図示すると?
  13. 外部積立金の管理は誰が?
  14. 再処理で42兆円以上という数字は?
  15. 19兆円との違いは?
  16. 4つのシナリオとは?
  17. 以前にでていたキロワット当たりの数字は?
  18. コストの計算期間を2002年から2060年としたのは?
  19. 米国の専門家らのコスト議論は?
  20. 参考

▲ページ先頭へ戻る

バックエンド総事業費約19兆円とは?

バックエンドとは、原子力発電が終わった後に生じる後始末に関わる部分。

約19兆円というのは、電気事業連合会が2003年11月11日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会の小委員会に報告した数字。

六ヶ所再処理工場を40年動かすとして、その建設・操業費と、工場の廃止措置(2078年まで)が合わせて約11兆円。海外からの返還分も合わせた高レベル廃棄物の貯蔵および処分、輸送、中間貯蔵など他の「バックエンド」事業も合わせた総額が約19兆円との計算。

六ヶ所で再処理されると想定されているのは、2004年度までに生じている1.4万トンと2005年度から2036年度までに生じる分のうちの1.8万トン(残りは中間貯蔵)の使用済燃料。この合計3.2万トンを2046年度までの40年間で再処理するとの想定(年間800トン)。2046年度までに中間貯蔵が3.4万トン生じる計算。

原子力発電の後処理(バックエンド)費用(電気事業連合会)
事業内容 費用(兆円)
再処理工場の操業や廃止など 11.00
海外から返還される高レベル放射性廃棄物の輸送や貯蔵など 0.30
海外から返還される低レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 0.57
海外返還分以外の高レベル放射性廃棄物の輸送や処分など 2.74
再処理・MOX燃料工場などで発生する超ウラン元素(TRU)の地層処分 0.81
使用済み燃料の輸送 0.92
使用済み燃料の中間貯蔵 1.01
MOX燃工場の操業や廃止など 1.19
ウラン濃縮工場の後処理 0.24
合計 18.80

【注】端数処理の関係で合計は合わない

出典:業界18兆8000億円と試算 負担の合意形成が課題 中国新聞2004年5月30日

▲ページ先頭へ戻る

再処理の費用は最初はどのくらいと考えられていたか。

ゼロ。

回収されたウランとプルトニウムの価値が大きく、それによって再処理費用はまかなえると考えられていた。だから料金原価上も再処理費用を費用の中に入れていなかった。それが途中で、再処理費用の方が回収核物質の価値を大きく上回ることが分かって、あわててこの費用を電力消費者から取り立てることにしたと次の文書にある。

【問題の所在】

原子力バックエンドのうち、使用済核燃料の再処理は、減損ウラン及びプルトニウムの回収と高レベル放射性廃棄物の分離、凝縮との両面の性格を併せ持っている。現在の電気事業会計は、回収されるウラン及びプルトニウムの価値により再処理費用を賄えるという前提に立って設定されており、料金原価上も、再処理費用を費用とせず、資産としてレートベースに算入することとしている。しかしながら、最近に至って再処理費用が回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上まわることが明らかになってきており、現行の取扱いを継続していくことは、電気の消費者の世代間の負担の不公平を招くという問題が生ずる。したがって、現行の取扱いの改善につき検討が求められている。また、再処理費用以外の原子力バックエンド費用についても、将来確実に発生することが明らかであるので、これについても将来の消費者に負担させることの適否が問題となっており、同様に検討が求められている。

【結論】

(1) 原子力バックエンド費用のうち、高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用を含む使用済核燃料の再処理費用については、炉内で燃焼している時点で引当金を積立てる方式により、料金原価に算入することが適当である。なお、引当金方式の採用に伴い、企業会計及び税制上の取扱いとの整合性が図られることが望ましい。

(2) 放射性廃棄物の処分及び廃炉の費用については、現時点では、処分方法等につきなお不確定な要素が多く、将来の費用を合理的に見積もることが困難であるので、引続き内外の事態の推移を見極めながら、その取扱いを検討していくことが適当である。

▲ページ先頭へ戻る

六ヶ所再処理工場の建設費は?

1999年日本原燃は、建設費の見積もりをそれまでの「1兆8,800億円」から「2兆1,400億円」に変更した。1989年に事業許可申請が出されたときの建設費見積もり額は7600億円だった。

参考:

▲ページ先頭へ戻る

バックエンドが問題になってきたのは?

18.8兆円のうち、六ヶ所再処理工場建設・操業費や高レベル廃棄物処分費用などの10.1兆円については回収する仕組みがあったが、工場の廃止措置費用など残りの8.7兆円を誰がどう負担するかが問題になった。

参考:

▲ページ先頭へ戻る

バックエンド措置についての電力会社の言い分は?

既に原発の電気を使った顧客が、2005年から本格化する電力自由化のために、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電気を買うようになった場合に、その顧客から既発電分について回収しておくべきだった分をどうやって回収するかが問題になるから、制度を完備する必要があったというもの。

「原子力のバックエンドコストって?」 2004.01.15  原子力事業本部原燃計画グループ チーフマネジャー 小田英紀

──審議の予定や制度設計の見通しなど、今後のスケジュールは? //////////

契約電力50kW以上のお客さまにまで自由化対象が拡大される2005年がひとつのポイントになる。それまでになんらかの制度をつくっておかないといけないから、2004年1月下旬からの電気事業分科会で審議が行われ、2004年中には結論が出ることになるだろう。議論の結果がどうなるかはまだ分からないが、我々としては、1)バックエンドコスト18.8兆円の試算は、相応の合理性をもって算出したものであること 2)バックエンドコストを含めても原子力の経済性は、他の電源と比較において遜色はないこと 3)自由化拡大以前の発電に起因する未回収分については、公平性の観点から「広く薄く」負担していただくのが望ましいこと──この3点を主張し、公平かつ妥当な制度設計を要望していきたいと考えている。

▲ページ先頭へ戻る

電力自由化との関係とは?

2005年度から50kWの顧客まで自由化の範囲を広げることを盛り込んだ電気事業法改正案が2003年に衆(5月)参(6月)両院を通過した際、次のような附帯決議がなされていた。

我が国のエネルギーセキュリティと環境保全等の両立の観点から、原子力発電を中核的な電源と位置付け、原子力発電の開発・利用を推進するため、優先給電指令制度の整備など電力供給システムの一層の整備を図ること。

バックエンド事業については、国の責任を明確化した上で、徹底した情報開示と透明性の高い国民的議論の下で、官民の役割分担の在り方、既存制度との整合性等を整理し、経済的措置等具体的な制度・措置の在り方について早急に検討を行い、平成16年末までに必要な措置を講ずること。

▲ページ先頭へ戻る

なぜ未手当のものがあったのか。

電気事業連合会は次のように説明する。

これらの費用が将来発生することは以前から予見できていましたが、費用を明確に見積もることができなかったため、これらを総括原価制度(適正な原価に適正な事業報酬を加えたものが、総収入に見合うように料金を設定する方式)の料金原価に含めることは政府に認められていませんでした。

▲ページ先頭へ戻る

この19兆円に関する「上質な怪文書」とは?

19兆円の請求書─止まらない核燃料サイクル─」(pdf, 416kb)

再処理に批判的な官僚が書いた文書とされる。

核燃料サイクル路線を正当化するものは何もないと説明し、最後は次のように結んでいる。

ちょっと待った!サイクル!

この核燃料サイクルを巡る構図は、古くは国鉄、住専、最近では道路公団、年金問題と同じ

(問題の先送りによるツケが国民に回ることに)

      ──>

核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないか

参考:

『「上質な怪文書」が訴える「核燃中止」』 週刊朝日 2004年5月21日p131

▲ページ先頭へ戻る

19兆円の中身を示した詳しい表は?

原子燃料サイクルバックエンドの総事業費

*出典:原子力発電四季報第28号[2004年 8月]特集 原子燃料サイクルとバックエンド

さらに、詳しくは電事連の提出資料から資源エネルギー庁が作成した「バックエンド事業の費用等について」および「原子燃料サイクルバックエンド事業の想定スケジュール」(pdf)

参考:

▲ページ先頭へ戻る

2005年に定められたバックエンド事業制度・措置は?

2005年5月11日に成立し、10月1日に施行となった法律で定められたのは:

  1. 電力料金に上乗せして徴収していた対象を拡大する。
     これまでの対象
    • 再処理操業本体費用
    • 高レベル放射性廃棄物のガラス固化費用
     追加される対象
    • ガラス固化体貯蔵
    • 返還廃棄物管理
    • TRU廃棄物の処分
    • 再処理施設の廃止等
  2. これまでは電力会社内部で積み立てていたものを外部積立とする
     既に内部で積み立てられている分については、15年以内に外部積立に移す。
  3. 既発電分に関する上の追加対象については、15年に渡って分割回収する。自由化で特定規模電気事業者(PPS=Power Producer & Supplier)から電力を購入するようになる消費者からも回収する。電力会社(一般事業者)の送電線を使って特定規模電気事業者の電力を運ぶ「託送」制度を利用し、送電線使用量に上乗せして回収する仕組み。
  4. これまでは、発生する使用済燃料すべてについて準備金を積み立てていたが、新制度では、六ヶ所再処理工場で再処理される分についてのみ積み立てる。2010年以後中間貯蔵が始まった場合、そこに送られ、その後第二再処理工場か直接処分に向かうものについては、当面、準備金の積立を行わない。

成立後の説明:

議論過程での文書:

2005年新法:

▲ページ先頭へ戻る

制定されたバックエンド事業制度措置と19兆円の関係を表にすると?

2005年制定の新しいバックエンド事業措置の整理
項目試算額内容徴収制度新法施行後の現状
(A) 既存拠出金対象2.6兆円高レベル廃棄物処分費用既存制度対象
10.1兆円
新規積立対象外*
(B) 既存引当金対象7.5兆円
既引当分は15年内に新外部積立金に移動
再処理工場・建設操業費用
高レベル廃棄物ガラス固化費用
合計12.6兆円が積立対象

六ヶ所工場再処理分と返還廃棄物
(C)







将来発電分2.4兆円
原発を持つ電力会社顧客より徴収
再処理施設廃止措置費用
高レベル放射性廃棄物輸送費用
返還高レベル放射性・TRU廃棄物管理費用
TRU廃棄物地層処分費用 等
(2005年4月の前後で将来分と既発電分に分けて整理)
新制度対象
5.1兆円
既発電分2.7兆円
15年で回収:
自由化の下での特定規模電気事業者と電力会社両方の顧客より(託送の仕組みを利用)
(D) 当期費用として整理するもの3.7兆円MOX燃料加工費用
使用済燃料輸送費用
使用済燃料中間貯蔵費用ウラン濃縮バックエンド海外輸送費用 等
徴収制度対象外新規積立金制度対象外(六ヶ所の能力を超えるとして2010年以後中間貯蔵され後に第二再処理工場または直接処分に送られる分は方針未決定のため積立制度が無い)
合計18.8兆円15.1兆円

端数処理のため合計値は合わない。

*高レベル廃棄物処分費用2.6兆円については、同事業を目的として2000年に設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)への拠出が2001年から始まっており、積立金制度の対象とはならない。

参考:

▲ページ先頭へ戻る

新外部積立制度と既存引当金の関係、既発電分の回収などを図示すると?

バックエンド事業に対する制度・措置の内容について

出典162国会原子力関連2法案について 三労連原子力問題研究会議(電機連合・基幹労連・電力総連)(pdf)2005年2月

参考:

電気事業分科会第21回会(2004年8月30日)資料2   総合資源エネルギー調査会電気事業分科会中間報告(案)「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(pdf)p18

▲ページ先頭へ戻る

外部積立金の管理は誰が?

(財)原子力環境整備促進・資金管理センターが2005年10月11日に外部積立金の管理法人として指定された。

▲ページ先頭へ戻る

再処理で42兆円以上という数字は?

原子力政策大綱の制定過程で、原子力委員会が「核燃料サイクルの経済性評価に関する渡辺委員及び山地委員からのご質問への回答」(pdf)として提示した文書で明らかにされた全量再処理のコスト。

対象期間は、2002年から2060年まで。

この文書以前は、キロワット当たりの数字しか出されていなかった。示された4つのシナリオのうち、全量再処理では、約43兆円となっていた。

「核燃料再処理総事業費は42兆円超」 東奥日報 2004年10月22日(金)

▲ページ先頭へ戻る

19兆円との違いは?

原子力委員会は、約19兆円というコスト見積もりとの違いを「核燃料サイクルの経済性評価に関する渡辺委員及び山地委員からのご質問への回答」(PDF)で次のように説明している。

総合エネ調電気事業分科会コスト等検討小委員会「原子燃料サイクルのバックエンド事業コストの見積もりについて」で示された総事業費18.8 兆円とは、以下のような前提の相違がある。

(1) 今回の経済性評価においては、2002-2060 年度の59 年間の発電に伴うサイクルコストを算定(したがって、対象となる再処理対象物量等がほぼ倍増している。他方、過去の海外での再処理にかかる返還廃棄物は含まれていない)。

(2) 今回の経済性評価においては、フロントエンドにウラン濃縮等の役務費用が含まれる。

▲ページ先頭へ戻る

4つのシナリオとは?

原子力委員会が2004年10月22日に示したコスト計算は、次の4つのシナリオに関するもの。

シナリオ1:全量再処理  42.9兆円
シナリオ2:部分再処理  38.7− 45.6兆円
シナリオ3:全量直接処分  30.0−38.6兆円
シナリオ4:当面貯蔵  36.7−40.9兆円

▲ページ先頭へ戻る

以前にでていたキロワット当たりの数字は?

シナリオ1:全量再処理  1.6円
シナリオ2:部分再処理  1.4〜1.5円
シナリオ3:全量直接処分 0.9〜1.1円
シナリオ4:当面貯蔵  1.1〜1.2 円

新計画策定会議(第9回)資料第1号経済性について(pdf) 2004年10月7日 P11に表

▲ページ先頭へ戻る

コストの計算期間を2002年から2060年としたのは?

六ヶ所再処理工場が2005年度から再処理を開始するとの仮定に立ち、使用済燃料は炉取出しから3年後に再処理されるとして、再処理の初年度(2005年度)に再処理対象となる使用済燃料の炉取出し年度2002年を始点として選定。

そして、評価期間は、仮定成立性が低い遠い将来が過半を占めることのないよう、2002年度〜2060年度とする、と原子力委員会は説明している。

高レベル放射性廃棄物処分時期及び使用済燃料直接処分時期は、原子炉取出しから54年後、原子炉装荷から59年後としており、2002年に装荷された燃料が処分される年度を最終年とした格好。

出典:

▲ページ先頭へ戻る

米国の専門家らのコスト議論は?

2003年に発表されたハーバード大学の報告書The Economics of Reprocessing vs. Direct Disposal of Spent Nuclear Fuelとマサチューセッツ工科大学の報告書THE FUTURE OF NUCLEAR ENERGYは、ともに、再処理政策が経済的に意味をなさないと論じている。

次の文書がこれらの報告の要約を載せて紹介している。

原子力産業会議は、MIT報告について次のようなコメントを発表している。

▲ページ先頭へ戻る

参考

▲ページ先頭へ戻る

原水禁ホームへ ホームページに戻る  | このページ内容は核情報提供